二周目の人生は大空に焦がれる【完結】   作:ノイラーテム

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立花家救援作戦の始まり

 鞆の浦では様々な資材を追加搭載して筑紫島に向かう事に成った。

救援すべき立花家は戦場に張り付いて戦い続けているからだ。そこでどんな介入を掛けるにせよ、功績を立てねばならぬと頑張っている貴族である以上は、前田啓治たちの操る飛行船も無傷では済まないだろう。

 

「本当に騎乗用ゴーレムを立花家救援に使うんですか?」

「俺たちの自称『親友』のが言うにはその方が早くて確実だってよ。罠じゃ無ければの話だが、狭い場所に誘き寄せする案自体は良いと思うぜ」

 積み込みが終わった所で、暇になったメンバーから順次説明。

スタッフの一人である明智彰は、苦労している原因である細川武人の考案と聞いて難しい顔をした。細川は優秀だが面倒な性格をしており、その力を借りることも、その意見に従う事も色々問題があり得たからだ。

 

「だいたい俺らの手持ちで魔物を蹴散らせる戦力はアレくらいだぜ?」

「でも、そんなことしたら島津家が協力しているって事がバレません? 動きをトレースさせてるから見る人が見たら一目で判っちゃいますよ。島津家の協力で良いなら話はもっと簡単でしょう」

 当然だが騎乗用ゴーレムは人間より強いが、かなり制限がある。

基本構想がオーガやトロルですら簡単に倒せる前提であり、この時点で大きくレアな素材を装備に使用している。人が乗り込むことで強化個体とも楽に戦えるようにしたのだが……、それは乗っている人間の腕前を真似ることで技を再現しているからだ。当然ながら全体の動きは殆どそのままなので、仮にゴーレムの外見を変えたとしても誤魔化すのは難しいだろう。

 

「これまで立花家が頑張って戦って来たのに、島津の援軍が倒して回ったんじゃ意味がないので嫌だと断られると思いますよ。ゴーレムを使うのであれば立花家の人間でないと。当然ながら自分でも戦える人を乗せるしかありませんね。ただその場合はゴーレムが無事には済まないと思います」

 ここで問題いなるのが立花家はお家再興の為に行動しているということだ。

増え続ける魔物に相対し、筑紫島北部の雄としての地位を確固たるものとしようとしている。魔物の害が国中に広がった為、猛攻を凌いでいる現在は確かに名を馳せていると言えなくもない。しかしここから更に名声を積む必要があるというのに、他者の手を借りる……しかも筑紫島南部の雄に力を借りたとあっては面目丸潰れだろう。それでは何のためにここまで戦って来たのか分からないのだ。

 

「ボクとしては直せる範囲なら幾らでも直すけどねえ。面白みのない戦い方じゃあ嫌だなあ」

「佐久間センセはいつもそれっすね。しかし素直に話を聞いてくれたとして、その場合は勝ち切れるかが問題ってことか。だから必然的に劇的な形にするしかない? できんのか……。いや、もしかすっとアレで……」

 ここでゴーレムの搬入を終えた佐久間教諭が参戦する。

とはいえ彼の要求はいつも同じなので再確認みたいなものだ。彼の作成した傑作ゴーレムで大々的な活躍をするとか、面白い戦法を編み出して未来を感じさせる。無茶振りも良い所だが、今回ばかりはそういう戦い方を模索しないとならなさそうだ。啓治が普通の武将であれば、『ただでさえ難しいのに不可能な事を言うな』とでも言うべきだろう。

 

「明智君よい。誘き寄せたら勝てると思うか? ゴーレムはあくまで劇的になるような場面でダメ押しに使うとしての話だ」

 何事かを思いついたのか、啓治は基本的な採算を尋ねる事にした。

そもそも今回の件は、一進一退でこそあるがジリ貧に成っていく立花家の救援作戦なのだ。元から大負けになっているなら救助して終わりだし、勝てる状況ならば無理に介入する方が間違いかもしれない。

 

「……? 敵の主力はラミアやナーガの様な半水棲ですからね。誘き寄せればなんとか行けるでしょう。本当にダメ押しに成るような使い方が出来るんですか?」

「思いついてなきゃ言ってねえよ。つか、俺のオリジナルじゃねえけどな」

 明智は丁寧に敵軍の攻勢を説明したうえで尋ね返した。

五つ島から現れたラミア・ナーガ・スキュラ・ギルマンを中心にした魔王軍が、瞬く前に北西部を制圧していったのだという。半水棲であるがゆえに島どころか半島部が瞬く間に占拠され、そのまま大友家の領域を食い荒らしていったという。その頃にはゴブリンやオーガなどの鬼族も加わり、膨れ上がった戦力の前に大友家の遺臣たちは後退を余儀なくされた。本来であれば籠城戦で時間稼ぎしていたのであろうが、大内家も壊滅したことで、名前を挙げる必要が出て来たという訳である。

 

「本当に大丈夫なんですよね? 細川さんは理論的に可能だから口に出したんだと思いますよ。騎乗ゴーレムなら強化個体を倒せるし、雑魚だけならば数が居ても大丈夫。乗ってる人が強いならもっと簡単。でも実際には現地で説得する必要がありますし、その立花夫人が女武将であっても剣士とは限らない事です」

「あれか? ヒントかと思ったら机上の空論だったと。ま、安心してな。思いついた案自体はみんなで考えたやつだ」

 現時点で立てている作戦は、細川武人がくれたヒントに基ずいている。

彼が敵を狭い場所に誘き寄せて、ゴーレムで蹴散らせと口にしたのだ。しかし頭でっかちな理論先行で、実際には不可能な場合というのはよくある事だ。しかもゴーレムに騎乗して技を使いこなすなど、先んで来た用法であり可能かどうか未知数であった。追い詰められて他に方法がない場合ならともかく、救援に向かっている段階で出来る筈だと断言などできはずもない。

 

「ホラ、前からやってる実験があんだろ? ゴーレムで降下して一気に形勢逆転ってやつ。実際に逆転しなかったとしても、元が優勢に戦えるならインパクトだけはあるさ」

「ああ、そういえばそんなのがありましたね……」

「いいねいいね! みんなダメダメ言うけど、ボクは行けると思うんだよね。この戦術はきっと歴史を変えるよー」

 啓治が使おうと思っている作戦は、以前からテストしている降下戦術だ。

その有効性自体は有益性が実証済みであるし、誘き寄せ作戦だけで優位に戦えるように戦略を組んで居れば、新たな戦力が加わるだけでも十分に勝機は高い。しかも飛行船で輸送して敵が攻撃できない高さから降下させ、ゴーレムの戦闘力で薙ぎ払っていく。言葉だけを口にするならば何と浪漫に溢れる事であろうか。

 

「俺らが密談してる間に何かアイデア出た? それが使えるならそいつを試すし、駄目なら……高度を下げるか山の斜面を滑るように使ってもらうっきゃねーな」

「一応は計算しましたよ。飛行船用の浮遊呪文を描いた魔法陣。あれを使うんです。下手したら使い捨てになっちゃいますが」

「あのくらいの魔法陣ならちょちょいのちょいだよ。ボクでも片手間で作れるね」

 啓治が細川と話し合っている間に、明智や佐久間教諭はアイデアを練っていたらしい。

重要になったので、明智彰は板に描かれた魔法陣で可能な強化を端的に説明していく。いわく強化術式の中で浮力の重量増大に絞ったモノで、数分間だけ多くの資材を載せて浮かべて上下することができる。それ以外の何もできず、その重量ですらゴーレムが捉まったら即沈むレベルとのことだ。要するに普段は重い資材を載せるために使い、ゴーレムが降下する時は足が破壊しない程度に重量を軽減してくれれば良いというアイデアである。

 

「残る問題は立花家の武将の中で、独特の戦い方で戦ってくれる方がいるかどうかです。それとそういう方が居たとして、ゴーレムに付ける装備などの調整もし直さないと。島津家と思われたら何御為に努力するか判りません」

「ここで話が元に戻るってやつだよな。ゴーレムを使いこなせとは言わねえが、弱いと意味がねえ。かといって佐久間夫人に影武者やれってのも問題だ」

 作戦案自体は何とかなったような気がする。

ただし、立花家の武将たちが受け入れてくれなければ意味がない。彼女たちを説得するには、島津家の力を借りずに立花家の功績だと判り易くないと意味がないのだ。第一に戦闘力、第二に同時性が必要だろう。そこまでそろえて初めて、第三の、説得できるかどうかに関わって来るのだ。

 

「あら。そういう事でしたら半分くらいの懸念は不要でしてよ? 私は示現流ではなくタイ捨流ですから。確か高橋さんとお呼びしていた方が、同じタイ捨流におられましたわ。ただし……それほどの方であれば自ら操縦して命運を決めたくなるはず。その場合は、私が素直に席を譲れるかと言えば話は別なのですけれどね」

 ここでゴーレムから降りて来た佐久間夫人が会話に参戦する。

彼女が覚えて居るタイ捨流は筑紫島で知られた流派の一つらしい。だから偽装自体は難しくはないとの事である。外装の色彩を島津寄りから立花・高橋家寄りに変更し、家紋の一つも描いて見せれば良いという。ただし、流派的な問題がクリアできたとしても、そもそもの問題が相手の女武将を納得させることである。相手が納得しなければ意味はない。そしてあちらを上に建てれば、こちらのメンツが下になってしまうのも問題であった。

 

「一つ解決したと思ったらまた一つですか。プライドの問題は重要ですよね」

「良くも悪くも我々は武の道を歩んでおります。私は剣士であるがゆえに引けず、あちらは武将として名前を上げる必要があるがゆえに引けず。何とも因果な物ですわね」

 話の先に光明は出て来た。

しかしここに来て、プライドとメンツという問題が出て来たのである。




 第三部も長くなったので、そろそろ締めです。
自壊説得してそのまま戦闘、上手く勝てればゴーレムと飛行船の戦術運用完成。
その次に第四部というか最終章として、魔王軍との戦い+@となります。
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