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スキルカードとポイントは目安に過ぎないが修練は早い方が良い。
同時に何を覚えるかという終着点は重要だ。目の前の『研修』に関わる為には早めに伸ばしておかねばならないが、教師が聞いて首を傾げるような理由や能力ではまずい。だからと言って優等生過ぎては生き残る事も、その先の飛行船時代で船を手に入れることも不可能だろう。
「もしかして……こいつはそういう事なのか? だとしたら納得は出来るが本当に……?」
何を覚えるかを把握し、教師への理由を考えるため図書室通い。
残り時間が少なくなったところで、奇妙な事実に気が付いた。冒険者をしていた時に手に入れていた魔石……魔物から採れる石だが、この時分にはまだまだ儀式的な方法で作成する物だったのだ。それがドロップアウトしたころには運が良ければ手に入る程に入手頻度が高いのだ。おかしいと思うなという方が無理である。
「そういやあ強化個体の目撃頻度や
魔石の入手には歴史と手順がある。
古代王国が滅びた後に最初に魔王軍が訪れ、それを撃退した時の話だ。土地が汚されて居たり、魔物が瘴気を発散していて困ったことがある。そこで二度目の魔王襲来の頃に、土地や魔物から瘴気やら魔力を吸い上げて魔石を作る魔法を完成させたのだ。それが地魔法の代表例の一つなのだが……コレを悪用というか逆用したのではないだろうか?
「事前に魔石を量産しといて魔物に埋め込むと強くなるんじゃねえか? だとしたら事件が起きて一杯死ぬのも、解決後なのに詳細が公表されない理由もバッチリだ。追い出された学生ってのは、こいつを研究してやがったな」
研究好きは人間の特徴の一つであり、ならば堕ちた魔導師が研究して悪い理由はない。
魔王軍に身を寄せれば魔石を作るための瘴気など山ほど手に入る。その上で適当な魔物に埋め込んで、魔石の力をブースターとして使うような実験を行えばよい。幸いにも魔王軍に属するゴブリンやコボルトは多産なので、実験体に困る事も無いだろう。ゴーレムを作る研究所はキメラも研究していたはずだが、似たような技術を使っていると聞いたことがある。コアを埋め込んでシルバーゴーレムやゴールドゴーレムを安価に生み出す技術だそうだ。
古代王国より劣った技術でも、魔物の素材を使いマジックアイテムは作れるようになった。
元は瘴気を吸収するためだった魔石から、魔力を引き出す研究も始まっていた。ならばコレらを組み合わせ、魔石から魔物に力を逆流する技術があってもおかしくあるまい。生粋の魔物ならまだしも、堕ちた魔導師ならばその才能も理由もあるのだから。
「遺跡に隠された部屋を見つけるのは学生の時代でもできるし、何なら盗賊でも雇ってさがさせりゃあ良い。そこから一番ヤバイと思う冒険者なり恨み重なる教師へ奇襲して、後は魔法の効かねえ魔物と量産した強化個体で攻めたらどうよ? そりゃ生き残る方が難しいってもんだ」
想像に過ぎないが全てがつながったような気がした。
量産した強化個体が居れば学生など物の数ではない。闘い慣れた冒険者や元軍人の警備兵を先に殺してしまえば、後はやりたい放題だ。魔法を無効化する魔物がいること自体はレアケースだが知っていた、そいつを連れて来れば強大な魔法を持つ教師が複数人居たとしても殲滅するのは難しくない。手順さえ間違えなければ、多少計算が狂っても問題ないのだから。
「だいぶ見えて来たな。だが相談しても真面目に取り合ってくれるか判らねえ上……じゃあ研修は止めようと言われても困る。てこたあこの陰謀に正面からやりあえってか? 気になる連中だけでなく、キーになる奴らを軒並み助けなきゃならねえぞ……」
問題なのは相手が集団で殺して回ると予測出来てしまった事だ。
最初は無理なのだから最低限でも助けたいという程度であったが、変に可能性が見えてきたことと、抹殺チームを作って虐殺狙いと判ったことが逆に視野と手段を狭めてしまった。仮に四・五人のみを活かすために行動するとして相手がソレを見逃すか? 対策能力を持っていると判った時点で放置はすまい。見つからないように震えて逃げるにしても、四人も五人も居たらいつか見つかってしまうのは間違いないだろう。それならばいっそ冒険者なり軍人を奇襲から守る方が建設的ですらある。
「ダルイ。何が面倒かってパイセンを確保しても絶対に助けに行くってことだ。あ~もう、どうすりゃいいんだコレ?」
助けたい人物の一人である柴田哲章は面倒見が良く高等部の寮監を務めている。
つまり彼のキャリア的にも性格的にも止めても無駄と言う事だ。無理だ絶対に死ぬと何とか言い含めても、寮監だから寮生だけでも助けようとするだろう。そうでなければあれだけ慕われるはずはないし、自分だけ良ければなんて男を教師陣が寮監に選ぶはずはないのだ。
「あの人の覚えてた魔法なんだっけ? より質の高い魔法の武具を作ろうとしてたんだし……光や水じゃねえよな。火魔法で肉体活性や炎の付与ってとこか? ならワンチャンあるか」
火魔法は基本四属性の中で最も攻撃性が高い。
攻撃魔法の威力の高さが有名だが、肉体活性で体力を強化したり、炎の付与で武器の威力を底上げしたりも出来ると戦闘に関して高い適性を持っている。付与魔法の研究を専科にしている男であれば、それらを自作の魔剣に付与することを目指してもおかしくはなかった。と言う事は彼を助けてアタッカーに据えれば、一応は対魔物シフトが可能になる。まあだからこそ、黒幕が能力を知ったら絶対に狙って来るだろうが。
「つーことはあの人をぶっ殺そうとするところで割って入れって? 随分と無茶を言いなさるが手がねえでもないか。できれば高速詠唱……駄目なら防御発動で防げばいい。だけどなあ効率が良い防御魔法って地か光だべ」
基本の魔法以外にも
中でも冒険者や軍人必須と言われるのは瞬時に魔法を唱える高速詠唱や、一部の呪文のみにしか組み合わせられないがコストの安い防御発動だ。これらで敵が使う範囲攻撃魔法なり、白兵戦での致命傷を防げば戦いは楽になる。少なくとも哲章が死ぬ可能性だけはかなり低くなるはずだ。治療魔法の使い手くらいは見繕えるので、かなり生き残る芽が出て来た。問題は啓治が言う様に飛行船操作にはあまり関係のない属性と言う事だが。
「光は格好良いし有効だけど覚えると何もかも狂うんだよな。メインに据えるなら各地を飛び回って魔物狩りのチームを作るくらいでねえと。となると地かあ……そりゃ使い勝手は知ってるが、また同じ魔法かよ」
啓治は生前に地の魔法をメインに覚えて居た。
研究職には遣い勝手が良く、鉱物探知や魔石の作成など有用な魔法がかなり存在する。戦闘においても大地の剣に大地の鎧など作成系の魔法が目白押しだ。魔力で刃を作る光の剣や炎の剣と違い、物理的に作成できるので魔法を無効化する魔物にも強い。それなりの重さを持つのが欠点だが、魔法の武具造りを目指している哲章ならば普通に持てるだろう。問題があるとしたら、飛行船にはあまり役立たず整然と同じコースを辿る事だろうか。
「まあ二系統覚える気だったから地は高速詠唱を唱えられるレベルで抑えるとして、もう一つをメインにする案で行くか? 対抗案としちゃあ風か水の防御系魔法が効くことをお祈りするって事になっちまうが」
防御系の魔法には相性というモノがある。有効かどうかで効果が違うのだ。
烈風の防御は範囲系攻撃を吹き散らすが、実体のある礫や対象指定の攻撃魔法などには弱いし電撃にも弱い。水のベールは一定量を防いでくれるが攻撃を受けるたびに減る上、炎・電撃・カマイタチと言ったメジャーな攻撃魔法に弱いという欠点があった。それら全てに相性が良い光の護りや、同じ減るタイプでも大地の鎧や壁は低レベルでも相当に効果があるのと大違いである。極論を言うと光と地ならば格上相手にも通じるが、水と風では同格相手にも難しいのである。
「他のお仲間に頼るにしたって今回ばかりはタイミングが計れねえし、実際に居るのかどうか研究室に顔出しするってわけにもいかねえ。逆に地魔法を覚えて研究の見学って言うなら、理由も十分に成立しちまう……ダー!!」
事件における有用度と必然性では地魔法の相性は良い。
防御魔法は予めかけて置けるし防御発動もあれば瞬間的に防ぐことが可能だ。高速詠唱があれば瞬時に壁を立てて、相手の移動を阻害しつつ崩れたとしても範囲攻撃を止める事ができる。鉱物探地や魔石の作成の存在を考えれば、『これから研究したい分野の為に使うつもりです』と言えば、有用な魔法を覚え、将来の目標も確かな新入生だと目を掛けてくれるだろう。少なくとも教師に説明するストーリー性にブレは生じない。
ではどうして躊躇うのか? 現地の修理は飛行船に使えるだろうと思う者も居よう。
問題があるとすれば啓治の心のわだかまりというか、かつて芽が出なかった日々を思い出す上に、同じことを何度も繰り返すという徒労が圧し掛かるのだ。
「仕方ねえ。前と同じ道は歩まない、そのための徒労だと諦めるとして今回の人生を良いモノにしねえとな。その意味でも二つ目の魔法は妥協しねえぞ! 水魔法は有用なんだが……回復系と防御系をダブルってのは地味だよなあ。風で加速して白兵戦でもすっか、それとも火で付与を俺もするか?」
悪い思い出を良い思い出に書き換えるため、そう啓治は自分に言い聞かせた。
ならば地魔法をそこそこまで成長させ、研究室に入り浸る理由になるから納得できる。後は組み合わせとしての二系統目次第で、これからの彼の動きも変わって来るだろう。飛行船だけを考えるならば最も有用なのは水魔法をマスタリーまで上げ、消費魔力を下げれば良い。しかしそれでは他人を守る事しか出来ないことになる。水と地の組み合わせは、そういう意味で地味であった。この選択をした場合は、まさに飛行船の為に華々しさを捨てる職人コースと言う訳だ。
「後は専科次第か……こいつも前と同じ付与にすっか、それとも錬金術でも覚えてみるかねえ。魔法メインなら四大に進んで複合魔法ってのも……いや、そこは林のサド野郎だ。同じ林でもクソ爺はまだ我慢できるが、あそこだけはねーな」
火か風にして魔法戦士の路線に走るとして、上級魔法で少し話が変わって来る。
最初から冒険者狙いの者だと上級魔法を覚えるのは難しいが、啓治は魔法学院に通って専科で学ぶことで自然と覚えられる。そこでの使い道が変わって来るので、途中から飛行船研究に移動するにしても影響は低くないだろう。そう思って関連がありそうな研究部門を書き連ねてみる。
『付与魔法』
マジックアイテム研究室。長老の平手は温厚で、体育会系の森はスパルタ。
魔物の素材や魔石の活用技術が進むので、余った時間で自分の魔法に関わるアイテムを製作できる。暇な時間で魔石を作って修練と同時に予備魔力を作れるのが大きい。風ならば空気清浄や、火だと着火などが有用。考慮を外した闇魔法であっても、アイテム収納袋や魔力吸収剤など高値で購入する必要がある物も自分で仲間の分まで造れる。
『呪符魔法』
マジックアイテム別室1。学術主任の林は教条主義。
付与型と違って瞬間的に消費してしまうが、その分だけ大量生産し易い。有用な一部の魔法に絞って生産されているので自由度は低いが、魔法の修練だけならば向いている。
『ゴーレム魔法』
マジックアイテム分室2。文系の佐久間が担当するがあまり良くは知らない。
マジックアイテムとしても長時間の錬成が必要だが、戦闘力のあるゴーレムは屈強。小型の木製ゴーレムくらいならば学生でも作れるので、偵察用くらいにはなる。将来には騎乗用ゴーレムが登場し、巨人はともかくオーガやトロ-ルを過去の存在にする。馬型や飛竜型の個人所有を目指すならば悪くはない。
『四大精霊術』
基本魔法の可能性を追求した研究室。林(弟)はサド野郎、とにかく行く気は無い。
複合魔法と召喚魔法を研究しており、地と火を融合させて金属を融かしたり、水と地で氷河を作ったりと儀式魔法向け。召喚魔法で精霊を呼ぶ系統が将来に完成する。所謂テイマーの魔法型と言えるだろう。
『素材系、錬金術』
素材精練の研究室。丹羽ちゃんはユルフワ、水野はオールドミス。
魔法金属をこれから精練し、様々な分野に活かすようになる。その為にあちこちの研究室と横断的に関わる事になっており、コミュニケーションが割りと重要。マドンナの織田明良先輩も此処に所属。兄の織田信長はさっさと卒業してお貴族様をやってるらしい。
『素材系、鉱物・植物・生物』
とにかく門戸が広いが役に立ち難い。いわゆる滑り止め。
錬金術には関わらない薬物や、解毒薬の類も此処で扱う。
『キメラ、テイマー』
熱田魔法学院では研究室はない。
『不死』禁術。
「センコーで選ぶならダントツで丹羽ちゃんだが……あそこだと競争率高いばかりで動き難いんだよな。ていうか、俺が何をしたいかが重要っしょ。呪符なんぞ修行にもってこいでもちっとも面白かねえよ。やっぱ付与か……ゴーレムで飛行用や監視用を作るくらいかね」
生前は素材で付与と鉱物を扱っていたため、どうしても相性がある。
前回よりも付与を突き詰めるか、錬金術でシナジーを狙うか、あるいはその派生でゴーレムというところだろう。悩むくらいならば付与魔法を覚えて、余った時間を修練を兼ねてアイテム作成に費やすべきだ。
ひとまず結論が出ない為、当面は地魔法を覚えながら高等部での生活に合わせる事にした。
なろう名物の魔石に対し、発生理由とか付けてみました。
魔物は世界を汚染するんだから浄化技術を研究しない訳はない。
そして便利になったら、敵が悪用しない理由も無い感じです。
まあ昔見たドラゴンクエスト・アベルの冒険で宝石モンスターとか言って
財宝を核にして召喚するモンスターからの着想ですが。