二周目の人生は大空に焦がれる【完結】   作:ノイラーテム

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戦い終わって、また新しい戦いの前に

 大宰府撤退戦を終え、人類側有利の状態で敵を陸に引き付けた。

ジリジリと押しつ押されつの戦況には変わりないが、守り易い場所に陣を敷き、援軍を待つことで将来的な展望があるのが大きかった。やがて敵後方に援軍が現れた時、大規模攻勢が始まるだろう。

 

「じゃあ大友家の遺臣たちは統制を取り戻したんだ?」

「立花夫人を中心にまとまってやす。中央が認めないと言い出さない限りは筑紫島は安泰かと」

 あの後、前田啓治たちは暫く戦況を見守ってから薩摩へ向かった。

そこを拠点に筑紫島南部を周回し、いろんな場所でゴーレム運用のテストを行ったのだ。即帰還しなかったのはもちろん立花家に何かあったら協力する気だったというのもある。ある程度の推移を認めて終わり帰還し織田信長に報告したのだ。

 

「んで、いろいろ試しましたが……やっぱ好きな場所で好きな時間に運用できるつーのが一番ありがたいみたいっすね」

「相手にも知恵があるからね。さすがに魔物とはいえ脳筋ばかりって事はそうそうないと思うよ」

 何人かの武将に話を聞くことはあったが、みな意見は似ていた。

ゴーレムの質が上がり攻撃魔法を放つ装置の質が向上しようと、固定では使い場所が限られる。それならばいっそ多少能力には目を瞑っても、好きな場所に投入できる方が良いというのだ。騎乗型ゴーレムに腕の良い剣士を載せれば、強化個体よりも強い事は保証されて居るので猶更である。その話を聞いた信長は、相手に知性があるからこそ対策を打つし、だからこそ対処し易いフリーハンドの手法を求めるのだと結論を付けた。

 

「ともあれ任務ご苦労様。これからどうするの?」

「表向きは尾張と筑紫島を往復して調査って事になりますかね? どっちかというと本命でゴーレム投入する時の実験になると思いやすが」

 信長に労れた啓治は一応の計画を話した。

既に江戸の南が怪しいという話は伝えており、その探索を行う手はずと、そして見つけた時に戦力を整える願いも行っている。当面は本当にそんな場所があるのか確認をする事が先決だが、判ってから戦力を見繕っても遅い。特に飛行船の建造やゴーレムの鋳造などは時間が掛かる為、今の内から用意しておく必要があった。

 

「そういえば佐久間先生は帰るなり報告もせずに何かしてたっけ」

「へい。最初は空飛ぶゴーレムと四つ足のゴーレムどっち作るか悩んでましたが……。俺の予想を聞いたら、いきなり翼を生やした天狗みてえなのを研究し始めました」

 ゴーレム科の佐久間教諭は魔王との戦いに意欲的だった。

自身が作った騎乗用ゴーレムが魔物の中でも強力な種族や、時折生まれる強化個体を次々に倒していくのだ。これならば自分の作った作品が魔王を倒せるかもしれないと奮起するのも判る。その上で陸上の何処かに魔王軍雄拠点があると思っていたのだろうが、啓治の予想では海上の島だという。ならば足が早い四つ足ゴーレムよりは、空飛ぶ翼を持った方が役立つと考えたのだろう。

 

「……人間乗せたゴーレムが飛べるの? そりゃ鳥型が飛ぶのは知ってるけどさ」

「浮遊呪文の出力次第っスかねえ? その辺は飛行船とおんなじになると思うんで……。もし超強力にするためにミスリルやオリハルコン多めにしようと言ったら要注意っすけど」

 重要なのは飛行呪文の限界が決まっている事だ。

人間が唱える分には問題ないのだが、時間以外に術式で拡大が出来ないので、他の物を飛ばそうとすると限界が来る。そこで浮遊呪文を並行して、飛ぶのに問題のない範囲の重量に納めなければならない。問題なのはあまりに浮遊呪文に力量を割いてしまうとゴーレムが強くならないのだ。

 

その辺りを踏まえると比重が軽くなるミスリルや、能力が全体的に高まるオリハルコンの素材比率を高めなければならない。ミスリルは銀を錬成し、オリハルコンは金を錬成した素材である。もしゴーレム全体に使用するとしたら相当量の予算を喰ってしまうだろう。

 

「……ちょっと困るなあ。せめて魔物の領域で鉱山見つけるまで待ってもらうように言わないと」

「越方面で金山銀山が見つかると良いんっすけどねぇ……。まあ実用化したら強いと判ったらの話になるんじゃないっすか? それまではデータだけ採ったら鋳潰して飛行船とかの素材に回すんじゃないかと」

 魔王軍対策に過剰なまでの予算が注ぎ込まれている。

しかしゴーレム一騎の為に同じ重さの銀塊やら金塊を使って良いかと言えばそうでもない。魔王と戦える存在が他に居なければ仕方がないが、現時点では既存の船を大型化したモノやら飛行船を増やした方が良いのだ。騎乗用ゴーレムだってこれから量産して藩属国に配る事になるだろう。それを考えたらあり得ない話だが……。

 

「それはそれで妙に強いゴーレム出来たら残して置きたくならない? いきなり攻めてたり……」

「ありやすねえ。正直、筑紫島ではビビリやした。オレ程度の予想ではありますが、もう数年は何もないと思ってましたからね。その辺は魔王に勝てるかどうか、断言できる性能によるかと」

「魔物は馬鹿じゃないってのがネックだよね。こっちの準備が出来てなきゃ普通に攻めて来るから」

 そこは先ほどの『魔王と戦える存在』になるかどうかが重要なのだ。

この世界では優秀な加護を持ち早期に見つかって育った優秀な戦士や魔法使いが勇者とばれるのだが……そこまで強くなくとも魔王を倒せるならば話は変わってきてしまう。この辺りの心配は国主である信長と、個人である啓治の差であろう。万が一を考えたら強い戦力は欲しいし、それが勇者でなくとも構わないというならば、念の為に取っておきたい。しかし大型船や飛行船の準備は遅らせたくはないというのも実情である。

 

「鉱山を調べに行ってくれるかい? その過程で鉱山を持ってる国主への手紙を輸送して欲しい」

「そういう事なら次は鞆の浦じゃなくて、石見に飛ぶとしやす。その上で……越方面が攻略次第で越前から越後の地質調査っすかね」

 強いゴーレムなら欲しいが、無駄遣いは出来ない。

その解決策は今から手に入る貴金属を予約して取り置きする事だ。強いゴーレムが出来ないならば、大型船なり飛行船を増やせば良い。だが本当に強いゴーレムが作れると判った時に、飛行船の予約だけで精一杯だとしたら惜しいだろう。そして騎乗型でも魔王には届かないが、思索を味めているゴーレムならば倒せるとしたら惜しいでは済まないのだ。

 

「石見か。……あそこは確かだいぶ前に尼子家が滅んでたっけ。それなら遺臣たちの中で立花家と高橋家に相当する家があれば協力すると伝えておいて。こればかりは確約できないから、書面ではなく口頭のみで」

「へい。誰もが立花夫人みたいに周囲が協力してくれるわけじゃありやせんしね」

 貴族家と言う物はふとしたことで栄えたり滅びる物だ。

魔物が多い山岳地帯や海の荒い海岸線などは特にそうで、魔物退治で名前を挙げた家が勃興したり、逆に攻め滅ぼされるというのは良くある話だった。それはそれとして貴族間抗争が無いわけではなく、尼子家は大内家と争った事があったり、気性の荒いものが事件を起こしたりと色々あった。物資を援助するのは簡単だが、宮廷工作に関してはライバルも居るので確実とは言えないのが現状ではある。

 

「堅い話はここまでにするとして、筑紫島で何か面白い事はあったかい?」

「でっけー火山を見たとかすね。あー。富士のお山はもう御覧でしたっけ? うーん。こればっかりは何とも言えませんね。町込みでいろんな理由で良い悪いがあるんで、一概にはいえませんや。温泉の代わりに暖めた砂に埋まるとかですかねえ」

 啓治は現地の情報を信長にレポートとして提出はしていた。

それはそれとして面白いナニカとなると、中々思いつかない。ゴーレムを載せた飛行船の運用試験ともあり、それほど町には寄らなかったので名物料理がどれほどあるのかもそれほど知って居る訳はない。しばらくは信長が『こんな物はあるか?』と問、啓治がそれに答えるような他愛のないやり取りをしてその場を去った。

 

(一周目には無かった筑紫島で起きた事件は驚いたが、まあ人間側の技術も進んでるんだから仕方ねえよなあ。今んところは有利……なんだろうなあ。このまま魔王軍倒して終わっときたいところだ)

 啓治は信長の前を辞してそんな風に思う。

色々と努力はしたし、このまま飛行船の船長には成れそうだ。魔王軍との戦争さえ終われば、面白おかしく……とはいかずとも飛行船を操って面白い人生は送れそうである。その為に後は何が必要かを考えるのであった。




 と言う訳で九州での戦いは終了。
歴史がずれて予定にはない戦いなので驚きはしましたが……。
危険な範囲ではないので胸をなでおろしてる感じ。

あと一話くらい事後譚を入れて、「これで安心だ」となって終わる予定です。
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