二周目の人生は大空に焦がれる【完結】   作:ノイラーテム

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湖に浮かぶ白鳥は人知れず水を掻く

 最終的に前田啓二は風魔法を併用で覚えつつ、付与魔法を専科として選ぶことにした。

風・火・闇という候補の中でずれも同率であったが、よくよく考えたら飛行船実験中やらその後の運用の事故を考えると、空を飛べる方が遥かに安全で便利だからだ。これは付与魔法も同様で、分野が幅広いので整然と同じ研究と被らせなければ良いからである。

 

「柴田さん。古代王国の魔法と比べて現代が劣っている点を挙げなさい」

「世界に魔力が溢れ過ぎたことと我々の能力が及ばないことで、魔法の制御が著しく難しなっていることです。現代の魔法使いは定められたルールを正確に守らなければなりません」

 魔法史や基礎魔法理論の授業は退屈なのか、啓治は上の空で聞いていた。

生前も聞いた内容で、教えている林教諭は教条主義である為に何度も聞かされた内容だ。内職代わりにこれからどんな魔法を覚えるか、どう修練するかを悩みながら、右から左に聞き流していた。

 

「80点の回答だな。できれば結論を述べてから、原因と対策に移りなさい。私の質問への回答であり、拝聴している君の同級生たちの為でもある」

「はい!」

 内容自体は正解でありながら、細かい所にケチをつける。

そういう所が林教諭が嫌われる理由であり、暗記さえできるならば大過なく過ごせると言われている理由である。こういった教師にありがちな事だが、自分の眼鏡に合うか合わないかで修正を加えるのも悪い所だ。もし魔力が振れ過ぎた理由を『当時の魔王を倒すために無茶をした』という遠因まで付け加えて居たら、十点ほど前後したであろう。もちろん眼鏡に合う相手でなければ減点だ。

 

「……前田君。そんなに私の授業が退屈かね?」

「いえ。事前に何度も予習してしまい、前にやった所ではないかと勘違いしてしまった為であります。あらぬ疑いをしてしまい申し訳ありません」

 うわの空であった啓治を鋭く見咎めた林はイチャモンを付ける為に前置きをする。

話を聞いてなかった事を指摘されて平謝りする相手か、それとも言い訳する相手科で追及するレベルが違うからだ。どちらにせよ嫌味を言う事には変わりないのだが。

 

「そうか。ならば今の内容は君のレベルでは不満だろうね。先の質問に対して、現代魔法が抱える行使と理論上の矛盾を述べなさい。この程度は判るだろう?」

「厳密なルールが前例として有用である為です。定められたルールである以上は一つの変更を加えると、全てに影響を与えてしまうので修正前に何重ものチェックが必要になるでしょう。逆に言えば参照できるために、修正する場所を研究することが可能です」

 林が言いたいことは『重要だから真面目に聴け!』ということだ。

それを見越して啓治は林好みの回答を選んだ。『行使と理論上の矛盾』が何を示すかなど色々あり過ぎて悩んでしまう。しかし林好みの命題となると限られてくるので読み易かった。後は生前に研究職時代にやってたことを参照するだけである。

 

「む……。よろしい。ではその矛盾点を解放する方法は?」

「影響を与えない小さな枠組みを用意することです。何例か考えられますが例えば呪符魔法などは事前に用意することができ、消耗品であるがゆえに影響は極めて小さな物になります」

 林好みの回答ではあるが嫌味のつもりだったので面白くない。

加えて言うと啓治の作案ではなく仲の良い先輩からの入れ知恵かもしれない、学生同士にも縦のつながりと言う物はある。そう思ったことで林は質問を重ねた。その上で自分が行って居ない論調だったので仕方なく諦める事にした。

 

「具体例の検証を行ってレポートに出せば授業の免除を認める。君に出席は必要ないし他の生徒に迷惑だ」

「ありがとうございます!」

 魔法学院には時折に飛び級する天才や、すべきことを決め打ちする秀才タイプが居る。

単純に優秀な生徒ならば競わせるのだが、そういう生徒だと悪影響を与えることがあった。それゆえに林教諭は単位を与えて出席免除を言い渡すのだが、それでも嫌味を付け加えることを忘れない。自分が受け持つ呪符魔法の分野を持ち上げられてもこの歳なので、もはや性格というか沁みついた性分であろう。

 

「何よ上手くやったじゃない。でも何か宛てはあるの? レポート出せなきゃ授業を受けらんないだけになっちゃうわよ」

「最近凝ってる魔法があるからそいつにしようかと思ってる。まあ駄目ならお前さんにでも授業内容を尋ねるさ。判らない授業があるなら代わりに見てやるからよ」

「そんな授業あるわけないでしょ。まあいいけどね」

 こんな感じで啓治は気合を入れる授業とそうでない授業の差をつけた。

教師陣も意欲のある生徒の面倒は見たいが、逆にやる気のない生徒は放置したい。後は卒業できるだけの単位を稼げるのならば、勝手にやってくれというスタンスなのだろう。こうして時間を稼ぐことで、修練へ充てる暇を確保したのだ。というわけで教師陣や柴田晶子たちにはちゃんとした理由を作ってある。

 

「ちなみにどんな魔法なの?」

「大地の剣な。呪符魔法の中に武器作成があんだろ? アレと比べてどんな差があるか、呪文を修正する苦労とかまとめてみようと思ってる。付与魔法の専科を選んでいずれは飛行船を作って見てえからな」

 結局、飛行船を作って乗り回すという事を表の目的に据えた。

風魔法に豊富な探知系や地魔法にある魔石造りなど、フィールドワークの為の呪文を覚えて普段はそれを使て修行をするのだ。反復で鍛えられるし、高速詠唱や防御発動とか関係ない呪文なのでゆっくり唱えられる。大地の剣は重いが命中・威力に補正があり、外を歩き回る時に最低限の護身力と判り易い言う理由になるだろうか。

 

「外で動くなら攻撃魔法の方が良くない?」

「一発で倒せるならそうだろうがよ。俺らの実力じゃ獣を追い払うか、山鳥を飯にするのが精々だと思うぜ。前に冒険者の連中に聞いた時に教えてもらった事がある。大地の剣で気になったのは、そいつらから槍やとかハンマーに出来ねえかって聞かれたからでもあるんだけどな」

 実のところ攻撃魔法を素で放っても威力はさほど強くないのだ。

威力を上げたいならば火力術式か、あるいは分厚い皮を貫く貫通術式が必要になる。あるいはレベルそのものを大幅に上げて、マスタリー前後まで上げる必要があるだろう。学生レベルの魔法使いが数発放つよりは、魔法の剣を作成して何度斬りつけた方がコストが易いという事らしい。

 

「そういえばあの呪文って剣だけよね。何でなんだろ」

「何処ででも使えるからだろ? 槍は狭い場所じゃ振り回せねえし、鉄槌なんぞ使うやつは少ないぜ。とはいえ呪文を弄るとなると、ルールを一から見直さなきゃいけねえらしい。火を数字で示せば三番、色彩ならば赤、方角ならば南。そういうのをぜーんぶ書き換えなきゃならねえんだと。自分一人ならそれでもアリだが、子孫や弟子に伝えるなら後々に矛盾が出るとマズイとさ」

 先の設問通り、この世界における現代人の魔法はルールが必要だ。

考えるだけでコントロール出来た古代王国人と違い、理論的に構築して魔法書やらライブラリに登録しておかねば使いこなせない。そういう時に参照する魔法書へ矛盾が出ると様々な術式を組み込めないのだ。

 

そして術式を幾つ組めるかは、ルールの数である。判り易い範囲で言葉・旋律・動作、付与魔法や儀式魔法ならば色彩や配置などなど。仮に三つならば術式も三倍、非常に難しいが八つ組み込めば八倍まで拡大できるとなれば、ルールを重視するのも仕方あるまい。仮にサイコロ二つ分が基本威力として、火力術式で+3、貫通術式で装甲と魔法抵抗-1と仮定しよう。拡大できると出来ないとでは大幅に意味が異なって来る。

 

「あ~。そこでさっきの呪符の話が出るのね? 使い切りだから矛盾が出ても問題ないんだ」

「そういう事さ。作成系の魔法なんざ別に術式で拡大しねえしな。魔法の剣だろうが槍、それも長槍に投擲用の短槍とか好き放題できる。威力は変わらずとも、冒険者なら槍技や槌技を使えるって寸法よ。そりゃまあ中には魔法陣を呪符に組み込むような暇人も居るだろうが、そういうのはもう林の爺とは別種の学派だよ」

 ちなみにこの辺の問答は実際には行ってはいない。

レポートを出す前に話にアリバイ造りとして行くことになるだろうが、殆どは生前にパーティの仲間や臨時に組んだ連中から質問された事である。研究職だったのにどうして出来ないのか長々と説明することになったが、今になって役に立つのだから不思議なものである。




 と言う訳で高等部突入と言うか、研修までに鍛えれた理由造り回。
授業をさぼって修行してる感じですね。
魔法属性は『風5/地3』、高速詠唱・加速・大地の剣・大地の壁を目標。
他に探知系とか魔石作成とか修業を兼ねて先行して覚えてる感じになります。
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