取り敢えず、書けるぐらいには回復したので、今日からまた頑張って行こうと思います。
思い切り休ませて貰いましたからね。
で、ここから作品の話になりますが、今回の『モンスニー療養編』には、お見舞いと称して色んなウマ娘達を登場させようと思っています。
関係が全く無いようなウマ娘でも、適当に理由を考えてから登場させようと画策中です。
お見舞いなので、史実で関係が無くても問題無いですよね?
なので、今回から早速お見舞いゲストが登場します。
最初は、あの人気三人組です。
メジロ家の療養所はメジロ家の敷地内に存在している。
これまでに怪我や病気をした多くのウマ娘達がここで体を休め、その後に再びターフへと舞い戻っている。
過去に一度モンスニーもここを使用した経験があり、マックイーンも以前に使った事がある。
なので、モンスニーにとっては既に勝手知る場所でもあった。
モンスニーが療養所に移ってから数日。
彼女は割り当てられた病室のベッドの上にて静かな時間を過ごしていた。
「早く歩く練習をしたいけど、まだ足の骨がくっついてないからなぁ…」
そうぼやく彼女の右足にはギプスがあり、ある事は愚か動かす事すらままならない。
少し前まではギプスを見る度に偽りの安堵を抱いていたのが懐かしい。
「へぇ…思ったよりも前向きなんだね。なんか安心した」
「え?」
病室にいきなり聞こえてきた声にびっくりして、思わず肩が跳ね上がる。
誰かと思って振り向くと、そこには微笑を浮かべながら病室の扉をコンコンとノックしている制服を着たナリタタイシンの姿が。
「タ…タイシン? どうしてここに?」
「お見舞い。前に言ったでしょ? モンスニーさんには私が、シービーさんには
クリークさんが付く事にするって」
「あー…そんな事を言ったような……」
あの時は色々とモンスニーも情緒不安定で、レースの事以外の話を余りよく覚えていない。
記憶力が良い彼女には割と珍しい事だった。
「けど、よくこの部屋が分かったね。というか、よくここまで来れたね? メジロの屋敷って関係者以外が敷地内に入るのだけでも一苦労する筈なんだけど…」
「最初は私もどうしようかって思ってたけど、じいやさんが『モンスニーお嬢様がお世話になっているチームメイトの方ならば無関係ではありません』とか言って、普通にここまで通してくれた。療養所まで案内してくれたのも、そのじいやさんだし」
「なんだろう…最近になってじいやさんが妙に張り切ってるような気がする…」
別の言い方をすれば過保護…なのかもしれないが、何故かそれを不快に感じていない。
モンスニーの心がそれだけ浄化されつつあることなのかもしれない。
「それで…さ。早速であれなんだけど…実はモンスニーさんに謝らなくちゃいけない事があって…」
「謝る事?」
「うん…ここに来たのって、私だけじゃないんだよね…」
「タイシンだけじゃないって……あ」
なんとなく予想が出来た。
彼女にこんな顔をさせる人物達に心当たりがあるからだ。
タイシンにとって大切な親友であり、同時に競い合うライバルでもある少女達。
きっと『彼女達』のことを言っているのだろう。
「お邪魔します。お元気そうで何よりです」
「モンスニーさ~ん! 怪我の具合はどうなのッ!? ちゃんと治るよね? ね?」
「ハヤヒデはともかく、チケットは五月蠅い! ここが病室だってことを忘れてない?」
はい。いつもの三人ですね。
学内でもトップクラスの実力を誇るウマ娘であり、あの『ナリタブライアン』の実姉でもある『ビワハヤヒデ』。
誰よりも『日本ダービー』に強い思いを抱いている涙もろくも元気なウマ娘『ウイニングチケット』。
そこにナリタタイシンを加えた三人を人々は『BNW』と呼んでいる。
「なんつーか…チケットは本当にぶれないよねぇ…。元気なのか涙もろいのかよく分からない感じが」
「あはは…騒がしくしてごめんなさい」
「ったく……」
「別に私は気にしてないよ。ここは静かすぎるからね。寧ろ、チケットぐらい賑やかな方が丁度いいよ」
ダービーウマ娘になる事を目標としているチケットにとって、その日本ダービーに出場しただけでなく、あのミスターシービーと激戦を繰り広げた末の二着という結果を残したモンスニーはシービーと同じぐらいにあこがれの存在となっていて、よくシービーと二人一緒に色々と話をしていた。
「そうだ。モンスニーさん、お土産を持ってきたのですが、どこに置けばよろしいですか?」
「そこら辺に適当に置いておいていいよ」
「ありがとうございます」
そう言ってハヤヒデが置いたバスケットの中には、何故か大量のバナナが。
嫌いではないし栄養素も豊富だから分かるけど、どうしてバナナのみをチョイスしたのかが分からなかった。
これが彼女なりの気遣いなのかもしれない。
「シービーの方はどんな感じ?」
「モンスニーさんが立ち直った日からずっと頑張ってる。見ているこっちにも伝わるぐらいに凄い気迫だしね」
「そうなんだ……」
シービーはシービーなりに頑張っている。
それを聞かされ、思わず自分の拳に目をやると、僅かだが震えているのが見えた。
武者震いか。それとも打ち震えているのか。
「あれ? そういえば、モンスニーさんが学園にいる時に乗ってた車椅子がどこにも無いね?」
「言われてみれば…」
「車椅子ならもう返したよ。本気で足を治すって決めた時にさ、ずっとこれにばかり頼ってる訳にはいかないと思ってさ。その代りにコレを今は使ってる」
窓際に立てかけてあった松葉杖を持って三人に見せるようにする。
勿論、メジロの療養所で使う松葉杖が普通である筈が無く、材質からネジ一本に至るまで材料を厳選し、片方だけで普通の松葉杖の数十倍の値段がすると言われているとかなんとか。
「成る程…日常的に歩く練習をする為に車椅子から松葉杖に変えた…ということですね。実に合理的です」
「ありがと」
「ですが…この持ち手の所にある謎の引き金は一体…?」
そう。ハヤヒデの言う通り、この松葉杖には本来ならば不要の筈の引き金が何故か設置してあった。
「これ、普通の松葉杖じゃなくて護身の為に改造してあるんですって」
「か…改造とは?」
「このトリガーを引くと、先端からBB弾が発射されます」
「「「エアガンみたいに改造されてるっ!?」」」
「しかも、簡単に暴発しないようにトリガーは二段構造になってるのよね。流石はじいやさん特製の松葉杖だわ」
「これ…あの人が作ったんだ……」
「モンスニーさんの事を考慮している事に感心するべきなのか、松葉杖を魔改造している事に呆れるべきなのか……」
「すっごいねー! なんかギャング映画とかに出てくる改造武器みたーい!」
反応に困っているタイシンとハヤヒデとは逆に、チケットは目をキラキラさせてから純粋な眼で改造松葉杖を見ていた。
この純粋さを真似できるのはハルウララかツインターボぐらいかもしれない。
「ご…ごほん。モンスニーさん、実はウチの妹…ブライアンも貴女の事を気にしていたんです」
「ナリタブライアンね……」
学園に在籍している三冠ウマ娘の一角にしてハヤヒデの妹。
そして、何故かモンスニーの事も狙っていたりするウマ娘である。
どうやら、自分と同じ三冠ウマ娘であるシービーのライバルと言われている彼女を飢えた狼の如く狙っているようなのだ。
本人からしたら過剰すぎる期待なのだが。
「怪我が治ったモンスニーさんのレースを楽しみにしているようでした。『必ずレースを見に行く』と」
「マジか―…」
「そういやシービーさんも言ってたよ。『戻ってきたモンスニーは今までの自分じゃ決して勝てないぐらいに強くなってるに違いない』って」
「うーわー。私に無駄なプレッシャーを与えないでよー。そりゃ勝つ気ではいるけどさ、余計な事を考えずに伸び伸びと走りたいなーって思ってるんだからさー」
父と最後に交わした会話。
それは元トレーナーとしてではなく、親としての願いであり思いだった。
だからこそ、モンスニーは生まれて初めて『好き勝手』に走ってみたいと思っているのだ。
「…ま、だからと言って期待を裏切るような真似もしたくないけどね」
「だと思った。それでこそモンスニーさんだよね。学園に戻ってからは私も全力でサポートさせて貰うよ。いい加減…本気で恩返ししたいと思ってたし」
「私…タイシンに何かしたっけ?」
「したよ。私が伸び悩んでる時に相談に乗ってくれたし、トレーナーに『追い込み』を勧められた時に、追い込みの基本的なことを丁寧に教えてくれたじゃん。モンスニーさんがいなかったら多分、私は今みたいになってない」
「んー…私的には単純に『可愛い後輩が困ってるから先輩らしく手を貸してあげた』だけなんだけどなー…」
これである。
自己評価が低いモンスニーは、自分が無自覚の内に数多くの後輩や同級生たちを助けてきたという自覚が全く無い。
なので、このように恩返しとか言われても本人的には『?』なのである。
「流石に毎日は無理だけど、それでも出来るだけお見舞いには来ようと思ってる。多分、それは私だけじゃないと思うけど」
「だよねー。この間、メジロの子達でモンスニーさんのお見舞いに行く順番とか話し合ってたしねー」
「あの子達はもう……」
自分の事なんて気にせずに、目の前のレースやトレーニングに集中して欲しい…のだが、彼女達の好意を無下にするのも気が引ける。
ここは支障が出ない程度に時間を取らせるのが最善か。
(うーん…この分だと、ルドルフやエアグルーヴ、フジキセキとかも来ちゃいそうな気がする……)
別に賑やかなのは嫌いじゃないし、お見舞いに来てくれるのは純粋に嬉しい。
だけど、同時に自分の為に時間を取らせてしまう事に申し訳なさを感じてしまうのだ。
「眉間に皺を寄せて…どうしました?」
「いや…なんかルドルフとかもお見舞いに来そうな気がして…」
「あぁ…あの会長ならば普通に有り得ますね」
仮に色々と理由を付けて学園に帰らせようとしても、小難しい四字熟語を並べられて簡単に論破されるのがオチだ。
入学して以来、モンスニーは腹芸でルドルフに一度も勝った試しが無い。
「…その時はその時…か」
世の中、時には諦めも肝心です。
誰かがそんな事を言っていたような気がする。多分。
「…なんか小腹が空いたかも。持って来てくれたバナナでも貰おうかしらね」
「いいですとも。はい、どうぞ」
「ありがと。あむ…」
ちゃんと丁寧にハヤヒデが皮を剥いてくれて、そのまま遠慮なくパクリ。
モグモグと口を動かしながらふと思う。
バナナを食べるなんて、かなり久し振りなんじゃないかと。
「…偶には果物も悪くないわねー」
今日から暫くは食後のデザートがバナナになるなー…なんてことを考えながら、その後もBNWの三人との会話に花を咲かせるモンスニーであった。
モンスニーの療養の話とシービーの学園での様子を交互に書ければと思っている今日この頃です。
では、また次回。