ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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休息

「夏祭り?」

 

 夜になり、今回の夏合宿でお世話になっている旅館のロビーのソファでスマホを弄っていたモンスニーに、マックイーンやライアンを初めとしたメジロ家のウマ娘達が話しかけてきた。

 

「そうなんです! なんでも近くの神社であってるらしくて!」

 

 興奮気味にライアンが掲示板に張ってある夏祭りのポスターを指差す。

 それによると、どうやら夏祭りは今日と明日の二日間開催されるようで、数多くの出店などもあるようだ。

 

「折角ですし、モンスニーお姉さまと一緒に回りたいと皆で話していたんです」

「ほら、モンスニーさんって基本的にシービーさんやルドルフ会長とかと一緒にいる事が多いから、偶にはこっちから誘ってみるのもいいんじゃないかなーって思って」

 

 パーマーにそう言われ、ふと今までの事を思い出す。

 確かに、同級生と言うこともあってシービー達と一緒にいる事は多い方なのかもしれない。

 話が合うと言うのもあるのだが、それ以上に彼女達と一緒にいる事が居心地がいいのだ。

 

(…よくよく考えてみると、今までの私って自分自身のことで精一杯で、マックイーン達と話をしたり、遊んだりってしてないかもしれないな…)

 

 現状、自分が現役で走っているメジロ家のウマ娘では最年長になる。

 彼女達に対し、少しでも姉らしいことが出来ていただろうか?

 否。どれだけ考えても全く出来ていない。

 

「そう…だね。いい機会だし、偶には『お姉ちゃん』をするのも悪くは無い…か」

「それじゃあ…」

「うん。私も一緒に行くよ」

「「「「「「やった!」」」」」」

 

 全員が一緒にモンスニーの同行を喜ぶ。

 どうやら、機会を伺っていたのはお互い様だったようだ。

 

「よし。行くと決めた以上は思い切り楽しみますか! まずは『出店三巨頭』は絶対に制覇だね」

「出店三巨頭?」

「モンスニーお姉さま。それは一体何なんですか~?」

「たこ焼き。焼きそば。そして、お好み焼きの事」

「あぁ~…成る程」

「たこ焼きかぁ~…普段はあんまり食べる機会ってないよね~」

 

 なんだかんだ言っても、やっぱりそこは『お嬢様』。

 ちょっとだけ世間とはずれている所があった。

 モンスニーは割と俗世間に染まっている方ではあるが。

 

「んじゃ、早く行こうか。きっと、他の子達も同じようにお祭りに行ってるだろうし」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 こうして、メジロ家のウマ娘全員揃っての夏祭りが始まったのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「「「「「「「おぉ~…」」」」」」」

 

 夏祭り会場の出入り口付近で全員揃って感嘆の声を上げる。

 至る所が電飾や提灯で明るく彩られ、多種多様な出店が軒を連ねている。

 まさに、絵に描いたような夏祭りの光景だった。

 

「やっぱりね」

「何が『やっぱり』なんですの?」

「ちらほらとトレセンの子も来てるって事。さっきチラッと見えたけど、ライスちゃんとウララちゃんが並んで歩いてた」

 

 その二人だけではなく、よく見たら他にも仲のいいメンバー同士で一緒に歩いているのが目撃される。

 

「さーて…どこから攻めますかねぇ~…。やっぱりまずは腹ごしらえからかな? って…マックイーン? さっきから何を見てるの?」

「え? な…ななななななんでもありませんわよッ!?」

「ん~?」

 

 急に狼狽えまくるマックイーンを訝しみ、モンスニーは彼女が向いていた方向に視線を巡らせる。

 そこには、アイスやクレープ、かき氷といった甘味系の屋台が並んでいるのが見えた。

 

「…成る程ね」

「ち…違いますわよッ!? 私は決してデザートが食べたいだなんてことは…」

 

 顔を真っ赤にしながら必死に否定するマックイーンを見て、全員がホッコリとした気持ちになる。

 彼女が甘いもの大好きっ子なのは全員が知っているし、同時に自分の太りやすい体質を気にしている事も知っている。

 

「大丈夫だよマックイーン。屋台の方をよーく見てみてよ」

「ライアン…?」

 

 何を言っているのかと思いクレープの屋台を注視していると、急にマックイーンの目が覚醒したかのようにカッと見開かれた。

 

「カ…カロリー控えめ…? 女性にも大人気…?」

「あぁー…最近はあーゆーのって多いよね。健康ブームの名残って言うか」

「例えブームじゃなくても健康は大事だし、いつの世も普通に受け入れられるけどね」

 

 『カロリー控えめ』という魔法の言葉を目にし、急に他のメンバーの目も輝きだす。

 現役で大活躍しているウマ娘であり、名家のお嬢様であるとはいえ、彼女達も立派な女学生。

 甘いデザートには目が無いのは共通していた。

 

「ま、色々と回りながら見ていこうよ。気になったのがあれば、そこで止まればいいんだしさ」

「モンスニーお姉さまの意見に賛成です。ここで迷っていても時間を無駄に浪費するだけですから」

 

 アルダンの言葉が決め手となり、行き当たりばったり作戦で行くことに決まった。

 そうして、モンスニーを先頭にして夏祭り会場へと入っていくのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「うん。やっぱり、たこ焼きこそ至高にして最強。異論は認めん」

「いや、なんでよ…。確かに美味しいけどさ」

 

 屋台で買ったたこ焼きを分けて食べているモンスニーとドーベル。

 冷ましながら焼き立てを食べているが、ドーベルは横目でモンスニーの事をチラチラと見つつ顔を赤らめていた。

 

(やっぱ…この人って綺麗だよなー…。睫毛とか長いし…)

 

 なんて事を思われているとは考えてもいないモンスニーは、たこ焼きを食べながらもう既に次のターゲットである屋台に目を付けていた。

 

(焼きトウモロコシか……ありね。よし、今度はあれにしよう。焦げた醤油の匂いがここまで漂ってくる…♡)

 

 もう既に口の中は涎でダラダラ。

 気が付けば、たこ焼きは全て食べ終えていた。

 

「モンスニーさん! ドリンク買ってきましたー!」

「おー! ライアンにブライト。ご苦労様」

 

 両手いっぱいにジュースを抱えながらライアンとブライトが帰ってきた。

 実は彼女達には飲み物の買い出しを頼んでいたのだ。

 

「これよこれ! この合成着色料たっぷりのドリンク! これぞ祭りって感じよねー!」

「それだけ聞くと健康に悪そうだけど…でも、こういうのが一番美味しかったりするよね」

 

 色々と言いつつもライアンからドリンクを受け取るドーベル。

 結局、好きなものは好きだった。

 

「はいこれ。お釣りです」

「あー…いいよ。ライアンにあげる。お小遣い」

「えぇっ!? そんな…受け取れませんよ! これ全部モンスニーさんがお金を出してくれたのに…」

「いいのいいの。次期当主として、お小遣いぐらいあげられるようにならないと」

「まぁ…なんて素晴らしい御心遣い…流石はモンスニーお姉さまですわ~」

「いや…次期当主とお小遣いって関係ないでしょ…」

 

 結局、モンスニーに言い包められる形でライアンはお釣りを受け取ることに。

 そのお金は使わずに、そのまま貯金に回したのが実に彼女らしい。

 

「ところでマックイーンとパーマーとアルダンは?」

「あの三人なら…」

「あそこにいる。さっき見てたクレープ屋」

 

 ドーベルの視線の先には、両手にクレープを持って口元にクリームをくっつけて満面の笑みを浮かべているマックイーンと、それを見て苦笑いを浮かべているパーマー。

 そんな二人を眺めつつリンゴ飴をなめているアルダンが並んでこっちに向かって歩いて来ていた。

 

「カロリー控えめ…なんて素晴らしい響きの言葉でしょう…。こんな風にクレープを食べられる日が来るだなんて…夢のようですわ…」

「いやいや。幾らカロリー控えめでも、沢山食べちゃ意味無いでしょ」

「何を言いますのパーマー! カロリーが控えめと言うことは、それだけ多く食べても問題が無いと言うことではありませんの!」

「普段は凄く頭いいのに、甘味関係になるとどうして途端にお馬鹿になっちゃうの…?」

「リンゴ飴…初めて食べますけど、とても甘くて美味しいです」

「こっちはこっちで和やかな空気を醸し出してるし…。なんとなく、モンスニーさんの普段の苦労を少しだけ分かったような気がする…」

 

 完全に苦労人ポジになっているパーマー。

 ライアンと並んで、彼女達こそがメジロ家の数少ない常識人枠なのかもしれない。

 

「マックイーンも楽しんでるようで良かった。あの子ってば責任感が強すぎるから、プライベートでも気張ってそうだったし」

「確かにそうかもですね。遊ぶ時ぐらいはリラックスして欲しかったってのはあります。あたしも、マックイーンのあんな姿を見れて嬉しいです」

 

 ライアンとマックイーンとは幼馴染同士と言うこともあり、よくお互いの事を気遣っていたりする。

 因みに、マックイーンが野球好きになったのは、ライアンが最初に野球観戦に連れて行ったことが切っ掛けだったりする。

 今では、ライアン以上に野球に詳しくなっていたりする。

 

「ところで、お次はどこに行くおつもりですか?」

「あっちにある、焼きトウモロコシの屋台にしようかなって」

「モンスニーさんも割と食べる方だよね…」

「良く食べ、良く走り、良く学び、良く寝る。それが一番なんだよ」

「モンスニーさんが言うと説得力が違うなぁ~…」

 

 実際に『良く食べる』の代表格であるオグリキャップやスペシャルウィークが素晴らしい戦績を残しているので、かなり信憑性のある言葉だった。

 そして『噂をすれば影』が起きる。

 

「オグリさん! 次はあっちに行きませんか!?」

「焼きそばの屋台か…いいな。行こう、スペ」

「ちょ…オグリ先輩にスペシャルウィークさんッ!? まだ食べるつもりなのッ!?」

「いやー…流石はトレセン学園の誇る大食漢の二人だねー」

「言っとる場合かスカイ! このままやと、祭りの屋台全部あの二人に食い尽くされんでっ!?」

「完全に祭りの空気で浮かれてやがる…!」

「あの二人を見ているだけで、お腹がいっぱいになってくるデース…」

「そろそろ止めた方が良いとは思うけど…あの勢いを止めるようは容易じゃないですね…」

「あらあら。オグリちゃんもスペちゃんも、夜になっても元気一杯ねぇ~」

 

 黄金世代に四強の面々。

 普段でも一緒に並んでいれば、かなりの迫力があるメンバーだが、先頭を歩いている約二名のお蔭で祭りの場が別の意味で騒然となっていた。

 

「…これは私達も気合を入れなおさないとね」

「凄いなぁ~…流石はオグリさんとスペちゃん! よし、今日はあたしも食べるぞ~!」

「別にライアンも張り合わなくてもいいから! ブレーキ役が一人減るのって割と大変なんですけどッ!? 私とパーマーに負担が集中するじゃん!」

 

 まだまだ、夏祭りは終わらない。

 

 

 

 

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