ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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お待たせ…したかどうかは分かりませんが、再開します。

2周年の効果は大きいですね。







決意

「いや~…まさか、こんな穴場があるとは思わなかったねぇ~」

 

 モンスニー率いるメジロシスターズがいるのは、夏祭りの会場から少しだけ離れた高台。

 ベンチが幾つか並んで設置してあり、目の前では色とりどりの花火が夜空に咲き乱れている。

 

「ゴールドシップさんから、この場所の事を聞かされた時は正直、半信半疑でしたけど」

「うーわー…ゴルシ信用ねー」

「お姉さまも、私と同じようにゴールドシップさんに付き纏われたら分かりますわ」

 

 マックイーンが言った通り、この場所を教えてくれたのはゴールドシップなのだ。

 屋台がひと段落ついたのか、彼女達の所にやって来て、この場所のことと花火が打ち上がることを教えてくれたのだ。

 

「しかも、餞別にさっき売ってた『ウィンナー焼きそば』まで人数分くれたし」

「それに関しては純粋に嬉しかったですけどね」

「まさか、焼きそばとウィンナーがここまで相性がいいとは思わなかったね」

「とっても美味しいですわ~♡」

 

 花火を眺めながら焼きそばを食べ進めるライアンとドーベルを余所に、ブライトは満面の笑みを浮かべながらプリプリのウィンナーに舌鼓を打っていた。

 

「それにしても…またこうして皆と一緒に夏合宿に来れるとは思わなかったな…」

「モンスニーさん…」

「少し前まで、何もかもを本気で諦めかけてたからね…。ほんと…皆には感謝しかないわ…」

 

 折れかけていた心を、メジロの妹たちが、チームの仲間達が、トレーナーが支えてくれた。

 何より、同じ時代を生きたライバルたちが自分の心を再び鍛え直してくれた。

 だからこそ、彼女は今、この場にこうして立っていられる。

 

「恩返し…しなくちゃねぇ~…」

「モンスニーお姉さま」

「ウマ娘にとっての最大の恩返しと言ったら…」

「一つしかない…でしょ?」

「……そうだね」

 

 アルダン、ライアン、ドーベルの三人に言われてすぐに答えに至る。

 そう…その通り。

 自分に出来る一番の恩返しなんて、それこそ一つしかないじゃないか。

 

「天皇賞(春)…全力で走って、全力で勝つ。ま、遅れながら私も『天皇賞制覇』っていうメジロの目標を達成しますかね」

「私達が、あれだけ必死になっていた目標をそんなアッサリと言ってのけるだなんて…」

「モンスニーお姉さまらしいですわ~」

「私らしいって…」

 

 褒められているのか、それとも貶されているのか。

 いつもの事なので、もう気にしたりはしないが。

 

「…あら?」

「ん? どったのマックイーン」

 

 何かに気が付いたのか、マックイーンが後ろを振り向きながらいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

 

「皆さん。私達はそろそろ、お暇しましょうか」

「急にどうしたのマックイーン?」

 

 いきなりの事に小首を傾げるライアンたちであったが、マックイーンが後ろに向かって指を指し、その先にある光景を見た途端に納得した。

 

「あぁ~…そういうことね」

「確かに、私達はお邪魔虫だね」

「同世代水入らずで…ってことだね」

「では、行きましょうか~」

「モンスニーお姉さま。一足先に失礼致します」

「へ? ちょ…え? どゆこと?」

 

 次々と立ち上がって去っていくメジロのウマ娘達。

 彼女達の謎の行動に、モンスニーは目を丸くしていた。

 

「…マジで何なのかしらん?」

 

 ちゅー…とジュースを飲みながら呆けていると、下の方から複数の声が聞こえてきた。

 物凄く聞き覚えのある声たちが。

 

「こんな場所にいたんだ。探したよ」

「へー…良い所を知ってるじゃねぇか」

「ここなら花火もよく見えるね」

「わぁお…」

 

 マックイーン達と入れ替わるようにやって来たのは、ミスターシービーやカツラギエース、ニホンピロウィナーの三人だった。

 

「やっほー」

「や…やっほー…」

 

 まさか、彼女達も夏祭りに来ているとは思わなかったモンスニーは柄にもなく固まってしまう。

 そんな事などお構いなしと言った感じで、三人は堂々とベンチに座ってきた。

 

「あれ? この面子で来るって事は、インターリニアルはどうしたの?」

「あの子なら、合宿所にいる」

「へ?」

「調子に乗って、夏祭りの屋台で食べすぎたんだってよ」

「あの子、すっごい生真面目だからね~。上手な羽目の外し方を知らないんだよ。きっと」

「あはは…マジかー」

 

 まさか、あのリニアルがそんなお茶目な事になっていようとは。

 なんだか今まで以上に可愛く思えてきた。

 

「…で? どうしてここに? つーか、誰からこの場所の事を聞いた?」

「「「ゴルシ」」」

「デスヨネー」

 

 最初から、この場所の事を知っていたのはゴルシのみ。

 と言うことは、シービー達のこの場所を教えたのも必然的にゴルシと言うことになる。

 

「偶には、プライベートでゆっくりとモンスニーと話そうと思ってさ」

「いや…カッちゃんやピロちゃんはいざ知らず、シービーとは割と沢山話してると思うんだけど…」

「そだっけ? まぁ、そんなのは今は良いじゃん」

「お前な…」

 

 モンスニーに負けず劣らずのマイペース具合に呆れるカツラギエース。

 熱血気質な彼女には、どのノリがイマイチ理解出来ていない。

 それでいて、二人揃って非常に高い実力を秘めているのだから質が悪い。

 

「モンスニー…トレーニングは順調?」

「ま…ボチボチって感じ。そっちは?」

「こっちも。まだ…モンスニーの『幻影』には一度も勝ててないんだけど」

「その言い方やめてよー。まるで私が生霊になったみたいじゃん」

「夏だから幽霊話ってこと?」

「そうじゃねぇだろ…」

 

 そこで四人がドッと笑い出す。

 どうしてここで笑ってしまったのかは、本人達もよく分かっていない。

 でも、何故か面白かったのだ。

 

「エースとピロウィナーはどんな感じ?」

「順調だよ。いつでも、お前ら二人をぶっちぎれるぐらいにはな」

「私もエースちゃんと同じぐらいには順調だよ。少なくとも、今のところはこれといった問題は出てない…かな?」

 

 不敵な笑みを浮かべるエースに、微笑みながらも力強い目を秘めたピロウィナー。

 二人とも、モンスニーやシービーにとってこれ以上ない強敵だ。

 だからこそ分かる。

 彼女達の仕上がり具合が。

 

「今度こそ…お前ら二人にリベンジしてやるぜ」

「え? シービーだけじゃなくて…私も?」

「あったりまえだろうが! 忘れたとは言わせねぇぞ! 皐月賞と日本ダービーの時の事をよ!」

 

 忘れてなどいない。忘れる筈もない。

 シービーとモンスニーのライバル関係が始まった運命のレースなのだから。

 

「あの時…アタシもピロウィナーも、お前達二人に惨敗した。シービー一人だけなら、まだ我慢できた。けど、あの時…アタシ等はシービーとモンスニー…お前ら二人に大負けしちまった。リニアルの言葉じゃねぇけどよ…あの二つのレースは殆ど、お前達が全体の流れを独占していた」

 

 最後尾からの二人揃ってのごぼう抜き。

 気が付いた時にはもう、彼女達は自分達の遥か前方で一着争いをしていた。

 自分達の事なんて眼中にすらないと言わんばかりに。

 

「だからだろうな…アタシもピロウィナーも、そしてリニアルや他の連中も、全員が『打倒シービー&モンスニー』を掲げてるんだよ」

「えぇ~? シービーはともかく、私まで打倒されるの~?」

「いや~…モンスニーも十分に打倒される側でしょ~」

 

 一番傍でモンスニーの実力と恐ろしさを体感したシービーだからこそ言える言葉。

 未だにシービーの中では、モンスニーこそが最強にして最大の壁なのだ。

 

「まぁ…誰が相手であっても、私のやることは全く変わらないんだけどね」

「と言うと?」

「全力で走って、全力で楽しんで、全力で勝つ。それだけ」

「「「!!!」」」

 

 モンスニーの雰囲気が変わった。

 いつもの飄々とした彼女じゃない。

 そこにいたのは『メジロ家のお嬢様』ではなく、歴戦のウマ娘『メジロモンスニー』だった。

 

「へ…へへ…なんだよ…お前も『そんな顔』が出来るんじゃねぇか…」

「うん…ちょっとビビった…」

「ひど。っていうか、『そんな顔』って?」

「貪欲なまでに『勝利』だけを狙っている獣のような顔…ってことでしょ?」

「ピロウィナー…分かってるじゃねぇか」

「獣って…」

 

 流石に心外な言葉だった。

 普通に『やる気』になっただけだというのに。

 

「それぐらいじゃねぇと、こっちも勝ち甲斐ってのがねぇからな」

「ん~? 一着は譲らないでござるよ~?」

「それは皆一緒でしょ?」

「その通り」

 

 真剣な顔になった四人は、拳を握りしめて軽くコツンとぶつけあった。

 

「「「「勝つのは私だ」」」」

 

 それは、最強のライバル達への宣戦布告であると同時に、自分自身へと言い聞かせた言葉でもあった。

 

 こうして、今年の夏は静かに過ぎて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 トレセン学園 校門前

 

 その黒い髪を風で靡かせながら、一人のウマ娘が優雅に立っていた。

 

「…久し振りね…ここに帰ってくるのは」

 

 校舎を見上げるその瞳には、全身から溢れ出る優雅さとは対照的に、燃えるような闘志が燃え盛っていた。

 

「お嬢様」

「ばあや。『お姉さま』の映像は撮影できたのかしら?」

「はい。こちらにございます」

 

 ばあやと呼ばれた人物からタブレットを受け取り操作する。

 そのディスプレイに、一人のウマ娘がジャージ姿でターフを走る姿が映し出される。

 

「モンスニーお嬢様の足は完全に完治した模様です」

「そうみたいね。しかも、ただ完治しただけじゃない。これは…」

 

 映像を見つめる彼女の口元に笑みが零れる。

 優雅なようであり、同時に恐ろしさも感じるような笑みを。

 

「この走り…間違いないわ。フフ…やっと…やっと『目覚めて』くれたのですね。モンスニーお姉さま」

 

 その感情は『歓喜』。

 普段の彼女を知る者が見たら卒倒するような光景だ。

 

「あのミスターシービーと互角以上に渡り合ったのは決して偶然なんかじゃない。当時からもう既に『片鱗』はあった。最上の下地があったからこそ、お姉さまは無意識の内に『扉』の前に立ち、ほんの僅かではあるけど開いてみせた」

 

 タブレットの映像を消し、それをばあやへと返す。

 改めて校舎を見上げ、彼女は腕を組んだ。

 

「ようこそ…『こちら側』へ。いや…違うわね。あの方は最初から『こちら側』にいた。本人が気が付いていないだけで。だから、この場合はこう言うのが適切ね」

 

 風が吹く。

 乱れる髪を抑えながら、彼女は静かに呟いた。

 

おかえりなさい(・・・・・・・)。この日が来るのを、この時が来るのを、この瞬間が来るのを、私はずっとずっと待ち続けていた」

 

 風が止み、彼女は校舎へと向かって歩き出す。

 優美な令嬢ではなく、一人の闘志溢れる戦士として凱旋する。

 

「モンスニーお姉さま。アナタに勝つのはシービーでもなければルドルフでもない。勝つのはこの私…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メジロラモーヌよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっと夏の話が終わるんじゃよ。

余談ですが、カツラギエース実装に伴って、これまでの彼女の台詞を全て修正しておきました。



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