ちょっとしたネタも入れたり、もしかしたら別作品とクロスしている可能性も…?
特に特別な事がある訳でもない、ごく普通の平日の放課後。
モンスニーは食堂に一角に座って、のんびりとした時間を過ごしていた。
ただ一つだけ特別な事があるとすれば、それは彼女と向かい合うように一人のウマ娘が座っている事だ。
「…モンスニー先輩を尊敬するが故に、恥を承知の上で御相談します」
「はいはい。一体何を悩んでいるのかな? ヤエノちゃん」
真剣な表情でモンスニーと話しているのは、格闘技を嗜んでいるウマ娘『ヤエノムテキ』。
普段からも非常に真面目で闘争心に溢れた彼女の悩みを聞くべく、モンスニーは最上級生としての余裕のある表情で対応する。
「実は…その…最近、可愛い猫の動画などにハマっておりまして…」
「へぇ~…いいんじゃない? 私も好きよ?」
「そ…そうなのですか! あ…こほん。失礼」
一瞬だけ、同好の志を見つけて興奮しかけるヤエノであったが、すぐに冷静さを取り戻す。
この辺も武道を嗜んでいるが故なのだろうか。
「それで…ですね。ハマリ過ぎるが故に最近、練習などに集中出来ない事が多くなってしまいまして…くっ…情けない…! これでは金剛八重垣流の繁栄など夢のまた夢…!」
可愛らしい悩みかと思ったら、なんか急に空気が重くなる。
本人的には真剣に悩んでいるのだろう。
そんなヤエノを見て、モンスニーは顎に手を当ててから『う~ん』と唸る。
「もういっそのこと、思い切り可愛いのに囲まれてみれば?」
「へ? 可愛いのに囲まれる?」
「そ。動画だけで済ませているから却ってモヤモヤするんじゃない? 恥も見栄も外聞も全てかなぐり捨てて、一日の全てを自分の好きなものに費やす。世の中には、そういうストレスの解消法もあるもんよ?」
「い…一日の全てを…! で…ですが私は…」
「本当に強いアスリートってのは、公私の切り替えも非常に上手なのよ。ルドルフなんかがその最たる例ね」
「あの、普段から常に凛としているルドルフ会長が…?」
「そ。ああ見えて、実はルドルフのプライベートってかなりはっちゃけてるわよ? 休みの日なんかはよく、お笑い芸人のライブを見に出かけてるし」
「お笑い芸人のライブッ!?」
「うん。前に私も一緒に連れて行かれたことがあるし。意外と面白い趣味があったりするのよ」
「知らなかった…」
誰もが尊敬する生徒会長の意外な顔。
彼女ほどの絶対的強者でも、そんな趣味を持っている事を知ったヤエノは、自分も時には全力の息抜きをしてもいいのではないかと思い始める。
「そんなヤエノちゃんに朗報でーす。はいこれ」
「チラシ…? こ…これはっ!?」
モンスニーが取り出した一枚のチラシ。
それは、新装開店の猫カフェのものだった。
「今度、駅前に新しく猫カフェが出来るんだって。試しに行って来たら?」
「ね…猫カフェ…! 今までずっと、行きたくても行けなかった至高の楽園…それがすぐ近くに出来ると言うのか…!」
震える手でチラシを受け取り、普段の仏頂面から一瞬で歳相応の少女らしい笑顔に変わる。
「どうせなら、フウウンサイキちゃんでも誘ってみたら? 同じ格闘技を嗜むウマ娘同士で親交を深めるって意味で」
「フ…フウウンサイキさんを!? 一緒に来てくれるでしょうか…。あの人も色々とお忙しいでしょうし…」
「別に、断られた時は断られた時でいいじゃない。ダメ元で誘ってみれば?」
「やる前から諦めてはいけない…か…! 分かりました! 試しに誘ってみます! 前々からフウウンサイキさんには『流派東方不敗』の話を聞いてみたいと思っていたので!」
「そっかそっか。それはなにより」
「やっぱりモンスニー先輩に相談して正解だった…本当にありがとうございました!」
キビキビとしたお辞儀をしてから、ヤエノはスキップでもしそうな勢いで食堂を後にした。
そんな様子を密かに見ていたウマ娘が一人。
「おやおや…そこにいらっしゃるのは次期メジロ家当主のメジロモンスニーさんじゃあありませんか」
「あらシリウス。そっちも食事?」
「まぁな…って、普通にスルーしてんじゃねぇよ。後輩の悩み相談か?」
「うん。あんな真剣な顔をされたら無下には出来ないでしょ」
「その気持ちは分かるがな…つーか練習はどうしたよ?」
「今日は普通にお休み。根を詰め過ぎても意味ないし。今の私はデリケートですからね」
「自分で言ってちゃ世話ねぇな」
「と言う訳でシリウス」
「なんだ? って…うわぁっ!?」
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・・
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「…おいモンスニー」
「何かね助手くん」
半ば無理矢理に近い形で、シリウスはモンスニーの隣に座らせられていた。
パッと見は確かに助手のように見える。
「誰が助手だこの野郎」
「別にいいじゃん。どーせ暇だったんでしょ?」
「それは…」
確かに暇ではあったが、だからと言ってモンスニー相談室の助手をする事とはまた別の話だ。
少なくとも、シリウスはそんなつもりで食堂に来てはいない。
「なんて言ってる間に次の子が来たし」
「マジかよ…って、ブライアン?」
なんと、悩み相談にやって来たのはまさかのナリタブライアンだった。
「モンスニー…少しいいだろうか…」
「どったの? なんか落ち込んでるっぽいけど」
「もしかしたら私は、ヒシアマ姐さんに嫌われたのかもしれない…」
「どうしてそう思ったの?」
「最近…食事に野菜を一杯入れてくるんだ…」
「「あー…」」
ブライアンは大の野菜嫌い。
これはトレセン学園でもかなり有名な事だった。
「いやそれ…寧ろ好かれてるだろ」
「なんだとっ!? それはどういう事だシリウス!?」
「肉ばっかじゃ絶対に栄養が偏るだろうが。それに、お前の野菜嫌いも克服させてやりたい。だから、心を鬼にして敢えて野菜を入れてるんだろ?」
シリウスからの意見に、ブライアンは目から鱗が落ちたかのような気持ちになっていた。
まさか、あの大量の野菜混入にそんな意図があったとは。
「そうか…私は姐さんに嫌われてはいなかったんだな…」
ヒシアマゾンの真意を知り、安堵した表情になったブライアンは二人に感謝の意を述べると、静かに食堂を後にした。
「ふーん…意外と相談できてるじゃない」
「うっせ。私は思った事を口にしただけだ」
「はいはい。あ、間髪入れずに次の子が来た」
「またかよ……あ?」
やって来たのは、さっきの話に出てきたヒシアマゾンと、ブライアンの実姉であるビワハヤヒデの二人。
普段では決して見られない意外な組み合わせだった。
「突然ですみません。モンスニーさん。実はアナタに御相談したい事がありまして…」
「ブライアンの野菜嫌いを克服させるにはどうしたらいいと思う?」
さっきからのこれな展開に、モンスニーとシリウスは揃って目が点になった。
・・・・・
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その後も二人に相談事を持ってくるウマ娘は後を絶たなかった。
ここからはダイジェストでお送りします。
「あら。スペちゃんにオグリちゃん。どしたの?」
「実は私達…商店街の料理店の殆どのお店から出禁にされてしまって…」
「どうしたらいいか困ってるんだ…」
「完全に自業自得だろうが。ちっとは自重することを覚えろ。それと…」
「「とっととトレーニングに行って、その大きなお腹を引っ込めてこい」」
「うわぁ~ん!! モンスニーさぁ~ん! シリウスさぁ~ん!! 助けてくだサーイ!! ヘルプミー!!」
「待ちなさーい…エールー…?」
「「お出口はあちらになりまーす」」
「ソッコーで見捨てられたぁッ!?」
「ちょっと聞いてくださいよモンスニー先輩! スカーレットの奴が!」
「違うんですシリウス先輩! ウオッカの方が先に!」
「「お幸せに」」
「「なんでっ!?」」
「聞いてよモンスニ~! かいちょーがボクの相手をしてくれないんだよぉ~!」
「「生徒会の仕事中に突撃するのが悪い」」
「うぇ~!?」
「聞いてくださいまし、モンスニーお姉さま! この間の合宿の時に行った夏祭りで『カロリー控えめ』と書かれていた屋台を食べ歩いていたのに、何故か後で体重を調べたら増えていましたの! これって完全に詐欺ではありませんのッ!?」
「いや…幾らカロリー控えめでもさ…」
「それを全部帳消しにするぐらいに食ったら意味無いだろ…」
「そんなぁっ!?」
「モンスニーさん! 風水に興味ってないですか!?」
「うーん…リッキーちゃん? もうそれ相談じゃなくて勧誘になってるからね?」
「根本から間違ってるじゃねぇか…」
「シラオキ様から、今日はモンスニーさんに相談をして貰うのが吉と言われましたので来ました!」
「シラオキ様…せめて相談の内容ぐらいは指定して欲しかった…」
「もう相談室じゃなくなってきてるな…」
「モンスニーさん…シリウス…会長のあのダジャレをどうにか出来ないでしょうか…」
「ごめん…エアグルーヴ…」
「それが出来たら苦労はしてねぇよ…」
「そこをなんとかっ!?」
やがて、噂を聞きつけてウマ娘だけでなく、トレーナー達まで相談にやってくるようになった。
「沖野さん? どうしたんですか?」
「いやな…うちのチームの奴等の食費…どうにか出来ねぇかなって…。給料の殆どがあいつ等の食事に消えててな…最近はもっぱらカップ麺生活よ…ははは…」
「いや…そう言うのは理事長に言えよ…。なんで生徒であるウチらに言ってくる?」
「あ…樫本さん? これまた珍しい…どうしたんですか?」
「…どうしたら…もっと体力を付けられるのでしょうか…」
「普通に鍛えるしかないのでは?」
「それしかねぇよなぁ…」
「ですよね…」
((なんか哀れになってきた…))
「あのー…ちょっといいかな?」
「タキオンちゃんのトレーナーさん?」
「どうしたんだ?」
「…タキオンの作った薬を飲んだ時から、ずっと感情が高ぶると体がぼーっと光るんだ…まるで漫画だろ? どうにか出来ないかな?」
「「今すぐに病院行け」」
「だよなぁ…」
「まさかとは思うけど…五感が無くなったりしてないよね…?」
「後で黒ずくめの復讐鬼になるとか止めろよ?」
「少しいいか」
「わぉ…今度は黒沼さんだ。なんですか?」
「なんか最近、いつにも増して真島の兄さんから喧嘩を吹っ掛けられるんだが…」
「真島って…タマちゃんのトレーナーさんか」
「そんなの…」
「「普通に拳で解決してください」」
「矢張り、そうなるか…」
「ちょっと聞いて~な~! きりゅ…じゃなくて黒沼ちゃんが最近、付き合い悪いんやけど…どーしたらええんやろか?」
「「今度はアンタですか」」
「しゃーない。名前がよう似とる桐生院ちゃんの方にでも行ってみるか~」
「「それだけはやめてあげて!?」」
「少し前から、真島さんからストーキングされるようになったんですけど…」
「「ごめんなさい」」
・・・・・
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・・・
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・
一通りの相談を終えると、外はすっかり夕方となっていた。
「お前…いつも、あんだけの人数の相談を受けてたのかよ…普通にすげぇな…」
「そう? 誰かの話を聞くのって意外と面白いよ?」
「ふーん…そういうもんかね…」
一緒のテーブルでモンスニーとシリウスが、まるで仕事終わりのOLのような雰囲気を醸し出しながら会話に花を咲かせる。
その光景を遠くから見ていた一人のウマ娘に戦慄が走る。
「なん…だと…?」
その名は『アグネスデジタル』。
ウマ娘を誰よりも愛するウマ娘。
(モンスニー×シリウスのカップリング…だと…!? 今までにも『モンスニー×シービー』本や『モンスニー×ルドルフ』本は書いたことがあったけど…この組み合わせは完全に未知!!)
瞬間、デジたんに電流が走る!
「これはもう行くしか…否! 書くしかない!!」
決断するや否や、デジたんは自身の持ち得る最大速度で寮の部屋まで走って帰った。
この時の彼女ならば、有マ記念だろうが天皇賞だろうが楽勝だったに違いない。
凄まじい勢いで部屋まで戻ってきたデジたんに、同室であるアグネスタキオンも驚きを隠せない。
「おやおや…そんなに慌てて一体どうしたんだい?」
「驚きの光景を目撃してしまいまして! この興奮が消え去らない内に形にしたいと思いまして!! 暫しの間、デジたんは『修羅場モード』に突入しますが、どうかお気になさらないでください!!」
「ふむ…まぁ、君が何をしようがコチラとしてはどうでもいいが…ま、精々頑張りたまえよ」
「はい!!」
その後に出来上がった『モンスニー×シリウス』本は、この年の冬コミにて僅か一時間で完売すると言う大快挙を成し遂げることになるのだが…これはまた別のお話…。
この作品にしては珍しくネタを盛り込みました。
日常回って大事ですよね。