ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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なんか、カツラギエースの育成シナリオでメジロモンスニーの実装が示唆されるような事があったと噂に聞いたんですけど…それに対して私はなんて反応すれば?








舞踏

 本日は走りの練習は休みにし、モンスニーとシービーはある場所に向かっていた。

 

「へー…ご両親から電話があったんだ」

「電話って言っても、別に何か特別な話ってわけでもないんだけどね」

「それって、もしかしてー…」

「そ。いつもの惚気話。ほーんと、困っちゃうよねー。もう何回聞かされてきたことか」

「んで、今回はなんて?」

「『この間、美容院に行ってきたんだけど、パパが一瞬で違いに気が付いてくれたのー♡』…だってさ」

「うわぁ…」

 

 本当に些細な話だった。

 それを話す為だけに娘であるシービーに電話をしてきたかと思うと、なんだか胸焼けがしそうになった。

 

「因みに、たったそれだけの話題の筈なのに、どうしてか1時間も延々と聞かされた」

「普通にドン引きだわ。それ、一度でいいからちゃんと言った方が良くない?」

「言った。言ったけど、次の日には普通に忘れてた」

「なんじゃそりゃ」

 

 愛の力は偉大とはよく言うが、偉大すぎるのも考えようだった。

 もし結婚したら、自分の子供に辟易されないような親になろうと決めた。

 

「にしてもさ、今日は珍しいよね。まさか、あのカッちゃんからお誘いを受けるだなんてさ」

「確かにそうだね。いつもはアタシの方が誘う側なのに」

 

 実は、彼女達が走りの練習を中止してまで何処かに向かっているのは、カツラギエースから誘われたからだった。

 別に誘われること自体は全然構わない。

 トレーナーである大久保からも、今日は走りの練習は休みと通告されているから。

 体を休ませるとかの目的ではなく、単純に今回は彼の方に急用が出来てしまったのだ。

 つまり、今回の練習中止は本人達的にも突発的な事だった。

 なので、こうして用事が出来るのは寧ろ、願ったり叶ったりな状況だったりする。

 

「なーんて話してる間に着いたね。うわー…ここに来るのも久し振りだなー」

「モンスニーからしたらそうかもね…ダンスレッスン場」

 

 そう。二人がやって来たのはウマ娘達がダンスの練習をする為に利用するレッスン場。

 本場と殆ど同じ造りになっていて、壁の一つが全面鏡張りになっている。

 嘗てはモンスニーも、この場所でよくウィニングライブに向けてのダンスレッスンをやっていたが、怪我をしてからは全く近づかなくなり、復帰してからも走りの練習に集中していたせいか全く訪れていなかった。

 

「んじゃ、とっとと入りますか。おじゃましまーす」

「まーす」

 

 いつもの調子で中へと入る二人。

 室内にて待っているであろうカツラギがどんな反応をするのかと思っていたら…。

 

「やっと来たか二人とも。待ち侘びたぞ」

「…あれ? ルドルフ? にゃんで?」

 

 待っていたのは何故かルドルフだった。しかもジャージ姿で。

 

「いやいやいや。ちゃんとあたし等もいるし」

「あ…カッちゃん。それにピロちゃんもいるんだ。やっほー」

「やっほー」

 

 完全に出鼻を挫かれたことで地味に調子が狂ったカツラギと、彼女と並ぶように立っているニホンピロウィナー。

 結局、いつもの仲良し五人組が勢揃いしたのだった。

 

「つーか、あたし達を呼んだのってカツラギだよね? どうしてルドルフ達も一緒なの?」

「それは…」

「こいつ等もあたしが誘ったからだよ」

「カッちゃんが?」

 

 あのカツラギが皆を率先して呼び出すとはこれいかに。

 もしや、明日は雪でも降るのだろうか。

 それとも、何か良くない事が起きる前触れか?

 

「おいこらそこ。変な事を考えてねぇだろうな」

「「ギクリ」」

 

 ばれた。

 

「別に特別な意味はねぇよ。偶にはモンスニー達と一緒に練習するもの悪かねぇかって思っただけだ。それに…」

「それに?」

「モンスニー。お前、復帰してから一度もダンスの練習もボイトレもしてねーだろ。そんなんでウィニングライブどーする気だよ」

「うん。それは割とマジで忘れてました。っていうか、カッちゃんは私がセンターに立つって思ってくれてるんだ」

「ふん…アタシ等が一緒の時ならいざ知らず、他の連中相手なら普通に勝つだろ。特に最近のお前は、色々と騒がれてる後輩共にも全く引けは取ってねェ。寧ろ、本気でやったら3~4バ身ぐらいは引き離して勝っちまいそうだ。この間やったっていうアルダンとの併走という名の模擬レース…もう学園中に広まってんだゼ?」

「うぇ…マジ?」

「マジだ。なぁ?」

 

 モンスニー的には、別に模擬レースのつもりで走った訳じゃない。

 可愛い妹との楽しい交流のつもりで走ったのだが…まさか噂になっているとは。

 

「アルダンの奴はまだまだこれからとはいえ、もう十分に一線級の実力は兼ね備えてる。それを普通に圧倒するとか…アルダンの同期の連中が聞いたら卒倒しちまうぞ」

「そー言われてもな~…」

 

 実際、アルダンとの一件を後で聞いたクリークは、珍しく目を見開いて驚いていた。

 完全にいつもの母性は吹き飛んでいた。

 

「ま、それはそれとして」

「置いておくんだ」

「話逸れちまうからな。兎に角、偶にはこっちの方も練習しろって事だよ。でも、モンスニーだって久し振りだろうし、そんな時に一人でってのもあれだろ? だから誘ったんだよ」

「なーるほど?」

「疑問形やめれ」

 

 つまり、これはカツラギなりの親切心ということになる。

 シービーやルドルフと同様に、カツラギとも割と長い仲であるが、こうして彼女から何かを誘ってきたのは初めてかも知れない。

 そう思うと、なんだか急にホッコリとした気分になった。

 

「どした?」

「いや…猛獣が心を開いた時の動物園の飼育員さんって、こんな気持ちなんだな~って思って」

「誰が猛獣だコラ」

 

 性格的には猛獣に近いかもしれない。

 だからこそ、より一層ほっこりした。

 ついでに言うと、一緒にいるシービー、ルドルフ、ピロウィナーもホッコリとした表情になった。

 

「おいこらそこ。ホッコリ顔の連鎖現象やめい」

「連鎖なら、四人がホッコリした時点で消えちゃうね~」

「お前らはぷよぷよか」

 

 因みに、この五人だとパズルゲームはルドルフが一番強かったりする。

 二番目はモンスニーで、三番目はピロウィナー。

 いつもシービーとカツラギの二人は最下位決定戦をやっている。

 

「んなことよりも、とっとと練習始めるぞ。使える時間も限られてるんだしよ」

「ハーイ。そんじゃ、まずはいつもの柔軟運動から始めますかね」

「その後はー…そうだな。取り敢えず『winning the soul』のリズムに合わせて踊ってみてはどうだ?」

「それがいいかもだねー。今のモンスニーがどれぐらいなのか確かめてみる必要もあるしねー」

「一理あるね…それでいこうか」

「さんせー。ってことで、シービー柔軟手伝ってー」

「はいはい。まずは何からする?」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「「「「「……………」」」」」

 

 柔軟を終えて、ルドルフの言った通りに曲に合わせて一通り踊ってみた。

 モンスニーにだけ踊らせるのもあれなので、皆で一緒に踊ってみたのだが…。

 

「なんと言いますか…あれだね。最初は正直、不安な部分もあったんだけどさ…思っているよりも身体って覚えているもんなんだね…。曲を聞いた途端、自然と身体が動いてたわ…」

「そう…みたいだね。こっちもビックリするぐらいに良く動けてた気がするよ」

「どれだけ療養していても、体に染み付いたリズムってのは消えないってことか。そうでなくちゃ誘った意味がねぇよ」

「だとしても普通に凄かったぞ? 今回はモンスニーをセンターにして踊ったが、こっちとしても非常に踊り易かった気がする」

「ルドルフの言う通りだよ。密かに練習してたんじゃないかって言われても違和感ないと思う」

 

 曲の最後の決めポーズのまま会話をする五人。

 傍から見ていると、色んな意味で凄い光景だった。

 

 そして、この五人と言う錚々たる面子が一緒にダンスの練習なんてしていれば、当然のようにそれを何処からか嗅ぎつけてきた野次馬も登場する訳で。

 

「す…す…すごーい!! さっすがカイチョー!!」

「テイオー? いつの間に…」

 

 目をキラキラを輝かせながらこちらを見つめるトウカイテイオー。

 その隣には、これまた同じように目を輝かせているマックイーンがいた。

 

「素晴らしいですわ…流石はモンスニーお姉さま…。私…感服致しましたわ…」

「へ? マ…マックイーンまでいるの?」

 

 よりにもよって身内にダンスの練習を見られた。

 今まではチームメイトかトレーナー、もしくは今回のように同期の友人にしか見せた事が無かったので、モンスニーの飄々とした仮面が一瞬だけ外れて、羞恥心で見事に顔面が真っ赤に染まった。

 

「あー…いや…これはその…久し振りに同期の皆でダンスレッスンでもしよーかと思ったと言いますか…」

「モンスニーお姉さまのダンス…見るのはいつ以来かしら…」

「え? 私、マックイーンにダンスなんて見せたことあったっけ?」

「いえ。お姉さまがセンターを務めたウィニングライブを見に行ったことがありまして」

「マジでッ!?」

「マジですわ。因みに、メジロの皆で見に行きましたのよ」

「皆となっ!? そ…それってまさか…ラモーヌも一緒…とか…?」

「はい。あの時は確か、ラモーヌさんもご一緒だったと思いますわ」

「おっふ…」

 

 全く知らなかった。

 というか、今初めて知った。

 まさか、妹のように可愛がっている子達が自分のライブを見に来ていたとは。

 

「あと、皆さんの事を見ていたのは私達だけじゃありませんわよ?」

「「「「「え?」」」」」

 

 マックイーンに言われて廊下の方を見ると、窓から何人ものウマ娘達がこっちを見ているのが確認できた。

 その中にはチームメイトであるタイシンやクリーク、非常に満足そうな笑みを浮かべているラモーヌもいた。

 

「ど…どうする?」

「今日は…ここまでにすっか…」

「だね…流石に、こんな大勢に見られながらってのは…ね」

「ライブの時ならいざ知らず、練習の時に見られるのはこう…中々に恥ずかしいな」

「あ…はは…変な汗が出てきちゃった…」

 

 こうして、図らずも本格的になってしまったライブ練習は意外と早く終わってしまうのだった。

 因みに、この時の五人のダンス映像を録画していた一部のウマ娘がウマッターが盛大にバズったとかなんとか…。

 

 更に言うと、実はこの場に偶然にも居合わせていたデジたんは、余りの尊さにまたもや天に召されていた。

 

 

 

 

 

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