ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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 トレセン学園校舎ロビー。

 沢山のウマ娘達で賑わうこの場所で、彼女達も皆に混じって歩いていた。

 

「いや~…この前、タマちゃんに教えて貰ったたこ焼き屋さん、めっちゃ美味しかったよ~。思わずお土産としてチームの皆やルドルフ達にたこ焼きを買って帰っちゃったし」

「そやろそやろ? 郷田のオッチャンが作るたこ焼きは日本一…いや、世界一美味いねん! うちも子供の頃から、おっちゃんのタコ焼きを食って育ったもんや…」

 

 歩いているのは、モンスニーとタマモクロスと言う、これまた非常に珍しい組み合わせだった。

 別に仲が悪いと言う訳ではなくて、単純に話す機会が少ないだけ。

 寧ろ、普通よりは仲が良い方とも言えた。

 

「今度はメジロの皆と一緒に食べに行こうかな~。マックイーン辺りはまた調子に乗ってパクパクしちゃうかもだけど」

「にゃははは! それは普通に有り得そうやな~! もしそうなったら、郷田のオッチャンも流石に困り果ててまうかもしれへんな~!」

 

 二人がタコヤキ談義で花を咲かせていると、背後から誰から近づいてきた。

 

「モンスニーさん」

「ん? およ…エアグルーヴじゃないの。どしたの?」

 

 やって来たのは、モンスニーにとっての後輩であり、生徒会副会の一人でもあるエアグルーヴ。

 彼女の手にはなにやら新聞が握られていた。

 

「この間の取材の記事が掲載されている新聞…読みました。本当に素晴らしかったです」

「新聞って…あぁ~! この間の!」

 

 シービーと一緒に受けた取材が載っている新聞。

 当の本人達は全く見ていないどころか、半分ぐらい忘れかけていた始末。

 それだけ取材慣れしているという証拠なのかもしれないが。

 

「へ~…取材なんて受けてたんや。どんなんなんや?」

「これだ」

「ほぅほぅ…」

 

 エアグルーヴに手渡された新聞を読みながらタマモがウンウンと唸る。

 意外と様になっているのが凄い。

 

「『最高の友達で最高のライバル』…か。ほんま、アンタとシービーの仲は分からへんな~」

「そう?」

「そーや。なんちゅーか…ウチとオグリとの関係に似てるかもしれへんな…」

 

 オグリキャップとタマモクロス。

 双方ともに非常に高い実力を誇るウマ娘であると同時にライバルでもあり、そして無二の親友同士でもある。

 モンスニーとシービーもある意味では似た者同士なので、そこに対してシンパシーを感じているのかもしれない。

 

「そのオグリちゃんが、そこのテーブルで何かを見ながら眉間に皺を寄せてるんだけど」

「オグリが? あ…ほんまや」

「というか、一緒にいるのはハルウララじゃないか?」

 

 エアグルーヴの言う通り、一緒のテーブルに座っているのはトレセン学園一番のマスコットと言っても過言ではないハルウララだった。

 彼女もまた珍しく、なにやら困った顔をしている。

 

「これまたレアな組み合わせやな~。一体何を見てんのやろか? おーい! オグリ~! ウララ~!」

 

 これもまた関西出身者故の性なのか。

 気になったら即座に気になってしまうタマモなのでした。

 

「ん…タマにモンスニーさん…それにエアグルーヴも。一体どうしたんだ?」

「どうしたはこっちの台詞や。ウララと一緒に何を見とったんや? 厳しい顔をしよってからに」

「あぁ…実はだな…ついさっき、たづなさんから私とウララにこれを手渡されたんだ。な?」

「うん。これだよー」

 

 そう言いながらテーブルの上に置いたのは、何かの明細書のような紙だった。

 

「これは…もしや『グッズのロイヤリティの支払い証明書』…か?」

 

 エアグルーヴが言ってくれたが、要するにこれは既にデビューしているウマ娘達のグッズの売り上げを詳細に記した物で、基本的に各種グッズの売り上げは全てウマ娘達に還元されるようになっており、URAは一円たりとも徴収することはない。

 

「へぇ~…そういや、ウチも前に貰った事があったなぁ~」

「私もあったわねぇ~。療養中にメジロの屋敷にまで明細を持ってきた時は普通に引いたけど」

「そんな事があったのですね…」

 

 因みに、モンスニーの場合はその名の由来も相まってか、よく鉄道会社などからオファーが来たりすることが多く、前に一度、とある鉄道にモンスニーの全身像や直筆のサインが描かれたこともあった。

 

「問題は、ここに書かれてある値段なんだが…」

「値段? どれどれ…さ…300万ッ!?」

「す…凄いな…! 流石はオグリキャップだ…」

「いや…その『300万』と言う数字は、あくまで『販売されたぬいぐるみの数』なんだそうだ」

「「「ぬいぐるみの数っ!?」」」

 

 まさかの、値段ではなくて個数。

 これには三人揃って変な声を出してしまう。

 

「しかも、この『300万』は『一般販売されたぬいぐるみ』の数であって、その他にも『クレーンゲームで販売されたぬいぐるみ』もあるらしく…そっちの方が約800万個…合計で1100万個ものぬいぐるみが売れたらしい…」

「「「せ…1100万…」」」

 

 もはや桁が違い過ぎる。

 オグリキャップがずば抜けた人気を誇っている事は知っていたが、これは余りにも凄すぎた。

 

「他にも…レースの様子を撮影したブルーレイや写真集、カレンダーにTシャツ、帽子その他諸々…おまけに一個80万円もするオーナメントの方も既に予約が殺到していると聞いた…」

「「「…………」」」

 

 もう声も出ない。

 文字通りの絶句。

 ここまで行くともう嫉妬心すら浮かばない。

 

「ウ…ウララちゃんはどうなのかなぁ~?」

 

 話を逸らした。

 

「私もね、なんか沢山の数字が書いてあって困ってるんだ~」

「沢山の数字…」

 

 ウララに渡された明細をじぃ~っと注視していく。

 それを見て再び全員が声を失った。

 

「シ…CDが6枚に…書籍が8冊…!?」

「Tシャツに帽子にキーホルダーにマグカップにタペストリー…バッジにぬいぐるみまで…! し…しかも、そのうちの一つは、あの『ハローキティ』とコラボまでしているだとっ!?」

「まだまだあんで…焼酎に切手シートにウララの写真付き駅入場券…なんか『米』って書いてあるんやけどっ!? 『ハルウララ米』ってなんやねんっ!?」

「それ以外にも、非売品として交通安全のステッカーや、挙句の果てはブラジャーまであったとたづなさんが言ってたな…」

 

 売り上げこそはオグリの方が上だが、ウララの場合はグッズのバリエーションがあり過ぎる。

 『まさか、こんな物まで』と思うようなグッズまで普通に販売しているのだから反応に困った。

 

「合計金額も……口に出すのも憚られるわね…別の意味で」

 

 どう考えても、一介の学生が所持して良い金額じゃない。

 しかも、これはまだ途中経過に過ぎない。

 今この瞬間にも、二人のグッズは次々と物凄い勢いで売れまくっているのだから。

 

「…オグリちゃん。ウララちゃん」

「「はい?」」

「お金の管理はしっかりするようにね。通帳とかはちゃんと、親御さんかしっかり者のルームメイトに管理をお願いすること。ってことでタマちゃん、オグリちゃんの事を頼んだわよ?」

「お…おう…任せとき…」

 

 流石のタマも、額が額なだけに今回ばかりは強気になれない。

 

「ウララちゃんの方は、キングちゃんに任せておけば大丈夫でしょ。あの子は見た目通り、凄くしっかりとした子だから」

「そうですね。キングヘイローならば問題は無いでしょう」

 

 本人の知らない所でべた褒めされるキングヘイロー。

 それだけ普段から、周囲の評価が高いと言う証拠だった。

 黄金世代の一角は伊達じゃない。

 

「しっかし…ウマ娘のグッズの売り上げって馬鹿に出来ないのねぇ~…。メジロ(ウチ)も良く色んな仕事やグッズの製作に関わることがあるけど、ここまでなのはマジで始めて見たわ…」

「せやな…完全に灯台下暗しや…。まさか、最も身近な隣人が、こないなことになっとるとは思わんかったわ…」

「今度、生徒達の金銭管理について会長と相談してみるか…」

 

 こうして話している三人も、オグリやウララほどでは無いが多数のグッズを出していて、その売り上げが懐に入ってはいるのだが…それでも彼女達には遠く及ばない。

 

「しっかし…改めて見てみると、本当に色んなグッズが販売されてるのね~。もしかして、私達が知らないだけで、私達の意外なグッズとか売られてるのかもしれないわね…」

「大いにあり得るな…。後で『こないなもんを売っとんたんかいっ!?』ってのが過去に何回かあったし…」

「今後の為にも一度、そういった店を視察してみる必要があるかもしれんな…」

 

 なんだか急に難しい話にシフトし始めた。

 お蔭でオグリとウララはさっきからずっと頭の上に?を浮かべていた。

 

「しかし、私はそういった店がどこにあるのか全く把握していません。モンスニーさんはご存知ですか?」

「私も知らないな~。駅の売店やお土産屋さんに売られてるのは何回か見かけた事があるけど、専門店となると流石にね~…」

「ウチもや…知っとる店ゆーたら、精々が特売タイムセールがあるスーパーとかぐらいやし…」

「「「うーん…」」」

 

 即座に計画が行き詰ってしまう三人。

 だがここでモンスニーの頭に天啓が降りてきた。

 

「あ…そうだ」

「どした?」

「ソレ系のお店にめっちゃ詳しい子が約一名だけいたわ…このトレセン学園に」

「それは誰ですか?」

「『勇者』」

「「あぁ~…」」

 

 その一言だけで全てを察したタマとエアグルーヴ。

 トレセン学園広しと言えども『勇者』の二つ名を持つウマ娘はたった一人しかいない。

 

 芝もダートも関係ない。

 走るべきレースがあり、挑むべきライバルがいる限り、彼女は戦い続ける。

 何故なら…『真の勇者は戦場を選ばない』から。

 

「確かに…『アイツ』ならば適任かもしれませんね」

「そやな…つーか、それ以外には思いつかんわ」

「でしょ? んじゃ、あの子にも一緒に来て貰うってことで決まりね。いつにする?」

「今度の日曜辺りでどうでしょうか? 無論、二人の予定が無ければ…の話ですが」

「私は全然大丈夫だよ。タマちゃんは?」

「ウチも問題無いで」

「では、日曜日に視察に行くと言うことで」

「『あの子』には、私の方から頼んでおくよ。きっと、二つ返事でOKしてくれると思う」

「お願いします」

「頼んだでー」

 

 『視察』と言ってはいるが、実際には四人で一緒に遊びに行くようなものなので、実はモンスニーは今から地味にワクワクしていたりする。

 

 こうして、意外な組み合わせでの外出の予定が出来上がったのであった。

 

 

 

 

 

 




ってことで次回に続きます。

当初、タマちゃんとモンスニーに話しかけてくる相手をエアグルーヴにしようかスーパークリークにしようか迷っていましたが、書き始めると何故か自然とエアグルーヴが話しかけてました。




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