ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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駿大

 トレセン学園 トレーニング用ターフ

 

 ついさっきまで一緒に併走をしていたモンスニーとシービーが端の方に座って水分を取りながら休憩をしていた。

 

「…………」

「ん? さっきからボーっとして、どうしたの?」

「え? あー…いやね。もうすぐで駿大祭で、今は選ばれた皆が例の奉納劇の為の練習合宿に行ってるんだよねー…」

「あれねー…」

 

 モンスニーの言葉で急に懐かしくなったシービーは、同じように嘗ての思い出に馳せていた。

 

「あれって確か、占いとかで決めてるんだっけ。今年は誰が選ばれたの?」

「キングちゃんにカワカミちゃん。テイオーにツルちゃんに…ウララちゃんだったと思う」

「これまた個性豊かなメンバーですこと」

「まったくねー。でも、ウララちゃんが一緒な時点で成功は約束されている」

「なんで?」

「あの子が一緒にいてシリアスな空気になると思う?」

「…ならないね。絶対に」

 

 モンスニーとシービーの共通見解。

 ウララちゃんは別だ。

 

 トレセン学園のマスコット。癒し担当。

 ウララの元気な笑顔に、一体どれだけのウマ娘達が救われてきた事か。

 皮肉にも、ルドルフが目指している『全てのウマ娘を幸せにする』を最も体現しているのが、あのハルウララなのだから凄い。

 

「そういや、私達も選ばれて行ったっけー…」

「行きましたなー…。あの時も大変だったねー」

 

 遠い目をしながらしみじみと語る二人。

 こんな事を言えるのも、二人が最上級生だからなのかもしれない。

 

「私達は、どんなメンバーで行ったっけー」

「いつもの面々じゃなかったっけ?」

「いつものって?」

「あたしとモンスニーとルドルフ、エースにピロウィナーの五人」

「そーだ、そーだ。思い出した。皆で一緒に稽古の合宿やったわー」

 

 シービーに言われて当時の事を鮮明に思い出してきた。

 元々が真面目でリーダーシップもとれるルドルフが一緒だった事に加え、全員のポテンシャルが高いことも相まって、初めてとは思えない程にスムーズに練習が進んで行った。

 

「配役は確かー…割と適当に決めてなかったっけ?」

「誰がどの役に一番合っているかを確かめる為に、一度全員で全部の役をやってきたんだよねー」

「で、かなり早い段階で全員が全部の役の台詞やら動きやらを完璧にマスターしちゃったから、誰もがどんな役でも出来るって事態になって…」

「最終的にはあみだくじで決めた…筈」

 

 最も能力が高くて割と真面目な面々だったにも拘らず、最後の最後は普通に適当だった。

 もしかしたら、それだけ皆揃ってはしゃいでいたのかもしれない。

 

「結局、誰が何の役をする事になったっけ?」

「えっとねー…」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 奉納劇の稽古合宿を行っている合宿所。

 

 最初は順調だった練習であったが、途中で紆余曲折あって途中で本来の目標が頓挫しかけていた。

 だが、テイオーとツルマルは決して諦めようとはせず、少しでも奉納劇に関する見聞を広めようと、様々な資料を調べていた。

 そんな時、過去に行われてきた奉納劇の様子を撮影したDVDを発見し、二人はそれを置いてあったノートパソコンで見てみることにした。

 

 そこで彼女達は、驚きの光景を目撃することとなる。

 

「ちょ…これ! この胡蝶の役をやってるのって…会長じゃないっ!?」

「ほ…本当だ! そっか…会長さんも私達と同じ胡蝶をやった事があるんだ…」

 

 まさか、自分達と同じ役を憧れであるルドルフも演じていたとは。

 運命染みたものを感じながらも、同時に二人のやる気に確かな火を着けていた。

 

「そういえば、胡蝶の役って二人だから…もう一人は誰がやってるんだろう?」

「確かに。えーっと……あっ!? これって…カツラギエース先輩ッ!?」

「うそぉっ!? エースとかいちょーで双子の胡蝶の役をやってたのッ!?」

 

 確かに二人は同期なので、一緒に選ばれていても決して不思議じゃない。

 だがしかし、こうなると他の役の事も気になってくる。

 

「そ…それじゃあ、二人組の旅芸人は…」

「ピロウィナーとシービーだ…」

 

 現在でも学園屈指の実力者二人が演じる旅芸人。

 それは明らかに自分達とはレベルが違っていた。

 

「なら…主役の白拍子は…」

「…メジロモンスニー先輩だ…」

 

 奉納劇の中心となってモンスニーが演じる白拍子。

 台詞のミスは愚か、全ての動きが見事に洗練されていた。

 

 モンスニーだけではない。

 ルドルフとシービーが演じる双子の胡蝶も、ピロウィナーとシービーの演じる二人組の旅芸人も、手の先から足の先まで、まるでこれこそが完璧な手本であると言わんばかりに何から何まで理想的だった。

 

「「…………」」

 

 さっきまで騒いでいたテイオーとツルマルも、いつの間にか自然と画面の中で繰り広げられる奉納劇に見入っていた。

 無意識の内に、先達の動きを目で追い、必死で脳裏に焼き付ける。

 

「こんなのを見せられたらさ…」

「うん…妥協とかしたくないよね…やっぱり…」

 

 仕方がないことだと理解はしている。

 だけど。だとしても。

 憧れの人と、その友人達が与えてくれた、この『火』を絶やす事だけは絶対にしたくない。

 

「皆と…キングと話そう。説得しよう」

「だね。凄く…本当に凄く大変かもだけど、私達ならきっとやれるよ!」

 

 決意の炎が完全に灯った。

 もう彼女達を止められる者は誰もいない。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「「「「駿大祭の奉納劇を一緒に見に行こう?」」」」

 

 モンスニーとシービーが生徒会室に呼び出され、ソファに座った途端にルドルフから言われた。

 勿論、こんな事を言い出す以上、カツラギエースとニホンピロウィナーも同じように生徒会室に呼び出され、ソファに座って茶を啜っていた。

 

「そうだ。皆も、テイオー達が嘗ての私達と同じように駿大祭の奉納劇の演者に選ばれて練習合宿に行っているのは知っているだろう?」

「まぁね。生徒会の仕事をやってる時に、駿大祭に関する書類にも目を通したし」

 

 実は、途中で駿大祭の諸々の取り決めをやったのは、他でもないモンスニーだったりする。

 なので、一部に関して言えばルドルフより詳しかった。

 

「折角、私達の後輩が頑張ってくれているんだ。前に同じ奉納劇をやった者として、見に行ってあげたいとは思わないか?」

 

 ルドルフに言われて少し考える四人。

 別に、個人的には行くこと自体は何も問題は無い。

 予定には余裕があるし、練習も順調なので一日二日ぐらい休んでも大丈夫だ。

 各々のトレーナーに相談しても、きっと快くOKしてくれるに違いない。

 

「学園側の許可とかはどうなの?」

「幾ら休日にあるとはいえ、あそこまでは中々に距離があるぞ? そりゃ…あたしら以外にもプライベートで行く奴もいるだろうけど…」

「保護者も無しに生徒達だけでってのは…ねぇ…」

「もう心配されるような歳ではないだろうけど、それでも一応は学生だしね…」

「あぁ。それならば…」

 

 四人の心配を余所にルドルフが生徒会室の入口の方に目をやると…。

 

「許可っ!!」

 

 満面の笑みを浮かべながら秋川理事長が入ってきた。

 その手に『全力許可!』と書かれた扇子を持って。

 

「遠慮をする必要は全くない! 可愛い後輩たちの晴れ舞台を、是非とも見に行ってあげるといい!」

「まさかの理事長のお墨付きかよ…」

「それでいいのかトレセン学園…」

 

 エースとピロウィナーが呆れるが、これこそがトレセン学園なのだ。

 それは彼女達もよーく理解している。

 理解はしているが…それでも、やっぱり一言ぐらいは言ってやらないと気が済まない。

 

「どうせなら、行き帰りはメジロの車でも使う?」

「いいのか?」

「ぜーんぜんOK。次期当主権限で使っちゃう」

「「「わー…」」」

「ついでに、運転手をするであろうウチのじいやに保護者役でも頼む? それなら問題無いでしょ」

 

 まさかの一番乗り気なモンスニー。

 普通の学生には不可能なことを悉く可能にする存在がいるのを忘れていた。

 

「ナイスアイデアだ、モンスニー! それならば、たずなも文句は言わないだろう!」

「だってよ。どーする?」

 

 ここまで見事なお膳立てをされて『行かない』とは流石に言えなかった。

 というか、約一名はもう既に答えを決めていた。

 

「モンスニーが行くなら私も一緒に行くー」

 

 ライバルであり一番の親友でもあるモンスニーが行く以上、シービーが行かない筈が無かった。

 五人中三人が行く気満々。

 これがもし多数決ならば、完全に勝敗は決していた。

 

「はぁ…わーったよ。行けばいいんだろ、行けば。ま…ちょっと息抜きしようとは思ってたから良いけどさ」

「なら私も行かない訳にはいかないじゃーん」

 

 結果、全員参加決定。

 こうして、仲良し五人組による駿大祭見学と言う名の日帰り旅行に行くことが確定した。

 

「と…ところでさ…メジロ家の車って…モンスニー達が良く乗ってる、あの真っ黒なリムジンだったり…?」

「そうなるでしょうね。メジロにある大人数が乗れる車って言えば、リムジンか大型バスしかないし」

「「「恐るべしメジロ家…」」」

 

 トレセン学園には『名家』出身のウマ娘が何人もいるが、その筆頭とともいえるメジロ家はやっぱり規模が違った。

 因みに、ルドルフも立派な名家出身のお嬢様である。

 

「移動手段はこれで大丈夫か。最初はバスか電車で行こうとも考えていたのだが…」

「もし電車にしてたら、途中でカッちゃんがはぐれそうで怖い」

「もう大丈夫だっつーの! ……多分」

「多分ってつく時点で不安は拭い去れないよ…」

 

 実はこのカツラギエースと言うウマ娘、電車が…というか、電車の乗り降りが苦手だったりする。

 一人で電車に乗ろうものなら、まず間違いなく見当違いの駅に行ってしまう。

 過去にそれで彼女を探しにモンスニー達が奔走したことがあった。

 

「まだまだ保護者は必須だねー…私達…」

「半分以上、大人の仲間入りしてると思ってたけど、意外とそうじゃないのかもねー」

「どうして、アタシを見ながらしみじみ言うんだよッ!?」

「この中で一番、保護者が必要だと思われてるからじゃない?」

「マジでッ!?」

 

 ピロウィナーからの非情な一言。

 カツラギエースも立派な女の子。

 子供っぽい的な事を言われたら流石に落ち込んでしまう。

 

「はっはっはっー! やっぱり君達は仲が良いな! これならば心配はいるまい! 五人で駿大祭を楽しんでくるといい!」

「「「「はーい」」」」

「ありがとうございます。理事長」

 

 駿大祭の奉納劇を頑張っているテイオーやカワカミ達の裏で、モンスニー達の日帰り旅行が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

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