ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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再会

 モンスニー達を乗せたメジロ家のリムジンが車道を走ること数十分。

 徐々に都会の喧騒から離れていってはいるが、それでも高級感溢れる黒塗りのリムジンの存在はかなり目立っていた。

 

「ねぇ…気のせいかな…? さっきからずっと、反対車線や近くを通り過ぎていく車に乗ってる人達が、こっちを見てすっごい驚いてるんだけど…」

「多分、それは気のせいじゃないと思うぞ…」

「こーんな立派なリムジンが走ってれば、そりゃ目立って当然だと思うよ?」

 

 全く慣れない感覚に、珍しくソワソワしているピロウィナーとエースの二人。

 そんな彼女達を見ながら余裕の笑みを浮かべるシービーは流石と言うべきなのか。

 

「カッちゃんもピロちゃんも、さっきから楽しそうにしてるねー。そんなにリムジンに乗るのが楽しい?」

「いや…楽しいと言うか…」

「こんな機会、これから先一生来ないかもしれないと思うと…少しでも何かしようと思って逆に何も出来ないでいると言いますか…」

 

 ザ・庶民の反応。

 普段は絶対見られない友人達の意外な一面を見て、モンスニーはさっきからずっとニコニコしていた。

 

「可愛い反応をしてくれちゃって。そんなに気に入ったんなら、いつでも乗せてあげるのに」

「「大丈夫デス」」

「そう?」

 

 こんなのに乗り続けてたら、確実に今までの感覚が狂ってしまう。

 天下のメジロ家に合わせる訳にはいかないと思い、ここは丁重に断らせて貰った。

 

「別に遠慮なんてしなくてもいいのに。ねぇ? ルドルフ」

「ん? そうだな。何事も経験だぞ?」

「「こんな経験は一回だけで十分です」」

 

 この二人とシービーの考えている事だけは、いつまで経っても全く分からない。

 マイペースなシービーに、生真面目すぎるルドルフ。

 そして、飄々としているモンスニー。

 こんな三人だが、一度でもターフの上に立つと一気に豹変するから恐ろしい。

 それはエースとピロウィナーも同じなのだが。

 

「皆さま。サービスエリアが見えてきました。時間も良い頃合いなので、あそこで昼食に致しましょう」

「「おぉ~!」」

「そういや、お腹空いてきたねー」

「何を食べようかなー? この近くのサービスエリアかー…スマホで調べられるかな?」

「外での食事なんて久し振りだな。しかも、友人達と一緒の外食なんて初めてかもしれない。ふふ…まさか、テイオーたちの奉納劇以外の楽しみも出来るとはな」

 

 五人がそれぞれにワイワイしている様子をバックミラーで見つつ、じいやはリムジンをサービスエリアの駐車場へと入れていくのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 サービスエリアの中は想像以上に充実しており、大勢の客で賑わっていた。

 そのお蔭で、トレセン学園生の五人は誰にも身バレすることなく食事を楽しめている。

 五人共が数多くのレースで大活躍をした有名ウマ娘ばかりなので、一度でも騒ぎになればどうなってしまうのかは容易に想像が出来る。

 一応、ルドルフは伊達眼鏡を付けてはいるが、あくまで気休めでしかない。

 他の四人に至っては普通にすっぴんだし。

 

「天気も良いし、晴れ渡る空の下で皆と一緒に食べるお昼ってのもいいもんだねー」

「そうだねモンスニー。もういっそのこと、これから月一ぐらいの感覚でこうして皆で集まって女子会みたいのをするのもいいかもね」

「悪くない提案だな。良い気晴らしになるし、交流が増える事で絆も深まる。それに、友人達と食べる食事はいつも以上に美味しく感じるからな」

「流石はモンスニーお嬢様でございます。良きご友人を持たれ、爺も嬉しゅうございます」

「「…………」」

 

 目の前で百合色の青春が展開されていく中、エースとピロウィナーだけは何故か黙っていた。

 その理由は、今食べている食事にあった。

 

「なぁ…モンスニー…シービー…。確か、メシの注文に行ったのってお前達だよな?」

「そうだけど?」

「それがどうかしたの?」

「…何を頼んできたの?」

「「水炊き」」

「「どうして鍋料理っ!?」」

 

 目の前にあるのは、沢山の具材が盛り付けられた大きな鍋。

 皆の手元にはそれぞれ、おろしポン酢が入った小皿が置いてあった。

 

「いや…確かに美味そうだけどさ…」

「どうしてサービスエリアのお店に水炊きがあるの…?」

「「さぁ?」」

 

 二人揃って小首を傾げる。

 これを見る度にいつも思う。

 本当に似た者同士だと。

 

「って言うか、どうしてルドルフもじいやさんもツッコまないの?」

「ツッコむも何も…サービスエリアとは、こういうものではないのか? 初めて来たからよく分からないが」

「モンスニーお嬢様が選ばれた物ならば、何でも喜んでいただきます」

 

 ダジャレ好きな天然生徒会長とメジロ家第一主義な執事さんにツッコミを期待したのが悪かった。

 このメンバーでツッコミが出来るのは自分だけ。

 ここは我々が頑張らねば。

 心の中で密かにエースとピロウィナーは決意を固めた。

 

「まだちょっと早いけど、締めは何にするー? やっぱ王道のうどんかなー?」

「卵粥ってのもあるよ?」

「最近はラーメンやチャンポンもあるらしいよ?」

「それはまた楽しみですな」

 

 2対4の数的不利の状況の中、エースとピロウィナーは無事に帰ることが出来るんだろうか。

 それはそれとして水炊きは本当に美味しかった。

 因みに、締めは多数決の結果うどんになった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 昼食の後に再びリムジンを走らせ、ようやく奉納劇が行われる社へと到着した。

 着いた頃にはもう既に二時を回っていたが、まだ劇はやっていない。

 

「どうやら、少しだけ時間に余裕を持って来れたみたいだね」

「以前と同じならば、奉納劇があるのは午後の三時から…だったよね」

「あぁ。今年もそれは変わらない筈だ。特にこちらに変更の知らせも無かったしな」

「最初はどうなるかと思ったけど、なんとかなりそうだな」

「そうだね。ちゃんと良い場所を確保しておかないと…」

 

 ピロウィナーがキョロキョロと辺りを見渡しながら、良い感じの場所を探していると、シービーが何かを発見した。

 

「あ。あそこ…屋台が並んでるよ?」

「ホントだー。私達の時も屋台はあったけど、あそこまで多くは無かったような気が…」

 

 彼女達の視線の先には、それこそ屋台の定番とも言うべき、たこ焼きや焼きそば、お好み焼きやかき氷を初めとした多種多様な屋台が軒を連ねていた。

 

「暫く来ない間に、ここも随分と賑やかになったもんだな」

「そうだな。それだけ、多くの人々に認知されるようになっていったという証拠なんだろう」

 

 ルドルフとエースが感心したように頷いていると、社の方から見覚えのある女性が歩いてきた。

 

「お久し振りですね、みなさん」

「「「「「先生っ!?」」」」」

 

 やって来たのは、ここでトレセン学園の生徒達に奉納劇の指導をしている人物だった。

 勿論、彼女たち五人も嘗て、この人物から指導を受けた。

 

「じいやさんも、良くいらっしゃいました」

「ご無沙汰しております、先生」

 

 大人同士の挨拶。

 どうやら、この二人は以前来た時に知り合ったようだ。

 

「話は理事長さんから伺っています。彼女達の奉納劇を見に来たのですよね?」

「はい。今年の子達は、どんな劇を見せてくれるのかなーって思いまして」

「彼女達はどんな感じでしたか?」

「皆さん、とても頑張っていましたよ。途中、色んな事がありましたが、最後まで決して諦めずに一生懸命に練習をしていました。まるで、嘗ての貴女たちを見ているようでした」

「昔のあたし等ねー…」

 

 もう何年も前の事なのでよく覚えてはいない。

 ただ、滅多に出来ない経験と言う事もあって、かなり皆で頑張っていた記憶はある。

 

「あの時の皆さんは本当に優秀でした。まさか、全員揃って僅か数日で全ての役の演技と台詞を完璧にマスターし、全員で全部の役をやってみてから、誰がどの役をするのが良いのか話し合った事なんて、後にも先にも皆さんだけでしたよ」

「「「「「ははは…」」」」」

 

 そんな事もあったなー…なんてことを考えつつ、皆揃って恥ずかしそうに後頭部を掻く。

 あの時は本当に、何をトチ狂ったのか、全員が全部の役を完璧にこなせてしまえるほどに仕上がってしまった。

 なので、最終的には『誰がどの役をやった方が一番似合うか』という事になった。

 これには当時の先生も流石に顔が引きつった。

 

「優秀過ぎて、逆にこちらの方が困ってしまった程です」

「あたし達は普通にやってただけなんだけどなー…」

「ルドルフはともかく、私達もそうだったけー?」

「いやいや…一番最初に全部の台詞を暗記したのはピロウィナーだったじゃないか」

「んで、全部の役の動きを最初にマスターしたのがカッちゃんだったよね」

「体を動かす事はガキの頃から得意だったからな」

 

 今までにも数多くのウマ娘達が奉納劇を披露してきたが、未だ嘗てルドルフやモンスニー世代を超える者達は現れていない。

 彼女たち五人が、余りにも飛び抜け過ぎていた。

 

「そうだ。折角ですし、とっておきの場所で劇を見て行かれませんか?」

「とっておきの場所?」

「えぇ。以前、メジロのお婆様が皆さんの劇を見て行かれた場所です」

「お婆様が?」

 

 そんな話はじいやから聞かされてはいたが、どこで見たのかとかは聞かされていない。

 普通にそこら辺で見たのかと思っていたが、まさか特別席のような場所があったとは。

 メジロ家の当主は伊達ではなかった。

 

「あぁ…あそこですな。懐かしいですね」

「はい。あの場所ならば、問題無く見られるかと。どうですか?」

「お婆様が使ってた場所かー…いいんじゃない? 皆はどう?」

 

 モンスニー個人としては、是非ともそこで劇を見たいが、皆の意見を蔑には出来ない。

 口では色々と言いつつも、時期当主としての器は出来上がりつつあった。

 

「私は別に構わない」

「ルドルフに同じ。メジロのお婆様のお墨付きなら大丈夫だろうし」

「だな。アタシも全然いいぜ?」

「そうだねー。穴場があるなら、そこに行きたいよねー。折角だし」

「私は、モンスニーお嬢様の行く所につき従います」

「皆……ありがとう」

 

 満場一致で見事に可決。

 それを見ていた先生は、優しげに微笑みながら彼女達の事を見守っていた。

 

(どうやら、この子達の友情は全く変わってはいないようですね。いや、昔以上に強固になったようにすら感じる。きっと、私の知らない所で色んな事を経験してきたのでしょう…)

 

 奉納劇をするまでの間とはいえ、それでも彼女達が自分の教え子であることには変わりはない。

 その教え子たちの立派に成長した姿を見て、感動を覚えつつも同時に、彼女達の遺志を継いだ新たな世代の劇を見て欲しいと強く思っていた。

 

「では、今からご案内します。こちらへとどうぞ」

 

 先生の案内に従いながら、皆は人込みの中を進んで行くのだった。

 

 

 

 

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