ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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援助

 メジロ・クリスマス・ナイトの開催が宣言され、今年のマネージャーにブライトとパーマーが就任することになってから数日後。 

 休日となる今日は珍しくメジロのウマ娘達が全員揃って邸宅に集合していた。

 

「うーん…中々に良い感じに仕上がらないねー…」

「理想としている形は頭の中にあるのに、それを上手く形に出来ない感じかな…」

 

 邸宅のリビングにて、パーマーとドーベルがパソコンの前で困ったように唸っていた。

 画面には、今年のメジロ・クリスマス・ナイト用のサイトと思わしきページが表示されているが、まだ作成途中のようで、所々が半端になっている。

 

「生知識だけじゃ流石に難しいかー…」

「でも、メジロ家のウマ娘にパソコンに強い子って、いなかったと思うし…」

 

 もしもこれが別のイベントならば、迷わず手当たり次第に色んなウマ娘に助けを乞う所なのだが、今回はメジロ家主催となる大きなイベント。

 そう簡単にメジロ家とは関係の無いウマ娘の助けは借りられなかった。

 

「んー? 二人揃ってどーしたの?」

「「モンスニーさん」」

 

 そこに通りかかったのは、私服姿かつカップアイスを食べているモンスニー。

 どうやら、彼女はおやつをリビングで食べようと思ってやって来たようだ。

 

「そんなに顔を顰めて…何か悩み事?」

「実は…」

 

 昔からよく相談事をしていたが故に、二人は迷わずモンスニーに今の自分達が直面している問題をぶつけた。

 

「…ってことなんです」

「成る程ねー。確かに、サイトの製作って難しそうだもんねー」

「そうなんですよー。だから困っててー…」

「うーん…」

 

 流石のモンスニーも、パソコン関係はそこまで詳しくは無い。

 精々が簡単な知識ぐらいだ。

 

「…メジロの関係者なら問題無いんだよね?」

「だと思います。その制限がなきゃ、頼れそうなウマ娘はそれこそ沢山いますから」

「だよねー…」

 

 メジロ家の関係者で、尚且つパソコンに強いウマ娘。

 その条件を聞いて、モンスニーは即座に『あるウマ娘』の事を頭に思い浮かべた。

 

「それ…なんとかなるかも」

「「えっ!?」」

「いるんだよ…遠縁ではあるけど、紛れもなくメジロ家の関係者で、更には凄くパソコンに強いウマ娘」

「マジですかッ!?」

「私には全く想像出来ないんですけど…誰なんですか?」

「今から呼ぼうか? あの子の事だから、嬉々として飛んできてくれると思うけど」

「「今からっ!?」」

「そ。んじゃ、ちょっと失礼してー…っと」

 

 部屋の端の方に行き、モンスニーは誰かに電話をし始めた。

 

「やっほー。私だよー。そ、メジロモンスニー。折角の休みだってのにごめんねー。実はー…」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「ここをこうして…これでいいか?」

「「おぉ~!!」」

 

 パソコンの前に座って、見事な手際であっという間にプロ顔負けのメジロ・クリスマス・ナイト用の公式サイトが完成した。

 その青いツインテールをフリフリさせながら、彼女は嬉しそうに目を細めている。

 

「すっごいね~! まさか、ターボにこんな才能があったなんて…」

「えへへ…。ターボは凄いんだぞ! えっへん!」

「いや…これはマジで凄いよ。確かにツインターボは遠縁ではあるけど、ちゃんとしたメジロの関係者ではあるから手伝うのに問題は無いけど…」

 

 まさか、あのツインターボがここに来て最高の助っ人になろうとは。

 一体どこの誰が想像しただろうか。

 

「ターボちゃんはね、こう見えて実はインドア派で、更にはインテリだったりするんだよ。ねー?」

「うん! ターボ、動画編集が趣味だから!」

「「知らなかった…」」

 

 あの元気一杯のツインターボが、本当はこんな頭脳系ウマ娘だったとは。

 ギャップ萌えなんてもんじゃない。

 意外過ぎて開いた口が塞がらない。

 

「そ…それじゃあ、試しに今から申込フォームから応募してみるね」

 

 パーマーが自分のスマホからテストとして申し込みをしてみる事に。

 そこに、また別のウマ娘がやって来た。

 

「うわぁ~! 今年のクリスマス・ナイトのサイト…もう出来たんだ~! 凄くお洒落に出来上がってるね~! って…なんでターボちゃんがいるの?」

 

 リビングに入って来たのは、私服姿のライアン。

 どうやら、パーマーやドーベルの事が気になって様子を見に来たようだ。

 

「実はこのサイト…作ってくれたの、この子なんだ」

「えっへん!」

「うっそぉっ!? ターボちゃんがこれを作ったのッ!? 凄いなぁ~…」

 

 今回、ターボは誰かに会うたびにこうして驚かれて、同時に褒められるのかもしれない。

 このままだと完全に調子に乗りそうだが、そうなったら保護者であるチームカノープスを集合させれば問題は無い。

 彼女達にとっては大問題だが。

 

 そこへ更に独特の雰囲気を放つウマ娘…メジロラモーヌがやって来て、静かにパソコンの画面を後ろから覗き見た。

 

「ふぅーん…やるじゃない。ツインターボ…」

 

 それだけを言って、彼女はリビングを後にした。

 勿論、その光景をちゃんとモンスニーは目撃している。

 

「あのラモーヌにあそこまで言わせるだなんて…やっぱりターボちゃんは凄いねぇ~…」

 

 ツインターボの底力と根性、諦めの悪さは目を見張るものが有る。

 実際、彼女の雄姿に救われた者も決して少なくは無い。

 

 そこへこれまた、今回のマネージャーの一人であるブライトがやって来た。

 

「パーマーさま~。そちらのスマホに今回のプレゼン資料をお送りしましたので、ご確認お願いできますか~?」

「OK! どれどれ~…?」

 

 すぐにスマホを取り出して確認を始める。

 読んでいく内にパーマーの目が見開かれ、驚きに変わる。

 

「うん…うん。成る程…いいね! 綺麗に纏まってて非常に分かり易い!」

「ありがとうございますわ~」

「これでメジロ家へのプレゼン準備の全てが完了だね。いっちょバシっと決めてきますか!」

「ふぁいと~お~…ですわ~。ところで~…」

「ん? なに?」

「どうして、ツインターボさまがここにいらっしゃるのですか~?」

 

 ブライトから出た当然の疑問。

 もう殆ど定型文になりつつあるが、ちゃんと教える事に。

 

「まぁ~…ターボさまがサイト制作のお手伝いを~?」

「そうなんだ。本当に驚かされたよ。後でちゃんとお礼しないとね」

「そうですわね~。おやつでも御馳走しましょうか~」

「それいいね! きっとターボも喜ぶよ!」

 

 ツインターボと言う意外な助っ人のお蔭で、メジロ・クリスマス・ナイトの準備は順調かつ確実に進んでいた。

 それを見ながら、モンスニーは妹たちの成長を噛み締めつつ、アイスを静かに食べていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 都内某所にあるビル内の会議室。

 そこに集合したメジロ家重鎮たちに向けてのクリスマス・ナイトのプレゼンを終え、パーマーとブライトは廊下で溜息を吐いていた。

 

「新旧ファン同士の交流…か」

「それに関しては、私達も少なからず懸念はしていましたけど…」

「ああして改めて言葉に出されると、中々に堪えるものが有るよね…」

 

 今までずっとメジロ家を応援してくれた人たちと、今回の事で新しくメジロ家のファンになってくれる人達。

 その熱量の差はどうしても出て来てしまう。

 

「次回の役員会議までに改善案を…か」

「どうしましょうか…」

「「うーん…」」

 

 ここで悩んでいても答えなんて出る訳がない。

 そう分かっていても、ここで頭を抱えてしまう。

 

 結局、その日はそのまま二人揃ってトレセン学園へと帰ったのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 トレセン学園学生寮内の一室。

 

「今日もまた0件…か。一体どうしたらいいんだろう…」

 

 部屋の主の一人であるドーベルが、ノートパソコンの前で肩を落としていた。

 その理由はパソコン画面に映し出されているものにあった。

 

「新規のファンからのイベント参加の申し込みが…全く来ない…。折角、ターボが手伝ってくれたのに…」

 

 浅い繋がりとは言え、彼女も立派なメジロ家の一員。

 その頑張りを無駄にはしたくない。

 だからこそ、一人でも多くの申し込みを引き込みたいのだが…。

 

「今日はもうこれ以上は望み薄かな…。仕方ない…明日、パーマーやブライトとまた相談しよう…」

 

 そう結論付けると、ドーベルはパソコンの電源を落としてからベットに潜り込んだ。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日。

 トレセン学園カフェテラス内。

 

「現状の問題を纏めると…『新旧ファン同士の交流に対する不安』と『新規ファンからの申し込みが全く無い』の、この二つって事になるね」

「これって…どっちもかなり深刻だよね…」

「どうしたらいいのでしょうか~…」

「「「うーん…」」」

 

 頭を抱えて悩む三人のウマ娘。

 その様子を少し離れた場所から不安そうに見守る一人のウマ娘がいた。

 

「パーマー…ブライト…ドーベル…」

 

 その優しさ故に、彼女達の力になってあげたいと思っているライアン。

 普段から困っている人を見捨ててはおけない性格が故に、今回も少しでも手伝えればと動き出そうとした、その時だった。

 

「あの子達の事が心配?」

「モ…モンスニーさん…」

 

 それを静止するかのようにモンスニーが、何処からともなくやって来た。

 その視線はすぐに、悩んでいる三人の方へと向けられる。

 

「パーマーたちの事が心配なのは凄く良く分かるけどさ、今回は見守ることに徹しない?」

「え? でも…」

「大丈夫」

 

 今にも歩いて行きそうなライアンの頭をそっと撫でる。

 くすぐったそうにするが、同時に懐かしさも覚えて顔を赤くした。

 

「あの子達は、そんなに軟じゃないよ。本当の本当に助けて欲しいって思ったら、きっと向こうから来てくれる。ターボちゃんの時みたいにね」

「それは…そうかもですけど…」

 

 それでも心配なことには違いない。

 この気持ちだけはどうしようもなかった。

 

「誰かを信じる。誰かを見守るって、想像している以上に大変な事だけど…だからこそライアンも頑張らないと」

「私も…?」

「そ。今、あの子達は自分の意志で『お姉ちゃん離れ』をしようとしてるんだから。姉として、妹の独り立ちぐらいは見守ってあげなくちゃ」

「お姉ちゃん離れ…」

 

 それを聞いて、ふとライアンの頭の中に過った事。

 もしかしたら、モンスニーも同じような事を何度も経験したのではないだろうかと。

 モンスニーは今のメジロ家のウマ娘の中でも最年長。

 ということは、それだけ多くのウマ娘達の成長を見守ってきたと言う事になる。

 

(ラモーヌさんや私とかの時も…モンスニーさんは同じような気持ちを抱いていたのかな…?)

 

 こんな気持ちを何度も味わうだなんて、ライアンにはとてもじゃないが耐えられそうにない。

 だからこそ思ってしまう。

 やっぱり、この人にだけは敵わないと。

 

「…モンスニーさんは…凄いですね…」

「そう?」

「そうですよ。やっぱり…モンスニーさんは皆のお姉ちゃんです」

「まぁね。私からしたら、ライアンも可愛い妹だよ」

「へへ…ありがとうございます」

 

 モンスニーと話していて決意が固まった。

 自分も彼女と同じように、三人の事を静かに見守ろう。

 それこそが『姉』として出来る一番の事だと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

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