ゴルシとターボの突然の合流に驚かされるも、なんとか無事に二人の着替えも済ませ、改めてメジロ家+αの写真撮影会を始める事に。
「って事で今から限定カレンダー用の撮影会を始めるんだけどー…最初は誰からする?」
「やっぱり、まずは今回の主役でもあるパーマーとブライトじゃない?」
「そうだね。私も二人が一番最初で良いと思うよ」
モンスニーとライアンの鶴の一声により、最初はトナカイ風の衣装を着たパーマーと、サンタ風の衣装を着たブライト二人の撮影から始める事に。
今回の写真撮影、なんと実際に色んな場所に移動をして撮影をする事になっている。
文字通り、一日がかりの大仕事なのだが、そこは流石メジロ家と言うべきか。
その気になればCGでどうにかなる所を全くの妥協無しで済ませようとしている。
因みに、今から行く撮影場所の殆どがメジロ家所有の土地であり、それ以外の場所もメジロの名を使って一日だけ貸切にする事になっていた。
「パーマーとブライトの撮影場所って確か…」
「メジロ家所有の雪山にあるロッジですわ~」
「うはぁ~…最初から大変だ~…」
実は、パーマーたちの撮影場所が一番遠い場所にあったりするので、理想としては一番最後が望ましいのだが、もう決まってしまったものは仕方がない。
「じゃあ、パーマーたちの所から戻りつつ撮影をするってことで」
「それが一番効率が良さそうですわね」
「スタッフさーん! それでいいですかー?」
「「「「大丈夫でーす!」」」」
無事にOKが貰えたところで、メジロ家の面々+ゴルシ&ターボは車に乗ってからメジロ家邸宅から移動を始める事に。
「わーい! 皆で一緒にドライブだー!」
「一番先に乗るのはアタシじゃーい!!」
…若干の不安は残るが。
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まず到着したのはメジロ家所有の雪山。
雪山と言っても、そこまで危険な場所でもなく、ちゃんと管理されているので熊なども住んでいない。
精々がウサギやイタチぐらいだ。
「おぉ~! ちゃんとロッジにもクリスマスの装飾が施されてるじゃーん!」
「とっても素敵ですわ~」
一体いつの間にやったのやら。
目の前にあるロッジは見事にクリスマス一色に染まっていた。
「今回のクリスマス・ナイトが無事に終わったら、ここで皆一緒の冬休みを過ごすってのも悪くないかもね」
「ナイスアイデアですわ、モンスニーお姉さま!」
「うんうん! 皆でご飯とか作ったりして…きっと楽しいだろうなぁ…」
「そうだね。偶にはそんなのも悪くないかも」
モンスニーのふとした一言に皆が食いつく。
特にマックイーンが一番目をキラキラさせていた。
「その時はターボちゃんも来る?」
「来るー!」
「勿論、このゴルシちゃんもな!」
「えー?」
「なんだよー! その反応の差はよー!」
「あはは…冗談だって」
珍しくぶーたれるゴルシを余所に、スタッフたちによる撮影の準備が着々と進んで行く。
「準備終わりましたー! いつでも大丈夫でーす!」
「だって。行こうかブライト」
「はーい」
そんな訳で、屋根に雪を乗せたロッジの前でポーズを取るパーマーとブライト。
パーマーはお得意のギャルのようなポーズをし、ブライトもそんな彼女の真似をして似たようなポーズをする。
「イエーイ!」
「メリクリですわ~」
パシャ!
「OKでーす!」
まさかの一発。
メジロ家として、昔から撮影され慣れているのが功を奏したのかもしれない。
「主役二人が終わって、お次はー…」
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次にやって来たのは、メジロ家が今回の為に貸し切ったホテルのプール。
勿論、プールは温水。
「ほら、ドーベル。そんなに緊張なさらず…笑顔ですわ。笑顔」
「そ…そんな事を言われても…」
撮影をするのは、水着に着替えたマックイーンと青いワンピースと帽子を被ったドーベル。
メジロ家の中じゃ珍しく写真撮影が苦手なドーベルは若干の緊張気味ではあったが、マックイーンからの励ましを受けて、なんとかポーズをしながらの笑顔をする事に。
「こ…こんな感じで良い…のかな…?」
「いい! 凄くいいですよ~! では、マックイーンさんもお願いします!」
「分かりましたわ」
スタッフに指示されてマックイーンもポーズを取ることに。
それを見ながらゴルシがポツリと一言。
「あの水着…前にアタシと一緒に海に行った時に着てたやつじゃね?」
「え? ゴルシとマックイーンって水着デートとかしてたの?」
「前に一回だけな。マックちゃんってばよー、かなりの負けず嫌いでよー…水鉄砲を持って必死の形相でアタシを追い駆けて来やがんの」
「へー…あのマックイーンがねー…」
マックイーンとゴルシの二人が仲がいいことは知っていたが、まさかプライベートでデートをする程だったとは知らなかった。
親戚同士と言う事もあり、ああ見えてやっぱり相性はいいのかもしれない。
「そこ! ちゃんと聞こえておりましてよ!」
「ちぇ。ばれてーら」
やっぱり、ゴルシとマックイーンって相思相愛なのでは?
そうとしか思えないメジロ家のウマ娘達だった。
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三番目に撮影をするのはライアン。
場所は、メジロのお婆様の知り合いが経営している喫茶店。
ライアンは髪型すらも変えて、見事なウェイター姿を披露していた。
「流石はライアンさん! 非常に絵になりますね~!」
「えへへ…。いらっしゃいませ、お客様。どう? 雰囲気出てたりする?」
「もうバッチリですよ! 一枚だけしか撮れないのが歯痒い…!」
プロが悔しがるほどに、今回のライアンは被写体として素晴らしかったようで、今回も見事に一発でOKが出た。
「やっぱライアンにはボーイッシュな服が似合うわね~。パーティーの時に良く着てるドレス姿も悪くないけど」
「うん…アタシもそう思う」
モンスニーの隣で微笑を浮かべているドーベルだったが、実は脳内で必死に今のライアンの姿を網膜に焼き付けようとしていた。
(いい…すっごくいい! 男装したライアン…図らずも最高のネタをゲットだよ…! 寮に戻ったら、忘れないように急いでラフ画ぐらいは描いておかないと…)
ドーベル、すっかり同人作家の目になる。
この時ばかりは、彼女もデジタルと同じ世界の住人になってしまう。
「あはは…どれだけ経験してても、やっぱり少しは緊張しちゃうもんだね」
「それは仕方がないって。あたし達だってそうだもん」
「そうですわ~。別に恥ずかしいことではございません~」
撮影から戻ってきたライアンを労うパーマーとブライト。
それを見ながら、モンスニーとラモーヌは安心したような笑みを浮かべていた。
「どうやら、もう大丈夫そうですわね。モンスニーお姉さま?」
「…だね。ほんと…お姉ちゃんは大変だ」
これでもう何度目だろう。
妹たちの自立を見届けるのは。
そして、これからもメジロ家のウマ娘達の成長を見届けていくのだろう。
メジロ家の当主として。
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四番目はなんとゴルシ。
本人たっての希望で、今回はとあるテーマパークにある古城を模したモニュメントに足を運んでいた。
「ゴルシの撮影場所がまさかのお城とはね…意外過ぎるチョイスだ…」
「確かに、今のゴールドシップさんの格好には凄く合っていますけど…」
若干の不安を感じながらも、ゴルシを中心に撮影の準備は進んで行く。
それを見て、ゴルシは不敵な笑みを浮かべた。
「ま…そこでいっちょ見てな。ゴルシちゃんの本気ってやつをな」
「本気ねぇ…」
肩を潜めながらパーマーが呟く。
そして遂に、撮影の準備が整った。
「ではゴールドシップさん。いつでもどうぞ」
「おう」
スタッフからのコールが掛かると、急にゴルシが静かになり、目を細め、窓際に寄り掛かりながら両手を前でそっと組んだ。
その視線は窓の方に向いていて、まるで何かに黄昏ているかのよう。
「…………」
あまりの美しさに、思わずスタッフだけでなく、その場にいた全員が言葉を失う。
そして、パシャリというシャッター音だけが場に響いた。
「お…OK…です…」
「お? そっか!」
すぐにいつものゴルシに戻るが、他の皆はまだ呆けたままだった。
「うっわ…完全にしてやられたわ…」
「まるで…一枚の絵画のような光景でしたわ…」
「うん…これは完全に度肝を抜かれたね…」
「ゴルシ…すっごいきれーだったぞ…」
「うふふ…それでこそよ…ゴールドシップ」
「お姉さまにここまで言わせるだなんて…流石ですね…ゴールドシップさん…」
こうして、良い意味で予想外な写真が出来上がり、次の撮影へと進む事に。
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五番目に撮影するのはアルダン。
ライアンとはまた違うベクトルの男装姿を披露し、ダンスをする体勢での撮影となった。
「これでいかがですか?」
「うひゃ~! う…麗し~! アルダンさん! 完璧です!」
妹の意外な姿を見たラモーヌは、腕を組みながら静かに微笑んでいた。
「見惚れちゃった?」
「そうかもしれませんわね」
「へぇー…否定はしないんだ?」
「する理由がおありで?」
「無いね。私も今のアルダンは綺麗だって思うから」
「なら、それが答えですわ」
モンスニーとラモーヌとの間で繰り広げられる大人な会話。
それを見て、他のウマ娘達の視線を集めてしまう。
「やっぱ…あの二人は別格だね…」
「実際、モンスニーさんとラモーヌさんがレースに出てくれなかったら危なかったしね…」
「いつか恩返しが出来ればいいですわね~」
今回の事で改めて二人の凄さを思い知ったパーマーとブライトとドーベル。
まだまだ自分達は未熟であると自覚するのだった。
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六番目はツインターボ。
彼女が撮影場所に選んだ場所とは…。
「あはははははは! はははははははは!」
なんと、一面真っ白な雪原だった。
そこをターボが大笑いをしながら、無邪気に走り回っている。
「思い切り走るのって、やっぱり楽しー! 寒いのなんかへっちゃらだぞー!」
「うっわぁ…これはこれでまた凄く絵になる!! 雪を見てはしゃぐ見習いサンタって感じで!」
もうポーズも何も無い。
ターボはただひたすらに、自分が思うままに動いている。
だが、今回の場合は逆にそれが良かった。
「ねぇ…ライアン?」
「なんですか…モンスニーさん」
「満面の笑みを浮かべながら、はしゃぎまくるターボちゃん…可愛過ぎない?」
「分かります…今からでも抱きしめたいぐらいに可愛いです…」
次の瞬間、モンスニーとライアンが固い握手を交わした。
「ライアンならきっと分かってくれると信じてたわ」
「アタシもです。やっぱ、可愛いは正義ですよね」
二人の間に奇妙な友情が生まれた瞬間だった。
そこへ更に、ラモーヌが嬉しそうに一言。
「ツインターボ…ちゃんと分かってるじゃない…」
「え? ラモーヌお姉さま…?」
なんか、最近のラモーヌの中でターボの評価が急上昇している事に本気で驚いた実妹のアルダンだった。
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七番目はラモーヌ。
撮影場所は、まさかのレース場だった。
しかも、格好は自分の勝負服。
「あのー…本当にこんな所で良かったんですか?」
「当然じゃない。この場所こそが私が最も強く美しく輝ける場所であり、この服こそが私にとっての真の正装。この組み合わせ以外には絶対に有り得ないわ」
「そ…そうですか…。ラモーヌさんがそこまで言うのなら…。じゃあ、撮影を始めます」
「えぇ。初めて頂戴」
ターフのど真ん中でポーズを取るラモーヌ。
普段なら絶対に出来ないであろうことを平気でやってのける胆力に、モンスニーとゴルシ、ターボ以外の全員が度肝を抜かれていた。
「やっぱり…あの人の考えてる事はよく分からないや…」
「同感…悪い人じゃないのは分かるんだけどね…」
比較的常識枠なパーマーやドーベルが苦笑いを浮かべる。
それ程までにラモーヌの考えはぶっ飛んでいた。
「ま、あの子にはあの子なりの美学ってのがあるんだよ。きっと」
「モンスニーお姉さまには、ラモーヌお姉さまの『美学』が分かるんですか…?」
「私なりには…だけどね。多分、ゴルシも分かってるんじゃない?」
「「「え?」」」
まさかの御指名にゴルシが振り向く。
その手には何故か、たこ焼きが握られていた。
「まーな。でも、それをそう簡単に他者に悟られないようにしてんのも、またアイツなりの美学ってやつなんじゃねーか? つーか、そもそもラモーヌの奴は自分以外の誰かに理解なんて求めてねーだろ」
ゴルシの口から語られる物凄く真面目な話。
その光景に全員が目を丸くし、特に関係の深いマックイーンに至っては口までポカーンと開けていた。
「あ…あなた…真面目な話も出来ましたのね…」
「あったりまえだのかーちゃんの隣の家に住んでる従姉妹のクラスメイトの行きつけのパン屋の店長のねーちゃんだっつーの」
また元に戻った。
なんだか勿体無い気がした面々であった。
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最後は最年長者でもあるモンスニー。
彼女が撮影場所に選んだのは、今回の中で一番コストが掛からない場所だった。
「いやー…一度でいいから来てみたかったのよねー! ここの無人駅!」
そう…ここはメジロ家所有の土地の中に偶然あった無人の駅。
今でも普通に使用はされているが、電車の本数は非常に少ないので遠慮なく撮影に専念できる。
「モンスニーさん…その格好は…」
「これ? 私の私服…っていうか、お散歩スタイル?」
なんと、モンスニーの服装は、ここにいるウマ娘達ならば誰もが見たことがある私服姿だった。
だが、これで良かった。この方が良かった。
変に着飾っても、この場所では逆に浮いてしまうから。
「私の趣味の一つに『無人駅巡り』もあるからね。どこで撮影したいですかって聞かされたら、ここしか思いつかなかった」
「成る程…確かに、モンスニーさんと言えばウマ娘の中でも無類の電車好きですものね。分かりました。では、撮影を始めましょう」
近くにあったベンチに腰かけて、適当なポーズを取る。
まるで、本当にここで電車を待っているかのような自然な光景だった。
「あたし…無人駅って始めてきたかも…」
「私も…。誰もいない駅って、こんな感じなんだ…」
「静かで風流ですわね~」
普段から使用しない場所と言う事もあって、他のウマ娘達は興味津々に無人駅を見て回っている。
こんな機会でもないと、訪れる事なんて決してないだろうから尚更だ。
「はい! OKでーす! これで全部の撮影が終わりましたー!」
「やっとだねー。いやー…実に長かった。でも、結構楽しかったね」
モンスニーの一言で締めくくられ、メジロ家限定カレンダー用の写真撮影会は無事に終了したのだった。