ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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さ…流石に久々の連続更新は疲れた…。

でも、本筋と外れた話を書くのは普通に楽しかったですね。







番外編⑥ 帰ってきたライバル達(後編)

 トレセン学園の敷地内にある駐車場。

 普段は、所属しているトレーナーや教職員達の所有している車が駐車されている場所だが、今日はそこにウマ娘達の姿があった。

 

 実は、学園に通っている『とあるウマ娘』が自分の車を所有しており、それを特別にここに停める事を許可されている。

 

「ごめんなさいねぇ~。こんな事を頼んじゃって」

「いえいえ。気にしないでください。普段から先輩方にはお世話になりっぱなしですし、こんな事でお役に立てるんなら嬉しいです」

「うわぁ~…何をやってるのかサッパリ分からないけど、本当に凄いなぁ~…」

 

 駐車場の一角に停めてある真っ赤なオープンカーの傍にいるのは、その車の所有者にして『スーパーカー』の異名を持つ圧倒的強者のウマ娘『マルゼンスキー』。

 彼女の車を作業服姿で道具片手に整備をしているのは、ゴーカート世界王者にしてトップF1レーサーを父に持つレースの申し子『パーンサロイド』。

 そして、マルゼンスキーに強い憧れを持つウマ娘『サクラチヨノオー』。

 

「なんか最近になって調子が悪くて、修理に出したいとは思っていたんだけど…あれって結構お金掛かるじゃない? それに、今日に限って知り合いの修理業者の人がお休みしてて…」

「確かに、車の修理ってお金掛かりますよねー。小さな頃からお父さんの修理の手伝いをしてたから良く分かりますよー」

「へー…それって、どれぐらい掛かるんですか?」

「「最低でも10万ぐらい?」」

「じゅ…10万っ!?」

 

 車の事なんて全く分からないチヨノオーは、その金額に驚き、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「それにしても、本当にパーンちゃんって手慣れてるわね。もしかして、車の免許も持ってたりして?」

「いやいや…まだ年齢的に不可能ですから。でも、大きくなったら普通に取りに行くつもりではありますよ? 自分の車自体は既に実家に持ってますし」

「持ってるんですかッ!? まだ中等部なのにっ!?」

「はい。お父さんのお下がりなんですけど。一応、自分が所有している敷地内で運転するだけなら免許とかいりませんし。トレセン学園に来る前は、よく自宅の敷地内にある練習用のコースで自分の車を走らせてましたよ?」

「流石は、現役レーサーの娘ね。いつか、パーンちゃんが運転する車に乗ってドライブとか行ってみたいわ」

「そ…その時は私もお供します!」

 

 憧れのマルゼンが行くと言うのなら、自分も行かない訳にはいかない。

 本当は、純粋に一緒に行きたいだけだが。

 その時だった。

 

 そんな三人の姿を遠くから見つけ、歩いてくる一人のウマ娘の影があった。

 

「おや? こんな場所にウマ娘がいるなんて珍しい。あの姿は…もしや、マルゼンスキーさん?」

 

 別に用事があった訳じゃない。

 普通に気になったから近寄ってきた彼女に三人が気が付く。

 

「ん? 誰かがこっちに来る?」

「ウマ娘…? でも、学園にあんな子…いましたっけ?」

「あら。あの子はもしかして…?」

 

 パーンとチヨノオーは小首を傾げているが、どうやらマルゼンはこっちに来るウマ娘の事を知っている模様。

 彼女の顔を見て、すぐに笑みを浮かべて手を振った。

 

「サバンナストライプちゃん! 久し振りね~!」

「お久し振りです。マルゼンスキーさん」

 

 サバンナストライプ。

 褐色肌と白黒な髪色が特徴的な、ケニア出身のウマ娘。

 海外の幾多のレースを転戦しており、ヨーロッパのG1でも好成績を収めた実績を持つ紛れもない実力者。

 特に、大自然で鍛えられた跳躍力と視力が非常に優れていて、レースの際には恐ろしく冷静な判断力と観察力を駆使して攻める瞬間を見極め、まるでターフを滑空するかのような脚捌きにて見事な差しを披露する。

 その実力は留学先である日本でもいかんなく発揮され、トゥインクル・シリーズでもちゃんと成績を残していた。

 流石にまだ、マルゼンスキーを初めとした者達には敵わないが、だからと言って諦めることなく挑戦し続け、敗北の中からも様々な事を学び、その身に吸収している。

 故に、その潜在的な能力は専門家たちやトレーナー達にも注目されていて、今後のウマ娘界隈を牽引する一人になり得るのではないかと噂されている程。

 

「海外のレースに出場する為に出てたって聞いてたけど、いつ戻ってきたの?」

「ついさっきです。レースの方は無事に何事も無く終わりました。勿論、勝利の二文字と共に」

「流石はストライプちゃんね! お姉さんも嬉しいわ!」

「ありがとうございます」

 

 先人たちへの敬意は絶対に忘れない。

 それが尊敬する先輩ならば尚更。

 

 同じようにマルゼンを尊敬するチヨノオーは、それを見て複雑な顔をしていたが。

 

「一緒にいるのは…サクラチヨノオーさんと、パーンサロイドさんですね」

「え? 私達の事も知ってる!?」

「私なんて、少し前に転入してきたばっかりなのに…」

 

 チヨノオーはまだしも、まだ学園に来て日が浅いパーンサロイドの事まで知っていたとは。

 二人はストライプの言葉に驚きを隠せなかった。

 

「勿論、知っていますよ。日本で活躍したり、注目されているウマ娘の情報は嫌でも耳に入ってきますから」

「活躍…」

「注目?」

「えぇ。マルゼンさんに強い憧れを持ち、あのオグリキャップさんとも走ったウマ娘…サクラチヨノオー」

「いえ…私なんてまだまだ…」

「そして、元ゴーカート世界チャンプにして、お父上もまたプロのレーサーを務めている注目株の一人。パーンサロイド」

「まだデビューもしてないんだけどなぁ…私…」

 

 デビュー済みのチヨノオーの情報が出回っている事は理解出来るが、デビュー前のパーンの事まで既に情報が出ているとは。

 それ程までに、彼女の事が世間から注目されていると言う証拠だった。

 

「いつの日か、お二人ともターフの上で戦ってみたい。きっと、海外では決して味わえないようなレースを味わえると思うから」

「「…………」」

 

 海外で活躍しているウマ娘にそこまで言われる。

 これで熱くならなければ嘘だ。

 

「…私達でよかったら…いつでも、お相手しますよ」

「まだまだ未熟者ですけどね」

「…その日が今から楽しみだ」

 

 また一つ、切磋琢磨し合えるライバル関係が生まれた。

 この出会いが何をもたらすのか、それはまだ誰にも分らない。

 ただ一つだけ言えることは、これまで以上にウマ娘界隈が盛り上がるということだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「うーん…」

「いきなり唸って、どうしたのさ?」

「いやねー…トレセン学園がまた賑やかになってきたなーって思って」

「ふーん…?」

 

 廊下のど真ん中で楽しそうに笑うモンスニーを見て、何が何だか分からないシービー。

 彼女も、今日の学園の雰囲気がいつもとは違う事は感じ取ってはいたが、その原因にまでには全く見当がつかないでいた。

 

「もしかしてだけど、モンスニーはこの『雰囲気』の理由に心当たりがあるの?」

「心当たりって言うかー…予想?」

「予想…?」

「そ。もしかしたらなー…って」

 

 敢えて意味深な言い回しをするモンスニーをキョトンとした目で見つめるシービーであったが、すぐに『いつものことか』と割り切って前を向く。

 伊達に入学時からずっと付き合い、同時に大舞台で激闘を演じてきただけはある。

 

 そんな彼女達の事を探していたのか、後ろから二人の『ウマ娘』が近づいてきた。

 

「目標確認。トレセン学園高等部生徒『ミスターシービー』と『メジロモンスニー』を発見」

「だね。やっと見つけた」

 

 知っている声が聞こえ、思わずモンスニー達は後ろを振り向く。

 彼女達の顔を見て、シービーは最初は僅かに驚き、すぐに全てに納得した。

 一方のモンスニーは、まるで全てを最初から知っていたかのような笑みを浮かべる。

 

「やっぱり…君達か。久し振り…いや、この場合は『おかえり』って言うべきなのかな? ねぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハリボテエレジーちゃん。メカハリボテちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハリボテエレジーとメカハリボテと呼ばれた二人は、ようやく表情らしいものをみせる。

 口は笑っているが、目は笑っていない。

 この目をモンスニーもシービーも良く知っている。

 

 これは『挑戦者(チャレンジャー)』の眼。

 遥か高みにいる強者に挑む勇者の眼。

 

「その様子を見るに、ちゃんと『曲がれる』ようにはなったのかな?」

「はい。猛特訓をしてきましたから。もう二度と、ターフの上で無様な姿は晒しません」

「学園在校生のデータは既に全て入力済み。それを元に最適なトレーニングメニューも完了。更に、学園帰還後に行うべき追加トレーニングメニューも計画済み。これにより、我等の完走率及び勝率は飛躍的に向上」

「へー…明確な数字で言わないんだ。メカハリボテも変わってきてるじゃん」

 

 あらゆる事象を確率で測る傾向にあったメカハリボテが、数字で物事を言わなくなった。

 それだけ自分に対しての自信が付き、真の意味での『挑戦者』と成った証。

 

「まだ先輩達には並べないけど…でも、いつの日か必ず…」

「必ず、同じターフの上に立ち、走る」

「「その為に私達は帰ってきたんだから」」

 

 立派になった後輩からの堂々とした宣戦布告。

 ここまで言われて受けなければウマ娘が廃る。

 

「嬉しいねぇ…そんな事を言われちゃったら、お姉さん柄にもなく熱くなってきちゃうよ」

「そうだね。アタシも、君達二人と一緒に走れる日が本当に楽しみで仕方がないよ。だから…」

 

 目の前にいる『強者達』の眼が変わり、少女達を見据える。

 そこにいたのは学園の先輩達じゃない。

 幾多のレースを走り、幾多のライバル達を倒してきた『歴戦の猛者』。

 

「「待ってるよ。君達と走れる日を」」

 

 待ってる。

 それは、今の彼女達にとって最も嬉しく、同時に聞きたいと思っていた言葉。

 それだけで、今までの努力が全て報われていく気がした。

 

「「必ず…そこまで辿り着いてみせます」」

「「上等」」

 

 それは新たな世代の、新たな物語。

 彼女達がどんな青春を紡ぎ、どんなレースを繰り広げるのか。

 

 その目撃者は…もしかしたら、これを見ている『アナタ』かもしれない。

 

 だからこそ見届けて欲しい。

 このウマ娘達の熱き走りを。

 その戦いの全てを。

 

 そ し て 伝 説 は 始 ま っ た 。

 

 

 

 

 

 

 




ハリボテエレジーとメカハリボテの容姿は敢えて描写しませんでした。

彼女達の姿は皆さんのご想像にお任せします。

次回からは元の話に戻ります。



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