ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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交流

 ドーベルの所に馬場が訪れていた頃、ライアンがいるパンクスチーム風の喫茶店に、彼女のトレーナーである冴島がやって来ていた。

 

「よぉ、来たったで。ライアン」

「トレーナーさん! いらっしゃいませ!」

 

 さっきまでずっとファンへの対応で忙しそうにしていたライアンだったが、冴島の顔を見た途端に元気を取り戻して、耳や尻尾をピコピコさせながら彼の傍に向かった。

 

「ちょ…あの超デカいの誰…!?」

 

 ドレッドヘアーのウマ娘が冴島の威容に驚きまくっていると、すぐ傍にいたドレス姿の古参のファンが驚きながら教えてくれた。

 

「まぁ! ご存じないのッ!? あの方はメジロライアンさんの専属トレーナーをやっておられるトレセン学園の冴島大河さんよっ!? 若い頃は教師を志していた事もあってか、トレーナーとしても非常に優秀で、困っている人がいたら手を差し伸べられずにはいられないって程で、学園でもメジロ家でも非常に高く評価されている御方らしいわ!」

「マジで…? 人は見かけに寄らなさ過ぎでしょ…」

 

 どうして、そんなことまで知っていたのかは謎だが、少なくとも冴島の『過去』に関しては世間には知られていないようだ。

 恐らくは学園とメジロ家の情報操作もあるのだろう。

 

「なんや、俺の知らんところで俺の名前が知られとるみたいやな」

「トレセン学園のトレーナーをやってるってだけで一定以上の評価はされますからねー。そこへ更にメジロ家と関係があると知られれば、自然と有名になっていくんじゃないかと」

「そういうもんか」

 

 昔は悪い意味で裏の世界で超有名人になってしまっていたが、カタギに戻ってからも別の意味で有名になってしまうとは。

 冴島の持つカリスマ性は、どの業界でも通用すると言うことなのだろう。

 

「今日はトレーナーさんだけなんですか?」

「いや、今回は馬場ちゃんとも一緒や」

「馬場って…ドーベルのトレーナーの?」

「そや。なんでも、モンスニーの嬢ちゃんから招待されたらしいで。ドーベルの晴れ姿を見てやってほしいってな」

「成る程…馬場さんと会わせる事でドーベルの緊張を少しでも解そうとしてくれたのかな?」

「多分な。ほんま、抜かりの無い子やで。ありゃ、マジで将来は良い当主になるな」

「はい。アタシもそう思います」

 

 今回もまたモンスニーが影で誰かを助けてくれた。

 これこそがある意味で最も理想とする形なのかもしれない。

 

「あれ? そこの子…もしかして、この間のフリーレースでドーベル達と一緒に走ってた子じゃない?」

「えっ!? あのレース見てたんっ!? つーか覚えてたんっ!?」

「勿論! その腓腹筋とヒラメ筋のバランス…忘れるわけないよ!」

「筋肉で覚えてたんだ…」

「はっはっはっ! なんともライアンらしい覚え方や!」

 

 まさかの筋肉で記憶すると言うライアンに、冴島が珍しく大笑い。

 それに釣られて、周囲にも笑い声が聞こえ始める。

 

「こうして会ったのも何かの縁だし、皆で一緒に座ってお喋りでもしようよ!」

「そらええな。丁度いい所に開いてる席もあるし、あそこに行こか」

 

 こうして、ライアンの所は冴島の協力もあって、見事に繁盛したのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 同時刻 会場内の道端にて。

 

「あら…アナタ。来てくれてたのね」

「え? ラモーヌ…この人、知り合い?」

「知り合いと言うよりは、私が一方的に知っているだけですわ」

「ふーん…?」

 

 いきなりラモーヌがロック風な青年に話しかけ、それにモンスニーの目が丸くなった。

 彼女がメジロ家のウマ娘やその関係者以外に自分から話しかけるなんて凄く珍しかったから。

 

「へぁ? あ…いや…申し訳ないけど人違いじゃないっすか? 俺、今回が初参加だし…」

「それはそうでしょうね。だって、私がアナタを見たのは、ついこの間のフリースタイルレースの会場なんですもの」

「えっ!? それって…まさか…」

「えぇ。子供みたいに無邪気にはしゃいで、とても愛らしかったわね」

 

 よもや、あの広い会場内で自分の事が見られていたとは。

 全く予想出来ていなかった事態に、青年はしどろもどろになった。

 

「そ…その…あの時の走りが忘れられなくて…つい…」

「…だ、そうですって。モンスニーお姉さま」

「嬉しいことを言ってくれるね~。こっちも頑張って走った甲斐があったってもんだよ~」

 

 予定外の事ではあったが、それでも自分達の走りを切っ掛けにしてレースを見てくれるようになれば、ウマ娘としてこれ以上に嬉しいことは無い。

 

「あー…いきなりで失礼。フリースタイル・レースとはどういう事でしょうか? まさか…走られたのですか? モンスニー様とラモーヌ様が?」

 

 流石に聞き捨てならなかったのか、偶然にも近くにいたスーツ姿の古参ファンが近づいてきた。

 

「ちょ…あんた、あの動画を見てないのかよッ!? つーか、走ったのはこの二人だけじゃなくて、メジロドーベルもだよ! ほら、これ見てみろよ! 三人共すっげー走りをして最高だろッ!?」

「おぉ…これはなんとも…!」

 

 青年が自分のスマホで古参のファンに、先日のレースの様子を見せる。

 メジロの誇るウマ娘達の圧倒的な強さに、思わず感嘆の声が漏れた。

 

 そこへまた、意外な来訪者たちがやって来た。

 

「おーい! モンスニ~! ラモーヌ~!」

「来ましたよ~」

「二人とも…声が大きいから。いや…この喧騒じゃこれぐらいじゃないと聞こえないのか…」

「まぁまぁ。偶にはいいじゃないか。折角のクリスマスなんだし、無礼講ってことでさ」

 

 手を振りながら来たのは、モンスニーやラモーヌと同じチームメイトのシービーとタイシン、クリークとトレーナーの大久保の四人だった。

 

「いぃっ!? なんでここにミスターシービーとナリタタイシンとスーパークリークがいるんだっ!?」

「君…知らないのかね? 彼女達はモンスニー様やラモーヌ様と同じチームレグルスのメンバーなのだよ」

「嘘だろッ!? って事は、あの人は…」

「チームレグルスの専属トレーナーの大久保氏だ」

「伝説にBNWの一角に永世三強の一角って…豪華過ぎんだろ…」

「そこへ更にメジロ家を代表するモンスニー様とラモーヌ様が一緒なのだからな。この場に立ち会えた奇跡に感謝しなくては」

「全くだぜ…」

 

 図らずも、チームレグルス全員集合した事で古参と新規のファンの交流が成功した。

 流石のモンスニーも、これは計算していなかった。

 

「あれ? なんか妙に盛り上がってる感じ?」

「みたいだね。どうしたんだろ」

「うふふ…仲がいいのは良いことですね~」

「クリーク…見ず知らずの人達相手に母性を発揮するのだけは止めてやれ…」

 

 本人達は未だに自覚なしだが、見る人が見れば卒倒しそうな程に豪華メンバーなのだ。

 ある意味、聖なる夜には相応しい面子だった。

 

「いらっしゃい。迷わず来れたようで安心したよ」

「ちゃんと受付で地図付きのパンフレットを貰ったからね」

「なんか妙な雰囲気だったけど」

「とっても微笑ましい空気でしたね~」

「馬場くん…あのドーベルとあそこまで仲良くなるとは…一体何をどうしたのか是非とも聞きたい…」

 

 どうやら、モンスニーの作戦は見事に大成功したようで、聖なる夜に二人の仲がまた一段と進展した様子。

 二人の将来が本気で楽しみになったモンスニーだった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 因みに、一方その頃のターボ&ゴルシはと言うと…?

 

「だらっしゃぁぁぁぁぁぁっ!! 今日のゴルシちゃんはマックちゃんの代理じゃぁぁぁぁいっ!!」

 

 以前の写真撮影の時に着ていたドレス姿で会場内を堂々と闊歩しながら、まさかの相手に驚きまくっているファンたち相手に大笑いしていた。

 

「うそ…だろ…? あの超美人が本当にゴルシなのかよ…?」

「いや…確かにゴルシが美人なのは認めるけどよ…」

「幾らなんでも化けすぎだろ…」

「う…美しい…」

 

 新規のファンたちは困惑し、古参のファンは完全に魅了されていた。

 私服姿でも十分に初恋ハンターをしているのに、普段は絶対に見れないであろうドレス姿なんてものを見せられれば、そりゃ大半の連中は一発KOは確実だった。

 

 プルルル…プルルル…。

 

「お? こんな時に電話して来るなんて誰だ? って…マックちゃんかよ」

 

 ある程度、予想の出来ていた相手だったのであんまり驚かず、普通に電話に出た。

 

「もしもしもしもし? こちらゴルシちゃん宅急便。地球の裏側から冥王星まで、どこまでもお届けに参りマ~ス」

『ゴ…ゴ…ゴールドシップさんッ!? そちらの会場にイクノさんがいらしたという話を聞いたのですけど、本当なんですのッ!?』

「いきなりご挨拶だなぁ…。おう、間違いないぜ。つーか、正確にはイクノだけじゃなくて、ネイチャやマチタン達も一緒だけどな」

『な…なんてこと…完全に盲点でしたわ…! ツインターボさんが出席なさるのなら、その来賓として同じチームのイクノさん達が来るのは必然…!』

「おーい? マックちゃーん?」

 

 なにやら受話器の向こうで激しく戦慄していたマックイーン。

 流石のゴルシも、彼女の変貌ぶりに少し引いていた。

 

『アルダンさん!! 急いでこちらを切り上げて、私達もクリスマス・ナイトに向かいますわよっ!!』

『えぇっ!? で…でも、まだこっちは終わってないですし…』

『そんなの関係ありませんわ!! イクノさんが私を待っているんですのよッ!? と言う訳ですから、私達も急いでそちらに合流しますわ!! ではっ!!』

「ちょ…マックちゃんッ!? おいっ!? 切れちまった…二つの意味で」

 

 珍しくゴルシがマックイーンに振り回された。

 時折、こんな事が起きるから彼女達は見ていて飽きない。

 

「おーい、イクノー」

「どうしました? ゴールドシップさん」

 

 丁度、傍でターボと手を繋いで歩いていたイクノ達をこっちに招き、さっきの事を話すことに。

 

「なんかよー、今からマックちゃんが急いでこっちに戻って来るらしいんだわ」

「え? でも、マックイーンさん達は別の場所で用事があるのでは…?」

「その筈だったんだけどよ、何処からかイクノがこっちにいる事を知ったらしくてな。アホみたいに興奮して『急いで戻ってくる』って言い出したんだよ。あのマックちゃんの事だから、マジで戻って来るだろうな」

 

 生真面目そうに見えて実は若干の暴走癖があるマックイーン。

 特に、目の前にあるフルーツとイクノが関わると、途端に目の前が見えなくなる。

 

「ゴルシー、マックイーン達が戻って来るのかー?」

「みたいだぞ。こりゃ、後でパーマーたちに報告しとかねーとなー……にひっ♡」

 

 頭をポリポリと掻きながらも、その顔は完全に笑っていた。

 新しい玩具を見つけた子供のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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