ウマ娘 ~伝説の好敵手~   作:とんこつラーメン

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結束

 メジロ・グリーティングも順調に進んでいき、会場内も特に問題も無く賑わっていた。

 

「ちょっちぎこちなく感じはするけど、今の所は順調かな。この後は『謎解き宝探しゲーム』も控えてるし、大丈夫でしょ」

「えぇ…きっと、ファンの皆様と協力をし合って…あら?」

 

 会場内の様子を伺う為に二人で歩き回っていると、ふとブライトの頬に何か冷たい物がふわりと落ちてきた。

 

「これは…雪ですわ」

「わっ! ホントだ! ホワイトクリスマスって感じで素敵だけどさ…道理でさっきから冷えると思ったよ…。こりゃ、会場内でホットドリンクとか出した方がいいかな?」

「そうかもしれませんわね~。あらあら? パーマー様? お電話が鳴っておりますわよ?」

「え? あー…これはドーベルからだね。もしかして、馬場さんとの惚気話でも聞かせるつもりなのかな?」

 

 なんて呑気に電話に出ると、いきなりドーベルの叫び声が聞こえてきた。

 

『もしもしパーマーっ!? 実は大変なことになったの! 急いでこっちに戻ってきて!』

「「大変な事?」」

 

 この慌てようは普通じゃない。

 そう判断して、パーマーとブライトはファンの人たちに悟られないようにしながら、ドーベルがいる受付のログハウスへと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「じゃ…じゃあ…天気予報によると、この後に大雪になるの?」

「どうやらそうみたい…」

 

 メジロ家のウマ娘達だけでなく、冴島や馬場、カノープスメンバーやレグルスメンバーもログハウスに勢揃いし、皆で今後の事について話し合っていた。

 

「余りにも突然やな…。確か、今朝の段階じゃ今日一日はずっと晴れってなっとった筈やが…」

「どうやら、雨雲の動きが予報よりも速かったみたいですね。今さっき調べたんですけど、もう西日本は積り始めてるそうです」

「ホンマか…」

 

 冴島と馬場も、余りにも唐突過ぎる天候の変化に驚きを隠せないでいた。

 流石の彼らも、天気ばかりはどうしようもない。

 

「天気もそうだけど…一番の問題は交通機関だね」

「えぇ…突然の大雪なんて事になったら、かなりの混乱が予想されますわ」

 

 窓の外のしんしんと降り注ぐ雪景色を見ながら不安そうにするモンスニー。

 その隣では、珍しくレース以外の事で真剣な顔になって考え込むラモーヌの姿が。

 

「高速道路の通行止めに、最悪の場合は計画運休の可能性もありやがるな…」

「もし仮に動いていたとしても、相当な混雑になるのは避けられねぇだろうな…」

 

 あのゴルシと船子ですらシリアスモードになって今の状況を冷静に分析する。

 真面目になった時の彼女達は本気で頼りになる。

 

「こんな時はまず、下手に慌てずに役員の方々に相談してみるのはどうでしょうか? パーマーさん」

「うん…そうだね。イクノの言う通りだ。ここでウダウダを考えてても仕方がない。取り敢えず、歴戦のメジロのブレーンに知恵を借りよう」

 

 パーマーが役員たちの所に向かったと同時に、入れ替わるように飲み物を取りに行っていたライアンが戻ってきた。

 

「うぅ~…外、かなり雪が積もってきてるよ~。ホットドリンクで暖を取りながらじゃなかったら、確実に手が霜焼けになってたよ~。あれ? パーマーは?」

「たった今、今後の事を相談する為に役員はん達の所に向かったわ」

「そうだったんですね。あ…トレーナーさん。これどうぞ」

「おう、ありがとなライアン」

 

 彼女からホットコーヒーを受け取り手を温める冴島。

 そんな彼を横目に、ラモーヌが窓を見ながらポツリと呟いた。

 

「これは…かなり積もりそうね…」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「お待たせ~。パーマーさんのお帰りだぞ~」

 

 明るい口調で戻ってきたパーマー。

 何かいい事があったのか。

 もしくは、皆を不安にさせないように気を使っているのか。

 

「んで、どうだった?」

「役員さん達に話してみたら、メジロ家の方で帰りのバスを手配してくれることになったよ。今から約2時間後ぐらいにはこっちに着くってさ」

「と言う事は…後2時間でイベントを終わらせないといけないのですわね…」

「2時間…か。メインの謎解き宝探し…殆どの人がクリアできずに終わるかも…」

 

 ブライトとドーベルの言葉で不安な空気が広がり始める。

 だが、そこで場の空気を晴らしたのがパーマーだった。

 

「だったら、その2時間で全力で楽しめる方法を考えようよ!」

「2時間で…」

「楽しめる方法…?」

「そ! このまま微妙な空気のまま終わるのは、こっちだって本意じゃないんだしさ!」

 

 この一言で重苦しい空気が消え、少しずつではあるが活気が戻ってきた。

 

「そやな。パーマーの嬢ちゃんの言う通りや」

「2時間しかない…じゃなくて、2時間もあるって考えようよ!」

 

 冴島とライアンが顔を見合わせながら力強く頷く。

 

「確かにそうかもね。ブライト、パーマー。あたし達も手伝えることがあれば何でもやるよ。いいよね、トレーナー」

「勿論だ。チームレグルス一同、好きなだけこき使ってくれ」

「タイシン…大久保さん…」

 

 客としてやって来ていた筈のレグルスメンバーにモンスニーとラモーヌも合流する。

 今回はメジロ家としてではなく、チームレグルスのメンバーとして頑張ると言う決意表明なのだろう。

 

「レグルスの皆がやるって言うんなら、あたしらカノープスも黙って見ている訳にはいかないっしょ」

「ネイチャさんの仰る通りです。パーマーさん。私達四人もどうか手伝わせて下さい」

「私も全力でお手伝いするぞ~! えい! えい! むん!」

「ターボも! ターボも手伝うぞ!」

「みんな…」

 

 本当なら、他の皆は客として楽しんで貰う筈だったのに、気が付けば自分から協力を申し出てくれている。

 その事が猛烈に嬉しくて、思わず涙が零れそうになる。

 

「俺にも手伝わせてくれ、ドーベル」

「トレーナー…」

 

 彼女の肩にポンと手を置き、強く頷く馬場。

 たったそれだけの事なのに、ドーベルにとってはまるで万の味方を得たような気持ちになった。

 

「勿論、ゴルシちゃん達もな!」

「そーだそーだ! そのとーり! 今こそ、アタシ等の本気を見せつける時だぜ!!」

 

 皆の気持ちが一つになり、一気に場が盛り上がった。

 これならなんだか本気でなんとかなりそうな気がする。

 不思議とそんな気持ちになってきた。

 

「皆が手伝ってくれるのは良いとして…これからどうする?」

「そうだなぁ…」

 

 緊急の話し合いを始めた三人を見ながら、ラモーヌが面白そうに微笑んだ。

 

「ふふ…本当に我慢強いこと」

「三人共、まだ全然挫けてませんから。必ずどうにか出来るって信じてますし」

「そうだね。レースと一緒で、最後の最後まで諦めない心が活路を切り開く…そうでしょ? ラモーヌ」

「…そうですわね。強い者ほど忘れがちになる…最も大事な心。だからこそアナタは…」

 

 モンスニーから言われ、彼女の強さの根源を垣間見たような気がしたラモーヌ。

 矢張り、メジロ家の次期当主は伊達ではない。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「ゲームのルールを変えよう!」

 

 十数分の話し合いの後、いきなり出されたパーマーからの提案に、全員の目が丸くなる。

 

「ルールを変えるって…具体的には?」

「本当だったら、謎解きのヒント持っているのはアタシとブライトだけの予定だったけど、サンタの数をもっと増やしてヒントを見つけやすくするの!」

「悪くは無いと思うけど…謎解きの難易度がかなり下がらない? 下手したらゲームとして破綻する危険性も…」

「そうですわね~…。謎解きというものは、簡単過ぎても駄目ですし、かといって難しすぎるのも…あ」

 

 ここでブライトが何かを思い付いたのか、両手をポンと合わせた。

 

「いい事を思い付きました。他の部分で難易度を上げると言うのはどうでしょう?」

「例えばどんな?」

「ヒントを貰う際にクイズを出題する…とか?」

 

 クイズと聞いて、大人三人組が揃って賛同した。

 

「クイズか…ええんやないか?」

「そうですね。分からなかったら一緒にいる人達とかで相談し合えばいいんだし」

「一緒に協力してクイズを解く…。これは充分に古参と新規の交流になるんじゃないか?」

 

 これからの方針が決まるや否や、次々と色んな意見が飛び交い始めた。

 

「そうなると、適度な難易度であり、かつ答えが分かる人が近くにいるようなクイズが良いですね~」

 

 クリークの意見を聞き、隣にいたシービーがポツリと一言。

 

「じゃあもう、メジロ家に関するクイズしかないんじゃない?」

「「「それだ!!!」」」

 

 パーマーとドーベルとブライトが揃って口を開けながら目を丸くし、シービーの事を指でさした。

 

「昔からのファンなら簡単に答えられて、それでいて新しいファンには難しい!」

「そこで他の参加者同士で協力出来れば…!」

「えぇ。長年に渡って応援してくださったからこその知識を披露出来るのは、きっとファンの皆様も嬉しいと思いますわ~」

「それとは逆に、サンタ探しはSNSでの情報交換に慣れてる新規のファンが有利になる。良い感じにお互いの短所を補いながら協力出来そう!」

「そうだね! んじゃ、このルールで早速始めますか!」

 

 完全に方針が確定した。

 これならば残り二時間でも、どうにか出来るかもしれない。

 

「決まったようやな。俺らは何をしたらええんや?」

「アタシもトレーナーさんも、喜んで手伝うよ!」

「ライアンお姉さま…冴島様…ありがとうございます」

 

 尊敬する姉と、そのトレーナーが協力してくれる。

 ブライトにとって、これ以上なく心強いことはなかった。

 

「折角ですし、兄貴もサンタの格好をしたらどうですか? 前に一度だけしたことがありましたよね?」

「なんやと?」

 

 馬場からの、まさかの提案に流石の冴島も固まってしまう。

 それとは別に、ライアンが目をキラキラさせながら彼を見上げた。

 

「そうなんですかッ!? アタシもトレーナーさんのサンタ姿、見てみたいです!」

「ライアンがそう言うなら…しゃーないのぅ…。あの時は仕方なくやったんやが…まぁええか。折角のクリスマスやしな」

 

 問題は冴島サイズのサンタ服があるかどうかなのだが、そこは流石メジロ家と言うべきか。

 しれっと既に用意されていたりする。

 

「だったらよ~! アタシら全員でサンタの格好をしよーぜー!」

「それいいなー! よっしゃぁ!! 早速のお着替えタイムじゃーい!! いくぜ

タイシーン!!」

「ちょ…なんでアタシが最初な訳っ!?」

 

 ゴルシの唐突な提案に、早くもタイシンが犠牲となり、船子によって奥の部屋に連行されてしまった。

 どうして普通の人間である筈の彼女がウマ娘に匹敵する程のパワーを持っているかは深くツッコんではいけない。

 

「え? これって…もしかしてアタシ達もサンタ服を着るの?」

「いいじゃんいいじゃ~ん! どうせだしネイチャも一緒に着ようよ~! サンタ服~!」

「って、マチタンは着る気満々なんかいっ!?」

「面白そうですね。私も着てみたいです。ターボさんも既に着ている事ですし。ここは一つ、チームカノープス全員でサンタになると言う事で」

「イクノが一番ノリノリだったっ!? そういや忘れてた…この子、見た目に反してかなりノリが良い性格をしてるんだった…」

 

 潔く観念したのか、ネイチャは肩を落としながら皆と一緒に奥の部屋へと向かう事に。

 

「なんかもう完全に全員でサンタ服を着る流れになってるし、あたし達も行こうかモンスニー」

「そだねー。皆で仲良くお色直しだー」

「うふふ…お姉さまとお揃いのサンタ服…悪くないわね」

「皆と一緒にサンタさんになるだなんて素敵ですねー」

「これ…もしかして俺もサンタ服を着るのか…?」

 

 こうして、全員で協力してからの最後のイベントが幕を開けようとしていた。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 因みに、同時刻のマックイーンとアルダンは…?

 

「どうやら、いきなりの大雪で道路が渋滞しているみたいですね…」

「そ…そんな…。この道の先にイクノさんが私を待ってくださっていると言うのに…。こうなったら!」

「ちょ…マックイーン何をッ!?」

「ここで降りて走って行きますわ!」

「えぇっ!? 外は雪が降ってるんですよッ!?」

「それがどうしたって言うんですの! 雪程度で私のイクノさんへの想いは止められませんわ!!」

「はぁ…もう…」

 

 

 




本当はここで終わらせたかったのに…まだまだ続くんじゃよ…。

今年中には絶対にクリスマスイベントは終わらせるんじゃ。


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