タイトルですが、超電磁砲コラボとは特に関係ありません。
「…………んん?」
シャーレの仮眠室。目覚ましが鳴る前に意識が覚醒し、起きようとしたら腹部の辺りに重さと温かさを感じる。
誰かイタズラでもしにきたか。そう思って目を開けると。
「あ、起きた。先生、おはよう」
「…………おう、おはよう。とりあえずどいてくれないか、アツコ」
ルビーのような赤い瞳と至近で視線が合い、何が面白いのか微笑んでいる紫髪の少女、秤アツコに対し、寝惚けた頭と半眼で要求を口にする。
部屋に無断侵入したのは、まあギリギリいい。問題があるとすれば、寝ている俺にパジャマ姿で馬乗りになっていることだろうか。いやだろうかじゃねえわ、だから布団越しに妙な暖かさというか温もりがあったのかよ。
「わ、声ガサガサだね」
「寝起きなんだから当たり前だろ……感想はいいから、まずどきなさい」
「私、重い?」
口裂け女かオメーは、わざと悲しそうな表情するのはやめなさい。絵になるし俺が悪いみたいな構図になるやろ。
「まだ心配になるくらい軽いよ」
「そっか、良かった」
「いやよくはねえよ?」
お前さんの健康と今の体勢が。そう続けようとしたものの、扉が開く音でタイムアップを告げられてしまい、溜息を吐く。アツコはニコニコしてる。
「おっはよー先生! 今日は久々のいい天、きーー?」
薄ピンクのワンピース寝巻き姿で部屋に入り、無邪気な笑顔を浮かべる彼女、聖園ミカは室内の状況を見て笑顔のまま固まり、
「……あ、アツコちゃんが先生を、美味しくいただこうとしてる!?」
「俺は料理か?」
「ご馳走ではあるね」
いや良くてインスタントだろ。あわあわしているミカを二人で眺めつつ、今日も騒がしそうだなと一日が始まった実感を得る。いやこんなことで感じるのはどうなんだ。
ところでアツコ、そろそろどきなさいって。
「私は乗ってるだけだし、簡単にどけられるよ?」
「太ももでガッチリ拘束してる癖して何言ってんだ」
ほっそい足の癖してピクリとも動かん。いや頑張れ頑張れじゃねえから、俺の力じゃ無理なんだよ。
「わ、私も乗った方がいいのかな先生!?」
「落ち着けミカ、寧ろアツコをどかしてくれ」
この後ミカがめちゃくちゃ引き剥がしてくれた、アツコは不満そうだけどこれでいいんだよ。
「危うく淫交教師の烙印を押されるところだった」
「その割には先生、冷静だったのが不満」
「不満じゃない状況はやばいんだよアツコ。悪夢みたいなドッキリには慣れてるからな」
ミカの誤解を解いてから部屋を出て、キッチンへと向かう。死ぬようなドッキリ(武装した本職の人に囲まれるとか)に比べれば安いもんだとは思う、アツコのは社会的に死ぬか修羅場になるけど。
右にアツコ、左にミカが並んで入ると、部屋の中から食欲をくすぐる匂いが漂ってきた。もう作り始めてたか、悪いことしたね。
「……両手に花? 朝からいい身分だね、先生」
「変わるか、ミサキ? 油の跳ね具合より勢いがいいけど」
四割増しのジト目に軽口で応じると、灰色のシンプルなパジャマを着たミサキが溜息を吐き、
「やめておく。もう出来上がるし、皿用意して大人しくしてて。姫は寝てるヒヨリを起こすのお願い。
そこのピンクのお姫様は・・・・・・思いつかないから、座ってて」
「私だけ雑じゃないかなあミサキちゃん!?」
目線だけ一瞬送ったミサキの背中に文句を言うミカだが、当然のように無視されてご立腹である。ぷんぷんとか口で言う奴初めて聞いたわ、痛いじゃなくて可愛いと思える美少女は得やな。
「あ、ミサキ」
「何? 今手が離せな「「「おはよう」」」・・・・・・おはよう」
一瞬間を空けてから、異口同音の挨拶に小声で返して目玉焼きを皿に盛っていくミサキ。わざわざ振り返る辺り律儀なところあるよな、アツコがプレゼントしたクマのエプロンも、パジャマの上にちゃんと着てるし。
「ミサキ、そろそろ醤油がーーああ先生、姫、ミカもおはよう」
「おはよ、サッちゃん。ヒヨリはまだ?」
「ああ、夢の中だろう。一応起こしたのだが・・・・・・」
「うん、じゃあ起こしてくるね」
部屋の奥から、同じく起きていたサオリも出てきた。材料抱えて出てきた姿が完全に業者か店員のそれなんよ。服も寝巻きからいつものに着替えてるし。
てくてく歩いていくアツコを微笑ましそうに見ながら、「ねー聞いてよサオリ―。ミサキちゃんが酷いんだよー!」と突撃してくるミカに首を傾げている。お母さんみたいやな。
アツコの足音がおかしい? 俺にはそう聞こえたんだよ(真顔)
<「ぶふぇ!?」
・・・・・・何か壁を貫通して、潰れたカエルみたいな声が聞こえたけど。どんな起こし方したんだ、アツコのやつ。
「うう、お腹に姫ちゃんの圧力が・・・・・・辛いですね、苦しいですね・・・・・・」
「苦しいなら朝飯は控えるか? ヒヨリ」
「!? うわぁぁぁん! 先生が私を兵糧攻めするんですね!? もう三食お腹いっぱい食べられる生活はおしまいなんですね!?」
「いや減らすだけだよ。一食抜いたくらいじゃ死なねえよ」
「知ってますよお!? 三日以上水しか飲めないこともあったんですからあ!」
そういやお互い限界に近い食生活送ったことあったな、失礼。だけど思い出させてやるなよ、サオリ達が微妙な顔してるぞ。
その後、朝食の席でソーセージをやったら泣き止んだ。オイ一本だけだよ、笑顔で当たり前のように全部取ろうとするんじゃねえ。
さて、何故ミカとアリウススクワッドがシャーレで堂々と朝飯を俺、シャーレの先生と食えているのかというと。
結論から言うと、赤バ、ベアトリーチェに責任の全てを押し付けた。
エデン条約時に起こった諸々の後、事後処理においてアリウススクワッド、及び事件に関わったアリウスの生徒に対し、連邦生徒会は指名手配を行う予定だったのだが。
「望まず手を汚した目先の者を捕えるだけで、指導者を放置するのは同じことの繰り返しじゃないか?
それに事情も聞かずただ捕まえただけじゃ、利用されてた奴らがあんまりだろ」
俺がそう告げたところ、会議は紛糾したらしいが結果としてアリウス生徒の指名手配は無しになり、シャーレ預かりの保護兼監視と奉仕活動で決着となった。クソ真面目にやったから早期に終わったし、たまに巡回してた面々が微妙な顔してたな。
で、アリウスの面々だが。大半は編入先で勉強や学生生活を謳歌したり、シャーレの紹介でアルバイトに精を出している。前評判を覆すように真面目な奴が多いため、今では求められる人材になったのは嬉しい誤算やな。
一部はアリウス分校に今も残っており、たまに様子見も兼ねて生活物資を渡しているのだが、臨時リーダーとなっている梯スバルがやたら複雑な顔で絡んでくるのは、思うところがあるのだろう。
そしてミカだが、こっちもベアトリーチェが唆したことにして財産の没収を撤回させた。というかパテル派の一部がガチでアリウスと内通し、ミカを唆したのがバレて内紛で派閥がボロボロになったため、火消しのために主犯と赤ババアを槍玉に挙げて誤魔化した副産物だが。
ヴァルキューレの面々には悪いが、死人らしいベアトリーチェは口なしであることを利用させてもらった。まあサオリ達の話を聞く限り、全ての元凶と言っても過言ではない悪行を重ねてたみたいだからいいだろ、自業自得である。
で、最初の話に戻るが。アリウススクワッドがここにいるのは、仕事や『自分探し』をするのにシャーレが一番適切だから、だそうだ。何かアツコは意味深な笑みを浮かべてたけど。
ミカ? ほぼ寮に帰らないで遊びに来てるだけだよ、毎回外泊許可出して担当生徒とナギサに呆れられてるらしい。たまにコハルも(文字通り)持ってきてお泊まりさせてるけど。
朝食を終えてミカがトリニティ、サオリとヒヨリはバイトへそれぞれ向かっていった。ミサキは今日休みのため、元アリウスの生徒と一緒に出掛けるらしい。「誘われただけだから」と言っていたけど、手にぬいぐるみのチラシ持ってたの見えたぞ。
「先生。こっちの領収書、何だか計算がおかしいんだけど・・・・・・」
「んあ? ちょい見せてみ。
・・・・・・あー、これ余計なもんも予算計上してるな。間違って・・・・・・いや装飾品は明らかに違うって分かるだろこれ」
「つまりわざとだね。どうする先生、処す?」
「おう最後の手段を真っ先に出すのやめーや」
そんで、アツコは本日シャーレの当番である。仕事も教えたらスポンジのようにどんどん吸収していって頼りになる。
なるけど、いい笑顔で銃を構えるのはやめなさい。アリウスだとこれが普通? 暴力で分からせると却ってややこしくなるんだよ、こういう時は相手の不手際を元手に『交渉』するのが一番正しいから。
「それは先生の方が、えげつないんじゃないかな?」
「意図的なものならこれくらいやってもいいんだよ。隙を見せた相手が悪い」
「つまり・・・・・・弱味を握ったってこと?」
「そんな物騒なもんじゃねえよ。ただ注意しておけば、よっぽどの阿呆でもない限り同じことは繰り返さないだろ」
なるほど、とアツコは感心したように何度も頷く。元々スクワッドの面々で一番しっかりしていたが、最近は社会の立ち回りも覚えていくことで、強かさも身に着けてるように感じる。
「腹黒くなってるの間違いじゃない」と言ったミサキは、笑顔で圧を掛けられていたが。あいつが花粉症と閉所恐怖症等以外で焦っているの初めて見たわ、いや結構多いな。
「ねえ、先生」
「ん? 何よ、今度は謎クレームでも入ってた?」
「ううん、今度はちゃんとした書類だけ。そっちじゃなくて。
ーーありがとう、先生」
「? どした、突然」
PCから顔を上げると、揃えた足の上に手を添えて微笑んでいるアツコと俺の視線が合い、嬉しそうに語り続ける。
「先生のお陰で、今の私達はこんな風に温かいご飯を一緒に食べたり、一緒に過ごせてるから。
・・・・・・きっと、あのままだったら私達は指名手配されて、追われる日々を送っていたと思う。ミカもひょっとしたら、もっと大変な日々を送っていたかもしれない。
だから色々なお礼をしたくて、改めて言っておきたかったの。
アリウスのロイヤルブラッドとは関係なく、ただの秤アツコとして、ありがとうって」
感謝と慈愛に満ちた笑みを浮かべ、こちらを見上げながら礼を言ってくるアツコ。
それが、あまりにも眩しく感じて。俺は身体ごと視線から逃れ、机に肘を突く。
「あー・・・・・・別に、礼言われるほどじゃねえよ。あの件で実行犯に非を寄せるのは根本的な解決にならんし、糸引いてた連中の後始末も出来た。
お前らが助かったのは、単に運が良かっただけだよ。幸運を噛みしめればいいだけで、俺への感謝は必要ねえ」
「ふふ。それじゃあ先生は、素直になれなくて可愛いってことで」
「どういう結論だそれは」
机に両手と顔を乗せ、こちらを見上げてくるアツコを軽く睨むが、笑顔が全く崩れないのを見て諦めの溜息を吐き、
「・・・・・・それに、お前らが許されないなら俺はもっとアウトだよ」
「? どういうこと?」
「別に。いつかのことを思い浮かべただけさ」
それ以上は何も言わず、仕事を再開する。しばらくキーボードの音に紛れて横からの視線を感じていたが、結局アツコは口に出さず別の話題を口にする。
「先生。今日の夕飯、好きなもの作ってあげるね。何がいい?」
「酒」
「・・・・・・そういうことじゃないんだけど」
袖を引っ張られたのでそちらを見ると、フードを下ろしたアツコが半目でじっとりとした視線を向けてきていた。はいはい、可愛いだけだから意味ないぞ。
「悪かったよ。仕事終わるまでには考えとくから、むくれるなって」
「もう・・・・・・ちゃんと考えてね? あと、私と一緒に買物へ行くこと」
「はいはい、姫様の仰せの通りに」
登場人物紹介
先生
どう足掻いてもロクデナシなシャーレの先生。エデン条約後の暗躍により救われた生徒も多かったが、事後処理や自分のやらかしで被害を受けた生徒も少なくない。
アツコ達の境遇に関しては自分の過去を重ねているが、詰め寄られない限り話す気はない模様。これは生徒の物語だしね。
夕飯は肉じゃがと魚をリクエストした。
秤アツコ
アリウススクワッドの姫にして、実は一番しっかりしている子by先生。
シャーレの仕事や花屋のバイトでも活躍中。勉強は時々先生に教えてもらっているが、生物や保健体育の方面に持っていこうとして呆れられている。
夕飯のリクエストを聞いてニコニコしていたため、先生に首を傾げられた。
錠前サオリ
アリウススクワッドのリーダー。こちらではアツコ達と別れず、自分探しをしながら複数の仕事を掛け持っている。先生曰く「効率主義脳筋ワーカーホリック」
原作だと口座が作れなくて、去ろうとしていた銀行の警備員を務めている。
戒野ミサキ
アリウススクワッドの火力兼ツッコミ担当。固定の仕事はまだ決めておらず、主に日雇いのバイトで生計を立てている。
スクワッドで一番料理が出来、時間も一番余っているため彼女のエプロン姿を見ることが多い。
ミカの扱いが若干雑。
槌永ヒヨリ
アリウススクワッドの狙撃兼食いしん坊担当。本屋で仕事をしており、発売日に大量の雑誌をホクホク顔で購入し、質の悪い立ち読み客をこそこそ撃ち抜く姿が良く目撃されている。
悲観的に泣くことは少なくなったが、ご飯が美味しくてよく泣いている。幸せの証拠である。
最近、お腹周りが気になる模様。
聖園ミカ
トリニティのお姫様。原作でいた屋根裏部屋の寮にはほとんど帰らず、シャーレの一室を(勝手に)間借りしている。
先生の根回しやナギサの仕事で『魔女』騒ぎは早期に終結したため、トラウマにはなっていない模様。代わりに原作より容赦なくなっている。
コハルだけでなく、仲良くなった子をお持ち帰り―して一緒にお泊まりすることもしばしば。
あとがき
筆の動き鈍ってるってレベルじゃねえ()
というわけで、ご無沙汰しております。りいんです。以前からこの作品の構想は浮かんでいたのですが、形にしようと思ったら気付いたら一年経ってました・・・・・・しかもゲーム自体はアリウスのメインストーリー始まってるし。
とりあえず、この話はミカやアツコ達が私なりに幸せになって欲しいと思って書きました。もちろん原作でも最後はハッピーエンドだと思う・・・・・・けど、その過程が今の時点で辛いところ多いので・・・・・・
それでは、また次回に。感想や評価などいただけましたら、大変励みになります。
次回は・・・・・・内容未定です(オイ)