今回はユウカの誕生日となります。
三つのプレゼント(ユウカ)
三月十四日。それは女子生徒しか(多分)存在しない学園都市『キヴォトス』にとって、あまり関心のないだった。
生徒達から『先生』と呼ばれる俺が、『シャーレ』の顧問に就任するまでは。バレンタインのお返しが多すぎて頭おかしくなりそう、ちゃんと渡したけどさ。
まあ今日はそれだけじゃなく、目の前で期待した視線を向けなてくるミレニアムの鬼才さんのこともあるんだが。
「先生、今日は何の日かご存知ですか?」
「世間一般ならホワイトデーだな」
「今日は私の誕生日です」
「聞いた意味ある?」
「素直に答えてくれないのが悪いんですよ? そんな先生にはガッカリしてしまったので、プレゼントは私が選びますね」
「何頼む気だよ、ユウカ」
ガッカリしたと言いながら、ツーテールに結わえられた髪を上機嫌に揺らしている少女、早瀬ユウカに眉を寄せながら答える。資金もそこそこ用意はしているが、何事にも限度はあるんだぞ。
「そんな警戒しなくてもいいじゃないですか。高いものじゃないですよ?」
「そう言われて付いていったが最後、大阪でぼったくられなかった話は聞いたこと無いんだが」
「……先生、本当に
「ゲヘナをもう二段階くらい酷くした感じ」
「……」
そんな憐みの目を向けられても困る、慣れれば犯罪都市でも快適に住めるもんだぞ。
「住めば都と言っても、限度はあると思うんですが……」
「最低の環境を知ってれば、キヴォトスの暮らしはどこでも楽園だぞ」
「比較対象が悪すぎるってこと分かってます?
……と、いけない。また話がずれるところでした。それで先生、お仕事は終わりました」
「ちょい待ち。……ほい、送信完了っと。悪い、待たせたな」
「いえいえ、先生にしてはテキパキ進められていただいたんですから、何よりです」
「お前最近口悪くなってきてない?」
「そうですかね? 私の計算によると、目の前にいる人の影響が大きいんですが」
「へー、どちらさんのことかね」
すっとぼけてみるも、呆れた笑みを向けられた。その全部分かってますよみたいな顔、どう反応すればいいんだか。
「何だったら、先生の行動パターンを数値化して常に把握できるようにしましょうか?」
「やめて怖いから」
ユウカが言うとシャレに聞こえん。
「冗談ですよ、プライバシーは尊重しないとですから。
さ、それじゃあ出かけましょうか? この後は丸一日、付き合っていただけるんですよね?」
「ああ、ちゃんとスケジュールは空けてあるよ」
このために事前の準備ーー今日分の仕事を減らすのと、ホワイトデーのお返しを前倒ししただけだがーーは済ませたしな。
緊急の任務でも入れば話は別だが、流石にキヴォトスも空気は読んでくれると信じたい。じゃなきゃヘソを曲げるユウカが容易に想像できる。
「ふふっ」
「? 何よ、さっきから楽しそうに」
「いえ、珍しく先生を独占できる時間が出来たなって。
あんまりこう言うのは好きじゃありませんが、今の私は計算不能な感情に包まれてます」
「素直に嬉しいって言えばいいんじゃねえの」
「ーー先生にしては、好意的な言葉選びをするんですね?」
「俺のことなんだと思ってるんだよ」
「いつもならこうなってる私を見て、まず財布の心配をするかなって」
「こういう日にケチなこと言わねえよ」
プレゼントを出し渋って関係悪化とか嫌だし。ただでさえ仕事が忙しいのに、ユウカが抜けたら死ぬわマジで。
俺の言葉をどう受け取ったのかは知らんが、ユウカは一瞬虚を突かれたようになった後、
「それじゃあ、えいっ」
「うおう? 何してるし」
「ふふ、これは先生には計算外だったようですね?」
「……顔赤くして言われてもねえ」
普段はあまり見せない、イタズラが成功した子供のような笑みを浮かべて腕を組んできた。指摘通り、顔面はタコになりかけくらいの色だが。
「そ、そういうことハッキリ言わなくていいです! 私だって恥ずかしいんですよ!?」
「じゃあ離しなさいな」
華も恥じらう女子学生なんだし、こういうことは心に決めた人にやるべきだろうよ。キヴォトス基準では。
「……先生、ホントそういうとこですよ?」
「どういうことよ」
「これは私の口から言えることではないので、ご自分でお考え下さい。ちなみに私は今、不機嫌です」
「見りゃ分かるよ」
そっぽ向かれてしまった。どうも言葉選びを間違えたみたいだが、何が悪いというのか。
しょうがない、後で渡すつもりだったが、ここでイベントカードを切るか。
「はいはい、悪かったよ。これやるから、機嫌直しなさい」
後頭部にホワイトデーのお返しを乗っける。中身は作業の片手間で食べれる、ちょっとお高いキャンディ達だ。
「……こ、これくらいでどうにかなるとでも?」
声震えてんぞ、たまにチョロいとこ見せるから先生心配だよ。
「んなこと思ってねえって。今日一日は付き合うって決めてるんだから、好きなとこ付いてくし連れてってやるよ、お嬢さん」
「……先生、本当にそういうところですよ?」
「何で二度言うし」
潤いのある瞳で溜息吐くって、器用な真似するねユウカさん。
「……そこまで言うなら、今日は思いっきり振り回すので覚悟してくださいね?」
「はいよ、どこへなりともお供しますとも」
肩を竦めて了承すると、ようやくこっちを向いて笑顔に戻ったユウカが俺の腕を引っ張り、先を歩き始める。
「それじゃあ行きましょう! 時間は有限なんですから!」
「っとと、そんな焦るほど少なくねえって」
「先生はそうでも、私には少なく感じてしまうんですよ!」
そんなもんかね。短いスカートを翻しながら軽やかに進むユウカの姿に苦笑しながら、俺も歩みを進めることにする。
(さて、いつ渡して伝えるかね)
ユウカが選ぶもの以外に用意したものーー俺が選んだプレゼントが懐にあるのを確認し、ゲーム開発部のサプライズお祝いについていつ話すか思案しつつ、二人でシャーレの外へ出る。今日がユウカにとっていい日になると、いいんだがね。
●キャラ紹介
先生
近畿特別区『大阪』から来た先生。原作と異なる人物であり、金策は割と得意。ただし口は悪いし、一人称は『俺』。
ユウカには恩も情もあることから、今回の誕生日には色々な準備をしていた。
朴念仁。
早瀬ユウカ
全先生がお世話になる、ミレニアムの鬼才。誕生日でいつもよりテンションが上がっている。
先生ガチ恋勢の一人。相手の鈍感さに関して、最近は「まあ先生だしなあ」で流せるようになってきた。
先生からのプレゼントに関しては、「これ勘違いされても文句言えませんよ……」とのこと。何を渡されたかは乙女の秘密。
●後書き
間に合いませんでしたユウカさん大変ごめんなさいorz
というわけでブルアカ二次創作、ユウカのお祝いも兼ねて試しで書いてみました。主人公は原作の先生とは異なる『大阪』から来ているので、ちょっとキャラが異なります。
気になる人は『サタスペ TRPG』で調べてみましょう。そしてルールブックを買いましょう(謎ステマ)
それでは、また次があればお会いしましょう。