というわけで、コハルの誕生日です。
『コハル、今日誕生日だろ? プレゼント渡したいって奴がいるんだが、今どこにいる?』
『先生、そう言って私の部屋に上がって……な、何するつもりなの!? 変態! 死刑!』
『なんでそうなるよ妄言娘』
『その呼び方やめてよ!?』
極めて的確な呼び方だと思うけどな。
本日はトリニティの正義実現委員会兼、補習授業部所属下江コハルの誕生日。
……なのだが、本人がいつも通りの調子で話が進まないため、シャーレへ来て貰うことにした。誕生日の主役を呼び寄せるって、どうかと思うんだけどな。
シャーレの入口で一服しながら待っていたら、遠目からでも目立つピンク髪が見えてきた。何かガチガチに緊張してるように見えるんだが、どうした自分の誕生日だぞ。
「あ、せ、先生……」
「おはよ、コハル。悪いな、わざわざ来てもらって」
「べ、別に、今日お休みだったし……
それより、先生私の誕生日、覚えてくれてたんだね」
「そりゃあ受け持ってる生徒の誕生日だしな、ちゃんと覚えてるとも」
「うん。それでも……嬉しかったな、って。
ありがと、先生……」
「…………」
「わ、わ!? ちょ、何で撫でるの!?」
「いや、何となく」
あれだ、お礼を言う姿に小動物的な保護欲を感じた。大阪の路地裏で、餌あげた野良猫思い出したわ。
「も、もう簡単に頭撫でて……何する気なの!?」
「何かするのは俺じゃなくて、中にいる奴なんだが」
「は!? ま、まさか、中にいる子と私も巻き込んで……! 先生の変態! 死刑!」
「待たせるのも悪いから行くぞ妄言娘」
「だからそれやめてってば!?」
だってこう言わないと止まらねえじゃん。何でこれで止まるのかよく分からんけど。
「……ところで先生、誰が待ってるの?」
「ああ、それはな」
「コッハルちゃーん!!」
「にゃわああああああ!?」
回答する前に
「来てくれてありがとうー私とっても嬉しいよー。あ、お誕生日おめでとう!」
「みみみ聖園先輩!? なななにゃんでここに!?」
「ミカでいいよー。何って、先生にお願いしてコハルちゃんにプレゼント渡そうと思ったのは、私だから!」
「え? ええ? えええええ!!?」
「これドッキリ大成功! って奴かな、先生?」
「それ嘘ネタでやるものだろ」
「う、嘘? やっぱり先生、私を騙して変なことするつもりだったんでしょ!? 変態! 死刑!」
「それ俺に何の得があるんだよ」
抱き枕状態になってて尚俺に不信を向けるとか、コイツの妄想もある意味すげえな。
「えープレゼントは本当だよ? それを嘘扱いされちゃうなんて……ぐすん」
清々しいくらいの嘘泣きだったが、コハルは慌てた顔になる。嘘だろこれで騙されるのか。
「わ、わわ!? ごめんなさいミカ先輩! 先輩のことを疑ったわけじゃないですから! 先生のことを疑っただけですから」
「オイ俺をダシにすんなし」
「本当? それなら良かった!
と・こ・ろ・で、コハルちゃん? 三人で変なことって、一体何を想像してたの?」
「へ!? そそそそれはあのそのあの変なことってエッチなことを想像してた訳じゃなくてあうううう」
「ありゃりゃ、ちょっとからかい過ぎちゃったかな?」
「ほぼ自業自得だけどな」
いつもなら淫乱ピンク(ガチ)が余計なこと付け足すけど、カウンター返されるのは初めてで混乱してるな。
「え、えっとー、えっとー。先生の変態! 死刑!」
「なんでやねん」
「あはは、やっぱり面白いねーコハルちゃんは。見てて飽きないかな」
「お前も似たようなもんだけどな」
主に目を離すと何をしでかすか分からない敵な意味で。
「そ、そんなに私達のこと見て……にゃ、にゃに考えてるの先生!? エッチなのはダメ!」
「何で噛んでるんだよコハル。ほらミカ、プレゼント渡しちまえって」
「……せ、先生。その、先生はそういうことしたいの……?」
「お前までそっちに行くな、収集付かなくなるから」
顔赤らめるな、初心か。……そういや初心だったわ。
「や、やっぱり「よーしループしてるぞ妄言娘」先生その呼び方気に入ってるの!?」
「ミカ、プレゼント渡してやれ」
「うん、そうするね。じゃあコハルちゃん、ちょっと待っててね」
待ってる間不満なのかギャーギャー叫んでるコハルだが、さっきまでコアラみたいに抱えられたせいか子犬みたいに感じる。
「おっまたせー! はいコハルちゃん、改めて誕生日おめでとう!」
「あ、ありがとうございます。ミカ先輩……」
渡された紙袋を大事そうに抱えながら、尻すぼみで、それでもしっかりお礼を言うコハル。顔真っ赤なのは恥ずかしいのか嬉しいのか、どっちなんだろうね。
「……何だろう先生。すっごいコハルちゃんのこと抱きしめたい」
「さっきもしてたじゃん。まあ、好きにすればいいんじゃね」
「うん、よし。コハルちゃんぎゅー」
「ふえ? みにゃああああ!?」
あすなろ抱きされたコハルがまた猫みたいに叫んでる。なんだろ、耳が生えてるように見える。
(……なんか、ヒフミを溺愛するナギサみたいだな)
触れ合い方は全然違うけど、幼馴染で似るようなもんかね。
「……まあ、いいことなんだろうな」
エデン条約の一件で苦手意識を抱いても不思議じゃなかったが。その辺はコハルが歩み寄ろうとする
「先生? どうしたの優しい顔で黄昏て、おじさんみたいだよ?」
「どんな顔と目してるんだよ俺は、オッサンなのは否定せんが」
「否定しないんだ……さって、コハルちゃん? これから補習授業部のみんなも祝ってくれるから」
「ふみゅうー……」
「あれ? 目を回しちゃった?」
「羞恥心がオーバーヒートしたか」
まあ普段はベタベタする奴いないからな。にしても許容量低い気がするが。
「んー……じゃあこのまま連れて行っちゃおうか! 先生、車お願い」
「お前マジで言ってる?」
「? なんか変なこと言った?」
「……起きたらお前が説明しろよ、ミカ」
変というより誘拐だろ、絶対騒ぐぞコハル。
その後、補習授業部がお祝いするために用意した会場(トリニティの空き教室の一角)に到着前で目を覚ましたコハルが、ミカに抱きかかえられたままでパニックになったのは言うまでもない。
何回「変態! 死刑!」って言われなきゃならないんだろうな、俺。というか俺が原因かよ。
おまけ
「あ、あわわ……」
「うふふ。コハルちゃんに手を出すのはやめてくれませんか、ミカさん?」
「聞き分け悪いね浦和ハナコ。コハルちゃんを自分のものみたいに言うのはおかしいんじゃない?」
「仲悪いなーコイツら」
「あ、あはは……」
キャラ紹介
下江コハル
補習授業部の良心(多分)。ミカがグイグイ来たことに最初はビビっていたが、先生が仲介したのもあって今は抱き枕と化している。
『妄言娘』と呼ばれるのが嫌で、妄想をストップしてでも文句を言う。
聖園ミカ
エデン条約の一件からコハルと仲良くしたがっていたが、流石にやらかして躊躇していたところを先生が取りなして仲良くなり、今では見かけるととりあえず抱きしめるようになった。
ハナコとは価値観の違いから、セイア以上に反りが合わない。
プレゼントは、髪留め等の各種アクセサリー。
後書き
ミカはコハルを溺愛する、こんな構図しか浮かびませんでした()
読んでくださった方、ありがとうございました。