イベントで出てきてからずっとお迎えしたくて、190連で出てきてくれたのもいい思い出です()
「なあ、ウイ。本当に誕プレはこれで良かったのか?」
「は、はい……勿論です。先生が新しい子を連れてきてくださった、だけじゃなく、お願いも聞いていただけたんですから……贅沢な、くらいです」
「そういうもんかね」
シャーレのオフィス、ではなく俺の自室。誕生日のプレゼントに渡した古書の写本を胸に抱いた少女ーートリニティの図書委員長、古関ウイは赤い顔で頬を緩め、俺の隣に座っている。
ソファで密着しかける距離という、甘酸っぱい青春ものみたいなシーンになっているのは、誕生日プレゼントとは別に『お願い』を聞いた結果だ。
(『隣に座りたい』なんて、な)
別に普段から構わないぞ。と口にしようと思ったが、上機嫌のようであるウイの横顔に無粋かと思い直した。
多感な時期だからか、普段は仲良いと言っても距離を取ってるからな。いや、それくらいが普通なのだろうか。
「本屋や喫茶店に行くとか、自分が欲しいものを買うとかでも良かったんだが」
「その……午前中に委員の子達や、ヒナタさんに祝ってもらったので……先生と一緒に、ゆっくりしたいんです……
だ、ダメでしょうか……?」
「いや、もっと贅沢なお願いでも問題ないってだけさ。ウイがそれでいいなら、一緒にいるか」
「……あ、あの、先生。一つ、お聞きしても、いいでしょうか?」
「ん? 何だ?」
顔を横に向けると、見つめ返してきたウイが上目遣いで口をもごもごさせていたが、
「あの、その……わ、私のにお……
や、やっぱり、何でも、無いです……」
結局言い切らず、目を逸らして口元を本で隠す。
「ふむ」
「えう!? せ、先生……? あの、何を……」
首元に顔を近付けられたことでテンパるウイに対し、俺は一度鼻を鳴らして思ったことを口にする。
「別に気にしないぞ。寧ろ好ましい類だ」
「……? !?
あ。え、え、ええ……!?」
何を言われたか理解したのだろう、視線を向けたウイが、白い肌をみるみる紅潮させていく。やべ、流石に変態の所業過ぎたか。
「あー、すまんウイ。デリカシーが無さ過ぎたな」
「う、あの、その……い、いえ、あの、大丈夫です……気にして、ないので……」
いつも以上にどもってる時点で説得力ないぞ。掘り返す内容でもないから、これ以上は言わんが。
(まあ、実際いい匂いなんだけど)
古書とペンの匂いに混じり、ウイ独特のものも感じられる。決して不快にさせない調和を果たしており、どこか安心感を感じさせてくれた。
「えっと、先生。とりあえず、読ませていただきますね……あの、先生におすすめの子も、持ってきたので……!」
「うん、ありがとな」
半ば押し付けられるようにおすすめの一冊ーーオカルト関係の古い書籍を翻訳したものーーを受け取り、眼鏡を掛けて読書の体勢に移る。書類仕事と読書の時は集中したいからいつも掛けてるけど、「意外と似合う」ってよく言われるんだよな。
ページをめくる音だけとなる状況は、古書館ではいつもの光景。
常と違うのは、読んでいる場所が俺の自室であることと、隣にウイがいることだろうか。
普段との違いがあるということで、どうしても気になってしまう。
「…………」
(めっちゃ見られてる)
俺じゃなくてウイが。読み進めながらも視線をこちらに感じるし、近寄りたいのか身体を揺らしている。
「……」
「うえ、え? あ、あの、先生……?」
「どした?」
「えっと、その……な、なんでもないですっ」
「そっか」
ので、こっちからくっついた。ウイが素っ頓狂な声を上げてこっちを見たけど、水を向けたら思いっきり顔を本に戻していた。これ内容入ってるのかね。
「「……」」
しばらく無言の時が続き、ウイの体温を感じながら読書を続けていく。集中しているのもあるし、互いに無言が苦にもならないので、この時間は心地よく感じる。
夕日が落ちかけた頃、先に読み終えたらしいウイが本を閉じたので、俺も栞を挟んで息を吐く。。
「あの、先生……」
「ん? どしたよ」
「その、今日はありがとうございます。
私の我儘を、聞いてくださって……」
「これくらい構わんよ。俺もこういう時間は好きだしな」
「……っっ」
「ウイ? どうした?」
「いえ、なんでも……」
一瞬面食らった顔になるウイだが、声を掛けるとまた本で顔を隠してしまった。目元まで言ってないから、そうやって見つめられると小動物みたいに可愛いだけなんだが。
「あの、それじゃあ……次はまた、古書館で一緒に、並んでも……」
「次はウイから来てもいいんだぞ」
「あう、う……か、からかわないでください……!」
「はいはい、悪かったよ。アイスアメリカーノ用意するから、許してくれ」
別にからかってはいないんだが、そんな恥ずかしがるようなことかね。
後書き
また間に合ってねえじゃねえかチクショウ(自業自得)
と言う訳で、パーティーの後は何気ない日常で過ごしたウイのバースデーでした。お互い、あんまり騒ぐタイプじゃないですからね。
読んでくださり、ありがとうございました。