『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

17 / 42
 ミカの誕生日SSです。実装まだですか?(二回目)


贖罪天使の愛し方(ミカ)

『先生、誕生日のお祝いは普通のケーキにしてよ? ロールケーキは嫌だからね?

 いや、フリじゃないからね!? もうナギちゃん以外でロールケーキは見たくないのー!』

 

 と、本日の主役がお願いしてきたため、買ってきたデザート片手にシャーレの居住区へ戻ってきた。

 監視の意味も兼ねて、一室を改造して住めるようにしたのだ。よく勝手に出かけてるけど。

 

「たでーまー」

「あ、お帰りケーキ、じゃなくてせんせー。買ってきてくれた?」

「本音漏れてるぞ、俺はケーキじゃねえよ」

 

 シャーレの休憩所(部屋よりここの方が居心地いいらしい)にあるソファーで、寝転がりながら俺を待っていたミカが、楽しそうに身体を起こす。

 

「ほれ、ご要望の」

「わーい♪ 何かな何かな?」

「ブッシュ・ド・ノエル」

「結局ロールケーキぃ!? しかも時季外れにも程があるでしょ!?」

「いつも食べてる奴じゃないだろ」

「そりゃクリスマスシーズンのものだからね!? 普段出てきたらビックリだよ!

 というか先生、誕生日までロールケーキとか完全に嫌がらせじゃん!?」

「ちゃんとミラクル5000も買ってきたが。前食いたいって言ってたろ」

「最初からそっち出してよ!? 私の反応見るためだけに買ってきたでしょ!?」

「半分はそれで、もう半分は俺が食うから」

「ええ……先生、出掛ける前に作り置きのお菓子も食べてなかった?

 いつか糖尿病になるんじゃない?」

「肝臓と肺以外は至って健康だよ」

「少しは禁酒禁煙しなよ!?」

「お前それ呼吸をするなって言うのと同義だぞ」

「完全に依存症のそれじゃん!?」

「ギャンブルには手を染めてないからいいだろ」

「お金だけじゃなく身体も労わりなよ!?」

 

 労わるから吸うし呑むんだよ。というか割と好き勝手生きてるミカに言われるって、なんか納得いかねえんだが。

 

「私に言われるくらいヤバいってこと自覚しようよ先生!?」

「やめられない止まらない♪」

「かっぱえび〇んみたいに言うものじゃないよ!?」

 

 気軽さは似たようなもんだろ。

 

 

 

「なんで誕生日なのにこんな疲れてるんだろ……」

「他人の健康なんて気にしてるからだろ」

「先生の健康悪化は、キヴォトスでも一、二を争う問題だと思うんだけど」

「セリナとハナエとミネとセナにも似たようなこと言われたし、怒られたわ」

「救護騎士団どころかゲヘナの奴にも言われてるじゃん……一回入院でもした方がいいんじゃない?」

「シャーレの仕事が完全に穴空くことはダメだって、連邦生徒会に却下されたらしい」

「……ゲヘナのついでに、連邦生徒会滅ぼした方がいいんじゃないかな?」

「おーい誕生日くらい武器を仕舞いなさい。あとそのRPG-7(ロケラン)どこから持ってきた」

「先生が使ってる倉庫に入ってた!」

「戻してきなさい。ほら、それよりケーキ食べるぞ」

「はーい。ミラクル5000、ミラクル5000♪」

 

 楽しみなのは分かったから、ロケランをソファに投げ捨てるのはやめなさい。それ暴発したら俺死ぬぞ(←持ち込んだ奴)

 

 

「でも、本当に祝いのケーキだけで良かったのか? お前を祝いたい奴もいると思うが」

「ん? あー、まあ、そう言ってもらえるのは嬉しいけど……ほら、私って色々やらかしたじゃん?」

「まあ、やらかしてるな」

「……そう思うと、さ。正直先生に祝ってもらうだけでも、この上なく贅沢だなーって思っちゃって、さ……」

「……反省してるのはいいけど、それで自己評価を下げるのは違うだろうよ」

「あはは、先生忘れたの? 私は本当だったら檻の中にいるような、悪ーい生徒なんだよ?」

「なるほど、お前はそう認識してるんだな」

 

 ラウンジの扉に手をかけ、

 

「認識も何も、実際そう

 

 

 

「だ、そうだぞ。ナギサ」

 

 

 

 ーーへ? むごお!?」

 

 いるはずの無い幼馴染の名前に反応が遅れたミカの口に、緑色のロールケーキがーーいや、いつ突っ込まれたんだこれ。目の前で見てたのに見えなかったぞ。

 

「全く。反省してるのは成長してると言えますが、変に抱え込む癖は治っていませんね、ミカさん」

「むぐむごご……ねえナギちゃん、この抹茶味すっごく苦いんだけど」

「これからケーキを食べるので、甘さ控えめにしたものを用意しました」

「その気遣いができるならそもそも突っ込まないでもらえるかなあ!?」

「似合わない不景気な顔をしていたので、幼馴染として消してあげないとと思って」

「もうちょっとマシな方法あるでしよどう考えても!

 って先生、何思いっきり笑ってるのさ!?」

「ぷっ、くく……すまん、不意打ち喰らったミカの間抜け顔がツボっちまって……」

「間抜け顔言うなあ! 乙女になんて言い草するのさ!」

「ミカさん。乙女とは淑女の嗜みをきちんと身につけた人が名乗っていいんですよ?」

「それ私が乙女じゃないってディスってるよねえナギちゃん!?」

 

 幼馴染のあんまりな物言いに噛みつくミカだが、徐々にナギサの冷静な物言いに押し込められていく。ティーパーティーという立場の縛りが無ければ、舌戦では圧倒的に不利らしい。

 

「くすっ……」

「……ん? あ!? こ、コハルちゃん、いつからいたの!?」

「あ。えっと、その……ナギサ先輩と一緒に来てたので、最初から、です。ミカ先輩」

「ぬああ、コハルちゃんにこんな醜態見せちゃうなんてえ……!」

「お前そういうの気にする奴だったんだな」

「いい加減ぶっ飛ばすよ先生!? というか二人を呼んだ元凶でしょ!?」

 

 ナギサの後ろに隠れていたコハルに気付いて悶えていたミカだったが、今度は俺に噛みついてきた。顔が赤いぞ、恥ずかしいのか。

 

「叫び過ぎて疲れてるんだよ!?」

「そうかい、大変だな。

 サプライズ仕込んだのは俺だけど、来たいって言ったのはこの二人だぞ」

「そうですよミカさん。年に一度だけの幼馴染の誕生日なんですから、祝わせてください」

「ナギちゃん……」

「あと、シャーレに来てからろくに顔を合わせようとしない薄情者へちょっと奇襲を仕掛けようかと」

「絶対そっちがメインだよね!?」

「冗談ですよ。はい、驚かせたお詫びのロールケー「もういいから! 檻の中でもシャーレでも送り付けるのやめてよ!?」」

 

 『Happy Birthday』と書かれたロールケーキを出したナギサに頭を抱えるミカ。食べきれなくて俺に押し付けてきてるもんな、最近。

 

「あーもう、ナギちゃん久々に自由過ぎない……?」

「ふふ、すいません。誰かさんがティーパーティーから抜けた影響で仕事が増えてしまったので、つい」

「……私の誕生日に恨み言吐くのはどうなの?」

「冗談ですよ。改めて誕生日おめでとうございます、ミカさん。プレゼントは」

「うん、ありがとナギちゃん。

 あ、コハルちゃんは何で来てくれたの?」

「えっと、その……ミカ先輩は私の誕生日を祝ってくれましたし、そのお返しがしたかったのと、私もその、祝ってあげたかったので……」

「……あーもうかわいいなあ、コッハルちゃーん!」

「ミャあああああ!?」

 

 もじもじしながらもはっきりと言ったコハルを嬉しそうに抱きしめるミカ。何か悲鳴上げる猫みたいだな、耳が見える気がする。

 

「…………」

「どしたよナギサ。羨ましそうな顔して」

「……いえ、コハルさんとミカさん、この短期間で随分と仲良くなったようなので」

「お前とヒフミも十分仲良いと思うが」

「でも私は、ヒフミさんを抱きしめたり撫でたりしたことはないのです先生」

「それやったら確実にパニくると思うぞ」

 

 あれはミカなりの親愛表現であって、ナギサはナギサの距離感で仲良くしてればいいと思うぞ。

 

「えっと、あの、ナギちゃん、コハルちゃん」

「ふにゃ……あ、はい」

「はい、ミカさん」

「その、ありがとね……あれだけ迷惑かけた私なんかのために、集まってくれて」

「「……」」

 

 照れ臭そうに、それでいて自嘲を込められた笑みで頬を掻いているミカの頭を、ナギサが苦笑しながら撫でる。

 

「うえ? な、ナギちゃん?」

「ミカさん。ミカさんは己の行いを反省したし、そのために今シャーレにいるのですから。

 過ちを認められたのですから、必要以上に卑下する必要はありませんよ。あとは、ゲヘナ嫌いを抑えてくれればいいんですが」

「わ、私も、そう思います! ミカ先輩はその、悪いことをしたのかもしれませんが……ここで頑張ってる以上、許されると思いますから」

「ナギちゃん、コハルちゃん……」

「ほらミカさん。湿っぽい涙はしまって、パーティーを始めましょう」

「……えー? 私泣いてなんかないですけどー。ナギちゃんの見間違えなんじゃない?」

「ふふ、ではそういうことにしておきましょうか」

 

 いつものおどけた笑みに戻ったミカに先立って、ナギサとコハルが料理の置かれたテーブルに向かう。それを幾つかの感情で見るミカ。まあ言われても、複雑なんだろうな。

 

「いい友人達だな」

「うん……そうだね」

「ほら、いつも通りにしろって。お前のしけた面なんて、誰も見たくないだろうよ」

「ふーん。それは先生も?」

「あん? そりゃそうだろ」

「え?」

「お前がそんな顔してたら、天変地異の前触れを疑うよ」

「……」

「いてえいてえ、脛を蹴るなっての」

「ふーんだ。いつも通りの先生な先生が悪いんだよーだ」

「なんだそりゃ」

 

 教えなーい、とアカンベーをするミカに肩を竦め、俺もパーティー会場へ向かうことにする。

 まああれだ。祝ってくれる相手がいるって、いいことなんだろうな。

 

 

 

おまけ

「そういやセイアは? あいつも来るって聞いたんだが」

「久々に遠出したら体力が尽きたそうで、勝手ながら別室で休んでもらってます」

「……キヴォトスの住人って、俺より基礎能力高いんだよな?」

「セイアちゃんはどこの世界でもクソザコナメクジクラスで通じる体力だからねー」

「もうちょいましな例えなかったのかミカ」

「すいません先生。さすがに電車移動だけで死にかけるのは予想外でした」

「うん、それはセイアが悪いわ」

 

 

 




後書き
 オチに優秀なセイアさん。ミカはやらかしましたけど、先生諸氏にも他の生徒にも愛されてると思うんですよね。
 ギリギリになってしまいましたが、読んでくださりありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。