『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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 シズコの誕生日SSです。
 看板娘パンチで有名? な彼女ですが、絆ストーリーののんべんだらりしてるところは可愛いですよね。


百夜堂の新看板(シズコ)

 

 

 

「あ、先生! お帰りなさいませ、にゃんにゃん♪」

「おう、遅い時間に悪いなシズコ。一人で頼む」

「はーい♪ あ、先生もやってみませんか?」

「……やると思うか?」

「何事もチャレンジですよ、せんせっ♪」

 

 やらんわ。お前がやるからあざと可愛くなるんであって、俺がやっても文字通り目に毒だよ。

 

「……可愛いって言われるのは嬉しいですけど、あざといは余計じゃないですかね?」

「いや口に出してねえんだけど」

 

 笑顔で圧を掛けるなし。あとサラっと心読むのはなんなんだ

、超能力少女も兼ねてるのか。

 

 閉店時間間際の百夜堂。普段であれば客の数もまばらになっているのだが、七夕という特別なイベントのせいか、未だ賑わっている。

 店内も七夕に相応しい内装へ変えられており、落ち着いた色彩ながら華やかさを感じさせる。この辺りは流石、お祭り実行委員会といったところだろうか。

 

「本日のオススメは、定番の白玉あんみつです♪」

「素直に七夕限定メニューは売り切れたって言えよ。

 じゃあそれと、抹茶のセットで」

「言っといてなんですけど、素直に頼むんですね先生……

 はーい、少々お待ちください♪」

 

 一瞬呆気にとられた顔になるが、すぐさま営業スマイルに戻って厨房へ引っ込んでいくシズコ。お前が勧めたんだろ、あと今はあんこの気分なんだよ。

 百夜堂特製のあんみつを堪能しつつ、メニューと一緒に持ってきた短冊に願い事を書くことを強制され、思いついたものを書いている内に閉店時間となった。

 

「ありがとうございましたー♪」

 

 シズコに見送られ、店の外へ。誕生日イベントも並行して行われたらしいが、まあ遅い時間じゃ見れないわな、残念。

 

「さて……」

 

 甘いものを食べた後はタバコが無性に吸いたくなるが、流石に学区内で吸うのは自重して咥えるだけにし、

 

「帰るか」

「ーーいや帰らないでくださいよ先生!?」

 

 足を動かそうとしたら、『閉店』と書かれた看板が吹き飛ぶ勢いの開閉音とシズコのツッコミが後ろから襲い掛かった。

 

「何よシズコ。もうちょっとおしとやかに開けろよ、扉吹き飛ぶぞ」

「吹き飛びませんよ! 先生は私のことなんだと思ってるんですか!?

 ってそうじゃなくて、お願いしてたんですから大人しく待っててくださいよ……」

「冗談だって。で、誕生日のプレゼントだけど……本当にこれでいいのか?」

 

 足下に置いていたスーツケースから一枚の用紙を取り出し、シズコに渡す。

 

「先生……絵心、無いんですね」

「やかましいわ、イラストも欲しいって言ったのお前だろ」

 

 絵心ないのは重々承知してるっての。画伯系よりは分かりやすいからいいだろ。

 

「もうイラストよりも、補完する注釈と説明文で埋め尽くされてますね……すっごく分かりやすいですけど。

 まあ、及第点ということで。それじゃあ先生」

 

 資料を見たシズコは、顔を上げて満面の強かな笑みを浮かべ、

 

「百夜堂新作スイーツのプレゼント、お願いしますね♪」

「プレゼントじゃなくてプレゼンだろ、それ」

 

 素人に店の新メニュー考案を頼むなよ、ホント。

 

 

 

「出来たぞー。和洋折衷系の菓子にしてみた」

「素人って言ってたのに、難易度高いの選びましたね先生……もしかして、ここに来る前練習してくれました?」

「お陰でシャーレの厨房が菓子の匂いに包まれたわ、手際は良くなったけど。

 ほい、じゃあ召し上がれ。小豆のチーズケーキだ」

「おおー、ありがとうございます! それじゃあ早速、いただきまーす♪」

 

 再び百夜堂店内。厨房と材料を借り、店のこじゃれた皿に乗せられたお菓子を見たシズコが、感心した声を上げ。

 フォークを手に取り、一口サイズに切られたチーズケーキを口に入れる。

 

「んむんむ……見た目はイマイチですけど、味は中々いいですね。

 これなら新メニューの候補にもいけますよ、先生♪」

「そりゃどうも。まあここの材料なら、誰でもいいもの作れると思うが」

 

 指で丸を作って笑顔を作るシズコに、エプロン姿の俺は肩を竦めておく。

 ちなみに謙遜ではなく、味見をしたらシャーレで用意した自前のものより数段上手くなって、普通に声出すくらい驚いた。

 

「またまたあ。初めてでこれなら、間違いなく上出来ですよ。

 それにしても、先生器用ですよねえ。しばらく店員として働いてもらうよう、シャーレに依頼してもいいですか?」

「この可愛らしい店内と看板娘に、むさい男はミスチョイスだろ」

「いやあ集客効果も望め……あれ? 今、私のこと可愛いって言いました先生?」

「言ったかもしれないし、言ってないかもしれない」

「むう……そこは素直に褒めてくれてもいいんじゃないですかー?」

 

 足を指でつつくな、だる絡みでも覚えたのか。あざとさが増している、百夜堂の看板娘である。

 

「はいはい、お前は可愛いよ。だからそんなお前に、これをプレゼントな」

「へ?」

 

 シズコの空いた手に細長い箱を握らせると、渡された当人は間の抜けた顔になる。珍しいもの見れた気がするな、そんな表情でも可愛いといえるのはズルいというか、なんというか。

 

「え、先生、えっ、これって?」

「いや、流石に新作メニューだけっていうのは誕生日としてどうかと思ったからな。

 俺のセンスでチョイスしたから、気に入らなくても勘弁してくれ」

「…………」

「シズコ?」

「あ、その、いや、ちょ、今こっち見ないでください!?」

「なんでよ」

「……多分、見せられない顔になってるので」

 

 制服の袖で自分の顔を隠すシズコだが、隙間から紅の差した頬と緩んだ口元が見えた。というか「えへ、えへへ……」って声が聞こえてる時点で、意味ないだろ。

 

「……すいません、落ち着きました。先生、開けてもいいですか?」

「もちろん。お前へのプレゼントだしな」

「じゃあ……わ、綺麗……」

 

 箱から出てきたのは、桜の装飾が施された藍色の簪。百夜堂とシズコのイメージが合わさったものに見えたからチョイスしたが、似合ってるといいんだけどね。

 

「リボンと反対側に付けるといいと思うぞ」

「えへへ……ありがとうございます、先生。大事にしますね。

 これ、付けてもらってもいいですか?」

「ん? まあ、いいけど」

 簪を受け取り、シズコの結んだ髪に刺してやる。うん、落ち着きのある華やかさって感じだな、悪くないと思う。

「付けてみたぞ、どうだ?」

「わあ……明日、早速これを着けて店に出てみますね♪

 そういえば、先生は短冊に何をお願いしたんですか?」

「んー? 内緒」

「えー? じゃあ後で見ておきますね」

「オイバカヤメロ」

 

 満面の笑顔で客のプライバシーを侵害しようとするシズコ。

 ……見られたくないんだけど、白夜堂の繁盛とシズコに良いことがありますように書いた短冊とか。

 

 

 

 後日。俺が考案した小倉チーズケーキは、期間限定のメニューとして、結構人気になったらしい。

『あのシャーレの先生とコラボした、和洋折衷新メニュー!』

 とか言って宣伝した辺り、本当に強かである。

 




誕生日ボイスかわゆす(遺言)
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