『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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 最初にこれを書けという。ウチの先生がキヴォトスに来た経緯を書きました。
 
 サブタイの後に、メインの生徒の名前を付けています。

※作中先生が口に出す『大阪』は、現実の大阪とは全く異なるものです。ご了承ください。


オープニング 来たっていうか騙された(ユウカ)

「お待ちしておりました、先生。ようこそ、キヴォトスへ」

「こちらこそ、お招きありがとうございます七神さん。本日はよろしく」

 

 学園都市『キヴォトス』。大阪くんだりから商談のために訪れた俺は、呼び出した連邦生徒会の会長ーーは行方不明らしいので、行政官の七神リンに案内され、エレベーターに乗り込む。

 で、連邦生徒会のオフィスに着いたのだが。何か文句を言ってくる生徒が来てるし、行政官はキレてるし、話の流れもおかしくないか。

 

「……ちょうどよいですね。こちらには暇を持て余している方々もいるようですし、一働きしてもらいましょう」

「……んん?」

 

 トラブル対処はいいんだが、なんでこっちを

 

「そういうわけで、先生の指揮にてサンクトゥムタワーを取り戻して」

「あー、すまん。一ついいか?」

 

 あまりにも不穏な単語の連発に、取引先ということも忘れて素の口調で、話を遮って問うてしまう。というか指揮ってなんだ、指揮って。

 

「はい、なんでしょうか? 先生」

「いや、その『先生』ってなんのことだ?」

 

 てっきり、取引先の相手だから丁寧に言っているのかと思ったのだが、どうも違ーー

 

 

「「「「「「……え?」」」」」

 

 

「え、何その反応」

 

 一斉に「何言ってるんだコイツ」みたいな視線を向けられても困るんだが。俺が聞きてえよ、何だこの状況。

 

「……先生。一つ質問を宜しいでしょうか?」

「ああはい、どうぞ?」

 

 代表して行政官が質問してくる。信じたくないみたいな顔をしているが、信じたくないのは俺だよ。

 

「先生は連邦生徒会長に呼ばれて、こちらに来ました。そうですよね」

「合ってますね。当人いないけど」

「……それは、このキヴォトスで『先生』になるためですよね?」

「いやいやいや。俺、キヴォトスで商談があるからって聞いただけだぞ?」

「……え? え、ええ……?」

 

 軽く混乱してる。眼鏡かけてる理知的なキャラに見えた行政官だが、まあ余程想定外みたいだし、無理もないか。

 

「先方からは、来られる外部の方が『先生』として就任していただけると聞いていたのですが……」

「いやそんな話微塵も聞いてないんだが……っと、失礼」

 

 携帯にメールが届いたので、確認する。差出人は、俺に依頼したお得意様でーー

 

 

『拝啓 円藤メグル殿

 これを見ているということは、連邦生徒会について話は聞いていると思う。それを前提として、言わせてもらう。

 騙してゴメーンネ☆ 

 PS.先生頑張ってくれたまえ』

 

 

「オイイイイイイイ!!?」

 

 あらん限りの力で、床に携帯を叩きつけた俺は悪くないと思う。

 いい年した男が☆使うな、気持ち悪い。

 

 

 

「っていうことがあったんですよね」

「何故今更掘り返すし」

「あ、すいません。あの時の先生の顔が面白くって、つい」

「お前言うようになったね、ユウカ」

「はい、お陰様で口撃のレベルも上がりましたよ」

 

 すんごいいい笑顔だけど、俺が原因だと言いたいのかね、ミレニアムの鬼才ーー早瀬ユウカは。まあ、否定は出来んが。

 

 あの衝撃の事件(こっちとしては嵌められた案件)から半年。大阪から帰りの便も無い(行きは手配してくれた専用旅客機だった)し、結局行政官ーーリンに頼まれるままサンクトゥムタワーを奪還し、流れのままシャーレの『先生』となり、現在に至る。無職になるのも困るからな。

 

 

 ただこの組織、明らかに権限がおかしい。なんだよ各学園自治区に干渉できる超法規的組織って、しかも外部の人間である俺が握ってるなんて、おかしいと思わないんだろうか。

 

「大阪なら五大盟約に干渉できるみたいなもんだよな、シャーレ……」

「? 五大盟約ってなんですか?」

「下手に逆らうと魚の餌にされる犯罪組織」

「大阪って全域がブラックマーケットみたいな場所なんですか……?」

 

 失礼な、治安いい場所はあるよ。大抵はブラックマーケット以下だが。

 

 まあ、権限は別にいい。何よりの問題は、シャーレ固定の人員が俺だけっていうことだ。なのにアホみたいな仕事量降られるから、オイふざけんなって文句言いに行ったことあるしな。追い返されたけど。

 臨時の職員だって各自治区の生徒に手伝いを依頼してという状況と聞いた時は、頭のネジ腐ってんのかと思っちまったよ、至って真剣に。

 

「シャーレが各学校に関わるので、その代わりに手伝うようなシステムなんじゃないですか?」

「にしたって、連邦生徒会から多少なりとも人員は配置するべきだろ……この仕事量は一人で捌くレベルじゃねえ」

「まあ、あそこも役に立たなーーコホン、人手不足ですから」

「オイ本音漏れてるぞセミナーの会計」

 

 大阪ではチームを組んで仕事に取り組んでいたので、まさか基本ソロプレイを強いられるとは思わなかったよ。

 

 改めて現状を振り返ったら、溜息しか出なくなった。気晴らしに一服ーーしようと思ったけど、ユウカがいるのを思い出して慌ててしまおうとするが、

 

「むごっ」

「はい、これは没収です。代わりにこっちを舐めててください」

 

 いつの間にか近付いていたユウカにタバコを取り上げられ、口に棒付きキャンディーを突っ込まれた。あ、イチゴ味かこれ。

 

「むぐぐ……どこから出したのこれ」

「アリスちゃんのおやつ用です。回復アイテムが欲しいって、偶にせがまれるので」

「お前妙にアリスに甘いな……吸ってなかったんだし、セーフってことにならない?」

「アウトですね。そもそも、『生徒の前では吸わない』って決めたのは先生じゃないですか」

「えー……頼むよユウカぁ」

 

 試しに拝み倒してみるが、タバコを仕舞っていたユウカは目を細める。あ、これアウトかな。

 

「先生。あんまり駄々こねるようなら」

「ようなら?」

「べ、別のもので口をふ、塞ぎますよ……」

「……」

 

 ツインテールを揺らしながら近付き、真っ赤な顔ながら俺の肩を掴んでくる。

 天然なのか計算なのか、上目遣いで潤んだ瞳をしたユウカの表情は蠱惑的で、俺の視線は自然唇に寄せられるーー

 

「ていっ」

「あいた!? な、何するんですか!?」

「五年は早えってのマセガキ。らしくないことしてないで、もうちょい自分を大切にしなさい」

「な!? なああ!? 人が勇気を出したのに、そんな言い方あんまりじゃないですか!?」

 

 なんてことはなく、デコピンされたユウカは額を抑えつつ火でも吐きそうな勢いで文句を言う。

 

「あのなあユウカ。お前可愛いんだから、ああいうことを男にやるんじゃないっての」

「ーーえ? せせ先生、今私のことなんて言いました?」

「あん? 可愛いって言ったけど」

「~~~~!?」

「え、何その反応」

 

 赤い顔でうずくまったぞ、お前そんな反応するんだな。

 

「……‥…すー、はー。すいません、先生からそんなストレートな口説き文句を貰うとは思わなかったので」

「いや口説いてねえから。お前の中の俺はどんな辛辣キャラなんだよ」

「小言が多い、浪費にうるさいあたりかなと」

「まあ両方思ってるけど」

「……」

「いや自分で言ったことやん」

 

 怒ったり赤くなったりジト目向けたり、感情の揺れ幅が忙しいなユウカは。

 

「先生、私のこと嫌いなんですか?」

「いや嫌いな奴なら必要以上に関わらねえよ。お前の長所も短所も理解した上で、好きで付き合ってるんだから」

「……~~っ。もう、本当に先生はもう!」

「叩くなっての、痛いから」

 

 あとなんだ、その何かを耐えるような顔は。面白いことになってるぞ。

 

「……はあ、もういいです。先生が無自覚で罪深いのは、分かりきってる話ですから」

「言われ放題だなオイ。キヴォトスではそんなに悪いことしてないぞ」

「へーえ。じゃあこのオカルト書籍関係の大量出費は何ですかね?」

「ちゃんと五千以内には抑えてるぞ」

「四千九百とか姑息な値段に抑えてて威張らないでください!?」

 

 値段に姑息ってなんだよ。

 

「あーもう悪かったって。夕飯奢ってやるから、な?」

「食べ物で誤魔化されませんからね? あ、丼物が食べたいです」

「きっちり要求してくるやん」

「それとこれとは話が別ってだけです。……高い店じゃなくていいですからね?」

「どうせ酒代でかさ増しされるから気にするな」

「生徒の前で飲まないって言ったじゃないですか!?」

「仕事中は飲まないってだけだよ、酔うほどにはしないし、禁酒しすぎて手が震えるんだわ」

「一日しか経ってないのに苦行を終えたみたいな言い草しないでください」

「一日『しか』じゃなくて『も』耐えたんだよ」

「ドヤ顔で言うことじゃないでしょ!?」

 

 いや、俺からすれば偉業レベルだぞ(真顔)

 

 その後もユウカに小言(主に健康面)を言われながら、仕事をこなしていった。

 

(まあ、なんというか)

 

 嵌められてここに来たのは確かだが、俺みたいなろくでなしの悪人を慕ってくれる生徒がいるって言うのは、

 

「悪くねえのかも、な」

「先生、何か言いました?」

「何でも。ほら、気にせずそのあんみつ食べな、ユウカ」

「……あの、先生。計算したらカロリーオーバーになりそうなので、残りは食べてもらえないでしょうか」

「何で頼んだのよ。まあ甘味は好きだからいいけどさ」

「あっ、先生!? それ、間接……」

「~~♪ ん? 何か言ったか?」

「な、何でもないですっ」

 

 ただ、やたら意味深な視線を向けられることが多いんだが。なんなのかね。

 

 

 




後書き
 騙される方が悪い(by先生をハメた依頼人)。
 はい、という訳でキヴォトス入りの理由とユウカさんのお話でした。大体彼女、こんな感じにヤキモキさせられてます。先生は吹っ飛ばされた方がいいんじゃないかな(真顔)
 
 それでは、今回はこれまで。読んでいただき、ありがとうございました。
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