何が言いたいかというと、かわいい()
「……よし、これで終わりっと」
夜に程近い夕刻、シャーレのオフィス。いつも通り連邦生徒会から投げ付けられた仕事を片付けた俺は椅子から立ち上がり、伸びをする。
「ったく、モモカの奴。また自分の仕事をこっちに投げやがって……」
前にボイコットしてからも、変わらず仕事を投げてくるポテチ娘に溜息を吐く。
いい加減報告するのも面倒になってきた、毎度説教する羽目になるリンのことも考えてやれよ。
「……一服するか」
改善策がすぐ出ない以上考えても仕方ないので、ご褒美タイムに洒落込もうと屋上へ足を向け、
「…………」
ようと思ったが、先程から感じる視線にポケットから取り出したタバコをしまい、足を動かす。
「……」
目の前にあるのは、業務用の巨大なゴミ箱。人一人が余裕で入れるサイズのそれに手を掛け、蓋を開ける。
ゴミは入れていない。何故なら、
「何してんの、ミユ」
「あ、えへへ……先生、気付いてくださいました……」
見つかったというのに嬉しそうな笑みを向けてくるSRTの狙撃手、霞沢ミユがよく入っているからだ。
シャレで用意したものを気に入って入らないで欲しい、マジで。
「い、いつから、気付いてました……?」
「二十分前から。というかゴミ箱に入る音で分かるわ」
「すごい、最初から……Rabbit小隊のみんなだったら、いなくなったことにも、気付かないこともあるのに……」
「それはそれでどうなんだ……」
ゴミ箱から出てきたミユは胸元で拳を握り、尊敬の念を込めた目で見上げてくる。すげえリアクションに困るからやめれ、というか気付いてやれ小隊メンバー、泣いてるウサギもいるんだぞ。
「で、なんで隠れてたのよお前。普通に声掛ければいいだろうに」
「と、当番でもない私が、先生のお仕事を邪魔するのは申し訳なくて……
私が声を掛けても、路傍の石につまづいた気分にさせてしまうでしょうし……」
「どんな例えだそりゃ。
……で、本音は?」
「その……先生が、見つけてくれるんじゃないかな、って……」
「それで見つからなかったらどうするつもりよ」
「泣き、ます……やっぱり人生は、辛くて苦しくて虚しくて、誰にも気づかれないんだって……」
「アリウス連中の口癖が映ってるぞ」
同じ居住区に住んでるとはいえ、変なことを覚えさせないで欲しい。まあ仲良さそうだし、いいんだけどさ。
ちなみに俺がミユの存在に気付けるのは、大阪時代に鍛えられた結果、気配に対し敏感になったからだ。まあそれ故に、ミユと毎回かくれんぼをする羽目になるのだが。
戦闘要因でもない俺が何故そんな武人みたいな能力があるかというと、
(そうでもないと、死んでたからなあ)
後ろからの銃撃なんて可愛いもので、奇襲でRPG7(ロケットランチャー)をぶち込まれたこともあった。あれはマジで死ぬかと思った、というかよく生きてたな俺。
「先生……? どうしました?」
「ん? ああすまん、昔を思い出してな。
そういや、今日はどうしたんだ? 誕生日だし、ケーキでもねだりにきたか?」
ありし日の(ろくでもない)思い出から復帰し、ミユに軽口を叩くと、何故か彼女は大きく目を見開いた。え、なんぞ。
「え……? せん、せい。私の誕生日、覚えていてくれたんですか……?」
「? そりゃそうだろ。生徒の誕生日くらい、覚えてないとな」
お陰で毎月のように祝い事をしているが。余計な一言は口にせずミユを見詰め直すと、
「嬉しい、です……ありがとうございます……!」
礼を言って、ちょっと涙ぐみながら満面の笑みを浮かべた。
その姿は本人が評す通り、道に咲いた花のように目立たないが、確かに綺麗なものを見せられたのは確かに眼福なのだが。
「……いや、プレゼントも渡してないのにそんな感動されても」
「え……? こ、こんな私に、プレゼントまで用意してくださったんですか……!?」
「お前本当に自己評価低いな……大切な生徒の誕生日なんだし、出来る限りの用意くらいするってー―いや待て待て、何で床に座ろうとしてるんだ」
「あ、崇めた方がいいかな、って……」
「俺は神か」
新手の宗教信仰みたいなのやめれ。また変な噂流されたらどうすればいいんだ。
「ほら、立ちなって。一応選んでみたけど、気に入らなかったらごめんな?」
「そ、そんな、気に入らないだなんて……頂戴します……!」
跪いたまま取り出した小箱を受け取るミユ。領主からお恵みを貰う領民みたいになってるぞ。
「こ、これって……ウサギのお守り、ですか?」
「そ、鈴付きのな。因幡の白兎を祀ってる神社があったから、そこで買ってきた」
霊験あらたかという触れ込みがどの程度たしかかは分からんが、まあデザインはいいので悪くないだろう。
「……! 鈴……!」
ウサギの編みぐるみと一緒に付けられた、銀色の鈴を見て目を輝かせるミユ。前に持ってた猫の鈴以来、しっくりくるのが無かったらしいしな。
いや、猫の鈴が合ってる気がするのもおかしいんだろうけど。
「ちなみに防弾仕様だから、鉄火場に持っていっても早々壊れないらしいぞ。普段使いなら腰に付けられるから、邪魔にもならないしな。
「……あ、ありがとうございます、先生。大切にします……」
鈴付きのお守りを胸に抱きしめ、嬉しそうに小さく微笑むミユ。うん、ここまで喜んでくれたなら買った甲斐があったな。
「さて、折角だしケーキでも買いに行くか。ミユ、好きな味の買っていいーーどした、固まって」
「あ、あの、こんなに色々もらえるなんて……私、明日にでも、透明人間になったりしませんか……?」
「どんな心配してるんだよ」
自然発生でそんなこと起こったらこわ、いや、大阪でもありそうな事案だしキヴォトスでもあるのだろうか(ねーよ)
後日、プレゼントを気に入ったミユは大抵付けていたのだが、任務中でも外さないため目立ってしまい、サキが俺に抗議してきた。
いや俺かよ、本人を説得しろよ。
おまけの設定
Rabbit小隊
本編ストーリー後、先生との交渉の末SRTの復興を条件に、シャーレの居住区に移った。
部屋割りはミヤコとミユとぴょん子、サキ(抑え役)とモエ(暴走)の二組。
後書き
( ゚д゚)←私はミユの誕生日を過ぎてSSを投稿した愚か者です。
次は間に合わせます……(n回目)