『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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 概念祭『私服・和服』のサンプルSSです。ちょっといつもより甘いかも?
 こちらのシリーズは普段ハーメルン様のみですが、今回は企画ものということで、pixivにも投稿させていただいています。


たまには普通の学生として(ユウカ)

「先生、普通の女子学生ってなんですかね?」

「それをなんで俺に聞くし、ユウカ」

「いえ、先生ならそういうのも詳しいかなと思ったので」

「俺は何でもは知らんぞ、知ってることの方が少ない」

「それは先生としてどうなんですか……?」

 

 シャーレのオフィス。いつも通り積まれた仕事をユウカに手伝ってもらい、一段落着いてコーヒーブレイクと洒落込んでいたタイミング。

 向かいのユウカからのとんちんかんな質問に、俺は半分ほど減ったコーヒーのカップを机に置き、腕を組む。

 

「で、ユウカ。その疑問に答えるにあたり、三つ問題点がある」

「お聞きします」

 

 三本指を立てた俺に対し、ユウカはカップを置いて聴く体勢に入る。そんな大仰なことは言わないんだが。

 

「一つ。俺はキヴォトスの外から来たから、こっちの学生のことはよく分からん」

「数多の生徒と関係を持っている先生なら、問題ないのでは?」

「言い方よ、棘しかねえじゃん。

 二つ、俺は学生じゃねえし女子でもない」

「ミレニアムの制服、お貸ししましょうか?」

「女子の制服着ただけで分かるわけねえだろ、その前に変態だよ。

 んで三つ、未就学児だから学生生活というものがイメージしかない」

「……今さらっと、かなり重い過去を明かされませんでした?」

「? 大阪じゃ未就学児なんて珍しくないぞ。学校に行けるのなんて、中流以上の家庭に限られるし」

「……私、学生でいられることに感謝した方がいいんでしょうか」

 

 額に手を当て、複雑な表情で俯くユウカ。まあ学校に通えるってことはいいことなんだろうよ、多分。

 

「あれ、でも先生。アリスちゃんに勉強教えてませんでしたっけ?」

「独学。数字関係は仕事柄出来たし、こっちに来てから文学とか史学は多少齧ったから」

「……こう言ったら大変失礼なんですけど。先生、何で先生になれたんですか?」

「連邦生徒会に聞いてくれ」

 

 というか俺が聞きたい。未だに誰かと間違えて呼ばれたんじゃないかと思ってるし。その誰かが誰なのかは知らんが。

 

「話戻すが、俺から見ればユウカも十分普通の女子高生の範囲じゃねえのか?」

「……出費関係に頭を痛めたり、憎まれ役を演じたりするのがですか?」

「悪かった、俺が悪かったから。そんな人生に疲れ切ったOLみたいな顔するな」

「絶妙にデリカシーのない例えですね……はあ、アリスちゃんを撫で回したい……」

「重症じゃねえか」

 

 願望ダダ漏れなあたり、疲労による哀愁が背中から漂ってるぞ。

 

「……すいません。それで、普通の女子学生って何ですかね? 先生、心当たりありますか?」

「夏といえば戦車! って主張で学校の戦車を奪うため大暴れしたり、異常なまでペロロを愛してやまない自称普通なら知ってるが」

「……ゲヘナの生徒ですか?」

「残念、トリニティだ。というかお前も知ってる相手だぞ、エイプリルフールでユニット組んだだろ」

「……阿慈谷さん、意外とアグレッシブだったんですね」

 

 頭痛を感じたのか、またも額に手を当てるユウカ。まあそういう反応になるよな。

 余談だが、真っ正面からお前のような普通がいるかってツッコミ入れたけど、本人は不思議そうに首を傾げてた。何でわかんねえんだよ。

 

「まあ真面目に答えると、放課後とか休みに友人とカラオケや買い食いしたり、他愛もない恋バナしたりじゃねえの?」

「真面目って言いながら、雑極まりない答えですね……」

「だからイメージの上でしかねえんだって。もう青春とか言える歳はとっくに過ぎてるし」

「まあそれなら仕方ない……ですかね?

 ちなみに先生。先生は私達くらいの時、何をしてたんですか?」

「キヴォトスでは言えない後ろ暗いこと」

「……堂々と言いますね。ヴァルキューレに連絡しましょうか?」

「大阪時代の話だから意味ないだろ、証拠も残ってないし。

 それに、ユウカなら他の奴に吹聴しないって信頼してるからな」

「…………本当、そういうところですよ先生」

「? どういうことよ」

「いえ、何でも。一度先生は刺されて欲しいなと思っただけです」

「何その願望」

 

 ジト目から赤い顔になったと思ったら白い目になり、そっぽを向く。

 ユウカって合理を謳う割に感情豊かだよな、そこがまた可愛らしいとこでもあるんだが。

 

「……じゃあ、先生。今度の放課後、普通の学生っぽいことに付き合っていただけますか?」

「女装はしないぞ?」

「お望みなら、専用サイズのを用意しますよ? シャーレの経費で」

「んなことに無駄金使うなし」

 

 いい笑顔でスマホを弄るな、リンにバレてキレられるのは俺なんだぞ。

 

 

 

 数日後。ミレニアムでの用事を終えた俺は、学園近くの公園で待ち合わせのため、噴水のフチに座っている。セミナーの仕事を終えて一度自分の部屋に戻ったユウカと、待ち合わせをしているためだ。

 

「『私服に着替えてからの方がそれっぽいじゃないですか』って言ってたけど、学生って制服のまま街に繰り出すもんじゃねえのか……?」

 

 放課後に制服でウロチョロしてる生徒なんてよく見るしなあと首を傾げるが、まあ正解などないし別にいいのだろう。

 ちなみに俺もいつもの仕事服から着替えており、薄手のジャケットにジーンズというラフな格好だ。

 ポンチョないから武器が隠せないため、手ぶらであることに不安しかないのだが、どうしたものかーー

 

「すいません先生、お待たせしましたっ」

「おうユウカ、時間にはまだ余裕あるからだいじょーー」

 

 振り向いた先にいたユウカの姿に俺は目を見開き、タバコ代わりに咥えていたココアシガレットを落としてしまう。

 

 夏仕様だろう薄手の藍色のカーディガンに、同じく薄手の白いニット。

 足元は黒の膝上プリーツスカートに、低めながらヒールを入れた機能性重視の靴。

 

「先生? あの、どうしました?」

 

 二つ結びにしている髪を下ろしてストレートにし、薄く化粧を施した顔で見上げてくるユウカ。

 普段の愛らしさとは異なる姿に、俺は意識せず言葉を紡ぐ。

 

「いや、すまん。随分な美人さんがいたもんだから、驚いて固まってた」

「え? び、美人? 私がですか?」

(あ、やべ)

 

 自分を指差しながら真っ赤になるユウカに、遅まきながらやっちまったことに気付くも時既に遅し。

 想ったことをそのまま言っちまった、口説いてるみたいじゃん。

 

「……あー。似合ってるぞ、ユウカ」

「あ、ありがとうございます……先生もその、似合ってますよ?」

「……おう、サンキュー」

「「…………」」

 

 互いに目を逸らし、沈黙が俺たちの間で右往左往してやがる。何だこの空気、青春かよ。

 

「よし、とりあえず行くか? 行きたい場所があるんだろ?」

「そ、そうですねっ。行きましょう先生!」

 

 中身のないオウム返しの会話をしながら、お互い気恥ずかしさを誤魔化すために移動ーーしようとして、ユウカが足を止める。

 

「……先生」

「どした、ユウカ」

「さっきの言葉がショッキングすぎて、どこへ行こうかプランしていたのを忘れました」

「なんでやねん」

 

 記憶飛ぶほどダメージ深刻なのかよ、乙女か。

 

「いや花も恥じらう女子高生ですけど!?」

「まあ、そうだけどさ」

「否定してくださいよ……言ってて恥ずかしくなってきました」

 

 自爆してるじゃねえか。

 真っ赤な顔を両手で隠す、いつもの可愛らしいユウカが見れてホッとしたのは内緒の話だ。

 

(……にしても)

 

 赤い顔で横に並んだユウカ。いつもと違う大人っぽい私服だが、腰にいつものアサルトライフルが

 

 

 

「そういえば、先生と合流してから話し合って決めようと思ってました」

「思い出してもノープランじゃねえか」

「い、いいじゃないですか。何も決めずにとりあえず集まるのも、普通の学生っぽいと思いますよ?」

「ノープランなのと何となく集まるのは違うだろ。いつもの合理性はどこ行ったよ」

「合理性を尊重したら、普通の学生っぽさが無くなるじゃないですか」

 

 ぽいのために色々捨てすぎだろ、恋愛上げた代わりに教養下げたのか(サタスペ並感)

 そんな美人だけどアホになった「先生?」……女子高生らしい自由さを手に入れたユウカと一緒に、ミレニアム内の商店街を適当にぶらつくことにした。

 

「電卓って予備が必要になるものなんか?」

「なりますよ、ボタン壊れちゃいましたから。

 エンジニア部に言えば直してもらえますけど、自爆機能つけられても困りますし……」

「電卓に自爆機能つけてどうすーーいややるか、あいつ等なら 」

「何にでも付けますからね……あ、先生。そろばんの予備も買っていいですか?」

「それは本当に予備が必要なものなのか……?」

「精神安定として、携帯サイズのものが欲しくて……」

「携帯サイズのそろばんってなんだ……? あ、本当にあるんだ」

 

「ハニトーとセイロンティー、あとレアチーズケーキも追加で」

「……先生、食べ過ぎじゃないですか? 甘いものが好きなのは知ってますけど、流石に太りますよ」

「言うなし、タバコと酒控えてる分甘いもので補ってるんだよ。

 実際キヴォトスに来てから太ったしな、2キロほど」

「……それ、ヤバくないですか?」

「まだ適性体重の範囲だから、セーフじゃない? というかユウカこそ、ケーキだけじゃなく他のも食っていいんだぞ」

「先生ほど怖いもの知らずになれませんよ……」

 

「わあ、可愛い……! 部屋にこういうぬいぐるみ、欲しいですね」

「意外とこういうのを抱いてる姿似合うな、ユウカ」

「む……どうせ私は血も涙もないセミナーの会計ですよーだ」

「でもギャップ差で可愛さが増してると思うぞ」

「ーーっ、ん、んんっ。せ、先生って好きな動物はいますか?」

「アルマジロ」

「アルマジロ……? いや可愛いですけど、犬とか猫じゃないんですね」

「犬は銃持って襲い掛かるし、猫は天王寺公園から脱走したベンガルトラ思い出すし、パンダは殴り殺してくるからなあ……」

「……いやいや、流石に冗談ですよね?」

「大阪ではよくあることだぞ。あ、どれも可愛いとは思ってる」

「仮に本当なら、良く可愛いって言えますね……それでアルマジロ選ぶのは、謎ですけど」

「丸くなるだけで害は少ないし、パケットモンスターで出たのが可愛かったから」

「意外と可愛い理由ですね、先生」

「男に可愛い言うなし」

「ひょっとして、照れてます?」

「……照れてねーし」

「ふふ。可愛いとこありますね、先生」

「オイヤメロ、大人びた笑顔で俺を見るな」

 

 

 そんな感じで、特に目的もなく雑談をしながらショッピングを楽しんでいると、気付いたら月が空に顔を覗かせていた。

 

「あ、もうこんな時間……」

「楽しい時間はあっという間ってやつかねえ。

 ところでユウカ、疲れてないか?」

「……本当先生、そういうところが……大丈夫で、きゃっ!?」

 

 言っている途中でバランスを崩し、前へ倒れそうになるユウカ。

 

「あーあー、言わんこっちゃない」

 

 それを予測していた俺は、手を伸ばして転倒しないように支えてやる。

 

「……何で、分かったんですか?」

「ユウカ、履き慣れない靴だっただろ? それに珍しくはしゃいでたし、疲労に無自覚だろうなと思って」

「それは……その、楽しかったので……

 ところで、先生」

「ん?」

「あの、そろそろ離していただけると……」

 

 今の俺達はユウカを支えるために腕を回しており、傍から見ると抱き合っているように見える。

 上目遣いで見上げるユウカはいつもより大人びた姿であり、間近にいるということを改めて自覚し。

 

「あー……すまん、無遠慮だった」

「い、いえ……助けていただいて、ありがとうございます」

「「……」」

 

 ゆっくり身体を離すと、名残惜しそうな顔をするユウカ。オイヤメロ、沈黙も合わさって妙な雰囲気みたいだろ。

 

「きょ、今日はここまでにしましょうか。先生、お付き合いいただき、ありがとうございました」

「こっちこそ、今日はありがとな。いい息抜きになったよ。

 ……まあ、普通の学生っていうのが合ってるかは分からんが」

「ふふ。気負いのない楽しい時を過ごせたんだから、きっと普通の学生っぽかったですよ。

 でも、一回だけだと検証には足りないので……また、一緒に付き合っていただけますか?」

「それならスケジュールの調整しないとな。お互い忙しいし」

「! そう、ですね。あーあ、明日からまた忙しい日々かあ」

 

 言葉とは裏腹に、嬉しそうな笑みを浮かべるユウカ。そういう顔をしてくれるなら、付き合った甲斐があったね。

 

「……先生? なんで同じ道を歩くんですか? シャーレとは反対の方向ですよ?」

「いや、一緒に帰るのも学生らしいんじゃないかと思ってな」

「ひょっとして、心配してくれてるんですか?」

「そりゃまあな。いくら強いとはいえ、こんな美人を夜道で一人歩かせるのは、な」

「……ふふっ」

「いてっ。なんで叩くんだよ」

「何でもないですよ。先生のバーカ」

 

 アッカンベーをするユウカに、俺は頭を掻く。その格好でそのポーズは合ってないはずなんだが、可愛いと思ってしまうのはズルいね。

 

 

 

 余談だが、この姿を見ていたミレニアムの生徒達がSNSで、

 

『セミナーの会計が、シャーレの先生をガチで落としに行っていた』

 

 と話題になり、偶然見つけたミドリがセミナーの部室に突撃したとか何とか。

 

 

 

 




後書き
 サンプルとか言いながらギリギリに投稿してるあたり、そろそろ私は怒られた方がいいかもしれない。
 ガチ私服のユウカとデートしたいだけの話でした()
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