『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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 私服概念祭第二弾、ミドリのSSです。時系列的にはユウカの私服デートの後になります。
 ユウカに対抗心を燃やしたミドリ。彼女が取った行動とは?


あなたに相応しい私に(ミドリ)

「先生。ユウカとデートしたって本当ですか?」

「え、なんだミドリ。いきなり」

「したんですか?」

「いやデートって……ああ、放課後に『普通の学生らしい過ごし方がしたい』って言って、一緒に出掛けた時のことか?」

「やっぱり、出掛けたんですね……! それに、私服で一緒にって……」

「なんでそこまで詳しいのよ」

「ネットで目撃情報を見てから、ユウカに直接聞いてきたんです」

「それ俺に確認する必要あった?」

 

 片方に確認してる時点で分かりきってるじゃねえか。

 シャーレのオフィス。本日の当番であるミドリが入ってくるや詰め寄ってきて、この質問である。鬼気迫る勢いだったから、〆切がヤバいのかと思ったぞ。

 

「え、あ、あの、それは……」

「ひょっとして、当番やってる余裕ないくらいヤバいのか?」

「……ちょっと、スランプになってて……だ、大丈夫です! まだ期限に余裕はあるので!」

「前そう言って、結局ギリギリの徹夜する羽目になったの忘れたのかお前」

「う。それは、その……」

 

 盛大に目を逸らしながら、冷や汗もトッピングするミドリ。徹夜直前はヤケクソでゲームやってたしな、創作者はムラがあるから仕方ないんだろうが。

 

「……はあ」

 

 溜息を吐いてスマホをいじり始めると、ミドリが肩を跳ねさせて恐る恐ると言った風に俺を見てくる。

 

「あの、先生……」

 

 見捨てられる直前の子犬みたいな声と涙目で俺を見るミドリ。

 別に怒ったり呆れてるわけじゃないんだけどなあ。内心苦笑しながら、スマホの画面をミドリの方に向ける。

 

「ミドリ、こういうのに興味あるか?」

「え? えっと、これは?」

「クロノス主催の特集イベント。未解決の怪奇事件や都市伝説の情報を集めたものだってよ」

「先生、こういうの好きなんですか?」

「暇な時にオカルト関係の本を読む程度には。

 で、一人で行くのもなんだし、良ければ一緒にーー」

「い、行きます! 連れていってください!」

 

 首を傾げていたと思ったら、凄い勢いで迫ってきた。近い近い、顔同士が当たっちゃうから。

 

「お、おう。じゃあ、今週末にでも向かうか。チケットとかは俺が取っておくから」

「はい、ありがとうございます!

 ……やった。せ、先生と、デート……!」

 

 赤い顔で照れ臭そうにしながらも、小さくガッツポーズをするミドリ。まあスランプ脱却のためとはいえ、喜んでくれるなら何よりだ。

 

「喜ぶのはいいけど、まずは今日の仕事終わらせようか」

「はい、もちろんです! こっちの書類からやればいいですか?」

「それは俺がチェックしないといけない奴。ミドリにお願いしたいのはこっちな」

「あ……す、すいません」

 

 意気込んたり落ち込んだり、今日は姉みたいに表情が忙しないミドリである。見ている分には可愛らしいから、いいんだけどな。

 

「張り切ってるのはいいことさ、後は空回ったり先走ったりしなけりゃいい。

 んじゃ、ちゃっちゃと片付けますかね」

「あ、はい! 先生、早く終わったらどんなのがあるか一緒に見ませんか?」

「んー? 片付いたらなー」

「……約束ですよ?」

 

 その日、ミドリの奮起によって仕事がいつもより早く終わり、余った時間でイベントについて色々話した。楽しそうなのは良かったんだが、〆切の話すると目を思いっきり現実逃避してたな。

 

 

 

 そんなこんなで週末。待ち合わせ場所であるクロノス付近の駅で、周囲の視線を感じながらミドリを待つ。見せもんじゃねえぞ、こっち見んな。

 待ち合わせる俺の私服は、ユウカの時と同じ薄手のジャケットにジーンズ。違いはミドリの要望で掛けてる眼鏡くらいだろう。

 「お忍びデートみたいでいいなって……」って言われたけど、次回作のゲームにはそういうシーンもあるんだろうか。

 

「あ、先生!? すいません、お待たせしました!」

「おん? いや大丈夫だよミドリ、まだ集合時間にははやーーおお」

 

 デジャブを感じるやり取りをしながら振り返ると、思わず感嘆の声が漏らした俺に、早歩きで寄ってきたミドリは不思議そうに首を傾げる。

 

「先生? ビックリしてるように見えるんですが、どうしました?」

「いや、見違えたというかいつもと違うというか。

 うーん、すまん。綺麗なものを見て語彙力飛んだみたいだ、似合ってるぞ」

「…………え!? 

 あ、その、えーーっと……あ、ありがとう、ございます。褒めてもらえて、嬉しい、です……」

 

 俺の語彙力が死んだ褒め言葉に、ミドリは蚊の鳴くような声でお礼を言い、真っ赤になった顔でスカートを握りしめる。あざとい感じがしない可愛さを見せるのは、この子の魅力がなせる業かね。

 

 ミドリの服装は、レースのあしらわれた薄緑のワンピース。普段つけている機械の耳と尻尾を外し、肩口までの金髪が風に流されている。

 ズボンではなく膝上のスカートと、フラットサンダルに合わせて普段は黒のニーハイで隠された部分が剥き出しになっており、シミ一つないきれいな太腿が顔を覗かせている。

 総評、派手過ぎず綺麗にまとまった衣装の美少女が、目の前に立っていた。

 

「……うん、本当によく似合ってるな」

「あ、あの、えっと……せ、先生も、似合ってますよっ。眼鏡もいつもと違う雰囲気を出してますしっ」

「ん、あんがとな。

 さて、ちょっと早いけど行くか。これ、チケットは事前に確保しておいたから」

「は、はい。……あの、先生?」

「ん? どした、ミドリ」

 

 進みかけた足を止めると、こっちの裾を掴む手と見上げる視線を遠慮がちに向けるミドリの姿が。

 

「そ、その、人が多いですし、はぐれたら大変なので……」

「おん」

「て、手を繋ぎませんか!?」

 

 一大決心みたいな顔で、真っ赤になりながら可愛いお願いをしてくるミドリ。確かに待ち合わせのここならともかく、中に入れば結構な数がいるだろうから可能性はあるだろう。

 

(ふむ)

 

 追加で震え出したミドリは勝手にどこかへ行くタイプではないが、トラブルというものはいつ、何が起こるかは分からない。特にここキヴォトスでは、いきなり会場が吹き飛ぶなんてことも稀によくある。

 

(……まあ、それに)

「……ふえ?」

 

 可愛い生徒が勇気を奮ってお願いしてきたんだし、無下にするのは野暮だろう。

 繋がれた手を見て間の抜けた声を出す提案者に、俺は笑いながら軽くミドリの手を引く。

 

「ほら、はぐれないようちゃんと繋いでおけよ?」

「あ……は、はい!」

 

 緊張と喜悦の混じった顔で頷き、ミドリは俺に手を引かれてスカートを揺らしながら、歩調を合わせてくる。

 動きがぎこちないのは、まあ指摘しないでおくかね。

 

 ちなみに入館の際、受付の人に「兄妹ですか? いいですねえ」と微笑ましく見られたことに憤慨したミドリが、

 

「か、カップルですっ」

 

 と真っ赤な顔で勢いのまま言い切り、咄嗟のことで俺が何も返せなかったため、入口で危うく緊急取材を受ける羽目になりかけた。

 たかり方がゴシップ記者のそれなんだよ、クロノスの連中。

 

 

 

「手を繋いでる甲斐があったな、ミドリ」

「あ、あはは……でも、中にまで入ってこなかったのは良かったですね、先生」

「そうだな。話し合いで片付いたから良かったわ」

「……先生、「これ以上邪魔するならシャーレ経由でクロノス関係の不祥事SNSで晒すぞ」って脅してませんでしたっけ?」

「そんなもんねえけどな。道を譲ったし大方、心当たりがあったんじゃないか?

 大体、折角ミドリと楽しい休日を過ごしてるのに、邪魔する方が悪いだろ」

「え? ーーそ、そそ、そうです、ね。折角の、先生との、楽しい時間です、から」

 

 カタコトになってるぞ、目も泳いでるしどうした。

 

 クロノス連中の追撃をお話で散らし、無事展覧会を見終えた俺達は、近くのファミレスに入って遅めの昼食にしゃれ込んでいる。喫茶店でも良かったけど、大声になりそうな予感がしたからこっちにした。

 

「それにしても、色々なネタがありましたね先生! インスピレーション」

「熱心にメモしてたしな。俺としては、ウルトラマリンシスターズのサッシーに元ネタがあったのはビックリだけど」

「少し前、ネットの掲示板では有名な話でしたね。あまりに似てなさ過ぎて、認識されるのに時間掛かりましたって」

「十年単位でやってるゲームだよなあれ……? まあ、ビックリするくらい似てないのは事実だけど、もう一回ゲームやっても分からない自信がある」

 

 元ネタに恐竜の要素全くないしな。マジでなんだあれ。

 

「それじゃあ先生、また一緒にゲームやりませんか? 似てる部分があるか検証してみるのも、面白いかもしれません」

「そのサッシーを投げ捨てる前提のステージじゃなければ」

「いや、あれはユーザーが作ったステージですから……」

 

 乗り捨てるの前提である仲間とか、作った奴心が無いんじゃないか。

 そうして、お互い展示物への感想を各々伝えていく。見ている間は集中してお互い無言だったしな、こうやって話を聞くとミドリが細かいところまで見ていたのがよく分かる。

 

「ミドリ」

「? はい、なんでしょうか?」

「楽しかったか?」

 

 会話の空白タイミングで聞いてみると、ミドリは目を奪われていたパンケーキから顔を上げて首を傾げていたが、やがて服装に合わせたような、綺麗な笑みを浮かべてくる。

 

「ーーはい。先生はどうでしたか?」

「ああ、俺も楽しかったよ。ミドリの感想や予測も面白いし、また一緒に行きたいくらいだ」

「っ、じゃ、じゃあっ」

「でもその前に、イラストを終わらせてからな?」

「……先生、今思い出させなくてもいいじゃないですか」

 

 期待に目を輝かせていたミドリが、不満気に頬を膨らませて脚を椅子の下でプラプラさせる。ズボンじゃなくてスカートだぞ、見えちゃうかもだからやめなさい。

 

「元々ゲームの参考にするためだろ、今日の本来の目的は。その様子だと、色々浮かんだみたいだが」

「それは、まあ、そうですけど……その、先生。終わるか不安だから、一緒にいてくれますか?」

「……また徹夜に付き合うのか?」

「……ダメですか?」

 

 テーブル向かいで俺を見詰めてくるミドリ。泣き落としに入るんじゃない、私服の魅力で美少女力が増してるから、前回より効くんだよ。

 

「……まあ、可愛い生徒の頼みだしな。付き合ってやるから、終わらせような?」

「えへへ……ありがとうございます、先生」

 

 何か嵌められた気がするけど、目の前で満面の笑みを浮かべているミドリに免じて、詮索はしないでおくか。

 

 なおその後、モモトークでミドリが今日の私服の自撮りを送ってきた。

 『すいません、間違えて送っちゃいました!?』と慌てた様子のメッセージが届いたけど、自撮りを間違えて送ることなんてあるのだろうか。というか誰に送るつもりだったんだ。

 まあ、気にするなと送った後、目の保養に保存しておいたけど。これバレたらスケベとか言われるんだろうか。

 

 

 

 更に後日。何かユウカがシャーレに突撃してきて、

 

「ミドリともデートしたんですか!?」

 

 と、浮気を糾弾する妻みたいなこと言い出したけど。普通に出かけただけだからな?

 なんかそう言ったら納得したけど、物凄く釈然としない顔をされたが。

 

 

 

 




後書き
 対抗心は強いけど、あざとさ全開になるにはちょっとテンパりやすいミドリ。そういうところも可愛いと思います(親指を立てるポーズ)
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