『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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お久しぶりです(渾身の土下座)


普通の女の子の、普通で特別な日(ヒフミ)

 十一月二十七日、午前十時前。飲み物片手にトリニティの公園にある時計の下で、本日の主役を俺は待っていた。

 

「せ、先生、お待たせしました……!」

「おう、おはようヒフミ。そんなに待ってたわけでもないし、走ってこなくても良かったんだが」

「はふ、あはは……先生をお待たせしたくなかったのと、楽しみだった気持ちが爆発しちゃって、走っちゃいました」

「何、随分かわいいこと言ってくれるじゃないの」

 

 本日の主役改め、待ち合わせの相手であるトリニティの生徒、阿慈谷ヒフミは膝に手を付いて少し赤い顔ながら、満面の笑顔でこちらを見上げる。

 本当に嬉しそうな姿から、頭頂部に犬耳を幻視してしまう。なんとなく垂れ耳で。

 

「か、かわ!? そんな、私みたいな普通の子のことを、かわいいなんて……」

「……普通って誰のことだ?」

「え? わ、私のことですよ?」

「???」

「何で本気で首を傾げてるんですか!?」

 

 驚いた顔になってるけど、ペロロに対する狂信具合とか、海行くのに戦車を強奪する際のバイタリティとか見せられて、普通の女子高生は無理があるだろ。その辺の不良学生の方がよっぽど普通に該当するぞ。

 

「……まあ、普通の談義はいいか」

「そうですね。よく考えたら、先生もアズサちゃんみたいにズレてるところありますし」

「俺が常識知らずって言いたいのかコノヤロー」

 

 訳知り顔でうんうん頷くな、完全におまいう案件だろ。

 さて、本日はヒフミの誕生日。補修授業部だけでなく、アビドスの面々もお祝いしたいということで朝からシャーレに集まっているのだが、

 

『先生。私達がパーティーの準備をする間、ヒフミと一緒に外で過ごして欲しい。ハナコがサプライズ? をしたいそうだ。

 ミッションの時間は夕方まで、先生なら出来ると信じている。オーバー』

 

 と言われて、朝から追い出された。何で口でオーバーって言ったのかは、気にしたら負けなんだろう。

 

(ハナコのサプライズとかヤバそうな気配しかしないけど)

 

 コハルが凄い胡散臭そうな猫目をしてたから、余計に。

 ブレーキというか、良心のアヤネとセリカもいるし、いざとなったら関節極めてもいいから止めてくれとシロコにお願い(「ん、任せて」と本人はサムズアップしてやる気満々だった)してるから、多分大丈夫だろう。多分。

 他校な上に一年生が良心というのもどうかと思うが、補修授業部の面々がヒフミを除いてブレーキ役(たまにアクセルベタ踏みにするけど)にはならないから、致し方なし。

 

「んじゃまあ、行くか。モモフレンズのショップでいいんだっけ?」

「そうなんです! 実は新シリーズのペロロ様が立体化を

 ーーって違いますよ!? 今日は先生おすすめの映画を見ようって話だったじゃないですか!」

「完全に乗り気というか、釣られかけてたやん」

「う、それは……しょうがないじゃないですか! ペロロ様はいつも私の心の中にいるんですから!」

(心っていうか、物理的に一緒にいるけどな)

 

 ショルダーバッグタイプのモモフレグッズを見ながら、口には出さないでおく。ブレないよなこの子、服装が違うからか主張は控えめだけど。

 本日はお休みということでいつもの制服姿ではなく、私服姿のヒフミ。冬間近のためかレースが施された白インナーの上に、同色のニットカーディガンという暖かそうで、防寒とオシャレを兼ねた愛らしい格好だ。

 ただ、下が制服とそんなに変わらない長さの青いミニスカートに、ニーソックスなせいで温かさと寒さプラマイゼロって感じだが。普段は拝めない絶対領域が見れるのは眼福だけどな。

 

「正直、モモフレンズ関連の施設を巡る旅かと思ってた」

「あはは……それも考えたというか、大変魅力的なんですけど。こういう日くらい、先生と一緒にデ、その、一緒にお出かけしたいなと思いまして」

「特別な日にいつもは違うことをって、普通っぽい発想だな」

「そ、そうですよね! 普通ですよね!?」

「なんでそんなに必死なんだよ」

 

 お前普通へ執着するキャラじゃないだろ。実は化けの皮が剥がれたら天才キャラだった、とかの展開なら驚くけど。

 

「じゃあ改めて、行くか。あ、ヒフミ」

「はい、何ですか先生?」

「その恰好、似合ってるぞ。かわいいな」

「ーーえ、えええ!? せ、先生、今なんて」

「早くしないと上映時間に間に合わないぞー」

「あ、え、待ってくださいー!?」

 

 目的地へ向けて先に進むと、慌てて俺を追いかけてくるヒフミ。振り返らないから顔は見えないが、多分寒空に似合わぬ赤色になっているだろう。

 まあ折角の誕生日だし、ちょっとしたサービスのつもりだったんだが。

 

(……ストレートに言い過ぎたな)

 

 おそらくヒフミと同じ状態になっている顔色を悟られないようにするには、少々労力が掛かったのは秘密だ。

 

 

 

 

「どうだった、ヒフミ?」

「はい、面白かったです! ただ、あの娘の行動は色々考えさせられますね……」

「まあ、人を想っての行動と人のためになる行動は別だからな。

 前者も後者も悪いことではないんだろうが、必ずしも良い結果になるとは限らんってこった」

「そうですね……人助けをするのも、よく考えた方がいいかもしれません」

「ヒフミはそのままでもいいと思うけどな。変に考えるより動いた方が、誰かを助けられるそうだし」

「え? あ、あはは……先生、褒めすぎですよ。私みたいな普通の子は、ちょっとした手助けくらいしか出来ないんですから」

 

 そのちょっとした手助けが、人を救うんだけどな。まあヒフミの場合、変に自覚するより自然でいた方がいいんだろうけど。

 二時間ほどの上映を終え、観る前に昼食等も挟んだので時刻は午後三時前。館内の喫茶店で俺達は映画の感想を言いながら、注文を待っていた。

 この後はパーティーだから、飲み物くらいにしようと思っていたのだが。

 

「お待たせいたしました。ご注文のアールグレイと、期間限定ペロロのパンケーキです」

「あ、そっち俺です」

「し、失礼しました。では、ごゆっくりどうぞ」

 

 つまりこういうことである。映画館の近くでモモフレンズコラボがやってた時点で、こうなる運命は決まっていたわ。

 

「わああ……! ペロロ様、ペロロ様がこんなに丸くて美味しそうです……!

 先生、写真撮っていいですか!?」

「ほいよ。映える角度とか考えなくていいのか?」

「大丈夫です、もう答えは出たので!」

「マジかよすげえ」

 

 ペロロ様の時だけ演算能力が爆速になるスキルでも持ってるんだろうか。ありそうで困る。

 数十枚ほど写真を撮りまくり、紅茶が冷めかけたくらいのタイミングで満足したらしいヒフミに、皿を返される。

 

「ありがとうございました、先生! 私のペロロ様フォルダが充実していきます!

 ところで頼んでいただいてなんですけど、この後のことも考えると大丈夫ですか……?」

「甘いものは別腹だから問題ない。パンケーキの後にケーキ三切れ食ったことあるし」

「そ、それは……あはは、すごいですね……」

 

 なんで引いてるんだよ。その笑顔を浮かべた口に無理矢理あーんでねじ込んでやろうか。

 

「じゃあ、いただきーー」

「…………」

「……」

「…………ペロロ様が……」

「……ヒフミ、食いにくい」

「へ!? あ、あああ、すいません先生どうぞ、私は気にせず食べてください!」

「いや気にしないとか無理」

 

 そんなもの悲しそうな目を向けないでくれ、ほっとくと腐っちゃうんだぞこのペロロ様。

 

 

 

 

「はー……先生、今日はありがとうございます! 本当に楽しかったです♪」

「そりゃ良かった。まあ本番はこれからだから、サプライズに備えておけ」

「……事前に告知されてたら、サプライズになるんですかね?」

「言われて不安になるって意味では、間違いなくサプライズだけどな」

「そ、そうですね、あはは……」

 

 シャーレに向かう帰り道。ハナコのサプライズに戦々恐々している俺に対し、ヒフミは苦笑い。晄輪大祭のやらかしが記憶に新しいからな、致し方なし。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

「さ、さすがにハナコちゃんも変なものを用意したりは……」

 

 人のいいヒフミがはっきりないと言えないあたり、日ごろの行いと言える。

 そうして、ヒフミが先にシャーレのドアをくぐると

 

『ヒフミ(ちゃん)(さん)、誕生日おめでとう(ございます)!!』

 

 並んでいた面々からのクラッカー奇襲で、全身リボン塗れになった。こらアズサ、ペロロ様を投げるんじゃない。爆発するタイプかと警戒しちゃっただろ。

 

「わ、わぷっ!? え、ユウカさんやアルさん、アリスちゃんも!?」

「ぱんぱかぱーん! ヒフミがパーティーに加わりました!」

「ふふ、一度だけとはいえ共にアイドルをやった仲だもの。祝うのは社長として当然でしょ?」

「社長は関係あるか分からないけど……ヒフミにはお世話になったからね、私も祝いたかったから」

「皆さん……本当に、ありがとうございます!」

 

 イタズラストレートの面々から祝いの言葉を送られて驚きから一転、満面の笑みで手を握っていくヒフミ。それに釣られて皆も笑っているんだから、人望ってやつなのかね。

 

「ほらヒフミさん、主役がいつまでも入口に立っていては格好が付きませんよ」

「な、ナギサ様!? 忙しいって聞いてたんですが、来てくださったんですか!?」

「ヒフミさんの誕生日を祝いたくて、先生にお手伝いしていただきました」

「シャーレとトリニティ両方で書類漬けになったわ」

「ふふ、ありがとうございます先生。このお礼は、必ずしますので」

「あいあい。特別に利子は付けないでおくよ」

 

 後ろから満面の笑みであらわれ、ヒフミの肩を後ろから押すナギサ。昨日「ヒフミさんの誕生日、ヒフミさんの誕生日……」ってブツブツつぶやきながら、死んだ目で書類を捌いていたのとは大違いだな。

 

「ふふ、サプライズゲストは大成功ですね♪

 ……コハルちゃん、どうしました?」

「いや……ハナコにしては、真っ当すぎてビックリしてるだけよ」

「あら、酷いですねー。じゃあコハルちゃんのお望み通り、くんずほぐれつで仲良くするのがいいですか?」

「そ、そんなこと言ってないでしょ!? エッチなのはダメ、死刑!」

「コハル、くんずほぐれつとはどういう状況だ?」

「うえ!? そ、それは……言えるわけないでしょ!?」

「うふふ、それはですね~」

 

 いつものやり取りをしつつ、ナギサとヒフミの後を追っていく補習授業部の残り三人。その後を他のメンツも付いていき、シャーレの中が姦しい空間になっていく。

 

(こうやって見ると、ヒフミの交友関係広いねえ)

 

 プレゼントは後に渡すか。コッソリ買っておいたマリーゴールドのマリーゴールドのブローチが入った小箱をポケットの中で弄りながら俺も足を進めようとすると、

 

「お? どうしたヒフミ」

「その、今のうちにお礼を言いたいなって」

「お礼?」

 

 さっきのデートについては言われたし、何かあっただろうかと首を傾げていると、

 

「先生、いつも私達を、私を助けてくれて、一緒にいてくれてありがとうございます。こんなに素敵な友達が増えたのは、素敵な毎日を過ごせるのは、先生のおかげだって私は思ってます。

 だからーー」

 

 そう言って、ヒフミは秋の晴れ空のように澄んだ、純粋に嬉しそうな笑みを浮かべ、

 

「これからも、よろしくお願いします。先生♪」

 

 

 

 

おまけ

「はい、私からのプレゼントよ」

「こ、これは……ペロロ様の着ぐるみ!? これって……!?」

「うん、障害物競走の時のよ。ヒフミがこれを爆発したの、随分気にしてたみたいだから……直してもらったの」

「ユウカさんっ……ありがとうございます、大切にしますね!」

「ヒフミ、折角だから着てみてはどうだろう?」

「そうですね、アズサちゃん! これを着て、全身でペロロ様を感じます!」

「え、今着るの……? 本当にペロロ好きなのね、ヒフミ……」

 

 

 

 




あとがき
 そろそろ逆RTAやめようよ(自戒)
 というわけでお久しぶりです、りいんです。平凡ゆえに主人公になれる子でありながら、等身大の普通の女の子でもあるヒフミの誕生日SS、超特急ですが書いてみました。
 ヒフミ推しの先生、解釈違いならごめんなさい。楽しんでいただけたなら幸いです。
 それでは今回はここまで。読んでいただき、ありがとうございました。
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