『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

24 / 42
 モモイ、ミドリの誕生日SSです。
 推しとその姉の誕生日なんだから、書くしかねえよなあ!?(←ナツの誕生日SSが残業続きで書けなかった反動)


姉妹の内緒なバースデー

 

「先生、早く早くー! ミッションは素早く、かつ目立たないように遂行しないといけないんだから!」

「じゃあ後者は100%満たしてないだろ、モモイ。他の人の邪魔になるから走るのはやめなさい。

 というか商品は逃げないんだし、そんな急ぐ必要ないでしょうよ」

「甘い、イージーモードより激甘だよ先生!  限定品だけど多めに用意してるって聞いたからゆっくり行ったら、目の前で最後の一個がスティールされたことなんてザラにあるんだから!」

「えらく具体的だな……似たような経験でもあるのか?」

「……慢心ダメ絶対を心に刻んだよ……あの、目の前で欲しかったものを奪われる虚しさよ……」

「実体験かい」

 

 シニカルっぽい顔で天を仰いでるモモイ。スタンプラリーの時もそうだけど、ちゃんと日程とかの情報は確認しような。

 さて、本日はモモイとミドリ、才羽姉妹の誕生日ーーの前日。明日に備え、お菓子等を買うためにミレニアムのショッピングモールに二人で来た次第である。

 

 何故祝われる側が買い出しに出てるかというと、

 

「みんな育ってきたし対戦しようよ、ゲーム開発部総当たりで! ビリの人は罰ゲームね!」

 

 大人気シリーズの最新ゲームで唐突に対戦を申し込んだ張本人が、一人だけ全敗した結果である。

 ドヤ顔で挑みながらあんまりの結果で真っ白になるモモイに、普段は姉に対して辛口コメントの多いミドリが、

 

「お姉ちゃん……私も一緒に行こうか?」

 

 と、憐れみと気遣いの肩ポンをするくらいの惨敗っぷりだった。初戦でパーフェクト勝ちして困惑してたもんな、無理もねえ。

 

「武士に二言はなーい! 負けたなら鍛えてリベンジすればいいし、だから私を憐れむなー!

 うわあああん!」

 

 まあ、その優しさは追い打ちでしかなかったんだが。ガチ泣きするくらい悔しかったのは分かるけど、ミドリによしよしと頭を撫でられてたのはどっちが姉か分からねえなこれ。

 その後すぐに復活して、「先生荷物持ちに付いてきて!」と言い出したら、凄いジト目を向けられてたけど。テンションが急勾配過ぎるんよ。

 

「えーと、これとこれとー、あとこれもかなー」

「手当たり次第に放り込んでるな……なんかロシアンルーレット系のもあるし」

「折角の誕生日パーティーだし、普段食べないのも欲しいなーって。この辛いのとか、悶絶する姿は絶対に面白いし!」

「自分に来る可能性を忘れてないか」

「狂気の沙汰ほど面白いんだよ、先生……」

「どっちかというと自爆芸だろ。

 しかし、こんだけ買い込んで大丈夫なのか?」

 

 ギフト向けの高いやつも無造作に詰め込んでいるため、諭吉一枚を余裕で超える額になっているのだが。

 

「秘策があるから大丈夫なんだよ、先生」

「必要なのは金策じゃね?

 まあいいや、その秘策って何よ」

「ふっふっふ、それはねー」

 

 モモイは買物カートを押している俺の腕を両腕でホールドしてから上目遣いになり、無邪気な満面の笑みと甘えた声で、

 

 

 

「お兄ちゃん、買って♪」

 

 

 

「誰がお兄ちゃんやねん」

 

 デコピンした。

 

「あいたあ!? おおお……ノータイムでお仕置き執行は酷いよね先生!?」

「いやツッコミ待ちなのかなって」

「どこをどう考えても違うよね!? くう、プライドを捨てた私のチャームすら無効化するとは……!」

「いや可愛いとは思うぞ? 思うけど……うん、まあ」

「そこで言葉を濁さないでよ!? 辛辣なツッコミよりダメージ受けて私の心はボドボドだー!」

 

 ボドボドな割に元気だなお前。

 うがー! と額を抑えながら猛抗議するモモイに悪い悪いと謝りながら、頭を撫でてやる。

 実際さっきの姿は可愛いと思うんだが、魂胆が丸見えでちょっとイラッとしたのは内緒だ。

 

「ふーんだ。こんなことしても騙されないからね、先生がお菓子を買ってくれるまでは!」

「結局たかる気満々じゃねえか。ちなみにモモイ、いくらくらい持ってるのよ」

「え? ……お、お札数枚はあるよ?」

「諭吉さんは?」

「ない!」

「買ってもらうの前提じゃねえか」

 

 開き直ってドヤるな、もう一回デコピンでしばいたろか。

 色々諦めた溜息を見せつけてから、懐の財布を取り出す。何言ってもごねそうだしな、泣き落としとか躊躇なくやるし。

 

「……ったく。誕生日だし、今日だけだぞ。

 ほら、他に欲しいものあったら持ってこい」

「ホント!? やったー、えへへ、なんだかんだ言いながらも優しい先生大好きー♪」

「はいはいありがとよ」

 

 また腕にくっついてくるモモイに逆の手を振って応じると、一転して不満顔になる。百面相より表情豊かだな、見てて飽きないけど。

 

「むー。先生、ここは私の好感度が上がってフラグが立ったんだよ? シナリオ的には告白イベントに入ってもいいと思うなー」

「嫌だよ。この流れだと成功しても、モモイのお財布√だろ」

「いやその発想はひどーーはっ!?」

 

 文句言おうとしたら何か閃いたのか、某新人類みたいな反応するモモイ。

 先生知ってる、こういう時は思いつきでトンデモなこと言うんだ。

 

「ねえ先生」

「何よ」

 

 

「ミドリを先生のお嫁さんとしてあげるから、お姉ちゃんの私を養わない?」

「お前本気で何言ってんの?」

 

 

 

 真剣な顔でヒモにして発言するモモイに、俺も真顔になる。妹の将来を犠牲に人生楽々プランを考えるんじゃありません。

 

 

 余談だが、後に姉の戯言をミドリは改めて言われ、

 

 

「お、お姉ちゃん何言ってるの!? 完全に養われる気満々だよね!?」

「えー? でもここで頷けば、ミドリは先生とのハッピーライフ√が始まるよ? 嫌なの?」

「……いや、その……先生とそうなるのは、嫌じゃない……というか、いいんだけど……

 せ、先生は、どう思いますか……?」

「うん、まずは姉が男のヒモになろうとしてるのを止めようか」

 

 大分パニクってるのか、真っ赤な上に若干涙目の上目遣いで聞いてきた。

 戻ってこいミドリ、お前の姉は人としてダメな道を歩もうとしてるぞ。

 

 

 

 

「あー、めっちゃ時間食った。こんなことなら現ナマ降ろしておけば良かったな……ん?」

 

 やたら長いATMの列をようやく抜け出し、モモイとの待ち合わせ場所に向かうと、

 

「うーん……これがいいかな? それともこっち?」

 

 滅多に見れない真剣な顔で、悩ましそうにゲームキャラのアクセサリーを弄っている彼女の姿があった。

 

「モモイ、それ欲しいのか?」

「わあ!? ビックリしたあ……先生、忍び歩きで私の背後を取るなんて、やりますなあ」

「いや普通に歩いてきたし、お前が集中してたから気付かなかっただけだろ。

 で、どっちか欲しいのか?」

「う、ううん! これは私が自分で買う奴だから、大丈夫!」

「?」

 

 何やら慌てた様子で首を横に振るモモイに、俺は首を傾げる。いつもなら駄々っ子よろしく「買って買ってー!」とねだってくるというのに。

 

「あー、うー、えっとー……」

 

 流石にらしくないと自覚しているのか、目を泳がせながら言葉を探しているモモイ。言うかどうか迷ってるのが、ものすごく分かりやすい。

 一分ほど唸り続け、意を決したのかモモイは顔をあげ、

 

「先生、ミドリの誕生日プレゼントを選ぶの、手伝って! まだ決められなくて……」

 

 と、お願いしてきた。なるほど、それなら俺に買わせないのも納得だ。

 

「モモイ」

「な、何先生、改まって」

 

 視線を合わせると、何故かモモイは緊張した顔になり、

 

「用意するの遅くね?」

「アルェ!? ここは妹のためを想って行動するいいお姉ちゃんに対して、好感度が上がるシーンでしょ!?」

 

 ずっこけた。いいリアクションだな、芸人なれるぞ(適当)

 

「ワーイイオネエチャンダナー」

「棒読みぃ! この先生フラグ管理超シビアじゃん、どうやれば上がるの!?」

「失礼な、俺ほど簡単に好感度を稼げるキャラはいないぞ」

「えぇ……じゃあ何すればいいのさあ」

「酒とタバコ」

「華のJKにはどうしようもないじゃん!?

 この先生、恋愛ゲームならシークレット級にムリゲーだー!」

「まずアラサーのオッサンを攻略対象にするなよ、需要ないだろ」

「え、それマジで言ってる先生?」

 

 急に真顔になるなよ、なんか怖いぞ。

 物好き以外にはない。ないだろ、多分。

 

「って、話変わってるじゃん! とーにーかーくー、ミドリの誕生日プレゼント選び、手伝って! なるべくスピーディーに!」

「なんでプレゼント選びに制限時間があるんですかねえ」

「だって、折角だからサプライズってことで驚かせたいし。そのためには、時間かけて気取られる訳にはいかないのだ!

 あ、これみんなには内緒だからね! 誰にも言っちゃダメだよ、先生!」

「ーーはいはい、じゃあ良さげなのを見繕ってくか」

「もー、なんで笑ってるのさ! 私は真剣に悩んでるんだからー!」

 

 バシバシと音を立ててモモイに背中を叩かれながら、俺は笑いを抑えられなかった。

 いや、だってなあ。

 

 

 

 

「お姉ちゃん、ちょっといい?」

「奇遇だねミドリ。私も用事があったんだよ」

「「……」」

 

 

「「これ、プレゼント!! 誕生日おめでとう!!」」

 

 

「「……え?」」

「……ぷっ」

 

 内緒にしてって言ったこと、姉妹で完全に一緒だったからな。ここまで異口同音にセリフが揃うと、合わせてるんじゃないかと思っちまうわ。

 

「えっと、お姉ちゃんも用意してくれたの? 私、先週先生と一緒に買ってきたんだけど……」

「え、ミドリも!? 私も昨日、先生と買物行った時にーーって先生、もしかしてあの時笑ってたのって」

「お前ら、普段は喧嘩ばっかりなのに、こういう時は姉妹なんだな……ぷ、くくっ」

「やっぱり知ってたんじゃん!? 何で言ってくれなかったのさー!」

「いやお姉ちゃん、内緒にしてってお願いしたのは、私達だから……

 でも先生、さすがに笑いすぎですよ」

「くくっ、いやすまん。なんかツボっちまってーーぶふ、くははっ」

「「もう! 先生!」」

「あはははは!」

 

 追い打ち掛けんなって、腹筋捻れて死にそうなほど笑うなんて久しぶりだわ。

 

 

 

 

 笑いすぎて激おこになったモモイが突撃しかけたり、謝罪込みで希望していた二人用のゲームを渡したり、ゲーム開発部だけでなくエンジニア部、ヴェリタス、あげくはセミナーやC&Cの面々も集まって手狭になったから、ミレニアムにある部屋の一つへ移動して騒ぎ出したり、なんとも賑やかなことになっていた。

 

「先生、今日はありがとうございます」

「おうミドリ、改めておめでとさん。機嫌は直ったか?」

「先生が爆笑するからですよ……でも、あんなに笑う先生は初めて見たので、実績解除と言えるかもしれません」

「ミドリは大人だねえ」

 

 姉は未だに顔を合わせると、ゲームに誘ってボコボコにしようとしてるのに。手加減すると怒るから、大半は返り討ちにしてるけど。

 騒ぎの真ん中から外れた俺の場所に来たミドリの頭を軽く撫でてやると、少し顔を赤くしながらも気持ちよさそうに、されるがままになっていた。

 彼女の耳元では、モモイと一緒に選んだゼリーズのイヤリングが揺れている。アクセサリーブランドとのコラボということで中々いいものであり、良く似合っている。

 

「……先生、ちょっと抜け出しませんか?」

「主役の片割れが離れていいのか?」

「あっちはゲーム大会になってるから、私が抜けても大丈夫ですよ。

 それに、折角の誕生日だから先生と一緒に過ごしたいなって……」

「こんなろくでなしと一緒にいたいとか、物好きだねえ。ミドリが良ければ、割けるだけ割くことにするよ」

「あ、ありがとうございます……じゃあ、どこに行きましょうか?」

「んー、そうだなあ」

 

 何気なく騒ぎの中心に目を向けると、モモイとネルが対戦ゲームに興じており、負けたC&Cリーダーが「あー! チックショウまた負けたあ!」と叫んでいた。元気だなあいつ、本日の主役より楽しんでないか。

 

「よし、ちょっとした隠し場所に行くか」

「え、そんなとこあるーーわ、ちょ、ちょっと、先生!?」

 

 ミドリの小さな手を掴み、こっそりと輪の中から抜け出す。慌てた緑の顔は真っ赤になっていたが、急で驚かせちまったか。

 

 

 

「わあ……いい景色ですね。いつも見てるミレニアムも、こういう視点で見ると新鮮に感じます」

「俺も教えてもらったんだけどな。あ、秘密のお気に入り場所らしいから、他の皆には内緒な」

「ふふ……はい、先生と私の秘密が増えましたね」

 

 ミレニアムサイエンススクールの屋上、給水塔のある一角。眼下のミレニアム自治区がよく見渡せる場所で、俺たちは並んで街並みに目を向けていた。

 

「……先生。改めて、本当にありがとうございます」

「ん? 何よ急に。誕生日のお礼ならさっきも聞いたぞ?」

 

 しばらく無言で視線を街に向けていたが、不意にミドリがこちらへ声を掛けてきたので振り向くと。

 街の明かりを背景に、ミドリは微笑んでいた。どこか優しく、愛おしさを込めたもので。

 

「それもありますけど……ゲーム開発部のことや、アリスちゃんのことも含めた、これまでの色々について、お礼を言ってないなと思って」

「……ああ、それか。まあ先生だからな、当然のことをしたまでよ」

「先生はそう思うかもですけど。それでも、お礼が言いたくて。

 ……先生、本当に、今までありがとうございました。ゲーム開発部が今もあるのも、他の部活の皆と仲良くなれるのも、アリスちゃんとまた笑い合えるのもーーお姉ちゃんが一緒にいてくれるのも。全部全部、先生のおかげです」

「……大袈裟だって。俺は付いていっただけで、何かしたのはお前達だよ」

「そうかも、しれません。でも、先生がいたからこそ、皆で笑い合える結果になったと思いますから。

 私にとっても、ゲーム開発部のみんなにとってもーー先生は、ヒーローなんですよ」

「……柄じゃねえなあ」

「先生なら、そう言いますよね」

「おや、よくご存知で」

「先生のことは、よく見てますから」

 

 収まりの悪い感情を誤魔化すように頬を掻いている俺に、ミドリはゆっくりとこちらへ歩み寄り、 

 

「そしてーーこれからも、私を、私達を、よろしくお願いしますね」

 

 夜空を背景に、見たことない綺麗な笑顔を向けていた。

 ちょっと見惚れてしまったのは、内緒だ。

 

 

 

 





おまけ
「あの、先生。お姉ちゃんが先生のことを『お兄ちゃん』って呼んだの本当ですか?」
「モモイのやつ、明け透けに言いすぎだろ……お菓子買ってもらうために、おねだりしただけよ」
「もう、お姉ちゃんったら……
 えっと、先生。私もいつもと違う呼び方してみても、いいですか?」
「……いやまあ、別にいいけど。兄呼びするにはちょっと年齢離れすぎ」


「メグル、さん」


「「……」」
「……そっち?」
「は、はい。その、嫌でしたか……?」
「いや、別にいいんだが……ちょっと予想外で、ビックリした」
「そ、そうですか」
「「……」」
(なんだろう……名前呼ばれただけなのに、恥ずかしいのはなんでだ)
(先生、恥ずかしがってる……ちょっと、かわいい)


あとがき
 残業なんて滅んでしまえ(呪詛)
 それはそれとしてミドリはかわいい、モモイは面白い。そんな私の気持ちを込めて書いてみました(終了直前の突貫の言い訳)
 それでは読んでくださり、ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。