『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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ノアと誕生日が同じという、奇跡……!
とか言いつつ、いつも通り時間ギリギリです()
い、祝ってるからセーフ(目逸らし)


価値がないと言われても、記憶したいもの(生塩ノア)

「はい送信っと。今日はこれ以上の仕事はしないし、苦情も受け付けませんよっと」

 

 昼前、シャーレの執務室にて。本日最後の報告書を連邦生徒会にぶん投げた俺は、達成感を胸に椅子へもたれかかる。うわ、背伸びしたらすげえ音したわ。

 

「お疲れ様です、先生。私のために仕事を早く終わらせてもらえたのなら、とても嬉しいですね」

「言い方よ。まあノア絡みで早く終わらせたのは事実だけどさ」

 

 書類仕事なんてとっとと終わらせるべきだろ。淹れてもらった飲み物に口を付けながら、横で楽しそうにからかってくる本日の主役でありながら、シャーレの当番をわざわざ立候補してきたノアに返事する。

 ところでこの茶色い液体、甘いから砂糖ミルクたっぷりのコーヒーかと思ったらココアなんだけど。頭が活性化するどころか落ち着いて眠くなるんですけど。

 

「それじゃあ、今日は私と一緒に時間までお昼寝しませんか先生? 忘れられない思い出になるかもしれませんよ」

「それ添い寝前提で言ってるよな? 忘れられないというか、いけない思い出になるだろ」

 

 「据え膳喰わぬは、ですよ?」じゃねえんだわ、単純に後が怖すぎるんだよ。

 

「残念です。それじゃあヘタレ先生に対する絶好の好機はまた今度、ということで」

「何故かヘタレにされた上、次回があるという前提になっている件。

 しかし、平日とはいえ誕生日で普通に仕事してるってのも、何だかなって気分には」

「そうですねえ。誕生日だからって問題が起こらない訳じゃないですから、そこは割り切るべきかと」

「考え方が学生のそれじゃないんよ」

 

 誕生日って学生にとっては特別なものなんじゃないかと思うんだが。まあ、セミナーの仕事で普段から忙しい以上、仕方ないんだろうが。

 

「でも今日はユウカちゃんがセミナーのことを請け負ってくれましたし、この後は先生との時間を」

「まあ、生徒のためにしてやれることをするのが、シャーレの先生の本分だしな」

 

 書類仕事に忙殺されて、肝心の助けるべきものを助けられなかったら本末転倒だしな。

 まあ一番の理由は入室するなり、「先生、今日はお時間いただけますか?」とノアに『お願い』されたからだが。頷いたら珍しく嬉しさを分かりやすく出していたんだから、断れるわけないわな。

 余談だが、誕生日の生徒がいる時は出来るだけ時間を取れるようにスケジュールを調整している。一回そのことで連邦生徒会の誰かに文句を言われたが、

 

「じゃあまた仕事バックレるかもだけど」

 

 と言ったら、「本当にやめてください」とリンにマジ顔で止められたため、スケジュール調整に関しては受け入れられた。無茶苦茶なこと言うと、それより下のことって通るようになるよな(クソみたいな手段)

 

「さってと。この後どうする、ノア? 行きたいとこあれば、付いていくけど」

「? 先生が連れてってくださると思ったんですが」

「プラン自体はあるけど、ノアの希望聞いたわけじゃないからな。行きたいわけでもないのに連れ回したりしたら、折角の誕生日が台無しだろ」

「ふふ、そうですね。先生はそういう気遣いが出来るからこそ、私達を喜ばせてくれますからね」

「そんな大袈裟なことかあ?」

「大袈裟と思ってるのは、先生だけだと思いますよ?

 それじゃあ、出掛ける前に一つお願いがあるのですが」

 

 斜め後ろから眼前まで接近し、ノアは指を一本立ててくる。顔近いって、お前ただでさえ美人でよろしくないんだからやめなさい、髪も綺麗だから男の情緒を狂わせるんだよ。

 

「何だ? あんまり無茶な頼みは控えてくれよ、叶えられるもんに限界はあるから」

「あら? 私は先生に、そんな無茶振りをさせるような生徒に見えてたんでしょうか?」

「普段は多少イタズラする程度だけど、許されるととんでもねえことするタイプだと思ってる。違った?」

「どうでしょう? 先生から見た私はそう見える、ということでしょうね。

 あ、お願いは別に難しい内容ではなくてですね」

 

 

「タバコ吸ってる姿が見たい、なんて……変わったお願いするな、ノアは。

 そもそも、ここに来ればちょくちょく目にしてるだろ」

「先生、普段は私達が来たら吸うのやめてしまいますから、最初から最後まで吸っている姿は見たことがないじゃないですか。

 折角なので、こういう機会に見ておきたいなと思いまして」

「別に見て楽しいもんでもないと思うがなあ。

 あ、ノアそっちは風下だから移動しておきなさい」

「うふふ。お気遣い、ありがとうございます」

 

 場所は移って、シャーレの屋上。いつもの喫煙場所(自費自作)の前で、こちらを凝視してくるノアを前にして一本取り出し、愛用しているジッポで火を点ける。

「ふう……」

「じー……」

「…………」

 

 肺に満たしたこ煙を空へ吐き出しながら、ノアの観察に晒され続ける。っち来てからタバコやめようと言われることはあったけど、見られるのは何か落ち着かんな。

 というか口に出すなよ、普段より意識してしまうわ。

 

「あー…………もういい?」

「はい、十分です。ありがとうございました、先生」

 

 灰皿に押し付けた段階で、満足そうに頷くノア。いつも通り何か書いてるけど、何を書かれてるんだろう、気になるけど見たくねえ。

 

「そりゃ良かった。何か新発見でもあった?」

「それはもう。喫煙中の先生は、私達と接している時とは違う安らぎの表情を見せてくださいました。バッチリ記録しましたよ」

「まあそりゃあ、コイツとは古い付き合いだしな。無くてはならないというか」

「タバコは身体に悪いですよ?」

「このタイミングでそれ言う?」

 

 見せてと言われたのに咎められるって何それ、新手のトラップか何かだろうか。

 

「ふふ、冗談ですよ。私からお願いしましたし、今日は見逃して差し上げます」

「そうして、今日くらいは好きに吸わせてくれ」

「うーん……ダメです♪」

「世知辛いなあ」

 

 タバコも好きに吸えない、こんなキヴォトス。まあ活動の中心が女学生ばっかりだから、しょうがないんだろうけど。

 

「先生」

「ん? 何よ」

「良いものを見させていただきました、ありがとうございます」

「別にそんな、価値あるものでもないと思うけどねえ」

「いえいえ、新しい側面を見れるのはいいことですから。

 特に、好意を持った人のことは」

「……それ、どういう意味よ?」

「ふふ。さあ、どうでしょうか?

 あ、行きたい場所なんですが。百鬼夜行のご神木と言われている桜を、一緒に見てみたいです」

「急に要望出すね、君。まああそこのは一ヶ月くらいは見頃らしいから、行きますかね」

 

 秘密です、と唇に指を立てるノアに対し、両手を上げて降参のポーズを取る。本当、変に情緒を乱させないで欲しいね。

 とりあえず、見られたお礼に百夜堂のスイーツ食わせてやろう。一番カロリー高いので。心の中でそう誓いながら、俺はノアと並んで屋上を後にした。

 

 

 散策を終え、ミレニアムの奥にある空き教室にて。本日専用でパーティー会場へ改装されたそこへ、指定された時間ピッタリにノアと二人で入室すると。

 

「ノア、先生。お誕生日おめでとうございます!」

 

 音頭を取ったユウカの言葉に続き、あちこちからおめでとー! と声が掛けられ、クラッカーのシャワーが身体に絡みついた。

 

「ーーん?」

 

 俺もなのかと自分を指差したら、横のノアは悪戯が成功した笑みを浮かべて頷いたところで、

 

「ラストヒットのアリス、全力で行きます! ノア先輩、先生、おめでとうございまーす!!」

「ひゃっ!?」

「うおぁ!?」

 

 多分エンジニア部製だろう、バズーカ型のクラッカーを至近距離で鳴らしてくれやがったアリスの不意打ちに、ノアも予想外だったのか揃って悲鳴を上げてしまう。耳が死ぬ、いや死んだわ。

 

「あー、耳鳴りがやばい……ノア、大丈夫か?」

「は、はい先生、大丈夫です……

 ――あ」

「んあ?」

 

 驚いたことによる反射なのか、腕ごと俺のポンチョを掴んでいたことに気付いたノアが、慌てた様子で手を離す。その顔は珍しく、白から朱色に上塗りされていた。

 

「……えっ、と。その、先生」

「驚いたんだからしょうがねえだろ。あれ、もしかしてタバコ臭いから嫌だった?」

「いえ、もちろん嫌ではないの、ですが……こういう展開は、記録にありませんね……」

 

 掴んでいた手と俺の顔を交互に眺め、手帳で自分の口元を隠すノア。何か落ち着きないけど、

 

「アリス、まさか他ヒロインの好感度を稼ぐ手助けをしてしまいましたか!?」

「あちゃー、やっちゃったねえアリス」

「いいなあ、ノア先輩……」

 

 好感度って何、俺稼がないといけないほど信頼されてなかったのか。

 ゲーム開発部の面々がノアの行動に対してコメントをしている横で(ユズは何か言いたそうにこっちを見ているが)、

 

「へーえ? ノア、そんな顔するのね」

「ゆ、ユウカちゃん、からかわないでください……」

「ふふ、そうね。今日は誕生日だから、このくらいにしてあげる」

 

 珍しくノアに対して強く出てるユウカが、楽しそうに詰め寄ってからすぐ下がった。マウント取れてるから嬉しいのかね。

 俺も何か言っておこうかと思ったら、

 

「ふふ。ダメですよ、先生。今は皆さんの相手をしてあげてください」

 

 先読みでもされたのか、背中を押しながらノアは他の生徒が集まる場所へ近寄せられていく。

 

「私も終わったら、合流しますので。後で十分に、構ってあげてくださいね?」

 

 途中、悪戯っぽく耳に手を当て、そんな妙なことを告げてくる。構うって、子供じゃねえんだから。

 

「言われなくても、嫌になるくらい構ってやるよ」

 

 今日の主役だからな。そう囁き返してやったら、何故か目をまん丸にしてコクコクと、無言で頷いていた。自分で言っておいて顔真っ赤にするってなんだよ、俺が変なこと言ったみたいじゃん。

 

 

おまけ

 ヴェリタスから監視・撮影用の機材一式を貰ったノア。

 

「ありがとうございます。これでより一層、先生の観察がはかどりますね♪」

「オイヤメロ。洒落にならないもん渡してんじゃねえよ」

 

 本気で逃げられなくなるじゃねえか。




後書き
 いつも余裕綽々のノアだからこそ、焦るところを見てみたい。
 同時に、ノアに観察されて完全に理解されてもいたい(矛盾した思考)
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