『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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 フウカの誕生日SSその2です。
 なんだかんだその2書くくらい、ブルアカにはまってるしやってるんだなあ……遅くなってごめんね、フウカ……


並んで一緒の調理場で(愛清フウカ)

 

 

「フウカー、こっちの煮物、下拵えは終わったぞ」

「あ、先生ありがとうございます。それじゃあ、味噌汁の様子を見てもらってもいいですか?」

「あいよー。……灰汁って取った方がいいんだっけ?」

「取りますよ!? 寧ろ普段やらないんですか!?」

「いつもは並行して皿洗いとかしてるから、やらないというより忘れてる」

「えぇ……もう、今日はちゃんとやってくださいね? 私はその間に、煮物を仕上げちゃうので」

 

 任せろー、と力強く返事したら、何故か苦笑しながらフウカは自分の方に専念し出した。消せぬ、こんなにやる気に満ちているのに。

 本日は四月の末日、ゲヘナ随一の良心にして給食部の生命線、改め愛清フウカの誕生日である(本人に言ったら「せめて後数本、私以外にも線が欲しいです……」と言われた、なんかすまん)

 そして、場所はシャーレにある厨房の一室。

 

「プレゼントですか? ものは思いつかないんですか、その……先生と一緒に、お料理を作りたいです」

 

 と、本人から可愛いお願いをされたので、今一緒に夕飯を作っている最中だ。流石に欲が無さすぎると思ったので、プレゼントはこっそり用意しておいたけど。

 

「んー……」

「どうしました、先生? あ、もしかして沸騰しすぎちゃいました!?」

「そんな料理素人じゃないんだから……ちゃんと火の管理はしてるって。

 並んでやってると、フウカの手際がいいなーって改めて実感しただけだよ。その上でおせち料理があのクオリティなんだから、凄まじいなって」

 

 並々ならぬ努力と経験、あとは料理が好きだからこそこの手際と腕前なんだろうなと、現在進行形で感心させられてたからな。

 

「も、もう。そんなに褒めても、デザートの追加くらいしか出ませんよ?」

「出るんだ、甘いもの」

 

 少し褒めただけで追加出るとか神か、というかちょっと涙ぐんでないかフウカ。

 

「す、すいません……誰かに美味しいと言ってもらえるのも嬉しいんですけど、腕前を褒められるのは予想外だけど、すごい嬉しくて……つい、涙が出ちゃいました」

「……そっかー。俺で良ければいくらでも褒めるぞ」

「えへへ……そんなこと言われたら、褒められるために幾らでもシャーレに来ちゃいますよ? こうして一緒に料理を作ってくれるくらい、先生は優しいんですし」

 

 これくらいで優しいというあたり、普段どれだけ不遇な目に遭っているのかと思うと、ロクデナシの部類である俺でも同情するというか、本当に幾らでも褒めようと思うというか。

 とりあえず、料理が終わったら頭でも撫でてやろうと誓った。誕生日だし、ちょっとくらいサービスしても問題はないだろ。セクハラで訴えられたら負けだが。

 

「手際もそうだが、細かい味付けとかは全然適わんけどなあ。邪魔になって無けりゃいいんだが」

「いえいえ、全然! 以前給食部でお手伝いいただいた時は本当に助かりましたし、普段やってないのにこれくらいの腕前だったら、即戦力で給食部に来ていただきたいくらいです!

 それに、誰かと一緒に並んで料理を作れるの、憧れだったんです」

「……まあ、普段の切り盛りは一人だしなあ」

 

 ジュリが泣いてるぞ、と言うべきか悩んだが、よく考えたら一番泣かされてるのはフウカだったわ。普段は目が死んでるけど。

 あの謎体質、色々な所に頼んで研究してもらってるけど、まだ解決法は見つかってないし。

 

「……それに、先生と並んでなんて贅沢。これ、本当にし、しんこ……」

「ん?」

「な、何でもないです! 先生、ほっけの焼き具合を見てもらってもいいですか?」

「あいよー。こっちはお任せあれ、料理長」

「もう、私はそんな料理の専門家みたいな人じゃないですって」

 

 大袈裟ですよと本人は笑っているが、フウカならどこでもやっていけると思うけどな。

 将来就活に困ってたら、いくつかレストランの働き口を見繕ってあげるか。美食研の面々が暴れなさそうな場所で。

 

 

 

「よし、準備完了っと。フウカ、飲み物はオッケー?」

「はい、先生の分もありますのでどうぞ」

「ありがと。それじゃあ」

「「いただきます」」

 

 対面に座ったフウカと一緒に手を合わせ、二人で作った料理に箸を伸ばす。

 本日のメニューは、筍の混ぜご飯、豆腐とネギとわかめの味噌汁、フウカアレンジの肉じゃが、ほっけの塩焼き、油揚げと菜っ葉のおひたし。夕飯にしては品目が多い分、一品の量は少なめにしているため色々な味を楽しめる。

 

「うん、美味い。やっぱり自分でやるより、フウカの作るものが」

「えへへ、先生が一緒に手伝ってくれたお陰ですよ。私も、いつもより美味しく感じますから」

「煽てても、また一緒に作るのと食後のデザートくらいしか用意出来ないぞ?」

「……二つもしてくれるなんて、先生優しすぎませんか?」

「そんな本気で感動しなくても……」

 

 箸を置いて涙ぐんでるし、普段どんだけ褒められないし恵まれてないんだと不憫過ぎて俺も泣けてきた。

 

「ところで先生、デザートの用意って……」

「ん? ああ、折角の誕生日だしな。自作だから味の自信はない「先生が作ってくださったんですか!?」うお、フウカ近い近い」

「……あ、す、すいません。誰かに、特に先生に作ってもらえるなんて、ビックリしちゃった上に本当に、嬉しくて……」

 

 机乗り出す程とは思わなかったけど、喜んで貰えるなら良かったよ。さすがに恥ずかしくなったのか、赤くなりながら縮こまってるけど。

 そんな期待しないでくれよ? と笑いながら保険を掛けておき、食べ終えてから冷蔵庫に隠しておいた箱を持っていくと。

 

「あれ、フウカそれって」

「あ、その……先生と一緒に作れるのが楽しみだったので、張り切っちゃいました」

「自分の誕生日にケーキ作ったのか……」

「えっと……変、ですかね?」

「いいんじゃないかね。俺もフウカが作ってくれたものなら嬉しいし」

 

 膝上に似た形の箱を持っていたフウカに笑いながら告げ、お互いテーブルに置いてからせーので開けてみる。

 

「「あ」」

 

 見た瞬間、声が重なってしまった。まさか同じチョコケーキとは思わんかったわ、出来栄えに大分差はあるけど。

 お互い顔を見合わせ、思わず吹き出してしまう。いや、こんなガッツリ被るとは思わなかったじゃん。

 

「と、とりあえず食べるか。ノンアルだけど美味いって評判のワインもあるから」

「は、はい、そうですね。ありがとうございます、先生。

 あ、先生のと私の、一緒に食べていいですか?」

「うへえ、食べ比べは勘弁しれくれませんかねえ。俺なりに頑張ったけど、さすがにフウカのには適わんぞ?」

「はい、期待してますね」

「うーん、聞いてねえなあ」

 

 まあフウカが嬉しそうだし、いいか。ダメだしされたら次回の改良点にしよう。

 

 

 

「えへへ、先生、せんせぇ……先生って、いい匂いしましゅね……」

「……酔ってますなあ、フウカさん」

「酔ってましぇんよお? 酔うのはおしゃけを飲むせんせぇじゃないでしゅかあ。

 えへへ、あったかーい……」

(まさかノンアルコールでも酔うとは)

 

 胸元へ頭を擦り寄せてくるフウカ。

 アルコール成分なんて残りカスがあるかも怪しいと思っていたんだが、みりんで酔うくらいなんだから十分考えるべきだった、深く。

 この娘普段飲めるもの限られ過ぎてないか。

 俺の膝上に横座りとなり、赤い顔で胸元に頬をこすりつけ、甘えてくるフウカの頭を撫でる。髪が擦れてくすぐったいのと、角が刺さりそうでちょっと怖い二つの感情を同時に味わうのは何なんだろう。意識朦朧なせいか、ヘイローも切れかけの電灯みたいに点滅してるし。

 

「せんしぇー、あーん」

「……いやフウカ、それはさすがに恥ずか」

「あーん……」

「……あむ」

 

 そんな本気で泣きそうな顔されたら、恥ずかしいとか言ってられねえわ。そんな降伏宣言の独り相撲を内心で済ませ、差し出されたケーキを口に運ぶ。

 

「えへへ。美味しいでしゅか?」

「うん、とっても。さすがはフウカだな」

 

 実際、改めて食っても本当に甘くて美味いと思った俺は、今度はフウカの頬を撫でてみる。本当に嬉しそうな顔でふにゃふにゃしてるねえ、この娘は。

 なお翌日、酔った時の記憶は完全に残っていたようで。寝かしつけたシャーレの居住区から出てきた時は頭を抱えていたし、俺が朝の挨拶をした時に至っては、

 

「お、おはようございます先生! 昨日は本当にすいませんでした失礼します!」

 

 と、農園のトマトも目じゃないくらい真っ赤な顔でシャーレからすっ飛んでいった。君、そんな速度出せるのな。

 お陰で今日の当番から不審な目で見られたが、フウカだし甘んじて受けよう。いややっぱりきついわ、こっち見んな。

 

 

 




登場人物紹介
愛清フウカ
 酔うと愚痴っぽくなったり先生に甘えたりイチャつきたくなるなど、『普段抑えているもの』が出てきて、大胆な行動に出ることが多い。
 なお記録は残っているし、酔いやすいが醒めるのも早いため、正気に戻ると大抵頭を抱えている。
 

あとがき
 フウカと一緒に台所並んで、料理を作りたい人生だった……実際一人で作るのって大変だし、段々面倒になってくるんですよねえ。
 では前書きでも改めて言いましたが、遅れてマジでごめんフウカ……そして、読んでくださった皆様、ありがとうございました。
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