『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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 ブルアカ週刊連載、はーじまーるよー(夜八時から執筆開始)



匿われボイコット(ゲーム開発部)

「あー……どうするかねえ」

 

 雲一つない晴天下、澄み切った空色に水を差すため紫煙を天に向かって吐き出す俺、『シャーレ』の先生。昨今は喫煙者に優しくないためあっちこっちが禁煙指定だが、周囲に誰もいないので今はいいだろう。

 

 さて、普段なら昼真っ盛りで仕事漬けになっている時間なのだが。現在はボイコット後逃亡中である。だって仕事量がおかしいんだもん、マジで。絶対連邦生徒会あたりが仕事投げてきてるだろ。

 

「ふう……っといけねえ、思わず堪能しちまった」

 

 いけないと口にしつつ、もう一本吸いたい衝動に駆られる。何せ『大阪』からここ、学園都市キヴォトスに来てから吸える機会が激減したのだ。

 

(煙草は身体に悪いなんて当たり前のこと、言われるとは夢にも思わなかったわ)

 

 生真面目で苦労人な会計さんの苦情を思い出して苦笑し、寝転がっていた公園のベンチから起き上がる。

 さて、顔見知りに見つからないよういい加減移動をーー

 

「あ、先生! こんなところで何してるの?」

「こんにちは、先生。……あれ、今日はお休みですか?」

「……おう、モモイ、ミドリ。コンニチハ」

 

 早速見つかってんじゃねえか。早くも失敗フラグが立ちやがった。

 

 

「え、先生コーラ飲めないの!? ゲームにポテチとコーラは王道なのに~」

「王道が万人に通ずるわけじゃないってことだよモモイ。というかコーラだけじゃなく、炭酸全般嫌いなんだわ」

「先生よくお酒飲むのに、飲めないんですか?」

「お茶ありがと、ミドリ。酒って言ってもビールの類は飲まなーーなんで笑ってるのよ」

「あ、その。 なんか先生が可愛いなって思って……えっと、普段はカッコいいって思ってますよ?」

「カワイイを相殺出来てないんだよなあ」

 

 こんなアラサー捕まえてカワイイってどういうことよ、君らの方が圧倒的に可愛いでしょ。

 

「あ、じゃあ先生も私達みたいに耳付ければ可愛くなるんじゃないかな?」

「それだよお姉ちゃん!」

 

 誰も得しないでしょそれ。というかどこからその耳出したモモイ、ミドリはスマホを構えるんじゃない。

 

 先程二人に見つかってから現在、俺はゲーム開発部の部室に匿われている。何か誤魔化すのも面倒だから正直に仕事量ヤバくて逃げてきたって言ったら、

 

「じゃあウチで匿ってあげるから、先生一緒に遊ぼうよ!」

 

 と、モモイに誘われた。見つかった時面倒だし悪いよと言って断ろうとたのだが、

 

「大丈夫です、ユズちゃんとアリスちゃんもOK出してくれましたから。

 ……それとも先生、私達と一緒は嫌ですか?」

 

 ミドリが袖掴み+上目遣い涙目のコンボで頷かざるを得なかった。君どこでそんな技覚えたの。

 一応監視カメラ等を回避しつつ部室に着いてから、居て大丈夫なのかと聞いたのだが、

 

「パンパカパーン! 先生がパーティーに加わりました。ゲーム開発部のレベルが上がりました!」

「先生でしたら、あの、いつでも歓迎しますので……」

 

 あっさり許可が出てしまった。というかアリス、何のレベルが上がったのよ。

 まあ野宿よりは全然ありがたいんだが、ユウカあたりに見つかったら……まあ被害が俺だけに行くようにしよう、うん。

 

「じゃあ早速ゲームやろっか! 先生、何かやりたいのある?」

「いや、俺ゲームやらないから分からないんだが」

「「「「え?」」」」

 

 ゲーム開発部全員が目を見開いて俺の方を向く。何その宇宙人を見た時みたいな反応、こっち見んな。

 

「え、先生。以前私達と一緒にゲーム作りましたよね……?」

「ゲーム作れるのと出来るのは別だろ、ミドリ。テストプレイもしてないし」

「……その、本当に一回も?」

「大阪いた時はそんな余裕なかったからなあ」

 

 ガキの頃は明日の命すら定かじゃない路上生活だったし、大人になってからはコネ作りとか尻拭いに奔走してたしな。

 

「先生が住んでた大阪って、未開の地なの……?」

「モモイに蛮族判定でもされてんの俺? あれだ、前に読んだブラックラグーナが近い」

「治安最悪じゃん!?」

 

 キヴォトスもあんまり人のこと言えないと思う。まあだからこそ馴染むの早かったんだが。

 そんなわけで、ガチ素人の俺にどのゲームをやらせるかということでモモイ・ミドリ、ユズのオススメを話し合うーーというか、議論になっていた。前にも見たぞこんな光景。

 

「先生のゲームの初めてを巡って、熾烈なバトルが繰り広げられています……!」

「アリスの言い方よ」

 

 不思議そうに首傾げるんじゃありません。いや、俺が変に考え過ぎなのかもしれない。

 

「先生、私勝ちました!」

「えーと、おめでとう?」

 

 じゃんけんに勝っただけでそんな誇らしげな姿、初めて見たよミドリ。他の二人も心底悔しそうな顔して、先生どういう顔すればええのか分からん。

 そんなわけで、勝者のミドリから勧められたゲームは『ポヨポヨ』。テトニスに並ぶ落ち物パズルゲームの名作、らしい。

 

「んじゃやるか」

「先生、それ携帯ゲームだから違いますよ!?」

「え? ああ、いつも二人が弄ってる奴だからこれかと思った」

「うーん、昨今見ないレベルのゲーム素人だね先生」

 

 そりゃガチの素人だからね、しょうがないね。

 そんな訳で、ミドリに操作を教わりながらまずは一人でやった後、試しということで

 

「うーむ、ハンデ最大貰っても歯が立たんな」

「ふふふ、先生と私では年季が違いますからね」

「うわあ、ミドリ初心者に容赦ない……」

「何で引いてるのお姉ちゃん!? 手加減なしでって言ったの先生なんだから、別にいいじゃん!」

 

 変に手加減されるより、ミドリのパターンとか覚えて対抗しようと思っただけなんだどな。早すぎて素人の俺じゃよく分からなかったけど。

 

「あ、先生。こっちは右に積んだ方がいいんすよ」

「ああなるほど、この積み方なら連鎖が増えるのか。

 ところでさ、ミドリ」

「はい、何ですか先生?」

「近くね?」

 

 ゲーム教えるだけなのにピッタリくっつく必要はないと思う、操作教える時に女子特有の柔らかい手が触れてくるし。

 

「? これくらい普通じゃないですか?」

「アリスの時、こんなに近かったか……?」

「先生おっきいから、しょうがないんじゃないかな?」

「だからって人を背もたれにしてゲームやるんじゃないよ、モモイ」

 

 軽いからいいけど、身体傾くんよ。

 

「あ、お菓子なくなっちゃった。せんせー、買ってくるからお金ちょーだい?」

「ちょっとお姉ちゃん、いくらなんでも」

「ほい、じゃあ頼むわ。お釣りは取っといていいぞ」

 

 笑顔で手をかざすモモイにお札を何枚か渡すと、姉妹揃って驚いた顔になる。何よ、渡さないほどケチじゃないぞ。

 

「え、え? こんなにいいの?」

「? そりゃ匿って貰ってるんだし、これくらい奢っても問題ないよ。

 あ、モモイ。何か甘いもの買ってくれると助かる」

「うん、まっかせて先生! オススメのいっぱい買ってくるから!」

「いやそんな大量にはーーあー行っちゃったよ」

「……先生。あんまり簡単にお金を渡すと、たかられちゃいますよ?」

「生徒にたかられて困るほど貧乏じゃねえよ、シャーレ以外で稼いでるからな。

 で、ミドリ。何でお前も寄りかかってるのよ」

「私もどんな感触か確かめたいなって……ダメですか?」

「クッションの方が柔らかいと思うぞ」

「……先生、そういうとこですよ」

 

 どういうとこよ。頬膨らませられてもな、可愛いだけだぞ。

 

 その後もモモイやユズおすすめのアクション(死にゲー)や格闘ゲーム(めっちゃボコられた、みんな動きが異次元過ぎね?)を続けてやったり、

 

「ゲームにおいてはアリスの方が先生より先輩だから、任せてください! いざ、クエスト出発です!」

 

 というアリスに続いて協力型のRPGをやったら迷子になったりと、色々やってて気付いたら日も落ちて、月が顔を覗かせていた。

 

 

「くあー、さすがに疲れたな……しかし、ゲームの世界も色々あって面白いな」

「ふふふ、アリスに続いて先生もゲームの魅力に取りつかれたね!

 あ、先生。このゲーム次回作出るんだけど、ちょーっと買うにはお金足りなくてー……」

「お姉ちゃん、先生にたからないの!

 先生もポケットからお金を出さないでください!?」

「一万クレジット以内なら別にいいかなって。ミドリもやりたいって言ってなかったか?」

「先生のジョブは商人ですね!」

「まあ似たようなことはしてた」

「お、お金はもっと大事にしてください!?」

 

 声どもってんぞ、ちょっと期待してるじゃん。

 

 「じょ、冗談だって~」と言いながら逃げるようにジュースを買いに行ったモモイを見送り、お菓子食べながら休憩していると、ミドリのスマホに着信音が。

 

「あれ、お姉ちゃんからだ……

 せ、先生! ユウカがここに来ます!?」

「え、何でいきなりーーちょ、ミドリ?」

「とりあえずここに隠れててください! ユズちゃん、いいよね!?」

「う、うん……!」

「うおおおお、お前ら押し込むなって!?」

 

 ユズがいつも入ってるロッカー、俺にはちょっと狭いんだけど。

 無理矢理詰められて割とすぐ、モモイを引き連れたユウかが部室を訪れた。何か息切らせてるんだけど、どうしたホントに。

 

「ねえ、ここに先生いるの!?」

「わ!? ユウカいきなりどうしたの!?」

「先生がどっか行っちゃったせいであっちこっちの生徒会が混乱してるのよ!? 

 誘拐されたんじゃないかって一部の生徒が暴れ、じゃなくて探し回ってるし、スマホとか財布も置いてったせいで、どこにいるかも分からないし!」

「そんな大事になってるの!?」

「そんな大事なのよ!」

(ええー……)

 

 連邦生徒会だけならともかく、他の生徒会も混乱するのはどうなのよ。

 

「……で、ミドリ。モモイもそうだけど、情報伏せられてるのに何で知ってるのかしら?」

「……あ」

(Oh……)

 

 あ、これ完全にバレてますわ。焦ってても冷静な判断できるのは流石ユウカさんだな(白目)。

 

 隙間から見ていると、止めようとするアリスをスルーしてロッカーの前に立ったユウカ。よし、ここは。

 

「ナカニダレモイマセンヨー」

「そっか、誰もいないならしょうがないわね。

 ーーってなる訳ないでしょ先生!!?」

「デスヨネー」

 

 流石にこれでユウカは騙せなかった「私のことバカにしてます!?」してないから心読まんで。

 

 その後、怒髪天のユウカに引きずられてシャーレに戻らされたのは、言うまでもない。

 なお、モモカが俺に自分の仕事投げてたのが発覚したので、仕事はいくらか落ち着いた模様。次に連邦生徒会へ顔出したら、

『私は』

 

 

おまけ

 ミレニアムの廊下を引き摺られつつ。

 

「……で、先生。サボりの本当の目的はなんですか?」

「お前らが慌てふためく姿を見たかぐええええ!?」

「な ん で す か ?」

「絞まってる、首絞まってるからユウカ!?」

「真面目に答えないと圧迫が強まりますよ」

「普通に死ぬから!? というか引き摺るのやめれ、逃げないで歩くって!

 ……仕事量ヤバいってのも事実だけど、シャーレに軽く依存してる今の状態がマズいと思ったんだよ。実際、俺がいなくなっただけでこのザマだし」

「言いたいことは分かりますけど、先生はご自分の重要性を理解してください……」

「だからって指揮系統が死ぬのはダメだろ」

「……その辺りは今後、話し合っていきましょう。とりあえず、今日の仕事を終わらせちゃいましょう」

「いや、今日の分は終わらせてあるけど」

「なんでボイコットしてるのにそういうとこはしっかりしてるんですか……」

「生徒に負担掛けるのは本意じゃないんで。

 というかここまでの騒ぎになってるのもどうかと思う」

「用事のついでに寄ったら、

 『本日キヴォトス緊急休業日、あしからず。探さないでください』 って書き置きがあれば、誰だって心配するに決まってるでしょ!?」

「あれ、書き方悪かった?」

「まず勝手にいなくならないでください!」

 

 

 

 




登場人物紹介
先生
 原作の先生とは異なり、『大阪』からキヴォトスに(騙されて)来た先生。ヤクザ面で白髪の青年。
 口は悪いが世話焼きで散財家。稼いだお金は自分か生徒かの違いはあるが、割と使ってしまう江戸っ子気質(大阪人だが)。
 お酒とタバコは水と同じくらいの頻度で飲むが、生徒の前では飲まない吸わないを信条にしている。


近畿特別区『大阪』
 別名『犯罪都市』。現実の大阪とは違い、無法者のたまり場と化したヤベー街。
 GTAとかブラック・ラグーンを想像していただけると分かりやすい。
 銀行強盗や銃撃戦、サメが飛んでくるなど日常茶飯事なので、キヴォトスの騒動は先生曰く「似たり寄ったり」とのこと。


 ギリギリ間に合った。次回はすぐ書くので、次々回の分をアンケでもしようと思います


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