『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

33 / 42
 ユズの誕生日SSです。とりあえず箱かロッカーに詰めておけばいいというイメージ、私だけであって欲しい()



当たりたくないクリティカル判定(花岡ユズ、飛鳥馬トキ)

 ピンポーン

 

「あん?」

 

 八月十二日、キヴォトスにおける文化の日であり、某所で地獄の大型イベント初日が行われている日。

 そんなの関係なくシャーレの仕事を終えて一段落している俺の耳元に、ほぼ鳴ることのないチャイムの音が聞こえてきた。

 誰か荷物の注文でもしたかと(先生である俺自身はアナログ人間なので、通販はほぼしない)ドアホンを手に取ると。

 

『こんにちは、先生。お届け物に上がりましたので開けてください、がっでむほっと(クソ暑い)です』

「いや何してるんだトキ」

 

 カメラに映っていたのは、ミレニアムの最高戦力であるC&Cの新入りにして、最近シャーレで寛ぎまくることを覚えたメイド、飛鳥馬トキだった。というか両手にデカい段ボールを持ってるけど何だあれ、分解したアビ・エシェフでも突っ込んでるのか。

 

『C&Cデリバリーです。銃弾から戦車、秘密の書類や人材まで、必要なものさえいただければ何でも運びます』

「密輸業者だろそれ。人材とか拉致してるんじゃねえだろうな」

『ちなみに他従業員は募集中です、先輩達には極秘なので』

「ネルかアカネに報告しとくわ」

『特典のバニーペロロぬいぐるみを差し上げますので』

 

 それ賄賂のつもりかよ、どっかのトリニティ生くらいしか食いつかないわ。あとC&Cを謡うならせめてメイド服で来い、バリバリ制服だろ。

 

『極秘任務ですから。素直にメイド服を着るのは不合理ですし、私はメイド服でなくても作業のメイドですので。

 とりあえず開けてください。あと冷たいアイスティーと氷菓子をいただければ最高です』

「それやって俺に何の得があるんだよ」

『トキちゃん膝枕ぱわーで先生を篭絡します。今ならお疲れ様のナデナデも付いてきますよ』

「アイスティーに限界までガムシロ注いでやろうか」

 

 それは紅茶色の砂糖水では。もっともだがお前が言うなのツッコミを聞きながら、俺はシャーレの電子ロックを解除する。つうか当番やったんだからカードキー持ってるんだし、普通に入って来いよ。

 

「ふう。ありがとうございます、先生。両手が塞がっていたので、助かりました。あ、サインお願いします」

「どこにサインすればいいんだよ……というか何が入ってるんだ」

 

 制服の袖で額の汗を拭うトキが床の上に置いた段ボールは、中々の重さを感じられた。

 猫でも拾ってきたんかと思って蓋に手を掛けてみると、

 

「あ、あの……こんにちは、先生」

「マジで誘拐じゃねえか」

 

 段ボールの中に体育座りで横になっていた生徒、ゲーム開発部の部長であり本日の主役である花岡ユズが挨拶してきた。いやはにかみながら嬉しそうに言う状態じゃねえんよ、事件現場に遭遇してるんよ。

 

「いえ、ユズ本人の同意を得て運んできました。送料は着払いです」

「それでミレニアムから運んで来たって、キヴォトス基準でも中々の重労働だと思うんだが」

「かわいい後輩メイドの頼みですから、頑張りました。先生、褒めてください」

「……着払い込みで、良い茶葉と置いておいたバーゲンダッツな」

「やりましたユズ、先生がデレてくれました」

「や、やりましたね、トキさん……!」

 

 誰がツンデレだ誰が。向こうで何故か喜び合っている二人の声を背に、茶葉の用意を始めた間に、トキへタオルを投げてやる。不思議そうにしてるんじゃない、汗で見えちゃいけない中身が透けてるんだよ、察しろ。

 

「なるほど。こういうのも悩殺に使えるのですね、メイドとして勉強になりました」

「メイドの何を勉強してるんだよ。

 で、何で運送されてきたんだユズ」

 

 ご注文のセットを置いてから、両手で持ったアイスティーをちびちび飲むユズに水を向ける。というか箱から出て来いよ、気に入ったのかその狭さが。

 

「あ、あの、先生……匿ってください!?」

「……あん?」

 

 何で誕生日の主役が隠れようとしてるんだよ。あと今の状況、匿うというより囲われてるけどな、ジャストフィットで。

 

 

 

『よっし、じゃあゲーム開発部の総力を挙げて、ユズへのサプライズパーティー準備を始めるよ!』

『はい、ステルスクエスト開始です! 期限はユズの誕生日までにバーティ―の準備を完成させ、ユズから隠すことですね!』

『ちょ、お姉ちゃんアリスちゃん声大きいから!? ユズちゃんに聞かれたらダメでしょ!?』

 

 

「で、それを部室の扉前で聞いちゃったと」

「は、はい。久しぶりに買い出しへ出た時に……それで、聞いてたのがバレないようにと、近くの段ボールに隠れまして」

「たまたま通りかかった最強メイドの私が、バニックに陥りかけていたユズを丁寧に梱包し、シャーレまで配送してきました」

「いやその理屈はおかしい」

 

 友人のことを気遣うのは買ってやるけど、どうしたら箱のまま持っていく発想になるんだよ。というかお前の名乗り、どっかの天才美少女ハッカーみたいになってるぞ。

 

「元々アリスからユズの目を逸らす役割を受けていたので」

「それで箱ごとユズを持っていく理屈にはならないだろ」

「ステルスゲームでは気付かれないまま運ばれるというのは、最強の手と言えるので……」

「これリアルだぞ」

 

 実際バレずに到着してるわけだから、あながち間違いではないわけだが。トキはピースピースするな、いやすごいと言えばすごいけど。

 

「で、匿うのは別にいいんだが。これからどうするんだ」

「え? う、うーん……えっと、どうしましょうか?」

「オイ本日の主役。

 ……とりあえずゲームでもするか。何ならケーキかプレゼントでも用意するか?」

「い、いえ! 私は、その……先生が一緒に、いてくれるだけで、嬉しいので……」

「…………そうかい」

 

 上目遣いではにかんでいるユズから、違和感ない程度に目を逸らす。お前さん、そういう顔出来るんだな。

 

「先生、私はレアチーズがいいです」

「お前は少し遠慮しろよ」

 

 何かしんみりした空気が台無しじゃねえか。ユズは小さく笑ってるし、いいけどさ。

 

「じゃあ三人で出来る奴用意したから。トキはゲーム出来るのか?」

「ネル先輩と対戦してけちょんけちょんにされてからしたので、大丈夫です。先生、電源を入れてもいいでしょうか?」

「何でそんなに意気揚々なんだよ。今日の主役に譲ってやれって。

 ユズ、押していいぞ」

「い、いいんですか? それじゃあ……」

 

 何でそんな嬉しそうなんだ、髪思いっきり揺らしてるし。そういや据え置きのゲームを点けるのは特別なものがあるって言ってたけど、この辺はゲーマーの感覚何かね。

 

「あ、っ! あ、あの、先生、これって」

「ちょっと高かったけど、中古屋で偶然見つけた。

 ユズ、欲しかっただろ? ちょうど開発部のみんなで遊べるしな」

「おめでとうって言ってもらえるだけでも、嬉しかったのにこんな……先生、ありがとうございます。早速やりましょう!」

「あいよー。あ、これ本来は別に用意する」

「先生の方がサプライズ成功していますね」

 

 目を輝かせてコントローラーを握るユズの姿を見ながら、ほんの少し口角を上げたトキも、テレビに視線を向ける。まあ、生徒を助けるのが先生の役目だからな。

 

 

 

 余談だが、後でゲーム開発部の部室に訪れたところでクラッカーのサプライズを喰らったユズは、

 

「わ、わー、ビックリした―」

 

 と、明らかな棒読みにモモイとアリス、あとアスナは嬉しそうにハイタッチしていたが、気付いた他の面々は呆れていたり溜息吐いたり、苦笑したりしていた。

 

 

おまけ

「ちなみに先生。別のプレゼントは何を用意するつもりだったのですか?」

「『先生のフリーパス』。一回だけ好きなことをお願いできる奴みたいなの。

 まあユズなら大丈夫だと思うけど、無茶な命令されたら困るからやめといた」

「……懸命かと。もしそんなものが存在して知られたら、学園を問わず争奪戦が行われるかと」

「そんなこと起こる?」

「ちなみに私も参戦します」

「いや止めろよ」

 

 後日、争奪戦は大袈裟じゃねと他の面々にも聞いてみたら。いやなりますよって全員から返された。どんだけ俺に価値があるんだよ、龍の玉じゃないんだから。

 

 

 

 




あとがき
 ユズは些細なことでも喜んでくれるのが可愛い。というかスタートから好感度高い気がするのは気のせいですかね。
 それでは読んでくださり、ありがとうございました。いつも通り誕生日終わりギリギリになってしまい、ごめんねユズorz
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。