『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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 お久しぶりです。今回はノアの誕生日SSです。
 いつもと趣向を変えまして、ノアが大人になったらのIF話になっています。生徒とお酒を飲みたい、そんな話を形にしてみました。



酔って酔いての月宴(生塩ノア)

 

 

 

 

 

「えへへ、ノァ~……」

「ふふ。ユウカちゃん、私のお膝はどうですか?」

「うん、気持ち良くて好き~……」

「……でろでろに酔ってるな、ユウカ」

「酔っててもユウカちゃんは可愛いですね~。……先生、ちょっといいですかね?」

「いや何する気なんだよ」

「酔ってるユウカちゃんを介抱するだけですよ?」

 

 ホントかよ、ノアも顔赤いから介抱(意味深)になる未来しか見えんぞ。

 トリニティの商店街、その外れにひっそりと立っているバー。キヴォトスでは珍しく酒類の提供がメインであるため生徒が訪れることはほとんどなく、提供する料理のクオリティも高い、隠れた名店である。

 

「しっかし、飲む約束した人間が真っ先に酔い潰れてるのはどうなんだ」

「しぇんしぇいも、飲んでますかー?」

「はいはい、お前さんよりは飲んでるよ。……ユウカ、思った以上に下戸だな」

 

 梅酒一杯で顔真っ赤~になり、ノアの膝で世話になっている店を貸し切った主催ーー緩みっぱなしの笑顔で手を振っているユウカを見つつ、残していた梅酒のグラスを傾ける。

 間接キス? 二人も成人したし、気にするような年でもないだろ(雑)

 

「ユウカちゃん、今日の飲み会張り切ってセッティングしてましたからね。「途中で仕事の妨害がないように、全部終わらせてきたわ! これでかんぺき~♪」とも言ってましたし」

「ある程度は下の奴に投げればいいだろうに。ワーカーホリック気味なところは直らんね、この社長さんは」

 

 

 ユウカとノア、セミナーの名物コンビだった二人が卒業して数年。当初は学力も高いし実績もあることから進学するのかと思っていたが、実際はミレニアムでのノウハウを活かし、二人で企業を始めたのだ。

 で、代表取締役がこの床に転がってるユウカ、学生時代のツテを使ってヴェリタスやゲーム開発部にC&C、果ては他校の生徒までスカウトして質がやばいことになっている。ヒナ(あと付いてきたアコ)がいた時は何事かと思ったぞ、マジで。

 当の本人は頬を突いてやったら、「うー」と不満気に唸ってからこっちの指を掴んできた。可愛いけど離してくれ、指が折れる(ガチ)

 

「あらあら、ユウカちゃんは甘えん坊ですね」

「甘えられるでケガしたくないんだけど。ノア、ちょっと助けてくれ」

「じゃあ、後でお酌してくれますか? 先生」

「それくらいなら、喜んで。何杯でもいいぞ」

「ふふ、言質は取りましたよ? はーいユウカちゃん、先生の指離しましょうねー」

 

 あれ早まったか、そういや今日だけとは言ってねえなとやらかしたことに気付くも時既に遅し。笑顔を深めたノアが握ったユウカの手を優しく解いてくれる。

 ちなみに生塩ノア、彼女は秘書兼人事権を握っており、双子の姉からは『裏ボス』呼びされ「先生?」俺じゃねえよモモイが言ってた(責任転嫁)

 

「もう、可愛い生徒に向かって裏ボスだなんて、酷い人です」

「元生徒だろ。今は可愛いというより綺麗さが増したし、大人の女性らしくなった」

 

 まず口に出してねえんだけどな。そう思いながら自分の日本酒に口を付けていると、ノアはグラスを口元に持っていきながら、睨まれていた。何よ。

 

「……先生は相変わらずですね。いえ、以前より酷いかもしれません」

「突然の罵倒に困惑するんだが。何、変なこと言った?」

「乙女を惑わせる言葉を紡いでるんですよ? 変どころか悪い大人ですよ」

「酒の席で本音が滑ってるだけだよ。悪い大人なのは、まあ自覚してる」

 

 キヴォトスでは(比較的)大人しくしてるけど、大阪でやらかしたことが消える訳じゃないからな。そんなこと思いながら天井を眺めていると、ノアは困ったように眉を下げる。、

 

「先生が想う悪いの意味が違いますが……まあ、今日はお互いが主役ですし、大目に見ましょう」

「そりゃどうも、違うの詮索はしないよ。じゃあ折角だし、一杯注ごうか?」

「ふふ、ではありがたく♪

 それでは先生の誕生日を」

「ノアの誕生日を祝して」

「「乾杯(です♪)」」

 

 グラスの触れ合う澄んだ音が響き合い、器に満たされた赤ワインを傾ける。程良い渋味が喉を潤す感覚は、中々味わい深い。

 

(……まあ、実際綺麗になったよな)

 

 グラスを置き、視線を正面で上品に呑んでいるノアへ向ける。ぶっ倒れてるユウカと合わせた彼女の服装は、白のカラードレスに淡い水色のカーディガンを羽織った、シンプルながら綺麗にまとまった服装が、成長したことで磨きがかかった綺麗さは神秘さすら感じられ、こちらを惑わさずにはいられない。

 

(……呑みすぎたか? 脳内とはいえ、ガチで見惚れてるみたいになってるじゃねえか)

「……ふふっ♪」

 

 視線に気付いたのか、ノアは嬉しそうに微笑みながら首を傾げている。お前さんも十分魔性だと思うけどね、男がほっとかないだろうよ。

 

「数多の生徒を惚れさせた先生には、遠く及ばないと思いますよ?」

「棘しかねえなオイ。大半は若気の至りでの勘違いか、恋に恋してるだけだよ」

 

 実際卒業したら落ち着いたり、何故かごめんなさいされることも多かった。たまにガチもいるのは自覚してるけど、正直俺よりいい奴なんてもっといるだろ、アラサーどころか30超えのおっさんだぞ。

 

「なるほど、なるほど。先生はそういう風に認識しているんですね。私が記録しているものとは、少し違いますね」

「大体は合ってるだろ。シャーレにいる数少ない『大人』ってことで、大半が勘違いする立場なのは仕方ないさ」

「それは、あるかもしれませんね。

 ちなみになんですが、ここに勘違いしたままの生徒がいます。どう思いますか、先生?」

「ーーあん?」

 

 グラスから口を離し、ノアと向き合う。酒で赤味が増した顔には色気すら感じられるが、理性を失った様子はなく、瞳にも冗談の色はない。

 

「あー……冗談、じゃないのか」

「はい。正直、私もユウカちゃんもこの日のために、色々準備しましたから。いつか先生を取られないか、ずっと不安だったんですよ?

 お酒に助けられた勢い、というのはありますけど……先生、聞いてくれますか?」

「……聞くよ」

 

 一言だけ返し、グラスを傾ける。素面で聞けねえなと思ったゆえの行動だが、不思議と酔いが加速することはない。

 

「先生……いえ、メグルさん。私、生塩ノアは貴方のことが、好きです。愛しています。先生ではなく、一人の男性として。

 始まりは、シャーレの先生としてかもしれませんが……出会った時から大きくなり続けたこの想いは、大人になった今この瞬間でも、変わりません。

 貴方が隣にいるだけで、私は公平な記録が出来なくなるくらい、おかしくなってしまいました。でも、それは、嫌なことじゃない。嬉しくって、もう手放せないものなんです」

「……」

 

 思った以上に情熱的で、それ以上に切実な告白。想われているというノアの覚悟を、俺は甘く見ていた。

 

(……罪な男、って奴なのかねえ)

 

 視界が回り、脳が熱でやられていくような錯覚。おかしいな、酒の味がしねえや。思春期のガキかよ、鼓動がやかましくて仕方ない。

 

「……これは、記録に残すのは、恥ずかしい、ですね……」

「……そうかい。なら、俺の『記憶』にだけ残すことにするよ」

「……ふふ。じゃあ、絶対に忘れないでくださいね? 

 それで、先生ーー」

 

 返事はどうですか、というノアの言葉は続かなかった。そりゃそうだ、テーブルから身を乗り出した俺が、衝動のままキスしたんだから。

 

「ーーーーっっ!!?」

「……まあ、返礼代わりということで。貸し切りとはいえ、ここで口にするのはちと野暮だからな」

 

 唇を合わせるだけのものだが、目を白黒させるノアという珍しい光景を見ながら、俺はそう言っておく。

 実際は口が回らないんだけどな、軽口しか紡げねえとかポンコツすぎるだろ、舌が溶けたか。

 

「…………っっ。本当に、先生は、ズルい人です……」

「大人っていうのはそういうもんさ。勉強になっただろ?」

 

 笑いながら身体を離した俺に対し、ノアは眉をしかめて何を思ったのか、手元の白ワインを一気に呷り、

 

「んっっ」

「うお、んぐっ……」

「……ぷはっ。えへへ、これでお相子ですね、メグルさん?」

「お前なあ……」

 

 口伝いに飲まされたワインの味は、酷く甘く感じられた。

 

 

 その後、何が起こったかは伏せるが。酔いが冷めたユウカが頭を抱え、

「私も一緒にするつもりだったのに、酔ってダメになるなんて計算外にも程があるでしょ……」

 

 と、ガチ嘆きをしていたので思わず笑ってしまった。いつも通り怒らせたと思ったんだが、そこからの流れで両手に花の形で付き合うとか、どういうことなんだよ。

 

「いつかシャーレを辞めたら、ウチでスカウトしますから逃げちゃダメですよ?」

 

 って言われたけど、これ逃げ道ねえな。

 まあ、悪くないと思ってる自分がいるんだが。

 

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