『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

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 キヴォトス1新妻の似合う生徒(独断)、フウカのお手伝い話です。


人数不足に限界を感じる給食部(フウカ)

『先生、こんなことをお願いするのは心苦しいですが……

 助けて、いただけないでしょうか』

 

 全てはゲヘナの給食部部長、愛清フウカから送られたメッセージから、始まった修羅場だった。

 ……同じ部員のジュリが欠席したから、ヘルプを求めてきただけなんだが。修羅場なのは間違いないな、うん。

 

 

 そんなわけでフウカの依頼を受け、現在は昼時のゲヘナ食堂。元々二人しかいない給食部は、予想通り、いやそれ以上の戦場と化していた。

「ちょっと、横入りしないでよ!? 先生が作ったお昼は真っ先に私が食べるんだから!」

「そっちこそ、邪魔するんならーーきゃあああ!?」

「ふふふ、先生が作ってくださるのなんてこの先食べれるか分かりませんからねー? 邪魔する方は容赦しませんよ?」

「何だこりゃ」

 

 予想とは別の意味で、だが。

 というか今ぶっ放したの美食研究会か、飯に銃弾が入るからヤメレ、というか食堂で暴れるな吹き飛ばすな。

 

「別にメニューは変わらんだろうに、いつもこんな修羅場なのか? フウカ」

「えーと……多分、先生が来てくださったからかと」

「俺は客寄せのパン……レッサーパンダかよ」

「なんでわざわざ言い直したんですか?」

「パンダは凶暴だからだよ」

 

 あいつ等一輪車に乗りながら、カンフーで殴りかかってくるんだぞ。大阪じゃあパンダに殺られた話なんて珍しくもないし。

 

 とりあえず、争ってないで飯を食え飯を。横で苦笑しているフウカを尻目に、今日のメニューであるチーズオムレツを皿に上げていく。匂いが厨房に充満して涎がーー垂れてるわ、ジュンコが。そんな目を輝かせるんじゃない、すぐ用意するから。

 普通の学食ならメニューは複数用意するもんだが、ゲヘナでは給食部の人数が少ないので、一品だけにしている。

 まあこの忙しさでメニュー増やされたら手が回らなくーー

 

「こんのお! もう怒ったから!」

 

 横入りに我慢が出来なくなった生徒がぶっ放した銃弾の一発が壁を反射し、

 

 

「「あ」」

 

 

 綺麗にオムレツを貫通して、皿も割れた。こうなってしまってはもちろん、食べることは出来ない。

 

「…………」

 

 未だこちらに気付かず騒いでいる生徒に、俺は無言で視線を向ける。完全に流れ弾だったのか下手人は気付いていないが、近くにいた生徒はギョッとしている。まあ悪人面だしな、自覚はあるよ。

 

「せ、先生? あの、何を」

 

 懐に仕舞っていた大阪からの相棒を確認する俺に、フウカが心配そうな、焦っているような声を掛けてくる。いかんいかん、この娘を困らせるのは本意じゃない。

 

「……ふう。ああ悪い、大丈夫だフウカ」

 

 一度深呼吸を挟んでからフウカの方に振り向いて、笑みの形に表情を歪める。そして視線をもう一度元凶に向け、

 

 

「マナー違反の連中に、ちょっと灸を据えるだけだから」

 

 懐からショットガン、ウィンチェスターM1873を取り出し、澱みなく冷静に構えた。

 

「いやそれは大丈夫って言いませひゃあ!?」

 

 フウカの悲鳴をBGMに、銃弾が吐き出される。

 

 

「むご!?」

 

 

 一直線に飛んでいった弾丸ーーエンジニア部特製のトリモチ弾が爆発・拡散し、生徒のお口チャック(物理)に成功する。

 最初に暴れた原因はコイツだからな、他の奴らもお仕置きだっぺ。

 

「ふご、もー!?」

「むご、ごー!?」

 

 銃を落としてトリモチ弾を剥がそうとしているが、まあ指で取れるなら苦労はしない。これ一時間限定だけど、専用の液体でも使わない限り剥がれないからな。

 一転して、水を打ったように静まる食堂。下手人である俺に視線が集まっていることを感じながら、全力で呼吸をし、声と一緒に吐き出す。

 

「うるっせえぞお前ら!! 喧嘩したいなら余所でやれや!

 飯は全員分作ってるんだから大人しく並べ! お前らが暴れるから台無しになっただろうが!」

 

 食べ物粗末にするのダメ、絶対。食い物の前で暴れるんじゃねえよ、マジで。

 

「ルール守れないなら、そこの連中同様食えない状態にするからな!?」

「「「「「先生、ガラ悪!?」」」」

「やかましい、自覚してるわそんなもん! 

 オラ並べ、フウカと俺に余計な手間を掛けさせんな!」

 

 こちとらお上品に生きられる世界だと死んでたんだよ、もう一発撃たないだけありがたく思え。

 

「先生。お気持ちは分かりますが、その暴挙はいくら何でも看過できま」

「これ以上騒ぎ立てるなら、シャーレ権限で周辺の飯屋を一週間出禁にするぞハルナ改め美食研究会」

「「「「すいませんでしたぁ!!」」」」

「え、ええ……? 先生、いくらなんでもそれは、……」

 

 フウカが軽く引いてるが、俺だってこんなことに使いたくねえよ。

「こうでもしないと、反省しないだろこいつら」

「それは、まあ……」

 

 納得してくれたようだ。土下座しろとまでは言ってないけど。

 

 

 俺がガチギレ(という程ではないが)しているのを察したのか、その後は全員大人しく並んで飯を受け取っていった。

 何人か俺を見ながらヤベーよあの先生……とかヒソヒソ話していたが、そもそもキレさせるようなことするんじゃねえよ(真顔)

 トリモチ喰らった連中? 一時間もすれば粘着力ゼロになるよ、昼飯は抜きになるだろうが。

 

 

「……あれ、先生? 私今回何もしてなくない!?」

「連帯責任って素敵な言葉だよな、ジュンコ?」

「酷!? 食事を人質にするとか、悪魔の発想じゃん!」

「でもお前だけ特別扱いしたら、最悪他の部員に襲われると思うぞ」

「…………」

 

 分かってもらえたようで何よりだよ、めっちゃ渋い顔だけどな。

 後ろで「そんなことしませんわ!」「そうだよー!」とか声が聞こえるけど、お前ら過去の所業(やらかし)を振り返ってから言いなさい。

 

 

 

「……余計疲れた」

 

 片付けも終わり、生徒も掃けてようやく一段落。ゲヘナの食堂裏で、俺は紫煙を吐き出すボーナスタイムに突入する。

 まだ昼も始まったばかりなのに、一日分働いた気分だわ。まあ今日はシャーレに戻ってやることは終わらせているから、この後の地獄タイムはないけど。

 

「あー……」

 

 労働後の一服がいつもより美味く感じ、変な声が出てしまう。疲れたところに煙が全身に行き渡る、この感覚が至高ーー

 ヒョイッ

 

「あ」

「お疲れ様です、先生」

「……おー、お疲れフウカ。毎日大変だな、美食研究会にも絡まれるし」

「あ、あはは、慣れてますから……でも、今日は先生にやり込まれてて、ちょっとスッキリしました」

「そりゃ良かった」

 

 ぶっちゃけたまに出る愚痴から考えて、相当恨み溜まってるからな。お仕置きしとかんと爆発してたろうし、今回のはいいガス抜きだったと思っておこう。

 

「それで、俺は役に立った?」

「はい、今日は大助かりでした。そのまま給食部の顧問になって欲しいくらいです」

 

 笑顔でそう言ってくれる姿に、世辞や誇張はない、と思う。大阪で民宿やってた時飯作ってたけど、フウカのお眼鏡には敵うくらいだったようだ。こっちでも作ってるしな、偶にだけど。

 

「あー……フウカの頼みなら受けてやりたいけど、流石にシャーレやめないと無理そうだわ。ごめんな」

「ふふ、分かってます。言ってみただけですよ。

 ……あの、先生。そんな切なそうにタバコを見ないでくれませんか?」

 

 フウカのほっそりとした白い指には、俺が先程まで咥えていたタバコが挟まれていた。いつの間に火を消したんだろ、マジで気付けなかったぞ。

 

「……せめて最後まで吸うのはダメ?」

「ダメですっ。タバコは身体に悪いですし、折角摂った栄養を壊しちゃうんですから」

「(´・ω・`)ソンナー」

 

 こうなると返してくれないことは分かっているので、諦めて口臭防止の特製タブレット(ミレニアム作)を齧る。うーん、相変わらず効能は凄いがマズイ。

 それでも名残惜しさからタバコを見上げてしまうが、「そんな目をしてもダメですっ」って怒られた。

 ……なんだが、何で顔赤くしてるのよこの娘は。あとなんか身体震えてね、風邪か?

 しょうがない、今は諦めてーー

 

「帰ってから余分に吸うのもダメですよ?」

「フウカ、俺の心読んでる?」

「先生の行動パターンが分かりやすいだけですよ。

 それじゃあタバコのお詫びじゃないですけど、一緒にまかない食べましょう? 今日のチーズオムライスと、明日出す予定のスープも試食して欲しいので」

「……そーだな。俺も腹減ったし、いただきますわ。フウカの作る料理が食べれるのは、確かな役得だな」

「そ、そんなに褒めてもデザートくらいしか出ませんよ?」

「出るのか……いやまあ、甘いものは好きだから大歓迎だが。

 あ、酒飲んでもいい?」

「いや、ゲヘナにはないんですけど……」

「料理酒ならあるでしょ」

「そこまでして飲みたいんですか!?」

「冗談だよ、ちゃんと持ってるし」

 

 まあいたけどさ、金が無くて店の消毒用アルコールに手を出したバカは。

 あ、一応言っとくと俺じゃないぞ。

 

「もう、お酒は晩酌だけって言ってるじゃないですか先生」

「でも酒が切れると、調子悪くなるし……」

「そもそもこの後、買い出しに行くんですよ?」

「飲酒運転は大阪で慣れてるからダイジョブダイジョブ」

「何も大丈夫じゃないですよ!?

 ……もう、今日は私が夕飯を作ってあげますから、それまで我慢してください」

「あいあい、フウカの頼みと美味しいごはんのためならしょうがないね。ちゃんと我慢しますわ。

 ……しかし、さっき飯作ってたら、やたら夫婦ってからかわれるのは何でかね?」

「ひゅ!? あ、そ、そうですね……先生もエプロン姿だったからでしょうか?」

「かねえ。まあそういうのが言いたい年頃なんだろうけど」

 

 そもそもフウカほどの器量ヨシ料理ヨシなら、ダンナなんてより取り見取りだろ。

 

「…………」

「何よ、不満そうな目をして」

「……なんでもないです。先生はやっぱり先生だなって」

「なんかそれ、前にも言われたんだが。

 とりあえず、飯食おうぜ」

 

 何故かご機嫌斜めなフウカの頭を撫でてやる。こうしてると、割かし機嫌の直りが早くなるからな。

 しかし、頭巾越しでも髪が柔らかくて気持ちいいな。あんまりやり過ぎてセクハラで訴えられないかとも思うが、今のところ問題はない。

 

「もう、すぐそうやって誤魔化すんですから……今回だけですよ?」

「別に何も誤魔化してないんだけどねえ」

 

 

 よく分からないが、苦笑で許してくれたフウカに肩を竦め、俺も立ち上がる。さて、この後も何も問題ないといいんだがね。

 

 

 この後、食材調達にスーパーへ行ったら規則違反者(罪状は知らん)を追っていた猪イオリとかち合い、店の一角を吹き飛ばしやがりました。

 もちろん店長等に平謝りと弁償の保証をした、何故か俺が。イオリは食材を粗末にしたことで怒髪天に達したフウカに説教されてたからな、大人しい娘ほど怒ると怖いわ。

 まあ買物が台無しになったから、後日別件で付き合うことを約束したら機嫌直してくれたからヨシ。

 ……後ろでイオリが「やっぱりこの先生、たらしだな……」とか謂れのないこと言ってたから、ヒナにちょっと誇張してやらかしを伝えておいた。

 

 

 




キャラ紹介
先生
 フウカが戦力と認めるくらいには料理が出来る先生。本人的にはそこまで出来るわけではないため、シャーレの手伝い時はフウカの料理を楽しみにしている。
 料理酒でもいける口だが、余程追い込まれない限り手を出すことはない程度には自制出来る酒カス。
 高レベルのドンカーン。
 
パンダ
 舐めてかかると喰い殺される、一輪車と拳法の達人。大阪だと特定の場所で出没する。草食。


後書き
 フウカの新妻力はキヴォトスいちぃ!! すいません、言いたかっただけです。
 次回はエデン条約編が(個人的に)完結したので、それに関係するものを書く予定です。

PS
3/31 修正しました
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