『大阪』から来た先生   作:ゆっくりいんⅡ

5 / 42
エデン条約編終了記念、トリニティのあの生徒がシャーレ入りしました。というお話です。



気紛れ天使の功行録(ミカ)

「「「「ぎゃああああああ!!?」」」」

 

 良く晴れたキヴォトスの昼時。晴天下に似合わないが、聞き慣れた銃声と悲鳴が響き渡る。

 相変わらずすげえな、人を吹っ飛ばすパワーも、落ちてもケガ程度で済む頑丈さも。

 

「はいはーい、どんどん吹っ飛んでいてね。ドーン!」

 

 無邪気で楽し気な声を上げるのは、白いドレスと天使のような羽を持ち、腰まで伸ばした透明感のある桃色の髪を揺らす少女ーートリニティの生徒、聖園ミカ。

 彼女は生き残り(死んではいけない)の不良生徒に向けて、容赦なくサブマシンガンーーランチェスター短機関銃をぶっ放し、吹き飛ばす。

 二丁振り回すとかすんげえパワー、一人で小隊分の火力出して制圧してるじゃん。

 

「よし、この辺りは全部かな? 先生、次はどっち?」

「西側だな、ドローンも抱えてる部隊だが……俺いなくても一人で制圧できるんじゃないか? ミカ」

「えーダメだよ? 先生はちゃんと私のことを『監視』してくれなきゃ♪」

「なんで監視対象が楽しそうに言うんだよ。

 とりあえず行くぞ、さっさと終わらせて帰るべ」

「はーい。あ、今日のおやつは何?」

「ロールケーキ」

「いやもういらないんだけど」

「いつもと違うチーズケーキ味だぞ?」

「味がどうこうじゃなくてロールケーキを見たくない」

 真顔になるほど嫌なんだな。牢屋でロールケーキばっか食わされてたっていうの、ギャグかと思ったらマジだったのか。

 

 

 

 後始末も終わり、シャーレに到着。ミカはうーんと伸びをし、ソファに座り込む。そういうことするとスタイルの良さが強調されるから、男のいない場所でやりなさい。

「お疲れ様ー、先生。この後の予定は?」

「ミカは特にないな。俺はさっきの報告書と、任務前に残った書類の処理」

「いっつも多忙だねー。私もティーパーティーいた時は大変だったけど、軽く殺しにかかってるレベルじゃないかな。

 じゃあ夕飯まで時間あるし、ゲームの続きやってていい?

 あ、その前に紅茶入れてあげよっか?」

「書類仕事を手伝うという選択肢は?」

「うーん、やだ!」

「わあ、いいお返事」

 

 そんな満面の笑顔で拒否されたら、追撃する気も失せてしまう。まあ強制でもないし、別にいいんだけどさ。

 

 さて、エデン条約の件でやらかしたミカが何故シャーレにいるかというとーー単純な話、拘留中暇そうだったので罪滅ぼし代わりにシャーレへスカウトしたのだ。

 

 以下、募集までの流れ。

 

「あれ、先生お久しぶり。今日はどしたの?」

「おうミカ、暇なら減刑ついでにシャーレで働かないか?」

「え、ホント? やるやる、もう暇すぎて死にそうだったし、刑期減るならバッチコイ」

 

 以上。実際はもうちょい長い話し合いだったが、二つ返事で了承したのは間違いない。

 誘った俺が言うのもなんだが、契約書くらいちゃんと読みなさい。「先生なら酷いことしないだろうしダイジョーブダイジョブ」とか言ってたけど、そういう問題じゃないから。

 名目として監視は俺が、問題を起こしたらシャーレ責任で受け持つ予定だったのだが。後者はティーパーティーが受け持つことになった。

 

「ミカさんがお世話とご迷惑をお掛けしますから、私達も出来ることをさせていただきますね、先生」

「エデン条約の件では、先生に迷惑を掛けてしまったしね。これくらいは任せてくれ。いや、任せて欲しいかな」

 

 とのこと。

 話し合いの際、「迷惑掛けるの前提は酷くないナギちゃん?」とかミカが抗議していたが、二人から当たり前だろみたいな顔をされていた。信頼されてるな、いい関係だよお前ら。

 

(……まあ、減刑とは別に目的があるんだろうが)

 

 それはわざわざ言わなくていいだろう、向こうから喋るなら別だが。

 懐から眼鏡を取り出し、作業を開始する。まずは増えた書類について、

 

「まーた連邦生徒会の処理案件が混じってるな……」

 

 十中八九、犯人はあのポテチジャンキーだろう。先日のボイコットでリンに相当絞られたはずだが、懲りずにやる辺りいい性格をしている。

 

「はい先生、紅茶だよ。……やっぱ書類やってる時は眼鏡なんだねー、なんかインテリヤクザ? って奴っぽい」

「一応褒め言葉として受け取っとく。

 ……ん、うまいな。相変わらずミカが淹れるのはいいもんだ」

「ふふん、ティーパーティーでは必須スキルだからね」

「書類仕事も必須じゃないか?」

「えーだってー。折角シャーレに来て書類から解放されたんだし、強制じゃないんでしょ? じゃあやりたくないかなー」

「ナギサから「存分にこき使ってやってください。何かやらかしたら、ロールケーキをミカさんの口に突っ込めばいいので」って言われてるんだが」

「うわー、ナギちゃん容赦なさすぎ-。あれは幼馴染だからこそやっていいことなのに」

「ロールケーキ突っ込まれたことあるのか……?」

「うん、目撃したヒフミちゃんが笑顔で部屋を出ていったよ」

 

 そりゃそうだろ。その後ヒフミに弁解するナギサの構図まで容易に浮かぶわ。

 

「あはは、正解―。一歩間違えれば土下座する勢いだったから、ヒフミちゃん慌ててたなー。

 それで、先生はナギちゃんに何て返したの?」

「『ロールケーキは勿体ないから、かっぱ巻きでも詰め込んでおく』って。ナギサも納得してたぞ」

「やること同じぃ!? ナギちゃん私になんか突っ込めばいいと思ってるの!?

 というかグレードダウンしてるし、先生も頷かないでよ!」

「? 鼻にでも詰めた方がいいか?」

「いいわけないよ!? 華の女子学生に何てことするのさ!」

「鼻だけに」

「全く上手くないから!?」

 

 ぜーはーと肩で息をするミカ。ボケ側かと思ってたけど、割とツッコミも出来るのは最近知った新事実だ。

 ちなみに、突っ込む用のかっぱ巻きは冷凍で常備しているのだが。まあ必要にならない限り、言う必要はないだろう。

 

 俺が笑ってるのを見て全くもう、と怒ったミカは、ソファーに座ってゲームのスイッチを入れる。その辺に銃を投げるのはやめなさい、暴発したら俺死ぬぞ。

 しばらくゲームの音(とミカのコメント)をBGMに、書類仕事を進めていたのだが。

 

「先生―」

「ん? うげっ!?」

 

 声を掛けたと思ったら、ミカが後ろからぶつかってきおった。背中越しの柔らかい感触より、息の詰まる感覚が辛い。

 

「むう。女の子のハグにその反応は酷くない? まさか重いとか言わないよね?」

「ハグっつーかタックルだったろ……」

 

 お前が羽のように軽かったとしても、ダメージは免れんわ。

 

「で、何よ急に」

「構って♪」

「仕事中だからゲームやってなさい」

「だってもう終わっちゃったし―」

 

 え、マジか。思わずモニターの方を見ると、『Congraturations!』の文字が浮かび上がっていた。マジかよ、あれモモイが「これ死にゲーじゃん!?」って叫ぶレベルのレトロゲーだったんだが。

 

 もうちょいで終わるから待て、と言ったら、今度は机の横で肘突きながら陣取りおった。近い、なんかいい匂いがする。

 

「……見てて楽しいか?」

「うん。私の視線が気になって集中できない先生見てると、面白いなーって」

「しばくぞ聖園」

「ふはは、やってみろーい虚弱貧弱無知無能の先生!」

「そこまで言われるほどか俺」

 

 というか荒ぶる鷹のポーズとかどこで覚えた。暇な時にネット掲示板でも読み漁ってたんだろうか。

 

「なんかヒフミちゃんが見せてくれたペロロのアニメで、こんなポーズ取ってたよ。戦闘時のポーズの一つとかで」

「ええ……」

 

 いやあれも鳥類……鳥なのかあれ? まあ鳥の端くれか(自己解決)。

 

「あー、先生のリアクション見るの楽しー。シャーレだと気楽にこういう話できるから、ずっと居たいくらいだよ」

「そうかい。んじゃ存分に働いてくれ、その分居ていいから」

 

 実際ツルギクラスの戦力というのは、いてくれるだけで非常にありがたい。余計にものを破壊するのはやめて欲しいが。

 

「…………先生さ、何も聞かないよね」

「ナギサ達と顔を合わせ辛いから、シャーレに来たことか?」

「……わーお。もしかして気付いてた?」

「最初から。多分ナギサは気付いてるんじゃないか?」

 

 そっかあ、と重々しい空気から一変、気の抜けた笑顔になるミカ。前回の一件では目的を隠すのが上手かったけど、今回は露骨だったからな。流石に気づくわ。

 

「正直ね? ナギちゃんやセイアちゃんにどんな顔すればいいのかなーって、分からなくて」

「この前腹を割って話し合ったし、大騒動だったとはいえ許さねえほど狭量じゃねえだろ、あいつ等」

「いやあ、だからこそ、ね? 許されるより、いっそ罵倒された方が楽なこともあるからなーって」

「ちゃんと罪悪感持ってたんだなミカ。安心したわ」

「先生、もしかして私が血も涙もないヤベー奴だと思ってた?」

「いや、罪悪感持ってたら無理にでも吐き出さないかなって」

「……えー、そんなことないよー?」

 

 目が泳いでるぞ、何か前より分かりやすくなってるな。

 

「あはは、おっかしいなあ。先生しかいないから気が抜けてるのかな?」

「溜め込む必要がない状況なら、ガス抜きも必要だろ。

 まあ、俺で良ければ話くらいは聞いてやるよ。シャーレでやること終わっても、居づらくなったら来ればいいさ」

「おお、先生が先生してる」

「お前俺を何だと思ってるんだよ」

「うーんと、割とブチ切れてたような」

「お前らがブチ切れさせるようなことするからだろ」

 

 主にゲヘナとか、連邦生徒会の無茶振りとかで。俺はいつでも笑ってるような聖人君子じゃねえんだよ。

 

「そんな状態の先生がいたら、救護騎士団を呼ばなきゃいけないレベルだね」

「極めて正解」

「あれ、そこは「そこまでじゃねーよ」って言うべきじゃない?」

「いやどう考えても頭いかれてるだろ」

 

 俺も想像するだけで吐きそうだわ、誰だコイツとしか言いようがない。

 

「まあ、刑期が終わってミカの紅茶が飲めなくなるというのは寂しいな。飽きない美味しさだし、毎日でも飲みたいくらいだ」

「……わーお。先生、それは殺し文句ってやつ? 私、口説かれてるの?」

「? 生徒を口説く訳ないだろ。思ったこと言っただけだ、他意はねえ」

「先生、一回刺された方がいいんじゃない?」

「どんな不況買ったらそんな回答が出るんだよ」

 

 赤くなったと思ったら、すぐめっちゃいい笑顔に変わって毒吐いたぞこいつ。実は感情ないとか言われても、今なら信じてしまいそう。

 

「いやあ、だってねえ? ヒフミちゃんとかコハルちゃんには聞いてたけど、もう女の子の夢を正面突破で砕くレベルの酷さかなーって」

「どんなレベルだよ、というか大人の男に夢を見すぎだろ」

 

 というかミカ、ヒフミとかコハルとも普通に話してるんだな。先生安心したわ。

 

「一瞬変な気分になった私がバカみたいじゃん……」

「何か言ったか?」

「何でもないですよーだ。先生のバーカ!」

「ガキかお前は」

 

 アッカンベーまで加えて、そんな顔しても可愛いだけだぞ。

 

 

 

 翌日。今日は帰らない(今日『も』の間違えだが)というミカの説得に失敗し、勝手知ったる仮眠室を貸した筈なのだが。

 目を開けたら、こちらを見上げる彼女の綺麗な顔があった。

 

「おっはよー先生。ご機嫌いかが?」

「……朝っぱらから何してるんだ、ミカ」

「うーんと、夜這いならぬ朝這い? あ、添い寝してあげよっか?」

「それ寝る前に言うセリフだろ……いやちげえ、そもそも布団に入り込もうとするな」

「えー嬉しい癖に―。

 それで、何探してるの?」

「置いといたショットガンだけど」

「可愛い生徒が迫ってるのに、回答が銃向けるの!?」

「そりゃ(襲撃的な意味で)寝込みを襲われるのはよくあるし」

「……うわーお。(エッチな意味で)寝込みを襲われるなんて、さっすが先生だねーモテるねー」

「なんでそこでモテるなんて話になるんだよ」

 

 ちなみに発言中、ずっと顔が真っ赤だった。無理すんな、というか意外と初心だなお前。

 

 

 

 




キャラ紹介
先生
 ミカをシャーレに連れてきた張本人。半分居ついている状態の彼女に苦言は呈しているが、本人が気紛れなのはわかっているため半ば諦めている模様(他の生徒からは苦情が来ている模様)。
 ミカ曰く、「ハンマーでぶん殴っても気づかないにぶちんって感じ」とのこと。

聖園ミカ
 ティーパーティー『ホスト』の一人。シャーレ手伝いの関係で、現在は休職扱いになっている。
 気まぐれで思ったことを口にしてしまうが、自分の本心を隠す、悟らせないのはティーパーティーの中で最も優れている。が、経験の差から先生には見透かされている。
 恋愛レベルはクソ雑魚ナメクジ。
 属性イメージ:神秘、神秘装甲、フロント



後書き
 ミカの実装まだですか?(挨拶)
 というわけで、時期的にエイプリルフールネタになってしまいましたが、いつかこんな風にミカと気軽に接することが出来るシャーレが来て欲しいです。
 それでは、今回はここまでで。次回は未定です()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。