「「「「ぎゃああああああ!!?」」」」
良く晴れたキヴォトスの昼時。晴天下に似合わないが、聞き慣れた銃声と悲鳴が響き渡る。
相変わらずすげえな、人を吹っ飛ばすパワーも、落ちてもケガ程度で済む頑丈さも。
「はいはーい、どんどん吹っ飛んでいてね。ドーン!」
無邪気で楽し気な声を上げるのは、白いドレスと天使のような羽を持ち、腰まで伸ばした透明感のある桃色の髪を揺らす少女ーートリニティの生徒、聖園ミカ。
彼女は生き残り(死んではいけない)の不良生徒に向けて、容赦なくサブマシンガンーーランチェスター短機関銃をぶっ放し、吹き飛ばす。
二丁振り回すとかすんげえパワー、一人で小隊分の火力出して制圧してるじゃん。
「よし、この辺りは全部かな? 先生、次はどっち?」
「西側だな、ドローンも抱えてる部隊だが……俺いなくても一人で制圧できるんじゃないか? ミカ」
「えーダメだよ? 先生はちゃんと私のことを『監視』してくれなきゃ♪」
「なんで監視対象が楽しそうに言うんだよ。
とりあえず行くぞ、さっさと終わらせて帰るべ」
「はーい。あ、今日のおやつは何?」
「ロールケーキ」
「いやもういらないんだけど」
「いつもと違うチーズケーキ味だぞ?」
「味がどうこうじゃなくてロールケーキを見たくない」
真顔になるほど嫌なんだな。牢屋でロールケーキばっか食わされてたっていうの、ギャグかと思ったらマジだったのか。
後始末も終わり、シャーレに到着。ミカはうーんと伸びをし、ソファに座り込む。そういうことするとスタイルの良さが強調されるから、男のいない場所でやりなさい。
「お疲れ様ー、先生。この後の予定は?」
「ミカは特にないな。俺はさっきの報告書と、任務前に残った書類の処理」
「いっつも多忙だねー。私もティーパーティーいた時は大変だったけど、軽く殺しにかかってるレベルじゃないかな。
じゃあ夕飯まで時間あるし、ゲームの続きやってていい?
あ、その前に紅茶入れてあげよっか?」
「書類仕事を手伝うという選択肢は?」
「うーん、やだ!」
「わあ、いいお返事」
そんな満面の笑顔で拒否されたら、追撃する気も失せてしまう。まあ強制でもないし、別にいいんだけどさ。
さて、エデン条約の件でやらかしたミカが何故シャーレにいるかというとーー単純な話、拘留中暇そうだったので罪滅ぼし代わりにシャーレへスカウトしたのだ。
以下、募集までの流れ。
「あれ、先生お久しぶり。今日はどしたの?」
「おうミカ、暇なら減刑ついでにシャーレで働かないか?」
「え、ホント? やるやる、もう暇すぎて死にそうだったし、刑期減るならバッチコイ」
以上。実際はもうちょい長い話し合いだったが、二つ返事で了承したのは間違いない。
誘った俺が言うのもなんだが、契約書くらいちゃんと読みなさい。「先生なら酷いことしないだろうしダイジョーブダイジョブ」とか言ってたけど、そういう問題じゃないから。
名目として監視は俺が、問題を起こしたらシャーレ責任で受け持つ予定だったのだが。後者はティーパーティーが受け持つことになった。
「ミカさんがお世話とご迷惑をお掛けしますから、私達も出来ることをさせていただきますね、先生」
「エデン条約の件では、先生に迷惑を掛けてしまったしね。これくらいは任せてくれ。いや、任せて欲しいかな」
とのこと。
話し合いの際、「迷惑掛けるの前提は酷くないナギちゃん?」とかミカが抗議していたが、二人から当たり前だろみたいな顔をされていた。信頼されてるな、いい関係だよお前ら。
(……まあ、減刑とは別に目的があるんだろうが)
それはわざわざ言わなくていいだろう、向こうから喋るなら別だが。
懐から眼鏡を取り出し、作業を開始する。まずは増えた書類について、
「まーた連邦生徒会の処理案件が混じってるな……」
十中八九、犯人はあのポテチジャンキーだろう。先日のボイコットでリンに相当絞られたはずだが、懲りずにやる辺りいい性格をしている。
「はい先生、紅茶だよ。……やっぱ書類やってる時は眼鏡なんだねー、なんかインテリヤクザ? って奴っぽい」
「一応褒め言葉として受け取っとく。
……ん、うまいな。相変わらずミカが淹れるのはいいもんだ」
「ふふん、ティーパーティーでは必須スキルだからね」
「書類仕事も必須じゃないか?」
「えーだってー。折角シャーレに来て書類から解放されたんだし、強制じゃないんでしょ? じゃあやりたくないかなー」
「ナギサから「存分にこき使ってやってください。何かやらかしたら、ロールケーキをミカさんの口に突っ込めばいいので」って言われてるんだが」
「うわー、ナギちゃん容赦なさすぎ-。あれは幼馴染だからこそやっていいことなのに」
「ロールケーキ突っ込まれたことあるのか……?」
「うん、目撃したヒフミちゃんが笑顔で部屋を出ていったよ」
そりゃそうだろ。その後ヒフミに弁解するナギサの構図まで容易に浮かぶわ。
「あはは、正解―。一歩間違えれば土下座する勢いだったから、ヒフミちゃん慌ててたなー。
それで、先生はナギちゃんに何て返したの?」
「『ロールケーキは勿体ないから、かっぱ巻きでも詰め込んでおく』って。ナギサも納得してたぞ」
「やること同じぃ!? ナギちゃん私になんか突っ込めばいいと思ってるの!?
というかグレードダウンしてるし、先生も頷かないでよ!」
「? 鼻にでも詰めた方がいいか?」
「いいわけないよ!? 華の女子学生に何てことするのさ!」
「鼻だけに」
「全く上手くないから!?」
ぜーはーと肩で息をするミカ。ボケ側かと思ってたけど、割とツッコミも出来るのは最近知った新事実だ。
ちなみに、突っ込む用のかっぱ巻きは冷凍で常備しているのだが。まあ必要にならない限り、言う必要はないだろう。
俺が笑ってるのを見て全くもう、と怒ったミカは、ソファーに座ってゲームのスイッチを入れる。その辺に銃を投げるのはやめなさい、暴発したら俺死ぬぞ。
しばらくゲームの音(とミカのコメント)をBGMに、書類仕事を進めていたのだが。
「先生―」
「ん? うげっ!?」
声を掛けたと思ったら、ミカが後ろからぶつかってきおった。背中越しの柔らかい感触より、息の詰まる感覚が辛い。
「むう。女の子のハグにその反応は酷くない? まさか重いとか言わないよね?」
「ハグっつーかタックルだったろ……」
お前が羽のように軽かったとしても、ダメージは免れんわ。
「で、何よ急に」
「構って♪」
「仕事中だからゲームやってなさい」
「だってもう終わっちゃったし―」
え、マジか。思わずモニターの方を見ると、『Congraturations!』の文字が浮かび上がっていた。マジかよ、あれモモイが「これ死にゲーじゃん!?」って叫ぶレベルのレトロゲーだったんだが。
もうちょいで終わるから待て、と言ったら、今度は机の横で肘突きながら陣取りおった。近い、なんかいい匂いがする。
「……見てて楽しいか?」
「うん。私の視線が気になって集中できない先生見てると、面白いなーって」
「しばくぞ聖園」
「ふはは、やってみろーい虚弱貧弱無知無能の先生!」
「そこまで言われるほどか俺」
というか荒ぶる鷹のポーズとかどこで覚えた。暇な時にネット掲示板でも読み漁ってたんだろうか。
「なんかヒフミちゃんが見せてくれたペロロのアニメで、こんなポーズ取ってたよ。戦闘時のポーズの一つとかで」
「ええ……」
いやあれも鳥類……鳥なのかあれ? まあ鳥の端くれか(自己解決)。
「あー、先生のリアクション見るの楽しー。シャーレだと気楽にこういう話できるから、ずっと居たいくらいだよ」
「そうかい。んじゃ存分に働いてくれ、その分居ていいから」
実際ツルギクラスの戦力というのは、いてくれるだけで非常にありがたい。余計にものを破壊するのはやめて欲しいが。
「…………先生さ、何も聞かないよね」
「ナギサ達と顔を合わせ辛いから、シャーレに来たことか?」
「……わーお。もしかして気付いてた?」
「最初から。多分ナギサは気付いてるんじゃないか?」
そっかあ、と重々しい空気から一変、気の抜けた笑顔になるミカ。前回の一件では目的を隠すのが上手かったけど、今回は露骨だったからな。流石に気づくわ。
「正直ね? ナギちゃんやセイアちゃんにどんな顔すればいいのかなーって、分からなくて」
「この前腹を割って話し合ったし、大騒動だったとはいえ許さねえほど狭量じゃねえだろ、あいつ等」
「いやあ、だからこそ、ね? 許されるより、いっそ罵倒された方が楽なこともあるからなーって」
「ちゃんと罪悪感持ってたんだなミカ。安心したわ」
「先生、もしかして私が血も涙もないヤベー奴だと思ってた?」
「いや、罪悪感持ってたら無理にでも吐き出さないかなって」
「……えー、そんなことないよー?」
目が泳いでるぞ、何か前より分かりやすくなってるな。
「あはは、おっかしいなあ。先生しかいないから気が抜けてるのかな?」
「溜め込む必要がない状況なら、ガス抜きも必要だろ。
まあ、俺で良ければ話くらいは聞いてやるよ。シャーレでやること終わっても、居づらくなったら来ればいいさ」
「おお、先生が先生してる」
「お前俺を何だと思ってるんだよ」
「うーんと、割とブチ切れてたような」
「お前らがブチ切れさせるようなことするからだろ」
主にゲヘナとか、連邦生徒会の無茶振りとかで。俺はいつでも笑ってるような聖人君子じゃねえんだよ。
「そんな状態の先生がいたら、救護騎士団を呼ばなきゃいけないレベルだね」
「極めて正解」
「あれ、そこは「そこまでじゃねーよ」って言うべきじゃない?」
「いやどう考えても頭いかれてるだろ」
俺も想像するだけで吐きそうだわ、誰だコイツとしか言いようがない。
「まあ、刑期が終わってミカの紅茶が飲めなくなるというのは寂しいな。飽きない美味しさだし、毎日でも飲みたいくらいだ」
「……わーお。先生、それは殺し文句ってやつ? 私、口説かれてるの?」
「? 生徒を口説く訳ないだろ。思ったこと言っただけだ、他意はねえ」
「先生、一回刺された方がいいんじゃない?」
「どんな不況買ったらそんな回答が出るんだよ」
赤くなったと思ったら、すぐめっちゃいい笑顔に変わって毒吐いたぞこいつ。実は感情ないとか言われても、今なら信じてしまいそう。
「いやあ、だってねえ? ヒフミちゃんとかコハルちゃんには聞いてたけど、もう女の子の夢を正面突破で砕くレベルの酷さかなーって」
「どんなレベルだよ、というか大人の男に夢を見すぎだろ」
というかミカ、ヒフミとかコハルとも普通に話してるんだな。先生安心したわ。
「一瞬変な気分になった私がバカみたいじゃん……」
「何か言ったか?」
「何でもないですよーだ。先生のバーカ!」
「ガキかお前は」
アッカンベーまで加えて、そんな顔しても可愛いだけだぞ。
翌日。今日は帰らない(今日『も』の間違えだが)というミカの説得に失敗し、勝手知ったる仮眠室を貸した筈なのだが。
目を開けたら、こちらを見上げる彼女の綺麗な顔があった。
「おっはよー先生。ご機嫌いかが?」
「……朝っぱらから何してるんだ、ミカ」
「うーんと、夜這いならぬ朝這い? あ、添い寝してあげよっか?」
「それ寝る前に言うセリフだろ……いやちげえ、そもそも布団に入り込もうとするな」
「えー嬉しい癖に―。
それで、何探してるの?」
「置いといたショットガンだけど」
「可愛い生徒が迫ってるのに、回答が銃向けるの!?」
「そりゃ(襲撃的な意味で)寝込みを襲われるのはよくあるし」
「……うわーお。(エッチな意味で)寝込みを襲われるなんて、さっすが先生だねーモテるねー」
「なんでそこでモテるなんて話になるんだよ」
ちなみに発言中、ずっと顔が真っ赤だった。無理すんな、というか意外と初心だなお前。
キャラ紹介
先生
ミカをシャーレに連れてきた張本人。半分居ついている状態の彼女に苦言は呈しているが、本人が気紛れなのはわかっているため半ば諦めている模様(他の生徒からは苦情が来ている模様)。
ミカ曰く、「ハンマーでぶん殴っても気づかないにぶちんって感じ」とのこと。
聖園ミカ
ティーパーティー『ホスト』の一人。シャーレ手伝いの関係で、現在は休職扱いになっている。
気まぐれで思ったことを口にしてしまうが、自分の本心を隠す、悟らせないのはティーパーティーの中で最も優れている。が、経験の差から先生には見透かされている。
恋愛レベルはクソ雑魚ナメクジ。
属性イメージ:神秘、神秘装甲、フロント
後書き
ミカの実装まだですか?(挨拶)
というわけで、時期的にエイプリルフールネタになってしまいましたが、いつかこんな風にミカと気軽に接することが出来るシャーレが来て欲しいです。
それでは、今回はここまでで。次回は未定です()