227号特別クラス、という名の隔離教室。クソ寒い場所へ用事のついでにとある事件の容疑者を見つけた俺は、早速詰問を開始する。
「さてノドカ、盗撮写真が出回ってるのについて弁明があれば聞くぞ」
「ちょ、待ってください先生!? 盗撮って何のことですか!?
それに、その写真が私のものであるという証拠はあるんですか!?」
「コタマが盗聴担当なら、お前が盗撮担当だから」
「決めつけがひどいー!? あと盗撮ではありません! いつも先生のご尊顔を遠くから拝謁してるだけですから!」
「それは覗きって言うんだよ」
そもそも男の顔なんて眺めてどうする「美しいものは見ていたくなる義務があるんです!」欲なのか義務なのかどっちなんだよ。
「じゃあ、この写真を見てどう思う?」
「でへへ、やはりこの角度がすごく輝いていまイダダダダ!?」
「やっぱオメエじゃねえか」
あっさり自白しやがったので、吊り上げアイアンクローをお見舞いしてやる。
横のシグレが「うわあ、凄い痛そう」とかのんびりつぶやいてるけど、薄情なのかとばっちりを避けてるのか。
「いたいいたい先生すいません! 撮影はともかく流出は覚えがないのでアイアンクローはご勘弁を!
あっでも怒ってる先生の顔もすていにゃあああ!!?」
「どこが反省してるんだテメェはあ!!? 素っ裸にして水風呂に叩き込むぞ!!」
「セクハラ! それはセクハラ案件ですよ先生! あと水風呂チョイスは温泉郷が滅んだことへの嫌味ですか!?」
「んな意図ねえわ! 風呂どころか水溜まりに入れてやろうか!?
あと人の着替え写真まで撮影した奴がセクハラとか言う権利はねえよ!」
「あれはとても眼福です! ご馳走様でした!」
「だから少しは反省しろやお前はぁ!?」
「いみゃあああああ!? 振り回すのはやめてー!?」
「先生、意外と力あるよね」
ただの火事場の馬鹿力だよ。
_(┐「ε:)_チーン←ノドカ
アイアンクローのダメージにより、暖房の前で死んでいるノドカを眺めながら俺は溜息を吐く。
「ったく。決めつけであって欲しいと思ったら、マジで犯人のオチになりやがって」
「あはは。でも倒れたノドカを火のそばに運んであげたのは優しいよね、先生」
「お前が絞まってるのに首引っ張るからだろ、シグレ。もうちょっと丁寧に扱ってやれよ」
「先生、お詫びとしてせめて膝枕をください……」
「詫び入れるのはお前の方だろ」
案外余裕あるな、もう一回〆ておくか。
「ご勘弁を―……」
「それはお前次第だよ。
というかキヴォトスの住民は頑丈なんだから、この程度で大袈裟だろ」
「いやメチャクチャ痛いんですけど、先生の吊り上げアイアンクロー……」
「痛覚のツボは一緒だから助かったわ」
「やっぱり痛いって分かってるじゃないですか!?」
「痛くなきゃお仕置きにならないだろ」
「先生、ひょっとしてドS」
「人聞きの悪いこと言うなシグレ、俺はノーマルだよ」
まるで俺が、生徒をイジメることに喜びを感じる類みたいじゃないか。
「まるでじゃなくて、その通りだと思うんですけど……」
「まあまあノドカ。先生を盗撮してたのは事実なんだし、これくらいで済んでよかったと思おうよ。
あ、先生カンポット飲む?」
「おう、サンキュ。別に盗撮については怒ってねえよ」
「えぇ……じゃあなんでわざわざレッドウィンターまで来て、私を〆てるんですか……」
「取引のついで」
「あーんまりですー……」
不貞腐れながらこっちに転がってくるノドカ。服汚れるからやめなさい、というか勝手に人の膝使うんじゃねえよ。
「うえへへへ、先生のお顔を真下から眺められるなんて絶景ですね……」
「オイ涎。きたねえからちゃんと拭いとけ」
「先生、なんかお母さんみたいだね」
「こんなでかい娘を持った覚えはないんだが」
「え!? じゃあ小さいお子さんはいるんですか!?」
「いねえよ、言葉の綾だよ。独り身だし」
「あ、そうなんですか……えへへ、そうなんですかあ」
「何で笑ってるんだよ」
アラサーが独り身なことに笑うとか、嫌味かこいつ。
「そこで気付かないのは、流石というかなんというか……
というか先生、盗撮はいいんだ」
「本気で嫌なら、そこの望遠鏡を叩き折ってる」
「や、やめてください器物損害ですよ!? この子は子供の頃からの相棒、最近ミレニアムの生徒さんにも改良してもらったんですから!」
「その相棒で殴られたって、この前保安委員長に聞いたんだが。
……ん? なあノドカ。望遠鏡の改良って、誰に頼んだんだ?」
望遠鏡を胸に抱きながら全力後退する(元気じゃねえか)ノドカが、俺の質問に首を傾げ、
「へ? エンジニア部の方々ですけど……メンテナンスついでに、撮影と録画の機能をつけてもらいました。
おまけでスマホに写真が自動共有されるよう、リンクしてもらっています!」
「ああうん、そう、そうか……」
「わ、先生が人生に疲れたサラリーマンみたいな顔してる」
「的確かもしれんけど、嫌な例えはやめれシグレ」
頭痛くなってきた。帰りにミレニアムへ顔を出す必要があるな。
「……うん、元凶は分かったからこの話はいいか。中身見たところでデータ共有されてるかは分からんし」
「? どういうことですか、先生?」
「データ撮ってるのがノドカ、それを勝手に共有してばら撒いてるのがエンジニア部とヴェリタスの共謀」
「え、ええ!? つまり、私はロハで親切でやってもらったと思ったら、写真をばらまく片棒を担がされたってことですか!?」
「なるほど、それならノドカには覗きだけじゃなく、データ流出の罪も加わるのかな?」
「シグレちゃん!? さらっと私罪人扱いされてない!? そんな悪いこと」
「もしもしヴァル「私が悪かったのでおやめください先生!!」渾身の土下座かまされたんだが」
「いっそ清々しいね、ノドカ」
「先生を見れない日が続くなんて、想像するだけで死んじゃいますよ……?」
「俺の顔は電子ドラッグか何かか?」
中毒なってるのか、キヴォトスに治療施設ってあっただろうか。
「まあノドカが末期なのは置いといて」
「その扱いは酷くないですか!?」
「極めて事実だろ。シグレ、頼んどいたものは?」
「うん、ばっちり。今回は百本くらい作っておいたよ」
「作り過ぎだろ。レッドウィンターなら問題ないだろうけど、こっちだと腐るんだが」
「大丈夫、常温でも最低半年以上は持つって保証できるから」
「実験でもしたのか……?
まあいいや、じゃあこっちはいただいといて。ほれ、今回持ってきたリスト」
「どれどれ……おお、各種暖房用品に食料品、それにカセットコンロも……こんなにいいの?」
「大量に仕入れて安くなったから問題ねえよ。キヴォトスでこの手のものは手に入りにくいしな」
甘いから酒って感覚は少し弱いけど、十分酔えるから個人的には好きだ。カンポットの入った容器を揺らしながら、俺はいい笑顔のシグレと握手をする。
「……非常にありがたいんですが、シグレちゃんが先生にお酒を提供する光景になってますね……」
「酒じゃねえよ、カンポットだ」
「ちょっと身体が温かくなる、アルコールの入った甘い飲み物だよノドカ」
「もう隠す気ありませんよね!?」
ここは保安委員会とか来ないし、別にいいだろ。
おまけ
「なあチヒロ。ヴェリタスに俺の写真データとか入ってない?」
「……え? 何先生、ナルシストにでも目覚めた?」
「お前に言われるとダメージでかいんだが。俺の写真が流出してるんだよ」
「……ちょっと調べておくね」
後日、頭にタンコブを抱えたエンジニア部とヴェリタスメンバーを引き連れたチヒロが、正式に謝罪に来てくれた。なんかすまん。
キャラ紹介
先生
227特別クラスはアルコールの供給源の一つである酒カス。いつも懐にしまっている。
ノドカ
盗撮魔。暇な時は先生の写真を見て悦に浸っている。
シグレ
ガンホット(お酒)の提供者。先生用のはアルコール分が増している。
たまにノドカと並んで先生の写真を一緒に見ている。
後書き
温泉イベント経験してないから、シグレの解像度低い……復刻待っています。
それでは読んでくださり、ありがとうございました。