バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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文章表現、訂正致しました。(2017.11.19)


第11話 説得

「ん、明久か?ずいぶん早いな」

「あれ?雄二?」

 

 

 Dクラスとの試召戦争の翌日、僕としては早めに学校に来たつもりだったが、既に雄二が到着していた。

 

 

「おはよう、雄二こそ早くない?かなり早めに来たつもりだったんだけど……」

「一応代表としてある程度点数を持ってないといけないからな」

 

 

 成程ね……、手に持った英語の参考書を見るに、早めに来て勉強していったらしい。……元々、雄二は過去に『神童』と呼ばれていたくらいだ。その気になればかなりの点数をとる事ができる……。

 

 

「お前もちゃんと勉強してきたか?」

「そこそこだけど、……ね」

 

 

 雄二にはそう言うものの、昨日は勉強なんてしていない。やる時間が無かったとも言えるし……、それに今日の補給テストも僕は受けようとは思っていない……。ま、昨日の試召戦争で点数を消費していないから、というのもあるのだけど……。

 

 

「ま、昨日お前がああ言った以上、今度のBクラス戦ではしっかりと参加してもらうからな?」

「……わかってるよ。それで、いつBクラス相手に試召戦争を仕掛けるつもりなの?」

 

 

 昨日約束した事だし、それについては全力を出すつもりだ。だけど、雄二は一体どのように考えているのか……。

 

 

「今日の補給テストが終わり次第、宣戦布告をするつもりだ。早ければ明日の午前中からってとこだな」

「ずいぶんと急だね?」

「……本来ならばすぐにでもAクラスに仕掛けたいところなんだがな……。いかんせん戦力が違いすぎる……。次のBクラス戦は布石を敷くって意味でも必要なことだ」

「Cクラスは?」

「何らかの対策はする必要があるだろうが、こちらから仕掛けるつもりはない」

「……成程ね」

 

 

 やっぱり今の雄二は焦っているみたいだ……。Aクラスとの試召戦争にばかりに囚われて他の事がよく見えていない……。

 

 

「……ねえ、雄二にもう一度聞いておきたい事があるんだけど……」

「ん?何だ?」

「雄二がAクラスを相手に試召戦争を起こす理由が知りたい」

 

 

 僕は雄二にストレートに聞いてみる事にした。雄二には、何事も直球でぶつけた方がいい。

 

 

「……昨日も言ったかもしれんが、他の連中に学力だけがすべてじゃないって事を見せてやりたいって事が理由だ」

「それだったら別に試召戦争にこだわらなくてもいいんじゃないの?スポーツでもいいし、秀吉みたいに一芸に秀でたところがあれば皆からも一目置かれると思うよ?」

 

 

 そこまで言うと、雄二は渋い顔になり、苦々しいといった感じで口を開く。

 

 

「……ホントに鋭くなったな、明久……。まあお前の言うとおりではある。だが、それだったらこの学校に入った意味がない。俺はこの学校には『試召戦争』があったから入ったんだ。その時から俺は最低クラスで最高クラスを倒すという目標があった。……だから俺は点数を調整してFクラスの代表になったんだ……」

 

 

 僕は雄二の言葉を聞き、

 

 

「……うん、雄二の目標はわかったよ。で、それは何の為?」

「は?な……、何がだ?」

「だってさ……、他の連中に見返すって言っても雄二はあまりそういう事に興味ないんじゃない?自分がまわりからどう思われていてもかまうもんかってスタンスだし……誰かの為って方がしっくりくるんだけどな……。例えば……、霧島さんとか……」

 

 

 霧島さんの名前を出した瞬間、目に見えて雄二が動揺したのがわかる。

 

 

「な……、なんでそこで翔子が出てくる!?」

「昨日、Aクラスに行く機会があってさ……。霧島さんに聞いたんだけど……、彼女って雄二の幼馴染なんでしょ?……だから霧島さんの絡みで試召戦争に拘ってるんじゃないかなって思って?」

「い……、いや、俺は別に、翔子の事は……」

 

 

 霧島さんの事を出されて冷静でいられなくなった雄二を見ながら、

 

 

「……今の雄二を見てたらなんとなくわかったよ……」

「ちょ、ちょっと待て!?一体何がわかったと……」

「……今回の雄二の試召戦争の目的だよ……、雄二が霧島さんにどういう感情を持っているかはわからないけど、……少なくとも霧島さんが絡んでいるだろう?」

「………」

 

 

 ……図星か。まぁ雄二が霧島さんの事を大事に思っている事は知ってるんだけど……。

 

 

「だから、僕には少し雄二が焦っているように見える……。例えば、雄二はBクラスの代表が誰か知ってるの?」

「い……、いや、知らないが……」

 

 

 やっぱり、知らなかったか……。

 

 

「恐らくBクラスの代表は根本君だよ……」

「根本?根本って……、あの根本恭二か?」

「……今、ムッツリーニに調べてもらっているけど、多分間違いないよ。彼が代表だったらとても正攻法で攻略できる相手じゃない……」

「…………確かにな」

 

 

 ……それに高得点者がいないとは限らない……、僕達のクラスの姫路さんや、ムッツリーニのように一教科に特化した生徒もいるかもしれない……。ふと、僕の脳裏にCクラスの、ある男女の姿が思い浮かんだ……。

 

 

「それに雄二、Cクラスも軽視しすぎだよ。雄二はCクラスの何がわかってこちらから仕掛ける必要はないと判断したの?」

「……それは、例えCクラスが攻め込んできても、俺たちのクラスに対応できる奴らがいると判断したからだ。姫路や島田、ムッツリーニ、それに……、お前がいれば作戦次第でCクラスには対処できる」

「……じゃあ、もしもCクラスにも姫路さんくらいの高得点者がいたらどうするの?それにもともと地力では相手の方が上なんだよ?……そもそもCクラスの代表が誰かもわかっているの?」

「…………」

 

 

 僕からの追求に、黙り込んでしまう雄二。……全く。

 

 

「少し落ち着きなよ、雄二……。こんな事、僕でもわかるんだ……。冷静にならなければ、勝てるものも勝てなくなる……」

「…………まさか明久にこんな事を言われる日がくるとはな……。だがお前の言った通りだ。……もう少し冷静になってみよう」

「……わかってくれればいいよ、昨日も言った手前、今度は僕も試召戦争に協力するからさ……」

 

 

 僕が雄二に協力を告げたその時……、

 

 

「吉井っ!」

 

 

 突然の怒声と共に後ろから鉄拳が飛んできた。さすがに不意を突かれ、僕はそれをかわす事ができなかった……。

 

 

「い、痛ッ……!」

「アンタ、昨日はよくもウチを見捨ててくれたわね!おかげで危うく美春にヤラレそうになったのよ!!」

 

 

 そのまま腕を極められ、関節技をかけてくる。……さすがにこれは振り解けそうもない……。それ以前に……、振り払おうにも全身が麻痺したかのように上手く動いてもくれない……。

 

 

「ッ……そんなの……僕のせいじゃ……ないだろ……!?」

「何言ってんのよっ!アンタのせいに決まってるじゃない!!」

「……それぐらいにしておけ、島田。明久にはやってもらう事がある」

 

 

 そこに、雄二が出てきて、以外にも島田さんを止めてくれる。

 

 

「何言ってんのよっ、坂本!!昨日はウチがどんな目に……!」

「……明久、Bクラスとの試召戦争はとりあえず様子を見る。もう一度戦略を立て直す必要もあるな……。情報収集は引き続きムッツリーニに行ってもらう事にして、……島田、すまんが、とりあえず明久を離してやれ」

 

 

 雄二の声に、島田さんの力が若干緩んだ隙に、なんとか拘束を抜け出す。

 

 

「あっ!?コラッ吉井!何勝手に抜け出してるのよ!?」

「……ゴメン、雄二。それで僕には何をしてほしいの?」

 

 

 とりあえず島田さんの事は無視して、雄二に聞いてみると、

 

 

「お前には職員室でやってきて貰いたい事がある」

「職員室?」

「……昨日みたいに観察処分者の仕事できたとか色々あるだろ?そこでなんとか教師を一人説得してもらいたい。……Fクラスで『模擬試召戦争』をしたいとな……」

 

 

 

 

 

「模擬試召戦争か……成程ね……」

 

 

 職員室に向かう途中、先程雄二が言った事を思い出す。おそらくは召喚獣の操作性の向上を目的としているのだろう。昨日の僕の召喚獣を見てそう思ったのかどうかは分からないけれど、いいアイディアだと思う。

 

 

「理由も……、まあうまく付けられそうだしね。あとは誰を連れてくるかだけど……」

「あれ?明久君?」

「?きのし……、優子さん?」

 

 

 見るとちょうど優子さんが職員室から出てきた。……大量のプリントを持って……。

 

 

「間違えなかったわね、まあいいわ。明久君も職員室?」

「……うん、まあ……」

 

 

 僕は返事もそこそこに、彼女が持った大量のプリントに目をやると、

 

 

「ん?ああ、コレ?次の授業で使うのよ」

「……Aクラスってすごいね……、そんな量のプリントを使うんだ……」

 

 

 どう見ても授業一回分で使うものとは思えないんだけど……。そこはAクラスってところだろうか……。

 

 

「……持つよ」

「えっ?」

「……さすがにその量はないでしょ?僕も別にすぐに職員室に行かなきゃいけない訳じゃないしね……」

 

 

 僕の申し出に、優子さんは慌てたように、

 

 

「え!?ああいいわよ、別に!!明久君に悪いし……」

「……でも優子さん、結構辛そうだよ?遠慮しないで、こういう事は本来『観察処分者』の仕事だし、見ちゃった以上、僕としてもこのまま優子さんを放っておくなんてできないよ」

「!?そ、そう?じゃ、じゃあお願いしようかしら……」

 

 

 そして優子さんから資料を受け取る。先生がいないので召喚獣を使う訳にはいかないけれど、このくらいの量だったら問題ない。こうして僕は少し赤くなった優子さんと一緒にAクラスに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優子さんって、そう言えば昨日も職員室に来てたよね?」

「んー、まあそんなところかしらね?一年生の時から結構先生に頼まれ事とかあったから、習慣になっているというか……」

「そうなんだ……、じゃあこんな風に大量の資料を運ぶようなことも……?」

「1年生の頃はそこまでじゃなかったわよ?まあ、クラス分けでAクラスだからって事もあると思うわ。……さすがにその量はね……」

 

 

 ……今だから言うけれど、最初にこれを運んでくれと言われた時は冗談かと思ったわ……。

 

 

「……後で先生にそういう時は僕を使うように言っておくよ。……今日は多分、連絡は来てなかったと思うんだけどね……」

「……結構『観察処分者』って大変なのね……。そもそも明久君はどうして観察処分者になっちゃったの?」

 

 

 昨日から明久君を見ていて気になったのが、なんで彼が『観察処分者』なんだろうという事。『バカの代名詞』とか『学園の恥』だとか。……聞いたところによると『観察処分者』は今まで誰もなることはなかったのに、彼が初めてソレになってしまったらしい。最初はそんなモノに任命されるくらいだから、どんなにバカで不真面目な人なんだろうと思っていたのだけど……。

 

 

「どうしてって……、うーん、バカな事をやっちゃったから、としか言えないんだけど……」

 

 

 明久君はそう言って苦笑していたけど、昨日、そして今日の彼を見ていると、とても『学園の恥』とか呼ばれる人とは思えなかった。

 

 

(まだ会って話して2日、って事もあるとは思うけど……)

 

 

 昨日帰って秀吉にも聞いてもみたけれど、『アヤツは悪い奴じゃないぞい、後は姉上が見て判断してほしいのじゃ』としか言わなかったし……。

 

 

「それより、昨日は本当にありがとう。優子さん達のおかげで本当に助かったよ……」

「そんなの気にしなくていいわよ。それより、昨日のDクラス戦は勝ったみたいね?おめでとう……って言った方がいいのかしら?」

「なんとかね……、まあ僕が何かしたってわけじゃないし、教室向かったらすぐ終わっちゃったけど……」

「そう?秀吉から聞いたけど、結構、明久君活躍したみたいじゃない。私といたときにも3人倒しちゃったし……」

 

 

 そもそも、普通点数差が開いている状態で積極的に戦おうとは思わないでしょうに……。

 

 

「……昨日も話したけど、あんなの別に大した事じゃないよ。観察処分者として皆より多く召喚獣を使う機会があるからね……。僕にしてみればAクラスに入れる程、努力している優子さん達Aクラスの方が凄いよ……」

 

 

 ……明久君はそう言うけれど、3人に囲まれて完勝する彼の方が凄いと思うのだけど……。昨日も言っていたように、彼は勉強の大切さを知っているみたいだし……。

 私たちがAクラスにいるのを元から頭がいいからと勘違いする人がたまにいるけど、その裏で私たちは必死に努力している。ましてや文月学園は点数の上限がない。だからちゃんと勉強しないとAクラスは維持する事はできない。

 

 

(それに……、明久君の話を聞いた感じだと……、多分だけど明久君は必死で勉強した事があると思うんだけどな……)

 

 

 だから彼の発言を聞いていて思う。……どうして彼がFクラスにいるのかと……。何故『観察処分者』になってしまったのかと……。

 

 

「……うん?教室に着いたみたいだね」

 

 

 もう少し明久君と話していたかったけど、教室に着いてしまった。教室に入ってもらい、大量の資料を教壇の上に置いてもらう。

 

 

「……よいしょっと。じゃ、僕は行くね」

「本当に助かったわ。ありがとね、明久君」

「うん、じゃあまたね」

 

 

 そう言うと、明久君はAクラスを後にし、職員室に戻って行った。……後で秀吉に聞いたのだけど、この時私と一緒に歩いていたところをFクラスの人に見られていたらしく、それを嫉妬した彼のクラス全員(一部除く)から模擬召喚戦争を挑まれたという事を、私は知るのだった……。

 

 

 

 

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