バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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文章表現、訂正致しました。(2017.11.26)


第16話 戦後対談と同盟提案

 ムッツリーニが根本の召喚獣を降し、Bクラスとの試召戦争はFクラスの勝利となった。僕は一息つき、張りつめた緊張をとくと、召喚獣を通常の状態に戻す。試召戦争に決着がつき、続々とそれぞれの生徒がCクラスの教室に集まる中で、僕はそして座り込んでいる根本のところまで歩いていくと、

 

 

「根本君」

「……ッ!」

 

 

 僕が声を掛けると怯えたような顔でこちらを見る。……そんなに僕が怖かったのだろうか。ふと見てみると、戦っていた他のBクラスの生徒や見ていただけのCクラスの生徒も戦慄の眼差しで僕を見ている。……まあ、それも目的の一つでもあったのだから仕方がない……。その視線をとりあえず無視して根本君を見る。

 

 

「……僕がさっき言った事は……、覚えてるよね?」

「……自分の行動に責任を持て、とかいうやつの事か……?」

「そうだよ……。まして、君は「代表」だ。……負けた際には紛糾される覚悟をもって今回の『Fクラスの破壊工作』を起こしたんだよね?」

「…………」

 

 

 そう言うと根本君が黙り込む。うんともすんとも言わない彼に、僕はさらに続ける。

 

 

「別に僕は『協定を結びたい』と言ってクラスを強襲した事や、今回のFクラスに対しての罠についてどうこう言うつもりはないよ。これは『試召戦争』だし、ね……。だけど……」

 

 

 僕はそこで一度言葉を切り、

 

 

「キミ……、姫路さんの持ち物にも手を出して、奪っていったりしなかった?」

「っ!!」

 

 

 僕の言葉を聞き、教室がにわかに騒がしくなる。

 

 

「ね……根本君、君は本当にそんなことをしたのかね!?」

「それは、いくらなんでも……」

「やりすぎよ!!」

 

 

 長谷川先生やCクラスだけでなく、同じBクラスの生徒も彼に対し紛糾していく。その件に関しては、流石に雄二たちも知らなかったようで、

 

 

「明久、それは本当なのか……?」

「……さっき、姫路さんが探し物をしていたから気になってね……、教室を壊される前はあったみたいだし……」

「……本当に見下げ果てた奴じゃのう……」

「…………どうしょうもない」

 

 

 周りから批判される中、根本君は唇を噛み締めて耐えるように俯いていた。

 

 

「……姫路さんが脅威なのはわかるよ。なんとかしないとBクラスにとって被害も大きくなるだろうしね……。それで、キミが代表として脅威を抑える為にとった対抗手段が彼女の物を盗む事だった。返して欲しければ試召戦争に参加するな……。それがキミの決めた事って訳か……」

「…………ああ、決定したのも、指示を出したのも、俺だ……」

 

 

 力なく根本君はそれを認めた。それを聞くと、さらに教室内は騒がしくなる。それらのほとんどが、彼を罵倒するものだったけれど……、

 

 

「ゴメン……。皆、気持ちは分かるんだけど……、ちょっと抑えて貰っていいかな?」

 

 

 僕はそう言って教室内の生徒を抑えると、

 

 

「……こうして試召戦争に負けた以上、覚悟はできているのかな……?今回は他人の物を盗むという行為まで起こしたんだ……。いくら試召戦争とはいえ許される事じゃない……。それについて裁かれる覚悟は……当然あるんだよね……?」

「………………ああ」

 

 

 彼の呟くような、しかし確かに肯定の言葉を聞き、僕はここにいるBクラスのメンバーを見渡すと、

 

 

「今回、僕はそこにいるFクラス代表の坂本からBクラスに対する戦後対談を任されている。ここにいないメンバーには後で皆から伝えておいてほしい」

 

 

 皆の視線があつまった事を確認すると、僕は一呼吸おき、

 

 

「まず、Bクラス全員でFクラスで破壊活動の為に壊れた卓袱台や座布団、床、壁といったものの補修をしてもらう」

 

 

 自分たちが壊したという事もあって、それに反対の声はなかった。……尤も反対できる立場じゃないし、試召戦争に負けた以上そのFクラスが自分たちの教室になると思っているのかもしれない。

 

 

「そして……、根本君」

「ッ…………!」

 

 

 僕の言葉に反応した根本君に、

 

 

「キミは、姫路さんから奪った物を返却し、全て白状して謝れ。……どういう風に謝るかは、キミに任せるから。……その2つを受け入れてくれるなら、3ヶ月の間、自分達から試召戦争を起こす事を禁止という条件で設備の交換は無しにする」

 

 

 ……僕の言葉を聞き、今日一番のどよめきが起こる。Bクラスにとっては自分たちの設備が『あの』Fクラスにならなくて済むという喜びと、Cクラスにしてみれば今の条件で設備交換が免れるのが信じられないといった驚嘆の声、そしてFクラスからは何故そんな条件をという批判の声がそれぞれ揚がっているように思う。

 

 

「……ゴメン、そういう事でいいかな?雄二?」

「今回の戦後対談はお前に任せるんだ。まして今回のBクラス戦の立役者は明久たちだからな。お前がそれでいいなら、俺はかまわない」

「…………俺もおいしい所だけもらったから、それでかまわない」

「明久がそう決めたんならば、ワシもかまわんぞ」

「……ありがとう」

 

 

 彼らからそう賛同を得ると、雄二がFクラスの面々に対し、

 

 

「落ち着け、皆。前にも言ったが、俺達の目標はあくまでAクラスだ。ここがゴールじゃない。通過点にずぎないBクラスの設備を奪っても仕方ないだろう?」

 

 

 そう言う雄二に、周りのFクラスからの喧騒が小さくなっていく。Dクラスに続き、Bクラスと、次々と破っていく雄二の求心力が高まっているようだ。僕達の言葉を聞き、さっきまで俯いていた根本君が顔を上げて僕を見ていた。

 

 

「…………吉井、……本当にそれだけでいいのか……?」

「……本当はこんなんじゃ許せなかったんだけど……、姫路さんもたいした物じゃないって言っていたし、まだ脅迫もしていなかったみたいだしね……。代表である雄二も認めてくれたし、今回はそれでいいよ。だけど……」

 

 

 そこまで言って、僕は一度言葉を切る。

 

 

「今回だけだ。今回だけは……、キミに謝るチャンスをあげる……。さっきも言ったけど、どういう風に、『何に』謝るかは……キミに任せるから……。多分だけど、それによってこれからのキミの立場が変わってくると、僕は思うけどね……」

「吉井…………」

「今まで好き放題やっていたんだ……。これからは代表としての立場もないだろうし、そんな簡単には変われないと思うけど……。だけど、また変わらずに同じように僕たちの前に立ち塞がるなら……、今度は容赦しない」

 

 

 押し黙る根本君に溜息をつき、

 

 

「……これで戦後対談は終わりだよ。Fクラスの修繕も明日からでいい。もうBクラスの生徒をまとめて行っていいよ」

「…………わかった…………すまない」

 

 

 そう言い残して、根本君はBクラスの生徒と共に教室を出て行った。彼らがいなくなるのを見届けると、雄二がCクラスの代表である小山さんに改めて向き直る。

 

 

「さて、改めてFクラス代表として、Cクラスに提案があるんだが……」

「……何かしら?」

「ああ、Fクラスは正式にCクラスと3ヶ月間の不可侵条約を盛り込んだ同盟を結びたい」

 

 

 雄二からの提案を聞き、今度はCクラスの生徒が騒がしくなる。さて、Cクラスはこの提案を呑んでくれるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Fクラスとの……同盟?」

「ああ、3ヶ月間お互いに対して試召戦争を起こさないという提案だ。そちらにしたらFクラスに攻め込むメリットなんて無いだろう?そして、俺達Fクラスからも攻め込まれて面倒な試召戦争の時間もとられないって寸法だ。そちらからしたら、悪い交渉ではないと思うが……」

 

 

 実際に、負けたら設備交換になる上に、攻め込んでもこれといったメリットがCクラスにはないはずだ。……こちらとしても、厄介な戦力のいるCクラスとはできれば戦いたくはない。

 

 

「随分気前がいいみたいだけど……、それでそちらのメリットはあるの?」

「俺達の目標はAクラスだ。その途中にCクラスとの駆け引きに悩まされたくないっていうのが俺達の考えだ」

 

 

 俺の言葉を聞き、Cクラスの代表である小山は考え込んでいる。

 

 

「…………もし、断ったらどうするの?」

「……その時は仕方がない。とりあえず今日のところは引き下がり、今後どうするか決める」

 

 

 どうやら、小山は迷っているようだ。最低クラスと同盟を結ぶなんて、という思いもあるのかもしれない。

 

 

「……だいたい、Fクラスが私達と戦って勝てるとでも思っているの?」

「それは今、目の前で見ていたはずだろう?お前の彼氏が代表であるBクラスが、俺たちに負けた瞬間をな」

 

 

 それを聞き、クッと口に親指を当て俯く小山を見て、傍にいた一人の女子がおずおずと声を掛ける。

 

 

「……小山さん。私たちはこの提案を受けるべきだと思います」

「神崎さん!?何を言っているのよ!?」

「……Fクラス代表である坂本君の言った通り、私たちがFクラスに攻め込んでも何もメリットはありません。それに、今の試召戦争の結果を見た通り、Fクラスに勝てるかどうかもわからないでしょう……」

 

 

 発言した奴を見てみると、亜麻色の髪を肩の位置まで伸ばした、確か神崎とよばれた女子だった。クラス内でも発言力が高いらしく、周りは神崎の言葉にうんうん頷いている。

 

 

(こいつは確か、『神崎真琴』だったか……?ムッツリーニの話だと腕輪を持っているという話だが……)

 

 

 俺は情報の中にあった、Cクラスの要注意人物の一人だった事を思い出しながらその様子を窺う。小山も神崎の言葉には耳を傾けているようだ。

 

 

「それは……、確かにそうだけど……」

「……何やら面白そうな会話をしているな」

 

 

 その時、小山の言葉を被せながら一人の男子が教室に入ってくる。

 

 

「た……高橋君!?」

「……勇人、貴方、気が乗らないという事で帰ったんじゃなかったのですか?」

「帰ろうかと思ったんだがな……、ちょうどFクラスの明久たちが入っていくのが見えて、ちょっと様子を窺っていた」

 

 

(コイツは……、確かコイツもリストに載っていたな……、明久の知り合いか……?)

 

 

「……そういえば、Cクラスだったんだね、勇人」

「Bクラスを倒すなんてやるじゃないか、明久。最初はBクラスの罠に嵌ったかと思っていたんだが、まさか逆に倒してしまうとは思わなかったぜ……。まあ、そんな事はいい。小山、ここはFクラスと同盟を組んでいた方がいい」

「……いきなり来て何言ってるのよ……。あなた、私たちのやることに興味がないって言ってなかったかしら?」

「それは、アンタがあまりに愚かな事をやっているからだ……。最初に俺や真琴は言った筈だぞ?Bクラスの片棒を担ぐのはよせ、とな」

「それは……」

 

 

 そして高橋がこちらを見る。

 

 

「だがまあ……同盟を結ぶと言っても、どうするつもりだ?」

「ちょうどここに、長谷川教諭や大島教諭もいる。立ち合いをお願いして同盟の調印とするつもりだ」

「悪いが……、それだけでは信用できない。なんたって『あの』Fクラスだ。まして昨日あんな馬鹿騒ぎを起こす連中の何を信用しろっていうんだ?いきなり同盟破棄して攻め込んでくるかもしれないだろ?」

「それは……」

「そうよ、悪いけどそんな調印だけじゃ信用できないわ!」

「……まあ、先程もBクラスが協定を破っていましたしね……。それは否定できません」

 

 

 ……確かにそれは俺も否定できん。ウチには色々不安要素もあるしな……。さてどうしたものか……。

 

 

「そんな同盟結んで、さっきのように奇襲されたらどうしょうもないじゃない!Bクラスでも手も足も出なかったのに!」

「じゃあさ……」

 

 

 熱くなった小山に対し、言葉に詰まっていると、それを見ていた明久が俺の前に出てきて、小山に話し掛ける。

 

 

「もし仮に、Fクラスが代表である雄二の指示でCクラスに宣戦布告をしたら、すぐさま僕が戦死扱いで『補習室送り』になるっていうのはどうかな?」

 

 

 そんな明久の提案に、ざわついていた教室が静まり返る。

 

 

「…………え?」

「だから、もし雄二がそっちに宣戦布告したらすぐさま僕が西村先生に補習室に送られるって事。Cクラスとしたら、Bクラスを相手に何人も戦死させていた僕がいなくなるっていうのは悪い事じゃないでしょう?」

「…………」

 

 

 コイツ……、また勝手に……。俺は頭に手を当てて、コイツの馬鹿さ加減に呆れた。……だが、これは効果的な提案でもある。先程の明久を見ていたらわかるだろうが、あんな状態の明久を俺は倒せる気がしなかった。低点数でBクラスの連中をバッタバタと倒している時は、正直俺も背筋が凍るような思いだった。……逆に言うと明久がいなくなれば、姫路がいるとはいえ、Cクラス戦は難しいかもしれない……。

 

 

「ハハハハハッ!!また面白い事を言うな!明久!!」

「……勇人、笑っている場合じゃないでしょう……?」

 

 

 明久のバカな提案に高橋が笑い出す。それを見て、明久が続けた。

 

 

「まあ……、雄二がいる限りそんな事はおこらないとは思うけど……。それよりどうかな?それとも……僕の言葉だと信用できないかな……?」

 

 

 明久は真剣な目でCクラス代表に詰め寄る。

 

 

「ッ!わ……わかったわよ!……同盟を破った時、吉井君が補習室送りになるというのなら、その同盟、結んでもいいわ」

「おいおい、それだと不公平だろ?そうだな、じゃあ、Cクラスが約束やぶって試召戦争を仕掛けたら俺が補習室送りになろう」

「!?また、アンタは……!」

「別にいいだろ?それとも小山は約束やぶって攻め込む気だったのか?」

「そんなわけないでしょ!……はぁ、ウチの高橋君が言った通り、もしこちらが約束を破ったら彼が補習室送りになる。これでいいわね?」

「ああ、わかった。それで同盟を結ぼう」

 

 

 こうして、長谷川教諭と大島教諭の立ち合いの下、俺達FクラスはCクラスと不可侵の同盟を結んだのだった。

 

 

 

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