バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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問題(英語)
以下の問いに答えなさい
「goodおよびbadの比較級と最上級をそれぞれ答えなさい」


姫路瑞希の答え
「goodーbetterーbest
 badーworseーworst」

教師のコメント
その通りです。


吉井明久の答え
「a bad dreamーpainーdespair」

教師のコメント
……比較級、最上級うんぬんは別にして、どうしてそんな暗い単語ばかりなんですか……?


土屋康太の答え
「badーbutterーbust」

教師のコメント
悪いー乳製品ーおっぱい


第19話 真実

「……はい、正確ではありませんが……、僕は数ヶ月先から『戻って』きました……。そして……、『何度も』この文月学園の2年生として、『繰り返して』いるんです……」

 

 

 一瞬、何を言われたのかわからなかった。ただ、この目の前の生徒が嘘を言っていない事だけはわかった。この吉井の雰囲気、瞳、そして腕輪……詳しい理由を聞かなくともこれだけでその事実を信じさせるに足る、説得力があった。

 

 

「よ、吉井……?お前は一体、何を言っとるんだ……?」

「……お聞きの通りです、西村先生。僕は何度もこの時間を繰り返しているんです。……この『呪われた腕輪』のせいで……」

 

 

 どこか悲しそうな諦めを宿した眼差しを己の腕輪に向ける吉井。

 

 

「腕輪の、せいだと……?」

「ええ、ちょっと待って下さい……試獣召喚(サモン)!」

「「なっ!?」」

 

 

 承認をしていないにも関わらず現れる吉井の召喚獣……。呼び出された召喚獣は数学の科目で召喚されており、51点と表示されている。

 

 

「……元々はこの腕輪の能力は『二重召喚』だったんですが、今はその能力は使えなくなってます。そして……僕はこの腕輪を着けている限り、何処にいようと召喚獣を呼び出すことができ、また観察処分者のフィードバックを調整することが出来るんです」

「フィードバックの調整……?じゃあ、アンタでそれを無くす事も出来るという事かい?」

「……いえ、最初に設定されているフィードバックより小さくすることはできません……。この場合の調整というのは、フィードバックを通常よりも大きくする調整ができるという意味です……。それによる利点といえば……、より召喚獣との一体感が増す、という事ですかね……」

 

 

 もういいよ、と呟き自ら召喚獣を消す吉井。淡々と説明していく目の前の生徒に苦悩の表情を浮かべながら聞いていると、吉井はさらに話を続ける……。

 

 

「そして、僕はこの腕輪を外す事もできません。また、先生方が『観察処分者』のシステムを調整することは出来なくなってますし、新たに『観察処分者』を認定する事も外す事もできなくなっているはずです」

 

 

 観察処分者の設定を弄れないと聞いて、早速システムを立ち上げるも、吉井の言うとおり『観察処分者』の領域は完全に独立しており、全く干渉する事が出来なくなっていた……。

 

 

「……吉井、一体お前に何があった。何でそんな事になってしまったんだ……?」

 

 

 ……アタシと同じように苦悩の表情を浮かべながら、西村先生が聞く。

 

 

「……ある日、僕が実力かまぐれかは忘れてしまいましたが、日本史で400点以上の点数をとり自分の腕輪を手にした事がきっかけでした……。そして、その腕輪の能力を確かめようと召喚獣を呼び出した……。その時に、僕が着けていた『白金の腕輪』が暴走したんです」

「……暴走……」

「……はい、もともと僕の着けていた『白金の腕輪』にはある欠陥があったんです。総合得点が学年全体の平均点並みの点数を取ってしまうと腕輪が耐えられずに壊れてしまうという欠陥が……」

 

 

 ……確かに今開発している腕輪の一番の問題点は、出力の問題がある。それはまだ解決できていない……。

 

 

「……成程。だが、それなら腕輪が壊れるだけで終わる筈ではないのか?」

「……その理由はまだ僕にもわかっていません。……ただ、僕の召喚獣の腕輪の能力が原因である可能性があるんです……」

「……それは?」

「……僕の召喚獣の能力は『転身』です。……点数を選択して消費すれば、消費した分の半分の点数で召喚獣を出現させる事ができる能力です。……そして、その能力が『僕自身』に働いている可能性があります……」

「……つまりアンタ自身が転身し……、『時』を超えて『過去』に戻ってしまう……という事かい……?」

 

 

 吉井はアタシの言葉に頷きながら、

 

 

「まあ過去、というのは正確ではないような気もしますけど……。ただ、2学年の振分試験前後に『飛ばされてしまう』のには変わりありませんが……。因みに言うと……、今回の『繰り返し地点』は、西村先生からFクラス行きの封筒を頂いた時でした……」

「…………だからあの時のお前は様子がおかしかったのか……。今思えば、あの時からだったな……。お前が『変わった』のは……」

 

 

 ……アタシは吉井の説明を聞きながら、その態度にある違和感を感じ始めていた。……そう思っている間にも、吉井の話は続く。

 

 

「……『繰り返す』事は当然、僕が決める事ではありません……。そして、僕が把握している条件が3つあります……。まず1つは……、僕の『行動』によって発動するようです」

「……どういう事さね?」

「…………うまく言えませんが、『僕』らしからぬ行動をとった時に発動するようです。だから……、自分に嘘をつくような行動をすると『腕輪』が紅く光り、警告するんです。それが限界を超えると、自動的に『繰り返す』事になります……」

 

 

 アタシが吉井に感じていた違和感……。それは……、

 

 

「2つ目は『自己防衛』です。……簡単に言ってしまえば、自分に命の危機が迫った時に自動で発動するんです。……正直な話、『繰り返す』回数が多い気がするのがこの条件です……」

 

 

 ……今まで、吉井は……、どれだけの『苦悩』と、『別れ』を経験し、そして……、

 

 

「……そして最後3つ目は『期限』です。『期限』を迎える前に、恐らく何とかして腕輪を外さないといけないんだと思いますが……、腕輪を外す為の条件がわかっていません。……条件を満たさないままタイムリミットを迎えると、これもまた『繰り返す』事になってしまいます」

 

 

 そんな目に遭っているのにも関わらず、何故、吉井はそんなにも淡々としていられるのだろうか……。

 

 

「…………1つ、聞いていいかい?」

「……なんでしょうか?」

「…………今までアンタは……、何回くらい『繰り返して』いるんだい……?」

 

 

 10や20ではないだろう……。アタシは確認の為、そう目の前の人物に尋ねてみる。しかし、吉井は……、

 

 

「…………言いたくありません。それに……、知らない方がいいと思います……」

「…………そうかい……」

 

 

 苦痛に満ちた表情でそう話す吉井に、アタシはそれ以上かける言葉がなかった……。

 

 

「……『繰り返す』前兆として、この腕輪が紅く輝き出します……。そして、最高潮に達した瞬間に『繰り返す』事になります……。僕の意識と経験と……、この腕輪を残して……」

 

 

 一通りの話を終わり、しばし沈黙が訪れる……。アタシはその沈黙に耐えられなくなり、吉井に尋ねた。

 

 

「……何をすればいいんだい?」

「…………えっ?」

「……こうして自分の秘密を話したんだ……。アタシに何かして欲しい事があるんだろう?話してみな……」

「……はい、そこで学園長にお願いしたいのは……」

 

 

 そう言って吉井は、アタシ達に理解していてほしい事、調査してほしい事を順に話していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とりあえず、僕の現状の説明やお願いしたい事はだいたい話し終わりました。それでは、明日の準備もありますし、失礼致します」

 

 

 あらかた説明し終わったのか、吉井が出て行こうとする。吉井の説明が終わった時を見計らい、アタシは先程から気になっている事を聞いてみた。

 

 

「待ちな、……アンタ。恨んでないのかい?」

 

 

 その言葉を聞き、吉井はゆっくり振り返る。

 

 

「……罰則とはいえ、メインシステムと独立しているような、よくわかっていない観察処分者のシステムをアンタに当てはめた。……さらには欠陥の腕輪をアンタに着けさせ……、それが作用して、今回の悪夢のような出来事がおこってしまった可能性が高い……。言ってしまえばアンタの人生、いや違うね……、アンタだけを『終わりのみえない悪夢』に巻き込んでしまったんだ……。アンタは、……アタシたちを恨んでないのかい?」

 

 

 そう、ここに来てから一度も取り乱す事無く淡々としている吉井に、違和感を持っていたのだ。そして、吉井は繰り返した回数についても証言をさけた。……その事からも、吉井の『繰り返し』はアタシの予想を大きく超えているだろう事も想像に難しくない……。アタシの問いかけに対し、吉井は答える。

 

 

「…………恨んだ事もありました。自暴自棄になって自分を、全てを呪った時もありましたよ……。今だって心のどこかには……、やっぱり諦めのような感情や、どうしょうもない絶望感だってあります……。でも…………」

 

 

 そして強い意志を携えた目でアタシを見据え、

 

 

「……でも、全てに絶望した時に、希望を与えてくれた人達がいたんです。貴女を含めた『先生』方……、『親友』達……。そのかけがえのない想いのおかげで、僕は何度『繰り返そう』とも前に進む事ができ……、今の自分があるんです。だから……、僕の全てをかけて、その想いにこたえたい……。そして今度こそ……、この悪夢を断ち切ってみせる……!」

 

 

 そう言って吉井は微笑み、アタシに一礼した後、西村先生を促して今度こそ出て行ってしまった……。

 誰もいなくなった部屋に、アタシはボソッと呟く。

 

 

「なんてこったい……。アタシは……アタシ達は……、あの子にいったい何が出来るのさね……」

 

 

 しかしながら、アタシのこの呟きに答える者は誰もいなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園からの帰り道……。

 あれから全科目の回復試験を受け直した僕は、ムッツリーニに先程の機械を返しながら、明日に備えて早めに帰ると雄二たちに伝えた。一応職員室にも顔を出したが、全員一致で帰っていいと了承を貰ってもいる。

 

 

「……久しぶりかもね、こんな早く家に帰る日は……」

 

 

 ここのところ、勉強やら観察処分者の仕事やらで、早めに帰宅するというのを体験してなかったかもしれない……。文字通り、『ここ最近体験した』ところでは……。

 

 

「…………試獣召喚(サモン)

 

 

 人の目が無い事を確認して、僕は召喚獣を呼び出す。それにより現れた召喚獣はキョロキョロと周りを見渡し人がいないことが分かると、嬉しそうに僕に飛びついてきた。

 

 

「……お前だけは唯一、僕の事をわかってくれるだろうね……。ずっと一緒に……、僕と『繰り返し』を体験しているお前なら……」

 

 

 この召喚獣だけが、あの『始まりの事故』から、いや、それ以前からずっと一緒にいてくれていた……。幾度となく『繰り返して』、人との想い出がリセットされる中、僕との繋がりを持っている唯一の存在……。

 

 

「……今回は、一緒に抜け出すことが出来るかな……?この『無限の悪夢』から……」

 

 

 それを聞くと、僕の召喚獣はまるで僕を励ますかのような仕草をする。僕はそれを見て、優しく召喚獣の頭を撫でると嬉しそうな反応をしていた。

 

 

「…………頑張ろうね」

 

 

 誰に言うでもなく僕はそう呟き、帰路に着いた。

 

 

 




文章表現、訂正致しました。(2017.11.29)
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