バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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文章表現、訂正致しました。(2017.12.2)


第22話 第二試合 佐藤美穂VS吉井明久

「すまんのじゃ、明久……。ワシは……」

「何を言ってるのさ。秀吉にはあの歓声が聞こえなかったの?」

 

 

 優子さんとの試合が終わり、僕はまだ半泣きになっている秀吉を迎えに行く。

 

 

(本当にいい試合だったよ……秀吉、優子さん……)

 

 

 あの戦いを見て、何か文句を言う人など居る筈がない。……僕自身、二人があそこまで召喚獣を操るとは思わなかった。……フィードバックが無いはずの二人が、突き刺された肩を気にしていた程、召喚獣操作に集中していたのだろう。……一瞬本当にフィードバックがあったのかと思ったくらいだ。

 

 

「ほら、秀吉も……、もう泣き止みなさい……」

「あ、姉上……」

 

 

 秀吉も恥ずかしくなってきたのか、あわてて涙をふく。

 

 

「全くもう……。明久君、秀吉をお願いしてもいいかしら?」

「うん、大丈夫だよ。……でも、優子さんもすごかったよ……」

「あ、ありがとう……」

 

 

 そう言って僕から目を逸らす優子さんに少し気になりつつも、僕は秀吉を伴って選手席に戻って行った。

 

 

 

 

 

「明久……、頼んだぞ」

 

 

 秀吉と一緒に席に戻った後、再び会場に向かおうとした僕に後ろから声がかかる……。振り返ってみると、雄二が真剣な表情で僕を見ていた……。

 

 

「……俺はお前を信じてる。秀吉がここまでやってくれた以上……、何としても……勝ちたい……」

「……うん、わかってるよ……。任せて、雄二。……僕も『全力』で戦うから……」

 

 

 僕は雄二に笑いかけると、先に試合会場で待っている選手の下へ向かう……。

 

 

「……あなたが……吉井君、ですね」

「うん、そうだよ。君は……」

「私はAクラスの佐藤美穂です。……科目は何にしますか?」

 

 

 先に待っていた佐藤さんよりそう提案される。

 

 

「……僕が選んでいいの?」

「ええ、かまいません。……どの教科を選択されても全力で行きますから。……優子からも色々と聞いてますしね」

「…………そう、じゃあ君の一番点数の高い教科でお願いしてもいいかな?」

「……!」

 

 

 僕がそう答えた瞬間、会場にどよめきが起こる。

 

 

「……それでいいんですか?」

「うん……、お願いするよ」

「吉井君、本当にいいのですか?Aクラスは昨日、自分の自信のある教科をそれぞれ受け直しているんですよ?」

 

 

 そこへ高橋先生も再度、僕に確認を取ってくる。……こう聞いてくるという事は、恐らく『ある事実』を物語っているのだろう……。

 

 

「ええ……、大丈夫です」

 

 

 僕が迷いなく答えると、さらに大きい喧噪が巻き起こった。

 

 

『アイツ……正気か!?』

『イヤ、待て!アイツは観察処分者だろ!?』

『絶対バカだ!!』

『だがアイツだろ!?Bクラス相手に一人で立ち回ったのは!?』

 

 

 そんな喧騒の中、

 

 

「……じゃあ高橋先生、『物理』でお願いします」

「……わかりました」

 

 

 その言葉を受け、高橋先生は設定科目を打ち込むと、

 

 

「……それでは第二試合を開始します!Aクラス佐藤美穂VSFクラス吉井明久。教科は『物理』。――はじめっ」

試獣召喚(サモン)!」

 

 

 試合開始の声とともに佐藤さんが召喚獣を呼び出すと、その点数が表示された。

 

 

 

【物理】

Aクラス-佐藤 美穂(401点)

 

 

 

(やっぱり、400点を超えていたか……)

 

 

 その点数を見て、歓声が響き渡る……。それはそうだろう……、学園全体でも何人もいない、『400点』を、彼女は超えているのだから……。

 

 

「……吉井君?……召喚獣を呼び出さないのですか?」

「……君の点数を見てね……、相当努力してきたんだなって思って、さ……。先に謝っておくよ……、僕は君を侮辱するつもりは全くないからね……?」

 

 

 その言葉を聞いて何か思う事があったのか、彼女をこう聞いてきた。

 

 

「吉井、君?あなた、まさか……」

 

 

 ……もしかして今の言葉で何か気付いたのかな?……だとしたら良い観察眼をしている。……確か前にもこんな事を言われたような気もするけれど……。

 

 

「……ご名答。僕は今まで『本気』で戦ってはいたけれど、『全力』を出していたわけじゃない……」

「……っ!それじゃ、あなたは……!」

「……そう、君の想像通りだと思うよ……。まあ、隠していた理由は点数を見てもらってから説明しようか……。試獣召喚(サモン)

 

 

 僕の言葉とともに召喚獣が呼び出され、その点数が表示される……。

 

 

 

【物理】

Fクラス-吉井 明久(1点)

 

 

 

 僕の点数が表示された瞬間、会場が静まり返り……、とたんに大騒然となる――

 

 

 

『1点だと!?何考えてんだアイツは!?』

『それとも1点しかとれなかったというのか……!?』

『テメェ、吉井!!ふざけてんのか!?』

 

 

 

 どよめき、罵声、ありとあらゆる言葉が会場へ飛び交う。……主に罵声は味方であるはずの2年Fクラスからであるけれど……。冷静に状況を見ているのは例外を除くと、目の前にいる相手と、椅子に座っているA、Fの試合メンバー達、そして先生方くらいであろうか。

 

 

「……吉井君、その点数は……?」

「…………僕は昨日、回復試験で全ての教科を受け直した……。僕の召喚獣が『全力』で戦えるようにね……。だから、他の教科を選んでいたとしても同じ事だよ……。僕は全ての教科に対し、『1点』しかとっていないんだから……」

 

 

 僕の言葉を聞き、少し会場内に静けさが戻る。

 

 

「でも……、いくら吉井君が召喚獣の操作が上手いといっても……」

「……その通り。……通常『1点』しかない召喚獣は、最低限の能力しか持たない……。動きが遅い上に攻撃力も無いから、例え攻撃出来たとしても、ほとんどダメージを与えることもできない……。その代わりに……、『1点』しかない召喚獣には『ある事』ができるようになる……」

 

 

 はじめて聞く話で佐藤さんも戸惑っているようだ。……先生方でも知っている人はいないかもしれないし、当然と言えば当然である。……第一、『1点』の召喚獣なんて、試そうと思う人もいないだろう……。

 

 

「『ある事』……ですか……?」

「そう……、『1点』の召喚獣は、その能力の『限界(リミッター)』を外す事が出来るようになる……。実は、400点以上を誇る召喚獣には、格の違いというか……、それ以下の召喚獣の攻撃を受けにくいという特徴があってね……。例え攻撃が急所に当たっても、殆どダメージを与える事が出来ないんだ……。だけど、『限界(リミッター)』を外した召喚獣にはそれが出来る……。攻撃が当たりさえすれば、高得点者の召喚獣も倒す事が出来るようになるのさ……。『火事場の馬鹿力』のようなものかな……」

「で……ですが……、例え『限界(リミッター)』を外せたとしても、召喚獣が満足に動かせなくては……!」

「そう……。だから、この戦術は僕にしか使えない……。フィードバックを共有していることで、より召喚獣と一体となっている、『観察処分者』仕様の僕の召喚獣にしか、ね……!」

「……!!」

 

 

 それで気が付いたのだろう、佐藤さんの表情が変わる。……それと同時に僕は心の中で召喚獣とのフィードバックをMAXまで引き上げる。

 次の瞬間、僕の召喚獣から圧倒的な覇気が迸る。まるで僕が召喚獣であるかのように、視覚、聴覚、触覚……、その他全ての感覚が召喚獣と一体になっている錯覚に襲われる……。それと同時に……、僕の袖の下の腕輪が反応している気配も感じていた……。

 

 

(……やっぱり、反応するか……)

 

 

 『繰り返し』の第二の条件、『自己防衛』が働いているのだろう……。確かにこの状態で相手の攻撃を召喚獣が受けたらどうなるか。……そんな事、考えるまでもない……。

 そこに、試合を止めようとする声が響いてくる。

 

 

「吉井!!お前!?まさか……――」

「西村先生!!」

 

 

 僕は西村先生が言おうとしている事を察し、その前に封じる。……恐らく、西村先生は気付いたのだろう……。ふと、学園長の席の方を見てみると……、同じく渋い顔になっている学園長が見えた……。

 

 

「……すみません、止めないで下さい……。僕は……、『本気』なんです」

「だ……だが、その状態で戦えば……ッ!」

「先生っ!!」

 

 

 この先に続く言葉を予想し、僕は再度、西村先生に強く呼びかける。僕は、『本気』なのだと……。僕の信念に従って、『行動』しているのだと……!

 

 

「…………わかった。もう、何も言わん……」

 

 

 西村先生はそう言って、引き下がってくれた。心配してくれた先生に対し、申し訳なく思うも、

 

 

「……僕は『全力』で戦うと言った……。秀吉が、自分の全てをかけて全力で戦っていたように……。だから……、僕も自分の持てる『全力』で戦う……!!」

 

 

 そう言って僕は待たせていた佐藤さんに向き直ると、

 

 

「……それに、僕は本来『左利き』だしね……」

 

 

 僕は召喚獣に木刀を利き手である左手に持たせかえて、上段に構えを取らせた……。右手はほとんど添えるだけに留め、それは片手上段のそれに近い。…………決して引かない。その覚悟を表す構えでもある。

 

 

「邪魔が入って悪かったね……。それじゃあ……始めようか……!」

「……わかりました。……私も全力で行きます……!」

 

 

 その言葉を合図にし、僕達は互いに召喚獣を操作する……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 動き出してより数分が経過し、僕は佐藤さんの攻撃を全てかわし続けていた。佐藤さんは動きが大雑把ながらも、細かい鉄球操作で何とか僕に攻撃を当てようとしていた。

 ……僕も全身に100%以上のフィードバックがくるという事もあり、相手の点数を減らすといった余計な動きを一切取らなかった。一撃にて相手を仕留める為、僕はそれらを全て紙一重で見切りながら、僕は相手の隙を窺う。

 全てかわし続けていると、埒があかないと踏んだのか、向こうも一撃で決めるべく、佐藤さんは鉄球を構え直し、僕との距離を測っていた。僕もそれに合わせ、上段の構えのまま相手の出方を見る。相手がいつ仕掛けてくるか。そのタイミングを掴むべく僕は全神経を集中させる。

 

 

(……来る……っ!)

 

 

 やがて佐藤さんはわずかに僕との距離を詰めると同時に、反動をつけ鉄球を飛ばしてきた。僕は鉄球の動きを見切り、出来る限り引き付けてからバックステップにてそれをかわす。鉄球が僕の召喚獣の目の前を通り過ぎ、相手は大きく振りかぶったモーションで体制を崩していた。

 

 

「もらったっ!!」

 

 

 僕はその隙を逃さずに一気に決める為、木刀を振り下ろすべくステップで距離を縮めるが……、

 

 

「……かかりましたね、吉井君……、『地震(アースクエイク)』!!」

 

 

 その言葉とともに、彼女の召喚獣に着けられた腕輪が光り、空振りに見えた鉄球が地面に接すると同時に激しい振動を引き起こす!

 

 

「クッ……!」

 

 

 ステップを踏んでいたのが仇となり、踏ん張りがきかず、僕の召喚獣はバランスを崩された状態で宙に浮かされてしまった。

 

 

「しまっ!!」

「これで終わりです!!」

 

 

 その言葉とともに、佐藤さんは僕の召喚獣に向かって鉄球を振り下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吉井君の召喚獣を私の能力でバランスを崩させ、そこに鉄球を振り下ろさせる。……いくら吉井君の召喚獣が素早く動けるといっても、バランスを崩し、宙に浮かされている状態で避けられるはずもない。そして鉄球が衝撃音とともに何かに接触し、私はここで勝利を確信した。……しかし、

 

 

「!?」

 

 

 吉井君の召喚獣はそこにはなく、あるのは木刀だけだった。

 

 

「そ……そんな!?あの体勢から……!?」

 

 

 ……彼はあの瞬間、召喚獣の左手に持っていた木刀を勢いよく地面に突き刺し、その反動を利用して私の鉄球を避けていたのだ……。信じられない気持ちで呆然としていた私が気付いた時には、まだ鉄球を構えていない私の召喚獣の懐に潜り込んでいて、そして……、

 

 

 ドゴォォ―――ン……!!!

 

 

 激しい轟音と共に、吉井君の左手での正拳突きが、私の召喚獣の急所である心臓部を捉えて突き刺さると、その衝撃で召喚獣が壁際まで吹き飛んでしまう。さらに……、

 

 

 

【物理】

Aクラス-佐藤 美穂(0点)

 

 

 

 ……同時に急所攻撃だったという事もあり、私の召喚獣の点数も0点となっていた……。

 

 

「そ、それまで!第二試合、Aクラス佐藤美穂VSFクラス吉井明久。勝者、Fクラス、吉井明久!!」

 

 

 オオオオォォ……!!その宣言に会場が大音響の歓声に包まれたのであった……。

 

 

 

 

 

「…………負けましたか……」

 

 

 負けたことが分かった瞬間、私はその場でへたりこんでしまう。

 

 

「佐藤さん…」

 

 

 その声にふと前を見ると、吉井君が右手に紅い腕輪を覗かせて左腕を抑えながら、私のところまでやってきた。

 

 

「今回は私の完敗です……。最後の最後で油断してしまいましたね……。私もまだまだのようです……」

「……そんな事ないよ。……少なくとも鉄球が振り下ろされた時、僕は『覚悟』したから……」

「確かに……、あれを避けられるとは思いませんでした……」

 

 

 そして、吉井君が私に頭を下げた。

 

 

「……いくら全力を出すといっても、あの点数では君をバカにしていると思われても仕方ないと思う……。本当にゴメン……」

「……大丈夫です。……吉井君がふざけている訳じゃないという事は、あなたと戦っていた私が一番わかっていますから……。だから……頭を上げてください」

 

 

 そう私が言うと、吉井君はゆっくりと頭をあげる。

 

 

「……ありがとう。……僕はあんな高得点をとれる君たちAクラスは本当に凄いと思う……。どんな努力をして、Aクラスの学力を維持しているのか……。必死で努力する事の大変さは、僕もわかっているから……」

「そうでしたか……。吉井君、今日は有難う御座いました。もし、勉強でわからないことがあったら、Aクラスに来てください。私達Aクラスは、努力する人たちは歓迎しますから……」

 

 

 私はそう答え、吉井君に左手を差し出して握手を求める。

 

 

「佐藤さん……!?痛ッ……!」

 

 

 吉井君も左手を差し出そうとした瞬間、吉井君が苦痛に顔をゆがめ、その場で崩れ落ちそうになる。

 

 

「!?よ、吉井君!?」

「明久君ッ!?」「明久ッ!!」「吉井ッ!!」

 

 

 それにつられるように立ち上がり、会場に駆け寄った優子や坂本君達が吉井君に近寄ってくる。

 

 

「明久君!!」

「どうしたんじゃ!?明久!!」

「大丈夫なのかよ!?」

「ご……ゴメン……、大丈夫、だよ……っ」

 

 

 そう言って吉井君は左腕を抑えながら立ち上がろうとする。それを坂本君が肩を貸し、優子とその弟君が左右で支えた。

 

 

「吉井君!!大丈夫ですか!?」

「……吉井!」

 

 

 そこへ姫路さんや代表たちも心配して駆け寄った。

 

 

「ゴメン……。みんなに迷惑をかけちゃって……。召喚獣のフィードバックでちょっと腕を捻っちゃっただけだから……。まあ、たいしたことは事はないよ……」

「……そうなのかい?」

「もう~。吃驚させないでよ、吉井君!」

 

 

 久保君たちに言われながら、吉井君は私に向き直り、

 

 

「本当にいい試合だったよ。ありがとう」

「また……、今度機会があったら、リベンジしますから……」

「……うん、楽しみにしてるよ……」

 

 

 そこへ、それまで黙って吉井君を見ていた西村先生が、

 

 

「……吉井、とにかく向こうに救護設備があるからそこへ行くぞ。歩けるか?」

「ええ、大丈夫です。優子さん、秀吉、ゴメンね、心配させて……。僕は、大丈夫だから……」

 

 

 吉井君は心配かけないように笑みを浮かべると、

 

 

「……本当に大丈夫なの?明久君……」

「大丈夫かの……?」

「うん、大丈夫だよ。心配しないで……。じゃあ先生、行きましょう」

「ああ……」

「…………先に準備しておく」

 

 

 一足先に土屋君が向かうと、吉井君は西村先生に連れられて舞台を降りて行った。その右手に紅い腕輪を覗かせながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………大丈夫なのか?明久……」

「こっちは大丈夫だよ。ありがとう、ムッツリーニ……。それより次は試合でしょ?」

「…………ああ」

 

 

 僕は先に来て道具の準備をしてくれていたムッツリーニにお礼を言い、試合の事を告げた。

 

 

「『腕』の事は大丈夫だから……。これは、嘘じゃないよ……」

「…………そうか。……お前がそう言うなら、これ以上は何も言わない……」

 

 

 ……多分、ムッツリーニは僕の状態に気付いている……。だから、これ以上心配させないように僕は答えた。

 

 

「…………あとは任せろ、明久。……ゆっくり休んでおけ……」

「……うん、任せたよ……」

 

 

 そう言ってムッツリーニは試合会場へと向かって行った……。

 

 

「やれやれ……。まあ、土屋だけじゃないと思うぞ?……気付いているのはな……」

 

 

 ムッツリーニが会場に向かったのを確認し、西村先生が溜息まじりにそう答える……。それは……そうだろう……。先程から優子さんや秀吉がずっとこちらを見ているし、多分雄二だって気付いているに違いない……。尤も、さっきのムッツリーニの様子から、彼が一番正確に僕の状態を掴んでいるのだろうけど……。

 

 

「…………その『腕』、かなりの重傷だぞ……」

「……100%以上のフィードバックでしたからね……。おまけに、その腕で正拳突きまでしちゃいましたし……」

 

 

 鉄球を避ける為に木刀をとっさに地面に突き刺した時点で折れていたんだろう……。あの時の腕にきた衝撃は、召喚獣が味わった衝撃の数倍……。ただでさえ力の強い召喚獣が、反動をつける為に思いっきり地面を突き刺したのだ……。その上で正拳突きまでしたのだから、無事で済むわけがない……。

 

 

「……どういうつもりだ。さっきの事は……」

「どういうつもり……、とは?」

「とぼけるな、吉井。お前が言った通り、召喚獣のフィードバックは100%以上……。点数は1点。当たったら召喚獣は『消滅』する!」

「……」

「それに全感覚をリンクさせたお前が、もし1回でもあの鉄球をくらっていたら、お前は……!」

「……『繰り返し』ていましたね……。現に、フィードバックをMAXにした時から、腕輪は光り続けてましたし……」

 

 

 僕は淡々と事実を話すと、西村先生は問い詰めてきた。

 

 

「なら、何故そんな無茶な事をするっ!?」

「……先生、言ったでしょう?僕は『本気』でいきます、と……」

 

 

 ……学力が全てじゃない!その言葉の中にある答えを求めて起こした雄二の試召戦争……。今回、僕はそれに『全力』で協力する事に決めた……。

 

 

「だから……、それが何なんだ!」

「……僕が自分で『決めた』事をやっているんです。『僕』らしくある為に……」

「……ッ!」

 

 

 こう僕が答えると、西村先生が息を呑むのがわかった。……僕の言わんとする事に気付いたのだろう……。

 

 

「……確かに鉄球をくらっていたら、『繰り返し』てました。……でも、あそこで『全力』を出していなくても、多分僕は『繰り返し』てましたよ……。今すぐに、という訳ではないでしょうけれど……」

「……吉井……」

「……先生、僕は『バカ』なんです……。もし、僕のようなバカじゃなかったら、もしかしたらこんな体験自体もする事がなかったかもしれませんけど……」

 

 

 それを聞くと西村先生は納得したような顔をして、そして笑い出す。

 

 

「フッ……、ハハハハッ!バカだバカだと思ってはいたが、まさかここまで『大バカ』だったとはな……!」

「……西村先生?……『バカ』というのは褒め言葉ではないですよ……?」

「まあいい、生徒のバカにつきあってやるのも教師の仕事だからな」

「……そんな事は教師の仕事でない気もしますけど……。それに……前にも言ったかもしれませんが、『バカ』を相手にするのは大変ですよ?」

「フン、言っていろ。こうなったら、とことんまでその『大バカ』につきあってやろう!」

 

 

 そんな西村先生の言葉に苦笑しつつも心の中で感謝すると、僕は次の試合を見る為、試合会場の方へ目を向けるのだった……。

 

 

 

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