バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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文章表現、訂正致しました。(2017.12.4)


第32話 各クラスの機運 (番外4-1)

 ――普段は空き教室である臨時のFクラスにて、数人の男女が相対していた。

 

 

「……ウチに対しての宣戦布告という事だが……、いったいどういう事だ……?」

 

 

 宣戦布告に来たEクラスの面々にそう告げる。……Aクラスにて自習していたところ、ムッツリーニから入った情報により、至急臨時のFクラスに戻ってきたのだが、何故戦争を仕掛けてきたのかはいまいちわからない……。確かにAクラスとのエキシビジョンゲームを制した俺達ではあったが、別に教室の設備が改善された訳ではないのだ。まあ、腐っていた畳などは補修に入ってはいるものの、それでもEクラスの設備の方が上の筈である。

 

 

「……まあ、別に設備が目的……、という訳じゃないんだけどね……」

 

 

 歯切れが悪そうに言ってきたのが、耳から下の髪をウェーブにしている女生徒で、宣戦布告に来たEクラス代表の中林宏美である。

 

 

「だったら、何故……」

「……今の学園の風潮、と言ったらわかるかしら?」

 

 

 昨日のエキシビジョンゲームの影響なのか、学園全体で試召戦争を起こそうとする動きが出始めている、という事は聞いた。……今まで点数差でほぼ決定する試召戦争というイメージが覆され、さらにあそこまで召喚獣を操れるものだと知り、各クラスで召喚獣の動かし方を見直しているらしいが……。

 

 

「成程な……。だが、何故Fクラスなんだ?勝てそうだと思うからか?」

「……正直なところ、私としては思っていないんだけど……。あんな動きを見せられちゃったら、ね……。点数もそこまで変わらないウチのクラスじゃ勝ち目は薄いと思うわ……」

「……そこまでわかっているならば、何故ウチに挑んでくる?」

「それは……」

「……お前らと戦こうてみたい思うたからや」

 

 

 そこに今まで黙っていた男が答える。……コイツは……、一年の頃に転校してきた奴か……?確か……、名前が……、

 

 

「……片岡君」

 

 

 ……片岡!?あの『文月の剣聖』か!?

 

 

「昨日の試合見て、わいらが戦いたい思うた……。それでええんちゃうんか?」

 

 

 ……片岡浩平。剣道部のホープにして……、その強さからある異名がある……。それが『文月の剣聖』……。殆ど話した事はなかったが……、一応去年のクラスメイトでもある……。

 

 

「……片岡……だったか?戦いたいというのは勝てると踏んだから……。そういう訳ではないのか……?」

「そんなつまらん事はせーへん……。なんべんも言わせんなや……。戦こうてみたい言うてるやないか……」

「まあ、こんな状態なのよ……。特に吉井君と戦ってみたいって言ってね……」

「ほんま召喚獣であそこまでん事ができるとは思わんかったわ……。まあ、理由はそれだけやないけどな……」

 

 

 ……まあだいたいコイツらの話もわかった……。ただFクラスとしては、この申し出を受けるかどうか決める事が出来る……。上位クラスからの挑戦、おまけに此方から仕掛けたという訳でもないので、断ることも出来るのだ……。まぁ、教師が認めたらの話ではあるが……。さて、この勝負を受けるか、それとも……。

 

 

「そうは言ってもな……」

「……いいよ」

 

 

 そこに俺の言葉を被せるとともに、明久と秀吉が入ってくる……。

 

 

「戻ってきたか、明久……。しかし……」

「……雄二の言いたい事も分かるけどね……。ただ、出来れば僕の我儘を聞いてくれると嬉しいかな……?」

「……お前の……我儘……?」

 

 

 いまいち明久の言っている事はわからないんだが……。そんな中、片岡が明久に声をかける……。

 

 

「おう吉井。昨日は見ていたで。まさか召喚獣であないな動きが出来る思わんかったわ……」

「……有難う。君は片岡君……だったよね?」

「そうや。……聞きたかったんやが、吉井、以前に剣道してたんか?あの動きは素人やないで?」

「…………『前』にちょっと、ね……」

 

 

 ……明久?……なにか、あるのか……?少し明久の様子が気になったが、まあいい……。アイツがそう言っている以上は受けた方がいいだろう……。

 

 

「……わかった。その試召戦争、Fクラス代表として了承する」

「……坂本君。いいのかい……?」

 

 

 俺達と一緒に聞いていたDクラスの代表である平賀がそう聞いてくる。……Fクラスが宣戦布告をされたという事で協力関係にあるDクラスと同盟関係にあるCクラスもこの教室に来ていたのだが、こうなった以上は仕方ない……。

 

 

「ああ、明久もこう言ってるしな……。わざわざ来てもらって悪かったな、平賀。それに神崎も」

「いや、かまわないよ。まあ頑張ってくれよ」

「……わかりました。代表には、そう伝えておきます」

 

 

 そしてEクラスの方へ向き直り、

 

 

「時間は午後からでいいか?もう昼近い時間だが、出来れば今日中にケリをつけたいしな……」

「ええ、それでいいわ。じゃあ宜しくね」

「ほな、またな」

 

 

 そう言ってEクラスの面々が出ていく。さて…、色々準備しないとな……。

 

 

「じゃあ、僕達はこれで失礼するよ。健闘を祈る……。ま、君たちは大丈夫だと思うけどね……」

 

 

 そう言って平賀の方も教室を出ていく。神崎もそれに続こうとしたが……。

 

 

「……ああ、ひとつ、伝えそびれていました」

 

 

 ともう一度俺達の方に向き直る。

 

 

「ん?どうした?」

「……ええ。恐らく並行しておこなわれる事となりますが……、私達CクラスもAクラスに試召戦争を仕掛ける予定です」

 

 

 ……なんだと?

 

 

「……それはいったいどういう事だ?」

「……といっても普通の試召戦争ではなく……、『模擬』のですけどね……。ですので施設が目的……、という訳ではありません」

「何か考えがある……。そう言う事か?」

「……そうですね。まあEクラスと同じくCクラスも試召戦争に乗り気になった……、という事もあります。ただ……」

「……ただ?」

「……私にもまだ、よくはわかっていないのですが……。勇人の方も何か考えているようです……。『昨日の話』と何か関係があるんじゃないですか?」

 

 

 ……『昨日の話』、か……。

 

 

「わかった……。まあこっちは上手くやるから、小山や高橋にもそう伝えておいてくれ」

「……わかりました。それでは失礼します」

 

 

 そして、神崎も一礼して教室を出て行った……。

 

 

(……まあやる事は色々あるが……、とりあえずはEクラス戦か……)

 

 

 話をしている明久と秀吉を横目に俺は対策を練る事とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女が木下さんね……。ホント、Fクラスの木下君そっくりよね……」

「……よく言われるわ。それに昨日も試合に出てたしね。……それで、Cクラスの人達がAクラスに何の用なのかしら?」

 

 

 Aクラスの教室にやってきたCクラス代表である小山さんと付き添いでやってきたらしい高橋君にそう訊ねる。

 

 

「ああ、実はAクラスに『試召戦争』を申し込みたい……」

 

 

 高橋君の言葉を聞き、Aクラスがざわめく。

 

 

「……といっても正規という訳じゃない。まあ、クラス間の『模擬試召戦争』だな……」

 

 

 ……『模擬試召戦争』ね……。

 

 

「……一応、理由を聞いてもいいかしら?」

「木下さんも知ってるでしょ?……貴女達の試合を見て、今この学校は『試召戦争』は一種のブームみたいになってるのよ。……今までCクラスはそんなに試召戦争は乗り気ではなかったんだけど、今では召喚獣を動かしたいって人達が多いの……」

「……まあ、Eクラスも試召戦争を起こす以上、Cクラスだけ起こさないっていうのもちょっと難しいものもあってな……」

 

 

 ……まさか昨日の試合から、こんな風になっちゃうとはね……。横で聞いていた代表もアタシに話しかけてくる……。

 

 

「……受けよう、優子。……それに、私達は断れない」

「代表……。うん、そうね……」

 

 

 そう、どのみちアタシ達には拒否する権利はない。『下位クラスからの宣戦布告は断る事はできない』というルールがあるから……。

 

 

「……成立ね。時間なんだけど、午後からでもいいかしら?模擬試召戦争だし、立合いの先生も高橋先生を含めてあと2~3人来てくれれば問題ないと思うし……」

 

 

 ……高橋先生は私達の担任であると同時に、学年主任で、総合科目のフィールドを張れる。即ち全教科のフィールドを張る事ができる。1度にぶつかる模擬試召戦争にはピッタリの先生ね。

 

 

「……わかったわ」

「ま、宜しくね。さて……、宣戦布告も済んだ事だし帰るわよ、高橋君」

「……ああ代表、ちょっと木下達に話したい事があるんだ。すまないが先に戻っててもらってもいいか?」

「そうなの?……まあいいわ、先に戻ってるわね」

 

 

 そう言って小山さんが出て行った後、高橋君がアタシ達に向き直る。

 

 

「……すまないな、霧島に木下……」

「……別にいい。……それに試召戦争は当然の権利」

「そうね……。だけど高橋君。一つだけ聞いてもいいかしら……?」

 

 

 高橋君だしね……。理由は知っておきたいし……。

 

 

「……何だ、木下?」

「……さっきの、試召戦争を仕掛ける理由はわかったわ。でも……、何で『Aクラス(私たち)』なの?」

 

 

 それだったら別にAクラスに仕掛ける必要はない。Bクラスでも、Dクラスでもいい筈だ。Fクラスに負けて自分たちからは3ヶ月間、宣戦布告は出来ないけど、Cクラスかから仕掛けるというのならば、両クラスとも受ける事は出来るのだから……。尤も、Dクラスには拒否権もあるはずだけど……。何か他に考えでもあるのかと思い、聞いてみると、

 

 

「……それに関しては、昨日、明久に『話』を聞いたからだ。……どうなっていくかはわからないが、俺達Cクラスも試召戦争に慣れていく必要もあると思ったからな。……あと、俺も『腕輪』を持っているし、経験を積むならばAクラスがいいと思った」…」

 

 

 成程ね……って、高橋君も『腕輪』を持ってるの!?

 

 

「……意外そうな顔だな、木下……」

「……ちょっと吃驚しただけよ……。でも、凄いわね……。400点以上の点数はなかなかとれるものじゃないのに……」

「まあ、一教科だけだけどな……、じゃ俺も教室に戻る。またあとでな……」

「……わかった。また、あとで……」

「ああ、宜しく頼む」

 

 

 そう言って高橋君もAクラスを出ていく……。宣戦布告された以上は仕方がない……。とりあえず、私は代表と一緒に教壇に上がり、クラスを纏める事にした。

 

 

「じゃあ皆、席に戻って!……見ての通り、Cクラスから『模擬試召戦争』を仕掛けられたわ。負けたからといってリスクがあるわけじゃないけど、仕掛けられた以上Aクラスとして負ける訳にはいかないわ!」

「「「そうだ、Cクラスに負ける訳にはいかない!!」」」

 

 

 有難い事に、クラスの皆も士気は高いようだし、これなら大丈夫かしら。でも念の為、皆には注意を促しておく事にする。

 

 

「……昨日の試合を見て、皆も召喚獣の戦いは点数だけでは決まらない事はわかったと思う……。だから、相手を侮る事は禁物……」

「代表の言った通りよ。召喚獣の操作もそうだけど……、急所を狙われたら終わってしまうし、Cクラスの人達にも強い人がいるかもしれない……。だから……皆、油断だけはしないで!そして、絶対に勝ちましょう!!」

「「「おう(ええ)!!」」」

 

 

 そして私達はその士気を保ちつつ、Cクラス戦に備えていくのだった……。

 

 

 

 

 




とある時の明久の体験(4) 『~文月の剣聖~1』



 ――大分『腕輪』の事がわかってきた時、僕は召喚獣の操作には自分の経験も活かされている事を知った。
 召喚獣は、僕の思いのままに動いてくれる……。だったら、動かす僕自身がその最善の動かし方を学ぶ事が出来れば、召喚獣はより強くなる事が出来る……。

 これから『腕輪持ち』の高得点者の人達とも戦っていかなければならない以上、どうしても身に付けるべきは自分の召喚獣の武器である『剣術』……。これを習う必要性を感じた……。
 今までの『繰り返し』の中でも何度か部活動に取り組んでみたり、様々なバイトに明け暮れたりと色々あったが、今回は『繰り返す』事を前提に『剣術』を習う事に決めた……。



 ――文月学園、剣道部


「こんにちは~!」
「ん?なんだ?」
「あの……、入部希望なんですけど……」


 僕はまた「繰り返し」を体験して、Fクラスに行った後、Dクラスとの戦争は極力参加せずに適当に切り上げ、剣道部に向かった……。すると主将なのだろうか、先輩らしい人が来て僕の対応をする。


「……ん?お前……、『観察処分者』の吉井じゃないのか?」
「……はい、そうですけど……?」
「……ここはお前のような奴がくるところじゃない……。怪我しないうちに出ていきな」


 ……まあ、こうなるかな。今までの僕の行動から、ある意味予想はしていた事だったんだけど……。


「いえ、先輩。僕は本気で『剣道』をしたいんです!お願いします!教えてください!!」


 ……僕は、それを覆す為には真摯に、そして真剣に頼み込むしかないと思い、土下座して先輩に頼み込む。流石にそこまでするとは思っていなかったのか、先輩も困ったように僕を見る。剣道部が少しざわめく中、それまでこちらを窺っていた一人が声をかけてくる。


「主将、せやかてこうまで言うてるんや……。ただ追い返すんわ失礼ちゃう?」
「……片岡か……。まあ、確かにそうなんだが……」
「吉井、やったな?お前、何処まで『本気』なんや?」


 そう言って片岡君が僕を見ながら質問する。


「……『本気』だよ……。僕は『剣道』を、『剣術』を知りたいんだ……」


 僕も本気であると彼に伝える。……そう、今回全てそれにかける『覚悟』はある……。しばらく、剣道場内に緊張が走る。やがて片岡君がその緊張を解くと、


「……誰か、防具一式持ってきてくれんか」
「……片岡?どうする気だ……?」
「……ちょいとコイツの覚悟がどれ程のもんか知りとうなった。主将には悪いが、我儘許してもらえんか?」


 彼らの話を聞いていると、どうも彼は僕を試す気でいるらしい……。でも……、


「……片岡君?僕は剣道はやった事ないし……、何をすれば……」
「……言うたやろ?別に勝ち負けみるんやない……。お前の『覚悟』が知りたいだけや……。ほな、さっさと着替えてきいや」










 こうして僕は防具を身に付け、彼の前に立っている。


「……構え云々言う気はない……。お前が持てるものをわいにぶつけてきな……」


 こう言いながらも、彼は僕に対し一時たりとも視線をはずす事はない……。その気迫に、僕自身息苦しく感じ、さらには……、


(……す……隙が……ない……!)


 隙とかそういった問題ではない。圧倒的な存在感から発せられる剣気のようなものにのみこまれ、この場に留まっているのも辛い……。正直なところ……、何もかも捨ててこの場から離れたい……!そう思わせる何かがあった……。


「……どないした?そないなもんか?お前の『覚悟』は……?」
「……ッ!!」


 その言葉を聞き、僕は思い出す……。僕は今、何の為にここにいる……!?こんな思いをしてまで、ここにいる理由は!?


(…………そうだったね。僕は……、今回『剣術』を学ぶためにいるんだ……。『繰り返し』の運命を、変える為に……!)


 僕はその『理由』を思い出し、今一度、彼と向き直る……。相変わらずの剣気……。だけど、次は彼に気圧される事はなかった。……彼の『剣気』に、僕は『覚悟』でもって応える……!
 そして小手先の技など通用しないだろうと悟り、ただ一回、彼に向けて竹刀を振り下ろそうと剣を上段に持っていく。……自分が持てる全てを、その一撃に込める為に……。



「……ええ目や」


 片岡君がそう呟くと、彼も、剣を上段へと構え直した……。




 ――どれくらいの時が経ったのか、まるで壁画の一場面であるかのように、しばらくそのままの体制が続く……。静まり返る剣道場…)。しかしそこに存在する緊張感……。他の部員も固唾を飲んで見守る……。
 そして……、誰かの汗が床に垂れた音がした……。その瞬間……!


 バシィィッ!!!










「……痛つつ……!」
「……スマンなあ、吉井……。ワイとした事が……、手加減できんかった……」


 ……結果は見ての通り、僕の剣は、彼の面を外し、逆に彼の剣は、僕の面に深く突き刺さった。……敗北である……。


「……気にしないでいいよ……。それで……、僕はどうなるのかな……?負けちゃったし……」
「……何、言うとんのや……?吉井、さっきのあないな『覚悟』を見せといてからに……」


 何を今更、といった感じで僕に答える。


「じゃあ……!」
「…)正直、ワイに剣を放ってこれるとは思わんかったわ……。『剣気』を出したワイに素人が竹刀を振り下ろせた事自体信じられんし……。吉井……、お前余程の『覚悟』を持っとんのやな……」


(『覚悟』、ね……。まあ、命がけだし……)


 そこはとりあえず心の中で呟く事にする。そこに主将と呼ばれた人物もやってくる……。


「先程は悪かったな、吉井……。お前の覚悟は見せてもらった……。今、片岡が言った通り、俺達剣道部は、お前を歓迎する。皆も異存はないな?」


 その主将さんが言ってくれると、皆、拍手で迎えてくれた……。何か……、照れくさい……。


「これからよろしゅうな、吉井。……いや、お前の下の名前は何て言うんや?」
「……明久だよ。……吉井、明久」
「ほんまか。ほなこれから自分の事を『明久』呼ぶわ。自分もワイの事は『浩平』でええ」
「うん、わかったよ『浩平』。これから……、よろしくね!」
「おう、そりゃこっちの台詞や、『明久』!」


 そう言って僕の肩を組んでくる浩平……。こうして僕は、剣道部のホープにして『文月の剣聖』と呼ばれる浩平と出会い…、一緒に剣を学んでいく事となる……。



とある時の明久の体験(4) 『~文月の剣聖~1』 終
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