バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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文章表現、訂正致しました。(2017.12.7)


第36話 明久へのラブレター(中編)

 

「……ここにも、明久は来とらんのか……」

 

 

 Fクラスを脱出した明久を探してAクラスの教室まで来てみたものの、残念ながらその姿は何処にも見当たらなかった……。

 

 

「……木下。Fクラスで騒がしくなっている事と何か関係があるの……?」

 

 

 対応してくれたAクラス代表、霧島の問いかけにワシが答えようとしたその時、

 

 

「アレ?そこにいるのは……優子の弟君?」

「……秀吉、どうしたのよ?血相を変えて……」

「おお、工藤に、姉上も!じつはのう……」

 

 

 教室の奥より姉上達も現れ、ワシは今朝からFクラスで起こっていた事情を3人に事情を説明する……。

 

 

「……またFクラスで、そんな事が……」

「ホント、色々やってくれるクラスだよね~」

「……それじゃあ、明久君は他のクラスにも行ってないの?」

「ここに来る前にEからCクラスまで見てきたのじゃが……、隠れている様子ではなかったのう……」

 

 

 もし隠れておったとしても、ワシが行ったら顔くらいは出す筈じゃしのう……。

 

 

「……雄二や土屋は?」

「……それもわからないのじゃ。少なくともワシと明久が朝、教室に行った時にはおらんかったのじゃが……」

「まあ、いいわ……。とにかく、アタシも手伝うから……。あの状態の明久君をほっとけないし……」

「……私も、探す……」

 

 

 どうやら姉上達も手伝ってくれるようじゃ……。まぁ、先日の明久の『話』を聞いた事もあり、そのまま放置しておける事じゃないからのう……。

 

 

「ボクも行こうか?」

「そうね……。でも、入れ違いで明久君が来てもいけないから……、愛子は教室にいて貰えないかしら?」

 

 

 ……まぁ、明久の行動を見る限り、今更他のクラスの教室に逃げ込むという事はなさそうじゃが……。念のためには、事情のわかる者がおるほうが良いじゃろう……。

 

 

「あ、そうか……。うん、わかった。僕は教室で待機してるね」

「……じゃあ最初は3階を探した後は、それぞれ分かれて探す……。1階は優子、2階は木下、4階は私。……いなかったらまた3階に集まる……」

「わかったわ」

「了解じゃ」

 

 

 ……こうしてワシらは明久を探すべく、Aクラスの教室を出るのじゃった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………明久、無事か?」

「……ムッツリーニ?」

 

 

 僕がFクラスの連中から逃げている最中、声を掛けられ振り返ると、そこには親友でもあるムッツリーニが控えていた。

 

 

「…………状況は理解している。それよりも明久、何故他の教室に逃げ込まない?……それに、前のように召喚バトルを仕掛ければいいのに……」

「……そろそろ1時限目の授業も始まろうとしているのに、他の教室なんかにいけないでしょ……。それに先生たちだって当然、授業の準備やらで暇じゃないんだ……。こんな事がなければ、むしろ手伝いにいかなきゃならなかったくらいなんだよ……」

 

 

 相変わらず神出鬼没である彼に舌を巻きながらも、僕はそう説明する……。流石にこの状況で職員室に行けるとも思えないし……。

 

 

「…………だが、今はそんな事は言っていられる状況じゃない……」

「……わかってる。だから、一応ここまで来るときに囲まれないように注意しながら数人ずつ倒してきてるんだ……。ムッツリーニはそこで気絶している連中を西村先生に報告して、補習室送りにして貰えないかな?」

 

 

 ……逃げている最中にトイレ等に誘い込み……、既に何人かは戦闘不能に追い込んできてはいる……。今は怪我してる為、1人もしくは2人を、それも不意を打つくらいでしか相手に出来ないのがキツイ……。

 

 

「…………逃げる途中で全員蹴散らすつもりか……?」

「……そうしたいのはやまやまなんだけど……、流石に人数が多すぎるよ……。出来るかぎり、学校に迷惑かけたくないんだけどね……」

 

 

 ……まもなく授業が始まる直前だというのに……、なんで僕はこんな事しているんだろう……。そう溜息をつきながら答えると、

 

 

「…………わかった。鉄人には伝えておく。あと……、一応護身用に持って行け」

 

 

 小さな袋を差し出しながら僕に言う。

 

 

「……何、コレ?」

「…………中に刃物が入っている。危なくなったら使え」

「……いや、刃物はまずいでしょう?」

「…………相手もカッターやらを持っている。防げなかったら……、お前の場合、『繰り返す』事になる……」

 

 

 ……まあ、確かにね……。過去に、彼らのせいで『繰り返し』た事もあるし……。

 

 

「……わかったよ。使わないとは思うけど、一応借りておくね……」

「…………俺も陰ながら援護はする……。気を付けて行け」

 

 

 そう言い残すと、その場から消えるムッツリーニ。とりあえず、彼は何を渡してくれたのか。確認する為に袋を開けてみると……、

 

 

「…………ムッツリーニ……」

 

 

 ……爪切りで、一体どうしろと……?天然な彼に、その場で暫く脱力してしまう僕であった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……出来るだけ人目を避けながら、僕は屋上へと向かう……。大方Fクラスの連中が恐らくムッツリーニ達の助けも借りて徐々に沈静化していってる事を実感しつつ、2階を通過して3階の廊下に差し掛かったところで……、

 

 

「吉井、待っていたぞ!」

「……須川君、か……」

 

 

 見てみると、FクラスでFFF団の会長でもある須川君が立ち塞がっていた。彼はそう言うと背中から木刀を取り出し僕に向かって構える……。

 

 

「……それ、どうしたの?」

「剣道部から借りてきたんだ。吉井を止める為にな……」

「……浩平達が部外者であるキミに、部内の備品を貸すわけないでしょ……」

 

 

 ……さては、勝手に拝借してきたな……。あとで、浩平達に謝らないと……。

 

 

「うるさいっ!!お前は異端者である事もさることながら……、先の試召戦争で俺を船越先生に生贄にされそうになった恨みもある……!」

 

 

 …………あぁ、確かにあったね……、そんな事が……。でも、あれは……、

 

 

「あれは、最初に君から言い出した事じゃないか……。他人を嵌めようとした事が自分に返ってきただけだろう?」

「五月蝿いっ!!あの後、大変だったんだぞ!?な……、何とか誤解を解く事が出来たが……、あの時の事は思い出したくもない!!……度重なる貴様への恨み……、ここで清算してくれる……っ!!」

 

 

 そう言って須川君が木刀を振りかぶり、僕に打ちかかってきた……。

 

 

「……そんな適当に振り回しただけのモノが、僕に当たるわけないだろ……」

 

 

 僕はそれを難なくさけると、振り切った木刀を持つ須川の片手を掴み、捻りあげる。

 

 

「ぐぅぅ……!」

 

 

 そこで僕は須川君を突き飛ばし、彼が落とした木刀を拾い上げると……、

 

 

「……暴力を振るおうとした……という事は、当然、自分が振るわれるという事も覚悟してる訳だよね……?」

「…………ヒッ!」

 

 

 彼は廊下に座り込み、恐怖に見開かれた目をこちらに向ける……。そんな彼を一瞥し……、僕は木刀を振り下ろす。

 

 

「…………!?な……、なんのつもりだ!?」

 

 

 木刀が彼の目前で止まっている。当たる寸前、僕はそれを止めたのだ。

 

 

「……まあ、船越先生の件は自業自得とも思ったけど……、あの時は僕も気が立っていたからさ……。今回はこれで勘弁してあげる……」

「な……情けをかけるとでも……!?」

 

 

 顔を真っ赤にして憤る須川君。そんな彼を見て、僕は……、

 

 

「……無駄だと思うけど……、一応言っておくよ。『FFF団』会長の須川君。……キミ、今のままで本当にいいの……?」

「……ど……どういう事だ……!?」

「……今みたいにFFF団やってて……、それで本当にいいのかって聞いてるんだけど……?」

 

 

 僕の問いかけに、須川君は言っている意味がわからないという顔をしていたが、

 

 

「あ……あたり前だろッ!?俺達は、文月学園の正義を守る為に……っ!」

「……だから……、女子と接触を持とうとしている男子が許せない……と?」

「と、当然だ!!」

「だから……、ラブレターを貰ったかもしれない僕を血祭りに上げる……。そう言う事だよね?」

「その通りだ!!」

 

 

 ……僕も、以前にFFF団に所属していたから覚えもあるから……、彼の気持ちもわからないでもない……。でも、だからこそ……、僕は彼に聞いてみた……。

 

 

「……ねえ、もしも、だよ?……もし、君が……、万が一誰かに……ラブレターを貰った時、……君はどうするの?」

「………………は?」

「もしかしたら……、君に好意を持つ人が現れるかもしれない……。君も知ってのとおり、不細工の僕でもラブレターを貰ったかもしれないんだ……。自分だって貰うかもしれないじゃないか?」

「そ……それは……まあ……」

「……そんな時、今のまま『FFF団』にいたら……、君、どうなると思う……?」

「……俺が……どうなるか……?」

 

 

 僕の方を呆けたような感じで見てくる須川君に、淡々と僕は告げる……。

 

 

「……もしそんな機会が訪れたとしても……、君はその機会ごと潰されるんだよ……?その、たった一度しか来ないかもしれない機会ごと……。君が立ち上げた……『FFF団』によって……」

「……そ……そんな……、バ……、バカな……!」

 

 

 いや……、だってそうでしょう?何故わからないんだろう……。

 

 

「僕をこうやって追い掛け回している時点でわかるでしょ……?もし、君が同じ立場になれば、当然他の連中は、君を追い掛け回す……。『FFF団』の会長だから、自分は大丈夫だとでも思ってるの……?」

「い……いや、それは……」

 

 

 今頃気付いたという様子の須川君。それに、それだけじゃない……、

 

 

「……機会がなくなるぐらいだったらまだいいよ……。最悪、命を失う可能性だって……」

「い……いくらなんでも……、それは……!」

「……灯油とライターで焼かれたり、屋上から突き落されたりしても大丈夫だと言えるの……?本当に……?」

「…………」

 

 

 ……僕は彼らの事を決して過少評価はしない……。彼らのその嫉妬からくる行動力は、甘く見ると本当に命取りになる……。何せ本当に火葬したり、屋上から突き落す連中だ……。体験者が言うんだから間違いない……。それを受けたことによって『繰り返す』事になった経験者が……。

 

 

「そして……、一番悲しむのは、君を好きな相手だ……。君がそんな目にあわされて……、それも自分のせいで起こった事だと知って……深く傷つく事になる……。須川君の立ち上げたFFF団によって……」

「…………そ、そんな……」

「……だから、もう一度だけ聞いておくよ……。須川君……、キミは本当にそれでいいの……?」

「……よ……吉井……」

 

 

 僕は須川に突き付けていた木刀を戻すと、彼に背を向けて最後に伝えておく……。

 

 

「……後は自分で考えてくれ……。今回はこれで終わりにするけど……、次に僕の前に立ちはだかる時は、容赦なく叩き潰すから覚悟しておいてね……。ああ、この木刀は責任を持って僕が剣道部に返しておくよ……。じゃあね、須川君……」

 

 

 そう言い残し、そこで蹲っている須川君を置いて、僕はその場を後にするのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……もう大方片付いたのだろう……。ほぼ全てのFクラスのメンバーは沈静化したとふんで、手紙を確認するべく僕は屋上へ向かおうと階段を昇る……。そして……、最後のボスにして、僕の天敵が残っていた事を思い出した……。

 

 

「吉井っ!見つけたわよ!」

「……やっぱり、最後に立ち塞がるんだ……」

 

 

 僕がここに来るのがわかっていたのか、階段の踊り場で島田さんが待ち構えていた……。彼女は悠然とこちらに近付き……、僕にいつもの二択を迫る……。

 

 

「おとなしく手紙を渡して殺されるか、殺されてから手紙を奪われるか、好きな方を選びなさい……?」

 

 

 ……どちらを選んでも、僕が生きている気がしないのは、決して気のせいなんかじゃない筈だ……。どうして彼女はいつもこんな選択を僕に迫るのだろうか……?

 

 

「……なんでいつも僕に絡んでくるのさ……。君には関係ないだろうに……」

「ウチに関係ないって、酷い……!吉井は本当にそう思っているの……?」

 

 

 本当にそう思っています。……なんて事を答えたら一瞬にして『繰り返させ』られるかもしれない……。島田さんだけに……。

 

 

「だって、今まで恥ずかしくて言えなかったけど、ウチはアンタの……」

 

 

 ……わかっているよ、島田さん。君が言いたい事は……。

 

 

「アンタのせいで、『彼女にしたくない女子ランキング』の3位になってるんだからぁぁっ!」

 

 

 まだ上がる余地があった事の方が驚きだ。それに……絶対に僕のせいではないと思う。……少なくとも、『今回』の僕のせいじゃない筈だ……。

 

 

「……君の自業自得じゃないか……」

「何言ってるのよ!?……まあいいわ……、とにかく手紙を渡しなさい……っ!!」

 

 

 そう言って彼女が僕に襲いかかる……!

 

 

 

 

 

「このっ、くっ……!すばしっこいわね……っ!」

 

 

 島田さんが掴みかかってくるのを避け続ける僕に、苛立ちを感じ始めているようだ。

 

 

「……いい加減にしてよ。毎度毎度……、僕に付き纏ってきて……」

「そうはいかないわっ!人をこんな立場にしておきながら自分だけ幸せになろうなんて、そんな事はゆるさないわよ!」

 

 

 ……まだそんな事を言っているのか。……ある意味『島田さん』だから仕方がないのか……?僕は攻撃をかわしながら、島田さんの事を思い出していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――いつからだろう……。友達だった『美波』を……、『島田さん』としか呼べなくなったのは……。

 

 

 

 

『僕にとって美波は、ありのままの自分で話ができて、一緒に遊んでいると楽しくて、たまに見せるちょっとした仕草が可愛い、とても魅力的な――女の子』

 

 

 

 

 ……そう、島田さんは僕の『友達』だった筈だ……。理不尽に暴力を振るってくるけれど……、いい所がたくさんある事だって知っている……。とても妹思いで、心優しいところもあるし……、僕を心配してお弁当を作って来てくれた事もあった……。それなのに……、どうしてこうなってしまったのだろう……?彼女は……、確かに僕の大事な友達だった筈なのに……!

 

 

 

 

『アキ、またアンタは…!いつもいつもどうして懲りないのよっ!』

『グェッ!?み……、美波……!ちょ……完全に……はいって……!!』

『本当にちっとも反省しないんだから……!!』

 

 

 ミシミシ……!

 

 

『み……美波……。や…やめてよ……、ほんと……うに……この……ままじゃ……!』

『死になさい……っ!!』

『お……お願い……だよぉ……み、美波ぃ……!た……頼むから……、拘束を……っ!』

 

 

 ――『腕輪』が反応している事に、気が付いていないのか……。僕の懇願を聞き入れる事なく締め続け……、そして……!

 

 バキッ……!!

 

 

 

 

 ……彼女によって『繰り返し』を体験させられた……。それも……、1度や2度ではない……。

 最初は、僕が悪かったのかと思った……。また、何かをやってしまったのか……と。だけど……、何度も『繰り返さ』せられるうちに……、だんだん彼女の事がわからなくなってきた……。涙ながらに、やめてくれと懇願する僕にそのまま止めを刺す美波……。

 ……そして……気が付いたら、僕は彼女に触れられるだけで……、鳥肌が立ち、思うように動けない様になっていたのだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……島田さんの攻撃をかわし続けていた僕だったが、気が付けば背を壁にし、もう下がれないところまで追いつめられていた……。

 

 

「覚悟しなさいっ!吉井ッ!!」

 

 

 そして、僕の顔面に向けて、正拳をはなってきて……、僕は……、それを紙一重でかわすと、背を向けてその腕を怪我をしていない右手で掴む!

 

 

「なっ!?」

 

 

 触れているトラウマに動けなくなりそうな自分を必死に堪えながら、彼女の足を払い、そのまま背負い投げる……!

 

 

ドサッ!!

 

 

 ……受け身は取らせたので、怪我はしなかったはずだ……。島田さんは最初、何が起きたのかわからないようだったが……、やがて正気に戻り……、

 

 

「よ、吉井ッ!!アンタ、なに……を……!?」

 

 

 島田さんは僕を見て、声が詰まったようだった……。僕の雰囲気に呑まれたのか……。それとも……、流してしまった一筋の涙が彼女の頬に触れた為なのか……。

 

 

「……どうして……、こんな風に……、なっちゃったんだろうね……」

 

 

 僕はそう呟く……。かつての友達だった……。

 それが……、どうしてトラウマになる程に避けるようになったしまったのだろう……。

 どうして彼女は、僕に敵意を見せて、襲いかかってくるのだろう……。

 どうして友達だった彼女と……、こんな風になってしまったのだろう……。

 息を呑む彼女を尻目に、僕はそのまま背を向けて歩き出す……。僕の様子に反応できないのか、島田さんは追ってくる気配はない……。

 ……僕はそんな彼女に振り返る事なく、屋上へ向かって行った……。

 

 

 

 

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