バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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文章表現、訂正致しました。(2017.12.8)


第41話 トリプルデート……?

「遅かったじゃねえか、お前ら!」

 

 

 約束の時間より遅れる事10分……、ようやく来たかと思ったら、明久たちはどこか疲れ切った顔をしていた……。ムッツリーニに至っては、半分死んだような目をしているが……。

 

 

「……ああ、雄二に霧島さん……。遅れちゃってゴメン……」

「……どうした、明久……?いやに疲れ切った顔をしているが……?尤も、それはお前ら全員に言える事だが……」

「…………なんでもないよ。気にしないで」

「そうは言ってもだな……」

「ホントに何でもないから……」

 

 

 ……またなんかあったのか……?まあ、触れずにおいた方がいいのかもしれんが……。本当は謀ったかのように翔子と二人っきりにさせられていたので、嵌められたとも思ったが……、コイツらを見る限り、そういう訳ではなさそうだ……。

 

 

「……まあいい、それより行くぞ。早く行かないと俺達の見る映画が『地獄の黙示録』になる」

「……なぜ?」

 

 

 ……翔子が興味?を持っているからな……。さすがに3時間23分も座っていられるか……!翔子に話しかけている木下姉達との会話に耳を傾けていると……、

 

 

「代表、遅れてゴメンね。……ん?何見てるの?」

「……優子、これ……」

「なになに……、『地獄の黙示録』……?代表、興味あるの……?」

「……上映時間が3時間23分もあるから……。その間雄二と一緒に居られる……」

 

 

 や、やはりそうか……!?頼む!なんとか翔子を説得してくれ……!

 

 

「……でも代表?それだと映画だけで終わっちゃうよ?この後もデートは続くんだし……」

「!……失念していた……」

「だったらこの『世界の中心で僕の初恋2<発動編>』にしようよ!ボク、見てみたかったんだよね~♪」

 

 

 ……話の流れを聞く限り、どうやら最悪の事態は回避されそうだ……。翔子と二人っきりだったらと思うとゾッとする……。明久も(奇跡的に)話の内容を理解してくれたようで……、

 

 

「……雄二も色々大変だったんだね……」

「……気にするな。それより行くぞ。映画も始まっちまうしな」

 

 

 そして、俺達は受付にてチケットを渡し、映画館に入る。俺の横には当然の様に翔子が座り、ムッツリーニが工藤と、何やら恥ずかしがっていたが木下姉の隣が明久で、そのまた隣が秀吉という形で映画を見る事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 映画が終わった後、そのまま何処かへ寄っていこうという話になり、私達は今おいしいと評判の『喫茶ラ・ペディス』に来たんだけど……、

 

 

「む?利光に姫路、それに佐藤も一緒かの?」

「おや?秀吉君に優子さんかい?」

 

 

 一足先に秀吉と場所を取りに来たところで、バッタリと利光君達に出会い……。彼の他には姫島さんと美穂がいて……、ケーキを食べていた。男子一人に女子が二人……。これって、もしかして……。

 

 

「……優子さん、君が何を考えているのかうすうす分かるのだが、おそらく誤解している」

「先日のオリエンテーリング大会でココの商品券が手に入ったんで……、それで一緒にいるんですよ、優子」

「あの……!商品券たくさんありますので、よかったら木下さん達も一緒にどうですか?」

 

 

 私の疑問に答える形で弁明してくる3人……。まあ……、そんな事だろうと思ったんだけどね……。

 

 

「優子~、場所取れた……って、あー、久保君達もいたんだ~」

 

 

 そこに愛子達が加わり、利光君達と一緒に食べる事となる……。これって……、いつもの学校でのメンバーじゃない……。何かデートというよりも、放課後の集まりって感じになってきたわね。…………別に、残念がっているわけじゃないんだけど……。チラッと明久君の方を窺うと、顔を真っ赤にした姫路さんと楽しそうに話しているし……。

 

 

(……やっぱり姫路さんは、明久君を……)

 

 

 彼女の様子を見ていたらわかる……。そうでなくても、ポーカーフェイスが得意なアタシや秀吉とは違って、彼女はとても分かりやすい……。わからないのは恐らく、明久君だけ……なんでしょうね……。

 

 

 

 

『吉井君、誰かにとられちゃうかもよ?』

 

 

 

 

 先日の愛子の言葉が頭を過る。……わかってる。私も、その事は充分にわかってるんだ……。でも……、

 

 

 

 

『……それがわかった時、僕は後悔したよ……。そのせいで……、『2人』と別れる事になったから……』

 

 

 

 

 あの時の明久君の苦痛に満ちた顔を見ている……。辛そうに話す悲哀に満ちた明久君を……、私は見ているから……。とはいっても、なかなか感情はそう割り切れないようで、明久君が彼女と話しているところを見ていると……、なんかこう……、

 

 

(………………面白くない)

 

 

 私がそう思った矢先……、

 

 

 ――ヒュンッ、カッ!!

 

 

 風を切るような音がしたかと思うと、明久君が今までいたところにフォークが突き刺さっていた。…………フォーク?

 

 

(…………………………え?)

 

 

 な、なんでフォークが壁に刺さるのよ!?とか、当たったら無事じゃすまないでしょ!?とか、色々言いたい事はあるんだけど、明久君はソレを避けて、冷静に飛んできた方を見ていた。

 

 

「……この、豚野郎~~!!」

 

 

 地獄の底から絞り出すような声が聞こえてきたかと思うと、それを投げたであろう人物が顔を出した。

 

 

「……キミか、清水さん……」

「豚野郎……!よくも、よくもお姉さまをディスってくれましたね……!」

 

 

 お姉さま?明久君、彼女のお姉さんに一体何を……?そもそも彼女のお姉さんって……?

 

 

「……お姉さまって、島田さんの事だよね……?」

「喋るな!豚野郎の口から美波お姉さまの名前を聞くだけでも許せませんっ!!」

 

 

 そう言うと、再び明久君に向かって構えていたフォークを投げつけてくる……!

 

 

「……危ないな……」

 

 

 明久君はソレを傍に置いてあった週刊誌で全て受け止める……。ここで状況が分からずに固まっていた皆も動き出す。

 

 

「し、清水……!お主、一体何をしておるのじゃ!?」

「そ、そうだよ!そんなの当たったらタダじゃすまないんだよっ!?」

「貴女達は黙っててくださいっ!!」

 

 

 秀吉や愛子が止めるも彼女は聞く耳持たずな感じで、さらに凶器(フォーク)を用意して構える……!私も止めようとしたそんな時、

 

 

「いい加減にしろ!このバカ!」

「痛っ!?」

 

 

 その声の主は、持っていたお玉で清水さんの頭を叩いたようだ……。その声の主は……、

 

 

「た、高橋君!?」

 

 

 そこに立っていたのは、『ラ・ペディス』の制服に身を包んだ、Cクラスの高橋勇人君の姿があった。

 

 

「な、何をするんです!?美春はこの豚野郎を成敗しないと……!」

「……いい加減にしろ、美春。仕事中だぞ……!」

「で、でも、あの豚野郎はお姉さまを……!」

「……それ以上続けると言うなら、店長(おやじさん)に全部伝えるぞ」

「……クッ……!」

 

 

 そう言われた瞬間、彼女(しみずさん)は身震いし、暫く葛藤した後、

 

 

「……命拾いしましたね、豚野郎……!」

 

 

 そう明久君に吐き捨てると、踵を返し厨房に戻っていく。去り際に高橋君にも「覚えていなさい……!」と呟いているのが聞こえる……。まるで台風みたいだった清水さんがいなくなったのを確認し、高橋君が話しかけてきた。

 

 

「ウチのが失礼したな、申し訳ない」

「勇人……こちらこそゴメン……、迷惑かけて……」

「なに、気にするな。というよりも悪いのは美春(アイツ)だ……。後で、しっかりとお灸を据えておく……。災難だったな、明久……」

 

 

 ……まあ、そうよね……。いきなり訳もわからずフォークを投げてきたんだし……。それにしても……、清水さんと島田さんって……。あまり、深く考えない方がいいかしらね……。

 

 

「それよりも……、勇人ってここで働いていたっけ?」

「……ここの店長とはある伝手で顔見知りでな……。時々手伝いで入っている。……ちょっと変わり者なのが玉に傷だがな……」

 

 

 その娘もあんな感じだしな……、とごちる高橋君。……『あんな感じ』でこんな目にあわされたら、正直堪らないんだけど……。

 

 

「……全く、島田さんといい、清水さんといい……。一体何を考えているのかしら……?」

「…………同感」

「……やめとけ。多分考えるだけ無駄だ」

「本当にすまないな……。お詫びに今日は全て俺の奢りだ」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、皆の(私も含む)リミッターが解除され、店の全品制覇しようというとんでもない展開になったんだけど、それはまた別の話……。

 坂本君と代表にパフェを食べさせようとしたらこちらの方に飛び火してきたとか、愛子がふざけて土屋君に抱き着いた瞬間、彼の鼻血が止まらなくなったとか……。

挙句の果てには清水さんが再び襲いかかってきたり、そのお父さんも帰ってきたりと……。

 

 

 まあ、なんだかんだで明久君も楽しんでいたように思う。でも、きっと彼は心からは笑えてはいないだろう……。彼を襲った『悪夢』。何度も『繰り返す』内に彼はきっと、心の底から笑えなくなったに違いない……。どんなに楽しくても、どんなにここに居たいと望んでも、彼は『繰り返し』てきた。……別れを、経験してきたのだ……。

 

 

 その時が楽しければ楽しい程、『別れる』時が辛くなる。そして……、その『別れ』を彼は繰り返してきた。――今日、この時まで。そして、今後も起こさないという保証はない。

 

 

 これを、悪夢と言わずになんというのだろうか。

 

 

 私はそっと明久君を盗み見る。……彼は笑っている。……でも、何処かその笑顔に影があるように私には思えた……。

 

 

(……何時か、彼がまた心から笑えますように……)

 

 

 ……明久君が『繰り返す』悪夢を乗り越える時、それが『今回』である事を望みつつ……。彼と心の底から笑いあえる日が来ることを、私は切に願う……。

 

 

 ――これは、これから始まる『清涼祭』の前の……、皆で仲良く楽しく騒いだ、小さな小さな日常の一コマ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、吉井家にて……。

 

 

(……あんなに騒いだのは久しぶりだったな)

 

 

 雄二達だけでなく、利光君や勇人も交えて……。わいわいガヤガヤと楽しんだ……。清水さんの件とか、色々危険な事もあったけれど、僕があんなに笑ったのは本当にいつ以来だろうか……。

 『繰り返し』を体験しだしてから、僕は意図的に楽しむ事を避けるようにしてきた。理由は簡単で……、そうしなければ、別れが辛くなるからである……。

 

 

「……眠れないのですか?アキくん……」

 

 

 そんな中、姉さんが部屋に入ってくる。僕が心配なのか、姉さんも家に留まる事にしたらしい。昔は独り暮らしを邪魔される……とか思ったものだったけど……。とはいっても、この『腕輪』を身に付けている以上、家族といえども距離をおかないとな、という気持ちもある。

 

 

「……色々考える事があってね。今回はとてもスムーズに進んでいるように思うから……」

 

 

 今までの中でも、こんなに順調に進んだことは無かったかもしれない……。雄二達だけでなく、勇人や、まさか浩平とも交流が持てるとは思わなかった……。あんなに沢山の人達に僕の『秘密』を話した事もない……。正直、それがどう転ぶかはわからないけれど、やれるだけの事は全部やっておきたい。

 

 

「……私に出来る事はありますか?」

「姉さんに出来る事……?」

 

 

 言われてみて、うーん、と考える。

 

 

「……じゃあ聞いてみたいんだけど……、姉さんは『試験召喚システム』についてどんな事を知ってるかな?」

「……?どういう意味ですか?アキくん」

「世間で言われているような、というか姉さんが知ってる事はどんなものなのかを知りたいんだ」

「……そうですね、私が知っている事といえば……」

 

 

 姉さんの認識といえば、普通の学校とは違い『試験召喚システム』という制度を導入した試験校である事。それは科学とオカルトにより完成された偶然の産物であるという事。そして、その『召喚獣』というものをどういう風に活用できるのか、一部で注目を浴びているというものであった。

 

 

「……注目、ね……」

「その『召喚獣』でどんな事が出来るのか、という点が尤も重要視されていると聞いた事があります」

 

 

 まあ、自分以外のものを呼び出して、それを操る事が出来るという時点でそれなりの可能性があるし……。ましてや物理干渉もできて、人間よりも何倍も力があるのだから、単純に労働力としても使える。……実際に『観察処分者』として、先生の雑用をこなしてきたのだから……。

 

 

「……わかりました」

「ん?何が?」

「アキくんはこう言いたいのですね?外から見た『試験召喚システム』の観点が、今回、アキくんが置かれた状況を明らかにするかもしれないと……」

 

 

 そこまで深く考えて言ったわけじゃないんだけど……。でも、姉さんの言った事は今まで考えた事もない、新鮮なものともいえる。僕は今まで、文月学園の内側しか見ていなかった。僕を襲った偶然の『事故』……。もしかしたらそれは偶然起こった物ではなく、文月学園の外側から齎されたものであるかもしれない。そして、それが分かれば……。この『腕輪』の呪いを解く方法も見つかるかも……!

 

 

「……姉さんは明日から、文月学園の外部、スポンサー企業や文月学園の関連性のある場所について、少し調べてみる事にします。……場合によっては、アメリカ(むこう)に戻らないといけないかもしれませんが……」

「……ありがとう、姉さん」

「礼には及びません……。姉さんもアキくんには、もう辛い思いはして欲しくないのですから……」

 

 

 そして、おやすみなさいと言い残し、姉さんは部屋を出て行った。……また1人になった部屋。僕はベッドに横になると、また今後の事を考える。

 考えなければならない事は色々ある。最善を尽くすには、そもそも何が最善なのかも未だわかっていない状況ではあるけれど。それでも、少しずつ前に進んでいる。進んでいる筈だ。

 暫く考えていたが、徐々に睡魔が襲ってくる。最初は睡魔に逆らっていたが、少しずつ頭が浸食されてくる……。その睡魔に負けそうになる前に、明久はこう思う……。――いつしか、彼が自然に考えるようになってしまっている事を……、

 

 

(……また……、ちゃんと、『明日』が来ますように……)

 

 

 

 

 




この話は、最後ににじファンで投稿しようとしていた閑話です。(強引に最終回にしようとして、結局投稿しなかった話でもあります)

もう少し掘り下げたい気はするのですが、物語より脱線しすぎてしまうので省略します(別な機会に書いてみたい気もしますが……)

……そのせいで若干強引に話を終わらせている点は、申し訳御座いませんm(__)m

次回より『清涼祭編』に入ります。
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