以下の問いに答えなさい。
『バルト三国と呼ばれる国名を全て挙げなさい』
姫路瑞希の答え
『リトアニア エストニア ラトビア』
教師のコメント
そのとおりです。
土屋康太の答え
『アジア ヨーロッパ 浦安』
教師のコメント
土屋君にとっての国の定義が気になります。
吉井明久の答え
『魏 呉 蜀』
教師のコメント
それは三国志です。吉井君にとっての国の定義も気になります。
須川亮の答え
『香川 徳島 愛媛 高知』
教師のコメント
正解不正解の前に、数が合っていないことに違和感を覚えましょう。
「それにしても、『召喚大会』の手伝いか……」
「何だ、明久。不満なのか?」
学園長に呼ばれているという事で、勉強させられている他のFクラスメンバーを置いて教室を出てきた僕に、隣にいた雄二が話しかけてくる。
「ん、不満って訳じゃないけどね……。ただ、折角の清涼祭なんだから喫茶店なり何なりで少しでも設備改善を目指した方がいいんじゃないかって思ったんだけど……」
「……それこそ愚問だな。さっき須川にも言ったが、今のFクラスの設備で接客業なんか出来るわけないだろ。それに、その『召喚大会』を成功させる事で、Fクラスの設備を1ランク上げるとババァも言ってたしな」
と、雄二が僕の意見に苦言を言う。……まあ僕自身、別に設備がどうとか気にしてるわけじゃないんだけどね……、姫路さんもAクラスにいることだし……。そういえば、雄二はさっき学園長に呼ばれたと言っていたっけ。
「ったく……、用があるんだったらさっき呼び出した時に言えってんだ、あのババァ……」
「まあまあ……、ん?誰かいるのかな……?」
そうやって話している内に、新校舎の一角にある学園長室の前まで来ると、扉の向こうより何やら声が聞こえる。
『……賞品の……として隠し……』
『……こそ……勝手に……如月ハイランドに……』
この声……、これは……もしかして……、
「どうした、明久」
「えーと、中で話し声が聞こえるんだけど……」
「そうか。つまり中には学園長がいるというわけだな。無駄足にならなくて何よりだ。わざわざ向こうが呼びつけたんだから遠慮する事はない。さっさと中に入るぞ」
雄二はそう言いノックしたあと、返事を待たずに、すぐにドアを開ける。
「失礼しまーす!」
……ま、いっか。雄二の言うとおり、学園長が僕らを呼んだんだし、取り込み中かどうかは向こうが判断するだろう……。そして思った通り、学園長と一緒にいたのは教頭の竹原先生のようだし。
「……本当に失礼なガキどもだねぇ。普通はノックを待つもんだよ」
「やれやれ。取り込み中だというのに、とんだ来客ですね。これでは話を続ける事も……まさか、貴女の差し金ですか?」
眼鏡を弄りながら学園長を睨む竹原教頭を見ながら考える。今までの『繰り返し』の中で、この人がまともな事をしてくれた記憶が無い。僕が先生たちの雑用を進んでするようになった後も、この人とは接触する事もなかったと思うし。むしろ、会ってもイヤミを言われたりして、僕みたいな人は『学園の恥』くらいにしか認識がないんだろうな。……鋭い目つきとクールな態度で一部の女子生徒からは人気が高いようだけど……。
「馬鹿を言わないでおくれ。どうしてこのアタシがそんなセコイ手を使わなきゃならないのさ?負い目があるという訳でもないのに」
「……それはどうだか。学園長は隠し事がお得意のようですから」
残念ながら、やっぱり今回もそれは変わらないらしい……。隠しカメラの件も証拠は見つからなくとも、今までの記憶ではこの人がいろいろとやってくれたし……。
「……アンタにそんな事は言われたくないね。そっちこそアタシに隠れていろいろやってるんじゃないのかい?」
「……何を言っているのやら。まあ、いいです。そこまで言うならこの場はそういう事にしておきましょう。それでは失礼させて頂きます」
踵を返して時チラリと僕らに目をやった後、学園長室を出ていった。
「……全く喰えない男だ……。さて、ガキども待たせたね」
「さっき呼び出した時に一度に話していればよかったんだがな」
「口の減らないガキだね。まあいい、呼び出したのはこの件だよ」
そう言って学園長はある紙を僕らに手渡してきた。何々……、
「『召喚大会』の案内……ですか」
「…………おいババァ。さっき俺に見せたものと何が違うんだ……?」
「全く同じものさね。さっき吉井がいれば説明も一度で済んだんだけどねぇ」
「……つまり、俺は無駄足をさせられたと?」
「何か問題でもあるさね?」
……隣で雄二が「コロス……」とか言ってるのは気にしないでおこう。
「コレを僕達に見せるっていう事は……?」
「ああ、アンタら二人もこの『召喚大会』に出場してもらうよ」
三人一組でチームを組み2対2のダブルバトルか……。三人のうちの二人を選んでトーナメント方式に勝ち抜くシステムらしい。……そして賞品が『白金の腕輪』……。
「……雄二から聞いたのは『召喚大会』の手伝いという事でしたけど……」
「もちろん、それもしてもらうよ。特に、召喚獣に興味を持った1年に先行して召喚を体験してもらうというイベントもあるからね。大会と併せてそちらも注目されているから失敗できないんだよ……」
前回のエキシビジョンゲームの影響か、現在、文月学園中で『試召戦争』が結構頻繁に行われているようだ……。それは2学年だけでなく受験勉強で忙しいはずの3学年もである。つい先日、3-Dが3-Cを倒し設備が入れ替わったということが文月新聞に載っていた事は記憶に新しい。そして、1学年も来年のクラス分けを待たずして召喚獣を見たいという声が広がっていて、それは対外的にも注目を集めているようだ。
「……その風潮を作った俺達に手伝いを任せる、というのはわからなくもないが、大会に出場しろというのは何か理由があるのか?」
今聞いた話だと、大会の手伝いは結構大変そうだし、それだったらそれに集中したほうがいいと僕も思う。
ましてや他のFクラスの、特にFFF団の連中がどう暴走するかもわからないし……。
「おや?吉井の腕輪を解除するにはより多く召喚獣と戦える『召喚大会』は都合のいいものだと思ってたんだが……。ましてや学年を越えて戦える機会ってのはそうないと思うけどねぇ」
「それは……確かに学園長の言うとおりですけど……」
何か釈然としないけど、学園長の言う通りでもあるので納得しようとしていた僕に被せるように雄二が遮ると、
「話をすり替えるな、ババァ。俺が聞いてるのは、出場しなければならない『理由』だ。何かあるんだろ?俺達が出場して、そして優勝しなければならない『理由』が!」
「……流石は神童と呼ばれていただけはあるね。頭の回転はまずまずじゃないか」
ん?何?他に理由があるの?クエスチョンマークが頭に浮かび、僕は雄二に小声で聞いてみた。
「え?つまりどういう事?」
「お前にもわかるように言えば、ババァには俺達に隠し事があるってことだ」
……隠し事……?ま、まさか……!
「……白金の腕輪が実は直ってないから僕達、低点数者に優勝しろって言うんじゃないでしょうね……?」
「それは流石に無いさね。この間も言った通り、腕輪の不具合は直っているよ。……そのパンフレットにも書いてあるだろう。優勝賞品について、ね」
優勝賞品?『白金の腕輪』だけじゃないのか……?
「……学校から贈られる正賞が、賞状とトロフィーに『白金の腕輪』で、副賞が『如月ハイランドプレオープンプレミアムペアチケット』、ねえ……」
「如月ハイランド……だと?」
あれ?なんか雄二が反応してる。まだ何か気になる事があるのかな?
「そうさね。ただこの副賞のペアチケットには最近ちょっと良からぬ噂を聞いてね。できれば回収したいのさ。吉井には前に少し話したが、教頭の竹原が如月グループと進めた正式なものだからね……」
「良からぬ噂って……?」
……なんか前にも聞いた事のあるフレーズだけど、とも思ったけど一応聞いてみる。
「如月グループは如月ハイランドに一つのジンクスを作ろうとしているのさ。『ここを訪れたカップルは必ず幸せになれる』っていうジンクスをね……。それで、そのジンクスを作る為に、プレミアムチケットを使ってやって来たカップルを例え強引な手を使っても結婚までコーディネートするつもりなのさ」
「な、なんだと!?」
突然大声を張り上げる雄二。普段飄々としてる雄二がこんなに狼狽えるなんてめずらしい。
「ど、どうしたの、雄二?多分霧島さんと何か約束でもしたんだろうけどそんなの事情を話せば……」
「それとこれとは話が別だ!クソッ、結婚だと!?このままでは俺は……!」
ブツブツと自分の世界に入ってしまった雄二。……一体霧島さんとどんな約束をしたんだろう……。
「ま、そんな訳で本人の意思を無視して、ウチの可愛い生徒の将来を決定しようって計画が気に入らないのさ。こんな事おいそれと他の生徒にも話せる問題じゃないしね。ある程度こちらと面識があるアンタ達くらいにしかこんな事頼めないんだよ」
「なるほど……。でもそれだったら尚更僕達だけに頼む事はないと思いますけど……?事情を聞く限り絶対勝たないと不味いみたいですし、僕達だって勝ち抜ける保証は何処にもないんですよ?」
「随分弱気じゃないか。Aクラスに勝った史上最強のFクラスのエースたるアンタの言葉とは思えないねぇ」
…………やれやれ、やっぱり何か勘違いされているみたいだ……。仕方がない……。
「学園長、僕の『繰り返し』の条件……。覚えていますか……?」
「当たり前さね。だから言ってるんじゃないか。今回のように学年を越えて召喚獣を戦わせる機会はないとね……。アンタは少しでも腕輪を持っている生徒と戦って勝たないといけないんじゃないのかい?」
「……ですけど、腕輪を持っている召喚獣に勝つ事は簡単ではありません。現にAクラスの佐藤さんとの戦いでは一歩間違えれば召喚獣のフィードバックで『繰り返し』ていたかもしれなかったし……」
今回の件で、文月学園で召喚獣の操作に関する僕の評判が一つの方向へ収束し始めている気がする……。まあ、試召戦争を勝ち上がる為、Bクラス戦のようにわざとそう仕向けていた、というのもあるけれど……。でも……僕は、無敵じゃない。確かに今までは僕を侮ってくれて隙をつく事ができたり、僕の事情から誰よりも召喚獣を上手く操れる自信はある。しかし、僕が本気で戦う時、つまり僕と召喚獣のフィードバックを最大にした時に万が一攻撃を受けてしまったりしたら全てが終わりだ。
「…………そうだったね。ちょっとこちらも焦っていたみたいだね。すまなかった」
「だが、何故そうまでして俺達に拘わる?面識云々いうのならそれこそ翔子達でもいいと思うが?」
いつの間にか正気に戻った雄二がそう学園長に話す。うん、それは僕も気になっていた。
「これは単純にスポンサーの関連さ。アンタ達の試召戦争で火がついたものだからね……。Fクラスであるアンタらに出来れば勝って欲しいのさ……」
…………やれやれ、この人は……。
「おいババァ!完全にテメエの都合じゃねぇか!?」
「そうさね。こちらも運営できてなんぼなんだ。スポンサーによく思われていた方が都合がいいんだよ!今後の為にもね……」
「ふん……、まあいい、やれるだけはやってやる……。コイツの腕輪の件もあるしな……。じゃあいくぞ、明久!何時までもこんなところにいられるか!」
「………………待ちな」
僕を促し、出ていこうとする雄二を学園長が止める。
「なんだ、ババァ?まだ、何か用事があるのか?」
「これは言うべきかどうか迷っていたが……、まだ不確定な要素が強いからかえって混乱を招くとふんで、黙っていようとも思ったけど……。やっぱり、最初にアンタ達に話しておくとしよう……。だが、他のクラスの連中に話すかどうかはアンタで考えな……」
「それって……、霧島さんや、勇人達に、って事ですよね……?」
「それは話を聞いた時点でアンタに判断は任せるよ……。さっきも言った通り、まだこちらも把握しきれていないという事もあるから、あまりまわりに言うのはオススメしないけどね……。ただ、これだけは言っておくよ……。召喚獣を操る腕輪はこの『白金の腕輪』だけじゃない。そして……この学園の生徒の数名はこれとは違う『腕輪』を持っている、という事をね……」
「「な、なんだって(だと)!?」」
『白金の腕輪』以外の腕輪だって!?そんな事、聞いたことないぞ!?
「ちょ、ちょっと待て、ババァ!?そんなモン作れるのはアンタ以外にいるのか!?」
「……アタシもそう思っていたんだけどね。それに吉井の様子を見る限り、アンタも知らなかったようだね……。まあ、余計な混乱を生むだけだと思ったから、ハッキリするまでは伏せておこうと思ってたんだけどねぇ……」
他の腕輪の存在……?それは……、僕の腕輪と関係があるものなのか……?僕が忘れているだけで……見たことがある、とか……?もしくは、今まで僕が知らなかっただけで……存在はしていたとか……?ダメだ……考えても、わからない……。
「恐らくは竹原だとは思うさね……。アタシが最初にソレを確認したのはあのオリエンテーリング大会さ……。誰が持っているのかわからないが……、2-A、2-Cの誰か三人は持っているはずだよ……」
「……それで、僕達に……」
今言った事が本当なら……、確かにおいそれと他の人達に話せないだろう……。腕輪、か……。
「それに最初に言った通り、如月グループの件もある。あれも竹原が進めた企画だからね……。何を企んでいるかわからないが、放置できないとアタシは踏んでいる」
「それは……そうだろうな。クソッ、厄介な事になってきやがったな……」
雄二の言った通り、本当にややこしい事になってきたな……。僕がこんな事になった原因である『白金の腕輪』……。今回はいつも以上に注意しなければならないらしい……。
「……とりあえず、信頼できるメンバーにはこの事は伝えます。特に、AクラスとCクラスには……」
「アンタが信頼しているというなら、任せるよ……。依頼しておいてなんだが……、くれぐれも気を付けな」
「……わかりました」
そう締めくくり、僕と雄二は学園長室を出て行った。
……まさか2年近く更新が空くとは思いませんでした。
忙しかったという事もありますが、一番の理由はパソコンが、外付けハードディスクともに壊れて、書き留めた内容やストーリー構想まで全て消えた時にやる気が無くなったという事が最大の理由です。
久しぶりに覗いてみたら、未だに完結を楽しみにしてくれている人もいるみたいですので、色々思い出しながら今回更新してみました。
これからもコンスタンスに更新できるかはわかりませんが、ちょっとずつやっていきたいと思います。
文章表現、訂正致しました。(2017.12.1)