以下の意味を持つことわざを答えなさい。
(1)得意なことでも失敗してしまうこと
(2)悪いことがあったうえに、更に悪いことが起きる喩え
姫路瑞希の答え
(1)弘法も筆の誤り
(2)泣きっ面に蜂
教師のコメント
正解です。他にも(1)なら「河童の川流れ」や「猿も木から落ちる」、(2)なら「踏んだり蹴ったり」や「弱り目に祟り目」などがありますね。
土屋康太の答え
(1)弘法の川流れ
教師のコメント
シュールな光景ですね。
吉井明久の答え
(2)泣きっ面に蜂(僕にも「泣きっ面蹴ったり」なんて答えた時期がありました……)
教師のコメント
君の名前をみただけで×をつけた先生を許してください。しかし流石にそんな鬼のような答えを書く生徒はいないと思いますが……。
須川亮の答え
(2)泣きっ面蹴ったり
教師のコメント
……あなたは鬼です。
「す、すごいわね?一人で同時に3人も相手にして、それも全員ほぼ一撃で倒すなんて……」
「ん?……ああ、慣れれば誰でも出来るだろうし、別にどうってことはないよ……」
「……自分より点数も高い相手だったのだから、慣れとかっていうレベルじゃないと思うけど?」
さっき見た光景が忘れられず話しかけたものの、吉井君の回答は実にあっさりとしたもので……、そこには謙遜しているという感じはせず、本当になんでもないと思っているようだった。
「……召喚獣には、人間の人体と同じように急所がある……。そこを突けば、案外簡単に倒せるものなんだ……」
あまりに点数に差がつきすぎている時は難しいかもしれないけど……。ポツリとそんな事を呟く吉井君。
「だから、召喚獣の操作に慣れればこんな事、すぐにできるようになるよ……」
「……召喚獣にそんな弱点があるなんて……よく気付いたわね……。でもいいの?そんなことをアタシに教えちゃって……」
そう言うと、吉井君は肩をすくませて、
「僕の召喚獣は観察処分者仕様だからね……。フィードバックを受ける際に気が付いたんだ……。それに、別に隠すことじゃないでしょ?こんな事……」
「そういう事じゃなくて……Aクラスのアタシに……その、教えちゃっていいの?」
「……?いいんじゃないの?」
「……もう、いいわ」
あっけらかんとした吉井君の様子に私はハァ……、と溜息をつく。だけど、吉井君と話していてわかったことがある。彼には、打算のようなものが無い……。だからありのままで、自然体で私と話しているのだろう。……彼といると、なんというか優等生として振る舞っている事が疑問に思えてくる。
「Aクラスについたようだね……。よっと……」
吉井君の召喚獣が持っていたプリント背負い直し、Aクラスの教室に入ると教壇の上にそれをゴソッと置く。
「おや?君は……吉井君?一体どうしたんだい?」
そこへ教室で既に自習していた学年次席でもある久保君が立ち上がり、そう声をかけてくる。
「ああ、久保君。ちょっと観察処分者の仕事をね……」
うーん、と伸びをしている吉井君を見て、久保君は、
「……大変だね、観察処分者というのは……」
「まあね……。でも、それは自分の自業自得だからいいんだ……。さて、試召戦争も始まってるし戻らないとな……」
「ん?試召戦争中というと……吉井君はDかFクラスなのかい?」
「うん、あまりやる気はないんだけど……。とりあえず教室に戻らないと迷惑をかけちゃうからさ……」
さっきもそれで木下さん達に迷惑をかけちゃったしね、と吉井君が零す。
「さっきも気になったんだけど……。今回の試召戦争はFクラスから仕掛けたのよね?それに、さっきもあんなに上手く召喚獣も扱えるのに、吉井君はなんで試召戦争に消極的なのかしら?」
召喚獣の操作に自信がないのであればわかる。しかし自分より点数が高い相手を、それも3人も同時に相手をして勝つ事ができる腕を持っているのに、どうして吉井君は試召戦争にやる気が無いのかしら……?
「僕としては、振分試験が済んだばかりで努力もしていないFクラスが他のクラスに試召戦争を仕掛けて設備を入れ替えようという事は違うって思うんだ……。正直な所、雄二が指揮を執るという事でなければ僕は協力もするつもりも関わる気もないんだけど……」
……へぇ、吉井君はそういう風に考えているのね……。でも、と私は思う。そう思うなら、なんで彼はFクラスにいるんだろう、と……。彼の口振りでは、努力しようとしない人達が努力している人を陥れるというのは我慢できない、という風にも聞こえる……。正直、1年の時の吉井君の噂は最悪なものだったけど……、少なくとも、今の彼は、それらの噂とまるで無関係の人物のように思える。……そもそも、自分が努力していなければ、そうでなければそんな考えになる筈ないもの……。
「……雄二が指揮をとってるの?」
そんな時、私達の話を聞いてやってきた、Aクラスの代表でもある霧島さんが話に加わってくる。
「霧島さん?うん……、雄二はFクラスの代表だからね……」
「あれ?代表、坂本君の事知ってるの?」
「……うん、雄二は幼馴染だから……」
それを聞いて私は、あら、と思った。代表は1年の時から、その、同姓愛者じゃないかっていう噂もあったから……、こうやって男の子の名前を聞いて反応を示すという事に新鮮さを感じる……。
「……しかし、FクラスでDクラスを倒すことができるのかい?振分試験直後だし、点数差から見ても非常に厳しいと思うのだが……」
坂本君が代表と幼馴染だったというのも驚いたけど、私もそう感じている……。仮に、いくら吉井君のような操作技術がFクラスにあったとしても、Dクラス全員を相手には流石に戦えないだろうと思う……。
そう思う私達を尻目に、吉井君はこう続けた。
「……幼馴染の霧島さんは知ってると思うけど、雄二には統率力があるし、策略もあるからね……。多少の点数差だったら覆す力がある。……それに、Fクラスには姫路さんもいるから……」
「「えっ!?」」
姫路さんがFクラスと聞き、私と久保君の声が見事にハモる。あまり感情を表さない代表も、繭を潜め、怪訝そうな表情になっていた。
「……振分試験当日に熱を出しちゃったみたいでね……。途中退席して無得点扱いとなってしまったみたいなんだ……。だから、こう言っちゃなんだけど……、Dクラスには勝てると思う」
「Aクラスにいないと思ったら、そういう事だったの……」
「そうか…姫路さんはFクラスなのか……」
「……でも吉井、そんな事私たちに言ってもいいの……?」
私が先程気になって聞いてみた事を、代表が吉井君に尋ねる。代表の言うとおり、Fクラスの情報を私たちに話しちゃってもいいのかな……?
「……いいんじゃないかな?姫路さんがFクラスにいる事は今日にでもわかる筈だし、雄二はさらに試召戦争をするつもりみたいだしね……」
「……Dクラスの設備じゃ満足できないって事?」
設備目当てだったとしたら、とりあえずDクラスで我慢しておくべきだと思う。FクラスとDクラスの設備差はかなりの物だと思うし……、Cクラス以上になったら、いくら姫路さんがいたとしても、彼女だけで戦い抜くというのは難しいと思うから。
「いや、雄二は設備云々というよりも試召戦争で勝つという事が目的みたいだよ……?Fクラスの設備は確かに酷いと思うけど、正直、僕はどうでもいいと思っているし……。……雄二には戦争反対だと伝えたけれど、これからも試召戦争を起こす以上は、僕も最低限は協力するつもりだしね……」
「……ずいぶん坂本君を信頼しているみたいだね」
「……雄二は、普段は僕の幸せを許せないとか言ってる奴だけど……、『親友』だからね」
(ずいぶんと信頼しているのね)
私は学校では優等生という仮面を被っている為、本当の自分を知っているのは秀吉と両親だけ……。ここまで自分をさらけ出し、坂本君を信頼している吉井君の姿は、私には眩しく見える……。
「……うらやましいよ、坂本君が」
「そう?僕としては久保君達とも友達になりたいかな?……ただ、僕はFクラスだし……、Aクラスの皆とは釣り合わないよね……?」
「いや、友達にクラスは関係ないだろう?」
「……私も気にしない」
「そうね、アタシも別に気にしないわよ」
「……ありがとう」
吉井君が少し照れくさそうにそう言った時、学園全体にアナウンスが入る……。
『連絡致します、船越先生、船越先生』
「うん?呼び出しかな」
「……この声、何か嫌な予感が……」
「吉井君?どうしたの?」
何やら浮かない顔をしている吉井君が気になり、そう尋ねる私。しかし、その放送から、先程の続きが流される。
『吉井明久君が体育館裏で待ってます』
「「……は?」」
「……吉井はここにいる、この放送はおかしい」
吉井君を見ると無表情になっているし……、これは……!
『生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです』
「「「「…………」」」」
それを聞き、ここにいる全員が無言になる……。ふ……船越先生っていえば、婚期を逃して生徒たちに単位を盾に交際を迫っているって噂よね……。それって、かなりまずいんじゃあ……?
「……ゴメン、ちょっと行かなきゃならないところができた」
「……吉井君、僕も一緒に行くよ。君一人で行くのはあまりにも危険すぎる」
「……そうね、アタシも行くわ。女子がいれば船越先生も少し冷静に話を聞いてくれるだろうし……」
「……わたしは?」
「自習とはいえ代表まで席を外すのは不味いと思うから……、アタシ達が出ている間、皆を纏めていて貰えますか?」
「……わかった」
私の提案に、こくん、と頷いてくれる代表。さて、早く行かないと……!
「それでは行くとしよう、高橋先生、すみませんがちょっと席を外しても宜しいでしょうか?」
「長時間という訳にはいきませんが、事情もわかりましたしね、許可します」
久保君が高橋先生に許可をもらい、私も吉井君に向き直る。
「有難う御座います、それではいきましょう、吉井君」
「すみません高橋先生、長居をしてしまいました」
「いいのですよ吉井君、それよりご苦労様でした。休み時間も超過してしまってすみませんでしたね」
「いえ、それでは失礼します。……ありがとう、久保君、木下さん。よろしくね?」
「ああ、急ごう!」
「ええ!」
こうして、私達3人はAクラスを後にした……。
文章表現、訂正致しました。(2017.11.18)