藤丸立香の聖杯鯖になるTSオリ主   作:生き恥マラミュート

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何となく分かるよ。

いやいや、確かに僕は少しばかり眼が良いけどそういう話じゃないさ。

「ハッピーエンドを目指す」なんて言ってるけどただの建前だ。


キミ、本当は全部諦めてるだろ?

誰よりもマスターに親身に寄り添って、友人のように振る舞っている。にも関わらずだ。藤丸立香の救われる未来を全く信じちゃいない。


                『妖精王との邂逅』


ビビデバビデブーを高らかに

 

 

 

「暇だぁ!

……あーあ、私も行きたかったなぁローマ!」

 

 長い廊下に私の嘆きが響く。

 

 今日から藤丸立香とマシュ・キリエライトは特異点の修復、及びに聖杯の回収のため次なる時代へと赴く。

レイシフト先は一世紀のヨーロッパ、詳しく言うと地中海を制した大帝国である古代ローマ。カルデアはこのローマを観測し第二特異点とした。

 

 さて、今回も私は留守番だ。

 

 ため息をつきながら歩みを進める。

特に目的もなく、どこに向かっているというわけでもない。ただ、暇を持て余しているのでこうやって時間を潰している。

 

「歩けど歩けど真っ白で面白みが無い!あーやだやだ、本当にナンセンスだなカルデアは!」

 

 どこまでも無機質で質素。

強いて言うなら、廊下の端に時々置いてある観葉植物が唯一のアクセントと言えよう。

 そんなことを考えながら暫く歩いていると、長かった廊下も行き止まり。

大人しく来た道を引き返そうと、振り返る。

 

 「何たる奇跡か!!!!」

 

「ぎゃーー!?!?!?!?」

 

 ギョロ目 の キャスター があらわれた!

黒いローブに身を包んだ大男が絶叫し、立ちはだかっていた。わなわなと震えながら、何故か頬に涙が滝のようにつたっている。

その尋常でない形相に驚き、思わず尻もちをつく。

 

「おお、おおぉおおぉぉぉぉお……!!ハッ…!?これはいけない、高揚と歓喜のあまり言葉が詰まってしまった。お初にお目にかかります聖騎士よ、我が名をジル=ド=レェと申します。しかぁし!しかしです!!生前の私めがどれほど冒涜と供物を捧げど現れることの無かった貴方が!我が盟友プレラーティを魅せ続けた御伽噺の騎士が!更に更にジャンヌと同じ旗のもとに集ったのです!!!昂って狂乱してしまうのも仕方ありません。人理の崩壊、本来であれば愉快……、いや失敬。忌むべき事象なのですがこうも立て続けに続く神の加護が如き幸運、これはもはや宴と呼んで差し支えないのでは?!!」

 

 

 

 怖い。

 怖すぎる。

 

 明らかに、どう見ても不審者だ。

誰がこんなのを施設内に招き入れたのだ、カルデアの警備体制はどうなっている。

 

 ───いや待て、落ち着け。確か召喚されたサーヴァント達の中に彼も居た……ような気がする。

ならば、この大男も共に戦う仲間のはずだ。第一印象で判断してしまうのは早計と言える。まずは恐れることなく、こちらから何とかコミュニケーションを……!

 

 

 「まさに最高のCoooooool!!!!!!!!」

 

 

 

 唾がかかった。

 

 

 

「…………うん、聖剣起動」

 

 

 

 ええい、貴重な戦力が一つ減ってしまうのは残念だが致し方なし。なんか生理的に受け付けられない。

後処理は少し面倒くさいが、今の私なら幻術を使えばバレずに何とかなる。よぅし、構わずやってしまえー!

 

「おおお!その輝きも正し、くッ!?!?」

 

 聖剣の代わりに、彼の眼球を刺し貫いたのは二本指。

彼の背後に現れた聖女ジャンヌ・ダルクによる制裁。一体いつの間に背後を取っていたのだ、気配遮断でも持っているのだろうか。凄く痛そう。

 

「はっ!?この指の感触は……ッ!?ジャンヌ!!!!!??!ははは、生前も私の目玉がうっかり飛び出た時には星のような速さで大胆かつ豪快に指が突き刺さっ、たァッッ!?」

 

 手刀が入った。

 

「……ふぅ。えぇと、見苦しいものをお見せしてすいません。そ、それでは」

「お、おうとも」

 

 

 息を着き、こちらに気づいた彼女はぺこりと一礼。

私は完全に伸びきったギョロ目のキャスターが、聖女に引き摺られていくのをポカンと眺めていた。

 何だったんだ一体。

 ちなみに、ジャンヌ・ダルクには私と前回の特異点で出会った記憶は無い。サーヴァントは基本、前回の召喚の記録を持ち込めない。なので、今のが実質初対面。

 

 私?

 私はほら、まぁ。ね?

 

「あっ、いたいた」

 

 今度は随分と聞き慣れた声に安心する。

聞き慣れたとは言っても、出会ってまだ数日の関係だ。

 

「探したよ。こんなところで何してたの?」

「ん、ちょっと熱狂的なファンに絡まれててな」

「?」

「それよりも、お前はこんなとこで油売ってていいのか?もうすぐマシュとレイシフトだろ」

 

 隣にマシュの姿は無い。

 

「あー……、ちょっとアテーノにお願いがあって」

 

 私の問いに立香は頬を掻きながら困ったように答える。

ふむ、何やら言い辛そうな様子。

 

 ひとつ心当たりがある。

 

 マスターが恥じらいを持って、サーヴァントへ頼みに来たこの状況。そして特異点への出撃前、つまりは少しでも戦力を高めておきたい時間。マシュも居らず、私と二人。ここから自ずと答えは導き出せる。

 

「ままま魔力供給だ!!」

「……マリョクキョウキュウ?いや違うけど」

 

 違うのか。

 そもそも、立香は魔力供給の何たるかを知っていなかったな。マスターとしては知っておくべきなのだろうが、あと2年くらい後の方が……こう、良いのではないか。

 

 悶々と考えこむ私に立香が言葉を続ける。

 

「ここじゃなんだし、とりあえず俺の部屋で話さない?」

 

 ………本当に魔力供給じゃないだろうなコレ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 

「ドクターにも診てもらったんだ。魔術の治療で火傷自体は治ったんだけど、痕が残るらしくて」

 

 立香が袖を捲ると、腕に巻かれた包帯が露わになる。

 別に、何も不思議なことじゃない。戦場に身を置けば負傷は必然。敵は殺意を持って相対しているのだから、生きて帰れるだけで御の字だ。

 

 あぁ、でも。

 これはどうしてなかなか。

 

「……よいしょっと」

 

 シュルシュルと音を立て包帯が解かれ、黒ずんだ火傷の痕が一つ。

 ここまで来ると察しの悪い私でも、彼が何を頼もうとしているのか流石に分かってしまう。

 

「……いつ?」

「最後に黒いジャンヌと戦った時に掠っちゃって」

 

 反射的だった。こんなもの、聞いたところで無意味なのに。自分が全てを救える、だなんて傲慢になった覚えは無い。自分が呼ばれていれば、だなんて強欲になった覚えも無い。そもそも、私なんかが居合わせたところできっと何も変わらない。

 

「それで、お願いなんだけどさ。この傷痕消すことって出来ないかな?」

 

 私は上手く笑えているだろうか。

 

 

 

「お安い御用だとも」

 

 

 

 自分をなぞっているようで気持ちが悪くなった。

 

 誤魔化すように彼の手を握る。傷痕に人差し指で触れ詠唱を行えばたちまち腕に残った傷痕が消える。自分の手際の良さに辟易する。

 

「凄い…!」

「──勘違いはするなよ、あくまで"見せかけ”だからな。実際に治ってるってわけじゃないぜ?」

「おー……!ありがとう、助かったよ!」

 

 こんなことで感謝されたって嬉しくないな。

 

「ごめんね、急にお願いして」

「いいよ、どうせ暇だったしな。マシュに心配させたくないんだろ?」

「す、鋭い……」

 

 図星かよ。

 

「分かるさ、大切な人には強がりたくなるもんだ。ああ、ただ気をつけろよ?こういうのはバレた時が一番怖い。うん、いや冗談抜きで、マジで」

「もしかして経験あるの?」

 

 彼の顔を思い出す。

 

「………どうだかねぇ。さ、もう行った行った。あんまりマシュを待たせても怪しまれるだけだ」

 

 しっしと手を振り、 管制室へと急かす。

これでバレてしまったら元も子も無い。もしも、バレた時はそうだな。クーフーリンにでも幻術かけて囮にして逃げればいいか。

 

「今めっちゃ悪い顔してたよ」

「ハッハッハ、気のせいだ気のせい」

「いや絶対してたって」

 

 そんな軽口を交わしながら、立香は不要になった包帯を机へ置き、マイルームの扉へと歩を進める。私はベッドの縁へ座りそんな彼の背中をボーッと見つめる。

 

「あっ、そうだ」

 

 何か思い出したのか、こちらへと振り返る。

 

「アテーノも何か俺にして欲しいことがあったら遠慮なく言ってね」

「へぇ。何でもいいのか?」

「うーん、流石に俺に出来る範囲でお願い」

 

 お願いか。

 純真な立香のことだ。きっと助けられてばかりなのがもどかしい、とかそういう心が有るのだろう。この手のヤツは容赦したくない質だけども、今回はちょうどいいのがあったな。

 

「んじゃ早速ひとつ頼もうかな」

「今から!?」

「大丈夫だよ、時間は取らせないからな。……この前の夢の中のこと、他の奴らには秘密にしといてくれ」

 

 言葉と共に、口の前に人差し指を添える。

既に口外してしまっているのなら仕方がない。それならそれで別にやりようはある。ただ、私としては物事はなるべく穏便に済ませておきたい。

 

「それだけでいいの?」

「ん、とりあえずはな」

「OK、任せて!……っと、じゃあ行ってくるよ」

 

 

 

 藤丸立香は笑い、私へと手を振る。

 

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 マイルームの扉が閉じ、部屋に一人。

振り返した手を下げた瞬間、疲労感に襲われる。入室時にかけた幻術が部屋に作用しているかを確認し、ベッドにうつ伏せに倒れ込む。

 

「はぁぁぁぁぁ………」

 

 ため息が漏れる。

 

「いや怪我一つで動揺し過ぎだろ~……」

 

 自分だって戦場で怪我を負ったことは何度もある。それどころか無傷で帰還したことの方が圧倒的に少ない。この腕も、この脚も、この顔も。幻術に覆われたこの体の全てがその証拠だ。

 他人が傷つくのも何度だって見た。目の前で人が焼かれるのを見た、魔獣に苗床にされた人間を見た。

 

 そんな凄惨な光景に慣れてしまっていた筈だ。

 それが、たかが一人に残った小さな傷痕でこの動揺。

 

「馬鹿らしいなぁもう」

 

 どこかこんな自分が懐かしく感じる。

彼と出会い、使命の意味を知らず、がむしゃらに駆け抜けたあの頃の感情。

そういえば、霊基再臨とやらは回数を重ねるごとに力を増し、全盛期へと近づくのだとダ・ヴィンチちゃんが言っていた。

 

 立ち上がり鏡を見る。

 

「この霊基に引っ張られてるのか」

 

 艶やかな金の髪に白い肌。聖剣が裂いた頬の傷。

 胸部に取り付けた、輝く神体装甲の"残骸”

 

 

 

 

 

 

 なら、この次は…………?

 

 

 

 

 







絆2 「私が来たからには、もちろん。目指すのはハッピーエンドだ!なんせ世界を救うほどの献身だからな、それ相応の結末じゃないと割に合わないだろう?」


◇◇◇◇

お気に入り、感想、評価ありがとうございます。とても励みになります。
「更新予定日を明記してほしい」とのコメントを頂いたのですが、ストックもなく書きあがった時点での即投稿という形ですので、今後も不定期更新になってしまうと思います。申し訳ありません。最低でも月1ペースを続けていきたいですね。
さて、それはそうと。いよいよ2部7章開幕ですね。ンンン、拙僧も昂っておりますれば。
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