藤丸立香の聖杯鯖になるTSオリ主   作:生き恥マラミュート

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良いねぇ、最高だ!
英雄を名乗っちゃいるがありゃ生粋の戦士だ。
犠牲を厭わず戦いを続け、死した今尚試練の最中と来た。
オリュンポスの神々ってのは愚か極まりないがアイツは例外と言っていい。

……ところでその右腕は幾らだ?良い値で買おう。

          『武器商人と商談(不成立)』


噛み砕いて、犬。

 

 

 

 

「はいはいストップだ。お前らがやったら流石にシャレにならん。まぁ、害獣同士の対決とかポケ○ンみたいで面白そうだけど今じゃない」

 

「キュー……」

「ワゥン!!?」

 

(聖杯ってポ○モンの知識与えるんだ……)

 

 牙を剥いた二匹がぶつかり合う直前。間一髪で彼らの影から伸びた触手が夫々を縛り上げ宙に吊るした。

アテーノはフォウくんが落ち着きを取り戻したことを確認すると触手を解いた。

そのまま落下するかと思われたが、そんなことは無く。アテーノが抱き上げ腕の中に収める。

抱かれるフォウくんにも抵抗する素振りはなく、寧ろリラックスしているように見える。

 

「あぁ~~可愛い~~。モッフモフだ~!」

 

 ちなみに、アテーノの頭に齧り付いていた犬はまだ触手に宙ずりにされたまま、目の前の光景を眺めている。

……主人が他人のペットと仲睦まじく戯れているのを、縛られたまま傍観することしか叶わないこの状況、とても不憫だ。

 

「フォウ、フォフォキュー?」

(特別意訳: ねぇ、今どんな気持ち?)

 

「ワギャウ………ッッッッ!!!!!」

 

(((修羅場……!!)))

 

 火花を散らす小動物、戦いの火蓋が再び落とされるのも時間の問題。

だというのに、原因であるアテーノは気づかない。

いや気づけ、早く気づけ。

もはや収集がつかない。

 

「あ~~、うちの馬鹿犬と交換してほしい~!」

「ワゥ………ゥ……」

「フォウ!!」(泣いちゃった!!)

 

 無慈悲、あまりにも無慈悲。

トドメとしては十分すぎる言葉の刃が、仔犬を貫いた。

つい先程まではジタバタと脱出するため藻掻いていたのだが、主人の言葉を受けて抵抗も止んだ。死んだかのようにぐったりと倒れている。

 

「肉球もぷにぷにだ~~………ん?何でこいつ口開けたまま気絶してるんだ?」

「フォウフォ、フォウ」(アンタのせいだよ)

  

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 その後、フォウくんはマシュの格納スペースへと戻った。……あの盾の中ってどうなってるの?

アテーノは名残惜しそうにしていたが、フォウくんはカルデアに住み着いているのだし、帰ってから存分にモフればいい。あと妙に懐いてるし。

 

 アテーノの使い魔と思われる犬擬き。こちらは無事触手から解放、死に体だったが飼い主が喉元を撫でることで見事復活。

 

 休憩時間も終わり、再びガリアへと向かうため気持ちを切り替え……ようとしたところで、アテーノから声をかけられる。

 

「立香、はいこれ」

 

 そう言って差し出された彼女の右手には

 

「ワゥ!」

 

 犬。

 

「……え?」

「いや馬貸すって言ったろ?ほら」

 

 犬。

 

「いやでもこれ……」

「犬だな」

「だよね。俺がおかしいわけじゃないよね」

 

 犬。

 

「乗れたら何でもいいだろ。ほれ、見てみろ足も6本で馬より安定するぞ多分。ほれほれ」

「ちょ、肉球押し付けないで」

「マシュもほれほれ」

「むぎゅ」

「そこのローマ兵Aもほれほれ」

「中々ですね、実家の愛犬には及びませんが」

「誰!?」

 

 何度目を擦って見ても、犬は犬。断じて馬じゃない。

まず、このサイズの仔犬に乗れというのが無理な話だ。

フォウくんと同じくらいの大きさ、誰が自分から好き好んで犬を潰すのか。

それにほら、犬も嫌がって………ない。それどころか主人の命令にブンブンとしっぽを振っている。

 

「アテーノさんに……犬……。し、信じられません。まさか、あの伝説も……!」

「知っているのかマシュ……!?」

 

 ブツブツと呟きながら考え込んでいたマシュだったが、何か思い当たるものがあったのかハッと首を上げる。

 

「はい。おそらくですが、イギリスに伝わる『ブラックドッグ』かと思われます」

 

 マシュの話によると、ブラックドッグはイギリスに伝わる犬の姿をした妖精らしい。

しかし、ブラックドッグについての最も古い記述、加えブラックドッグを討伐したとされるアテーノの伝説は14世紀イングランドの伝承。

 

 

 不可解な点が一つ。その伝説は目の前にいる彼女の出典であるギリシャの『英雄賛歌』という名のアテーノ伝説とは全くの別物ということ。

 

 

「あの……これは推測なのですが、アテーノさんは複数の伝承が基盤になっているのでしょうか」

 

 

 マシュが導き出した結論は『英雄アテーノは多くの伝説が混ぜ合わさった霊基である』

本来、英霊とは人物の一側面を切り取った"イメージ”に他ならない。

カルデアからは例として、ジル・ド・レェが挙げられる。

セイバーとして現界した彼は元帥として軍を指揮した姿。一方、キャスターとして現界したのは狂気に染まり、青髭として恐れられた殺人鬼の姿。

別人であり同一人物だ。

 

 物語の種類だけ読者が抱く理想像があり、それこそがサーヴァント一人一人の核と言える。

 

 他英雄に比べ残る逸話が多いからか、はたまた他に要因があるのか。

如何なる理由かは分からないが、複数の伝説を掛け合わせた存在が彼女なのではないかと、マシュは述べた。

 

「……な、長々と語ってしまいましたが結局のところ、御本人に確認した方が早いと思います。すいません、つい熱くなって……」

「いやいや面白かったし、早口で喋るマシュも可愛くて大満足だとも。なぁ立香?」

「大変勉強になりました」

「そ、それなら良いのですが。アテーノさんはご自身の記憶と伝承に何かしらの食い違いを感じたりしますか?」

 

 マシュの問いに、アテーノは腕を組んで唸る。

 

「んーーー、そうだな。まずこの犬は間違いなく、私と生前から付き合いがある。ただ『英雄賛歌』………だっけ、それにコイツは載って無いんだろ?」

 

 走り回っていた犬の首根っこを掴み、再び持ち上げそう答える。

 

「だけど胸の鎧、アイギス(神体結界)な。これは『英雄賛歌』でもしっかり私の武装ってことになってる。──まぁ、だから多分マシュの言う通りだろうな!」

 

 白銀の胸部装甲が陽光を受けて輝く。

端正な顔に浮かべるのは、いつもと変わらないヘラヘラとした笑み。

彼女の表情が、どこか寂しそうに見えたのはきっと俺の気の所為だろう。

 

「そう言えば、さっきは何でその子に幻術使ってたの?」

 

「ん、ああ。コイツ人間には見えないんだよ。()()()()()()()()()()()()()()()。だから私が上書きする必要がある。頭齧ってたの分からなかっただろ?」 

 

「なんだ、てっきり奇行に走っただけ(いつもの)かと思ってたよ。……あれ?でもネロは気づいてたよ」

「例外もいるのさ。神様に近い奴ほど、濃くハッキリと感じられる。純人間のネロが見えたのは………そうだな、私に近いからかな」

 

 後方で馬に乗る皇帝と顔を見比べる。

二人とも美人だけど似てる……?似てるのか……?

 

「分かった、金髪繋がりだ!」

「マスター……」

「いや、容姿なわけあるか。在り方の話だよ、中身がってこと。……お前はいつまで仔犬やってんだよ。ほらほら、もう可愛い子ぶるのは止めろ」

「ワギャギヮ?ギャガウ!!」

 

 マシュからの呆れ声に堪える。少しばかり単純過ぎる自分の思考回路が恥ずかしい。

アテーノが握る手を離すと、犬は華麗に一回転しながら着地。発破をかけるように頭をポンポンと叩かれる。

 

 「グギャガォァァァァヴヴヴ!!!!」

 

「うわ!びっくりした、急にそんな……鳴き声………でっ………!?……お、俺の目がおかしいのこれ……?」

「いえ……わ、私にも見えています。これもアテーノさんの幻術でしょうか……?」

「そんなホイホイと使わないさ!そ、れ、に、真摯で誠実な私は無意味に人を騙すなんてとてもとても……!」

 

  主人の声に応えるように、犬擬きは絶叫にも似た遠吠えをあげる。

悍ましい咆哮が森に響く。

耳を塞ぐ俺たちの視界に映ったのは、全身の毛を逆立てながら巨大化する化け物の姿だった。

小動物の愛らしさはどこへやら。

爪は大地に食い込むように獰猛に、瞳は瘴気を増し禍々しく、体躯は馬より二回りは大きくなった。

見渡さなければ全身を確認することは出来ない。

 

「我ながら中々のコーティング幻術!いやー、誰も発狂してないみたいで良かった良かった!!さぁマイマスター、乗っていいぞ!」

「乗れません!!」

「そ、そうです!代わりに私が背負います、さぁどうぞ!」

「よろしくアテーノ!」

「マスター!?」

 

 僅かながら、俺にも男としての矜持はある。

後輩、更に女の子に大衆の面前でおんぶされるのは流石に恥ずかしい。

緊急時には躊躇っている場合じゃないとしても、今はまだ面子を保っておきたい。

 

 「承った!」とアテーノが指を鳴らす。

その音を合図に、いつの間にか背後を取っていた獣は礼装の襟を加え、俺を空中へと放つ。

いや何で?

空中で疑問を浮かべるも時すでに遅し。

放り出された体は重力に従い、自由落下を始める。

終わった。

と、思ったが獣のモッフモフの背中が俺を受け止め、結果的に騎乗する形となった。

 

「もうちょっと他に乗せ方無かったの!?」

「えー、カッコイイじゃん。なぁ?」

「ワゥワゥ」

 

 頷くペットと飼い主。

どうやら打ち合わせ済みだったらしい。

 

「魔獣かと思い来てみれば、プリテンダーの犬ではないか。うむ、良いな……!もふもふで、デカくて、厳かで……実にローマだ!!──と、フジマルにマシュ。そろそろ出発するぞ」

 

 ネロの号令を皮切りに、再びガリアへの進軍が始まった。

 

 

 

……

………

 

 

 そこからの道中は驚くほどスムーズだった。

 

 

「敵だな、前方50メートルに魔獣含めた20人ほどの小部隊。右方向にも3人斥候兵が居るけどそっちは既に触手で縛ってる。立香は上から簡易召喚と指揮の準備を頼む」

「わかった!」

 

「射ッッ!……ふぅ。とりあえず今の投擲でキメラとゴーレムは仕留めた。悪い、私は取りこぼした魔獣を狩るから立香とマシュは兵士を頼む。そっちの方向30メートル先、槍兵と剣士が5割ずつだ」

「はい!マスター、指示を!」

 

「ただいま。第三陣は壊滅、ついでに戦線離脱した敵兵を2人捕まえてきた。どうする、連合軍についての情報を吐かせるか?」

「助かるぞ。こちらで拘束しておこう、後ろの馬車にいる兵士に引き渡してくれ」

 

 

 

 通信が繋がらないのは初めてのことで俺もマシュも不安だった。

それまで、敵襲のタイミングや規模は管制室からの通信で把握していたため、苦戦は必至だろうと。

だけど、そんな心配も彼女のおかげで杞憂に終わった。

 

「お、私の可愛い顔に何か付いてるか?」

「ううん、別に。綺麗なままだよ」

「……そこは突っ込めばいいんだよ、恥ずかしい」

 

 アテーノは顔を赤らめて頬を掻く。

その表情は同年代の少女にしか見えない。

 

「ったく、調子狂うなぁ。──もう大きな敵も無さそうだし、ガリアに到着したら私はカルデアに戻るよ。二人とも無理しない程度に頑張りな」

「うん、ありがとう!今回も助かったよ」

「本当に助かりました。まさか索敵までこなしてくださるとは!」

「え、その為に呼ばれたんだろ?」

 

 当たり前じゃないのか、と言わんばかりに首を傾げ疑問を態度に表すアテーノ。

平然と言ってのけるがサーヴァント全員が出来るかと言われれば、答えは間違いなくNOだろう。

俺は魔術師として素人で、それは英霊の知識についても同じ。

 

 それでも彼女が他の英霊と比べ突出している存在なのは分かる。

 

「そういえば、アテーノさんはどのように索敵をしているのでしょうか?」

「……コイツの鼻だよ」

 

 眉を顰めながらアテーノは使い魔を撫でる。

獣はリラックスしているのか、目を細めながら主人に甘えるように喉を鳴らす。

 

「本来なら必要ないんだけどな」

「えっと……、必要が無いとは……?」

 

 マシュの問いに淡々と答える声は無機質で、まるで感情が抜け落ちているようだった。

普段の彼女とはあまりにもかけ離れている。

 

「そのまんまの意味だよ。今回通信が駄目だったのは運が悪かっただけ、本当ならロマンの通信で十分。アーチャーは目視、セイバーなら直感に頼ればその性能だけで何とかなる」

 

 何故そこまで自分を卑下して語るのだろう。

 

「フジマル、マシュ!もうガリアに着くぞ!」

「ん、もう到着らしいぜ。さぁ降りた降りた少年少女!……どうしたんだよ呆けた顔して。あらよっと」

「え、ちょ!?」

 

 ネロから声が掛かり、アテーノは固まる俺たちを見兼ねてか、有無を言わさず両脇に抱え獣の背から飛び降りた。

いつも通りヘラヘラと笑いながら。

 

「じゃあここまでだな」

「貴様も共に来れば良いではないか!余としては優秀な人材をみすみす返したくも無い。それに礼もまだしておらぬ。饗させよ」

「気持ちだけもらっとくぜ。私はただの使い魔、長居は無用。サラバだ皇帝陛下!……と、敵の偵察部隊を見つけた。そいつらだけ捕まえたら帰るよ。あばよ~」

 

 

 再び獣へと飛び乗り跨ったアテーノが踵を返し、森の奥へと消えるのを見送った。

それから、ネロと少しだけ歩くと目的地のガリアへと辿り着いた。

 

『──聞こえるかい藤丸くん!ようやく通信が治ったよ!不安な思いをさせてすまなかった。だけどもう安心だ!こっちからサポートを………どうして二人ともため息を?』

 

 

ガリアではサーヴァントであるブーディカ、スパルタクスと合流。

その後はネロの計らいでささやかな宴が開かれ、つかの間の休息を取ることが出来た。

 

 その夜。疲弊している身体に反して目は冴えていた。

何となく、夜風に当たりたくなってキャンプの外に出る。既に騒がしさは無く、静かに風の音だけが鳴いている。

 

 彼女が浮かべた表情が焼き付いて離れない。

何故あの時、彼女は悔しそうだったのだろうか。

 

「マスター?」

「あれ、マシュも寝れないの?」

「少し考え事を……」

「アテーノの事?」

「!もしかして先輩もですか?」

 

 眠れないのは俺だけじゃなく、マシュも同じだったようだ。それから眠気が訪れるまで二人で星を眺めながら話をしていた。

思えば俺達は彼女のことを何も知らない、だとか。

彼女が頼りにしてくれるくらいに強くなろう、とか。

 

 

 

 

 

そんな話をしながらローマの一幕は閉じた。





SKILL1 胸部装甲アイギス C Lv.1 CT7
 自身の防御力をアップ[Lv.1](3ターン)&被ダメージカット状態を付与(1ターン)&弱体耐性をアップ(3ターン)&対クリティカル耐性をアップ(3ターン)



◇◇◇◇


前回久しぶりの投稿でしたが多くの方に見てもらえて嬉しかったです。
高評価にお気に入り励みになります。いつも本当にありがとうございます。
嬉ションが止まりませんじょぼぼ
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