素晴らしい!!!
疑うものか、君こそ正しく《理想の英雄》だとも!
『通りすがりのメカクレ紳士』
『ううん、サーヴァントでもだ。君も、フジマルもマシュも私からしたら守るべき存在なんだよ。例えあたしよりずっと強くてもね。……よし!おいで、お姉さんがいいこいいこしてあげよう』
『我等スパルタの民の心にはいつも貴女が居たのです。例え泡沫であったとしても、人理に叛いたこの身を裁くのが憧れの英雄とは何たる幸運……。願わくば、次こそ貴女と共に闘いたいものだ』
『あら?貴女がそうなの?……いえ、うふふ。ごめんなさいね、とてもそうは見えないから。ええ、責めませんし恨みません。どちらかというとアテナより、[偶像]である私に近いんじゃないかしら?……ねぇ、勇者様。気に入ったわ、特別に女神の祝福を……ふふふ、冗談よ』
『嬉しいなぁ……!最初は半信半疑だったけど剣を交えてわかった……!ずるいな先生、だってまだ彼女の戦いを間近で見られるんでしょ?……カルデアには君が居て、アキレウスもいずれ呼ばれるかもしれない。参ったな……!今から楽しみで仕方ないや!』
多くの出会いがあった。
生前の私からは考えられない。
……自身に憧れる者が居ることではなく、他の英雄達と交わっていることが。
アテーノになる以前は英雄に憧れていたのだ。
私もそう在りたいとは思わなかったが、純粋に彼等の紡ぐ物語に思いを馳せていた。
英雄へ抱く想いが嫌悪へと変わったのは何時からかだったか。
サーヴァントは狂っている。
バーサーカーという霊基の金型に限った話ではなく英霊として形を成す以上、何処かしらが歪なのだ。その必要がある。
人々が死ぬ戦に武勲を見出す。
一人で国を背負う覚悟を持つ。
少を切り捨て多くを救う。
これらは特別難しいことじゃない。
せざるを得ない理由もあるだろう。
その資質に恵まれていた人間も居るだろう。
問題なのは英霊に数えられるまで続けること。
だって、まともな人間が耐えられる筈がないだろ。
人を斬り続け称えられた人間は正気か?
身体が欠けても戦い続けた人間は正気か?
民の為に命を捧げた人間は正気か?
否だ。
断じて否。
何かが欠けているのか、或いは人として強すぎたのか。何れにせよ余程の気狂いでない限り英霊へと至らない。
勿論、私も例に漏れずその一人。
とどのつまり。心底サーヴァントというものが気持ち悪くて仕方ないのだ。
(その筈なんだけどなぁ……)
思考に耽るのを止め、隣に立つ少年の顔を見る。
緊張と不安が入り交じった表情、視線に気づき困惑するようにこちらを見る。
「ど、どうしたの?」
「……いや、大したことじゃないさ。前回といい今回といい。面子が濃いめだったからお腹いっぱいだなってな」
つい反射的に誤魔化すように言ってしまったがこれもまた本音。
前回の経験からローマに縁の無いサーヴァントも居るだろうとは想定していたがなんなんだタマモキャットって。頓痴気にも程があるだろ。
「君も十分濃いと思う。……あの、ちょっと唐突なんだけど聞いてもいい?」
「お前の気持ちは嬉しいけど友達としか思えない」
「違うから!このくだり毎回やるの?!」
顔を赤く染めながら彼は叫ぶ。何とも初心で揶揄い甲斐のある素晴らしいリアクション。
弄るのも程々に言葉の続きを促す。
「アテーノはこの特異点、どうだった?」
彼の口から出たのはあまりにも要領を得ない質問。
ただ、何を言わんとしてるのかは分かる。
ならば答えは結局この一言に尽きるだろう。
「……めちゃくちゃカッコよかったな」
「だよね……!」
英霊達と肩を並べて戦い、
英霊達と刃を交えた。
私が彼等を忌み嫌っているのは依然として変わらないし、これから先この感情が揺らぐことは無いと断言できる。
それでも。
瞳に映る彼等が確かに眩しかったのだ。
仮初の命を賭す信念、生涯を費やし辿り着いた技術。はたまた生まれ持っての天賦の才。
凡人が決して放つ事のない、燦然たるその生き様に少しだけ見惚れてしまったのが悔しい。
熟、私とは違うのだと思い知らされる。
抱いた無力感と劣等感を心の隅に隠しながら、やれ誰がカッコよかっただの、やれ誰の宝具が最強だのそんな馬鹿らしくとりとめのない会話を交わす。
「立香、そういうお前は?何か感じたこととかあるんだろ?」
「うん。とりあえず困ったらバーサーカーかアテーノ呼べばなんとかなるって分かった」
「えぇ……」
成程、つまりは何も分かっていないと。
それで良いのか人類最後のマスター、戦略も何もあったもんじゃないぞ。でも何故かは知らないが我がことのように耳が痛い。
気の所為だ、多分。
「おぉ!やはり此度も来ていたかプリテンダー!………いや、寧ろ見かけなかった時が無いのではないか?」
「ハハハ、好きでこんな頻繁に来てるわけじゃないんだけどなぁ!この隣の馬鹿が脳死で私ばっか呼ぶからなハハハ!」
「痛い痛い蹴らないで」
「最後の戦いを前に竦んでいるのではとフジマルに声を掛けに来たのだが。うむ、杞憂のようで何より。良い顔つきではないか」
快活とした声に振り向けば彼女の姿。
皇帝ネロ・クラウディウス。
連合軍の敵として立ち塞がったカリギュラは、退去の際「美しい」とネロへ告げた。狂乱の身へと堕ちていたカリギュラだったが、その目は正しかったのだと思う。
勇敢でありながらも人の弱さを忘れず、自らが兵と同じ視座を持っている。
「良い女だよ本当に」
二人ともポカンとしてこちらを見る。どうやら自然と口に出していたらしい。
「何だ唐突に。口説いておるのか?」
「最後くらい自重しようよ」
「違ぇ、全然違ぇわ!そういう雰囲気じゃなかったろ今!もっとこう、叙情的なアレだろ!?」
「今までの言動を鑑みると仕方ないな。
──ところで何時突っ込もうか迷っておったのだが、最後だし一応。一応、聞いておくぞ」
何だ告白か……と言うのは流石にしつこ過ぎるだろうし、これ以上呆れられるのも堪えるのでグッと抑え込んだ。偉い、我慢ができる。これは耐久EX。
ネロの訝しげな視線は私の一点へと吸い込まれていることに気づく。
「その真紅の衣装は何なのだ?」
「よく聞いてくれた!!!!」
「声でか」
目線の先。普段から大きく存在感を放つ(多分)私のトレードマークとも言える鎧は見当たらない。そう、これ即ちCast off。
代わりに纏っているのはアイギスにも見劣りしない……いや上回るかもしれない素晴らしい霊衣。
真っ赤な無地には着る者の生き様を具現化するが如く、堂々と文字が刻まれている。
───そう、Busterと。
将来的にはカルデア内で流行るであろうダ・ヴィンチちゃん特性霊衣Buster Tシャツだ。
これはまだ試作品の段階らしく私がテスターを頼まれた。人選については宣伝効果がどうだとか、なんだとか。
何ともまぁイカしたデザインだ。赤は好きだ。
色合いのお陰でローマ兵の身に付ける装備の意匠に近く、連合との最終決戦には持ってこいだろう。
「いや、なんか締まらないから普通に鎧着てほしいんだけど」
「余はかなり好きだがな!しかし、大一番でフジマルの指揮とプリテンダーの防御力に影響があるのは不味いかもしれん」
「軽装の奴に言われても!……まぁ、でも確かにこれで負けたらカッコつかないな。ここは大人しく着替えるよ、うん。仕方ないよな……チッ」
「舌打ちしたよね今」
あえなく却下された。
指を鳴らすと同時に鎧を纏いいつもの姿へと戻る。
態々着替える手間が無いってのは霊衣のメリットだ。
ちなみにここで「指を鳴らす必要無くね?」などと野暮なことを考えるのは三流サーヴァント。
理由なんて「カッコイイから」で十分だろう。
「さて、いよいよ王宮への進行だ。改めて感謝する、フジマルにプリテンダー。そなたたちと共にここまで戦ったからこそ、余は真祖と戦おうと思えるのだ」
「私なんか関係ないよ。立香とマシュ、お前自身が強かったからここまで来れたんだ」
「どうして今に限って謙虚になるのだ!そこは普段通りニヤついてふんぞり返るところであろう!……胸を張れ勇敢なる使い魔よ。おかしな事を言うが、そなたの姿が何度も御伽噺の英雄と重なった。余も兵達もその勇姿に魅せられ、かの皇帝達にも奮い立つことが出来た」
彼女の言う英雄が「アテーノ」なのかは定かではないし、それを追求するつもりも言わずもがな。
まぁ、人々の目にそう焼き付いたことには安堵する。
上手く振る舞えて良かったな、と。
ただそれだけ。
◇◇◇◇
あーーー。
あーーーテステス。
……うん、今回も異常無しですね。
では、再び少年少女の物語を紡ぎましょう。
語りましょう人類最後のマスターの物語を。
第二特異点セプテムにて、彼らカルデアの描いた軌跡を。
……も、申し訳ありません。
ええ。今回も自分です。いやほんとしつこいですよね、未だマスターに召喚すらされてないのになに逐一出しゃばって来んだよって感じで。
ですが……コレだけは誰にも譲ることは出来ないので、諦めて下さい。
ん?いいいいいいや別に上から物を語るつもりは全く持ってないんです、自分どうしても口下手で……!
い、いけない。また脱線していました。
長期間他人と会話していないと順序立てて話せなくなるので気をつけましょう。まぁ自分以外には無縁の話でしょうし、そろそろ真面目にやりますね。
コホン、では。
皇帝達を撃破したカルデア一行は満を期して敵の本拠地へと乗り込んだ。相対するは神祖ロムルス。
軍神マルスの子として生まれ大いなるローマを作り上げた偉大なる建国王。
皇帝ネロ・クラウディウスにとって最大の障壁を彼らは見事打ち破った。
そして黒幕は現れた。
レフ・ライノール。カルデアの明確な敵。
しかし、ああいう奴ほど呆気ない最期と相場は決まっている。いやはや、あそこまで勝利に執着しておいて、呼び出したサーヴァントに殺されるとは実に滑稽。
魔神柱?ハッ、アテーノの敵じゃありませんね。
その後レフ・ライノールがその命を代償に召喚したサーヴァント、アルテラの撃破に成功したカルデアは無事に聖杯を回収し、永続狂気帝国セプテムの幕は閉じられた。
———さて、本特異点は“成長”の旅でした。
マスターとしての藤丸立香、サーヴァントとしてのマシュ・キリエライト。
彼等は勿論ですが、このローマの物語で主役を張っていた、皇帝ネロの成長の旅だと自分は思うのです。
伯父であるカリギュラ、カエサル、始祖たるロムルス。道標であった偉大な皇帝達を打ち倒し、「余こそがローマ」と震えながらも言ってのけた彼女の英雄譚です。
というわけで第二特異点、永続狂気帝国セプテム。
これにて閉幕です。
……はい、何でしょうか。
「
———アテーノがそう言ったのですか?
……。
…………。
………………こほん。
はい、確かに知っています。ですがこればかりは自分が言うべき事じゃない。
すいません。自分は君に、全てを伝えていない。まだ伝えるべきでは、無いのです。
彼女自身の口から。いや、彼女が口を開かずとも君が英雄アテーノのマスターである以上、いずれ知るでしょう。今はまだその時ではないのです。
でも。これだけは言っておきます。
アテーノが何を抱えていようとも、君のサーヴァントであることは忘れないで。
……おや、愚問でしたか。流石は藤丸立香です。
では、改めて。
七つのうち二つ、第二特異点。
永続狂気帝国 セプテム
これにて定礎復元。
「男と女、黄昏と夜、蟲と 。
同じようで全然違うなぁ私たち。
ハハハ!そう露骨に嫌な顔をしないでくれよ先輩?
これでも私女の子なんだぜ?ガワが王子様ならせめて花のように優しく扱ってくれたっていいだろ。
……ところでさ、この前立て替えたメロン代をッ!?待てコラッ!
おまえら!あの蛾に乗ったロクデナシを追えッ!!」
(オベロン所持)