藤丸立香の聖杯鯖になるTSオリ主   作:生き恥マラミュート

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 あぁ、アンタがそうなのか。
 知っているとも、万人を救う伝説の大英雄サマ。
 ───男が盲信した、唯一の道標。

 ふっ、ふふっ、ふはは……!
 憧れからかけ離れたと思っていたよ。
 それがどうだ?

 馬鹿げた理想に駆られて殺戮を尽くした果ての惨たらしいこの姿……憧れたアンタにそっくりじゃないか。
 自惚れてはいない。オレが報われたワケじゃなく、描き続けた偶像の正体が醜いハリボテだっただけの話だ。

 似ているのは結果だ。辿った過程は真逆と言っていい。

 ハッ、今更恍けてどうなる?無辜の民衆に手を掛け続けて尚、その心は正気を保ち続けた。最後の一人ですら罪悪感に苛まれた精神はオレなぞよりよっぽど悍ましい。

 ───アンタ、まだ中身が腐っていないんだろ?

              『成れ果て共が夢の跡』


着地任せるな!

 

 

 意識が曖昧な空間にもかかわらず、妙な心地良さを感じるのは隣に座っている彼女のお陰なのだろうか。巨大なスクリーンに映るのはあの夜の森……ではなく、病室に似た真っ白な部屋。画面の中の幼い少女の顔はボヤけてはっきりと見えない。

 

『わたしはとても幸せだ。今日も一日、この綺麗な世界を見ていられるのだから』

 

 噛み締めるように   は言う。

 

「ぼんやりとだけど知ってるよ。   がどんな存在か、迎える結末もね。───いやいや教えたって意味が無い。これはお前が辿り着くべき答えだからさ。マスターとしてじゃなく、あの子の先輩として」

 

 暗転する画面。

 横の彼女は抱えるポップコーンをつまむ。

 

「大丈夫だよ。私が異分子だとしても、絶対にそこまでは連れてってやる。さ、もうそろそろ起きようか。今日も世界を救いに行くんだろ?」

 

 何処か呆れを感じさせる物言いを最後に、夢の映画館は閉じられた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 余談ではあるけども、レイシフト直後は体調が優れない。頭の中がふわふわとして気だるさに包まれている。

 

 でも今はそれ以上の刺激によって感覚が冴えている。

 

 それは全身に打ち付ける強風!

 それは確かに感じる死の感覚!

 それは日常で味わえない浮遊感!

 

 結局何が言いたいか分からないって?まぁ簡単に言うと……。

 

 

「落ちでるうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!??」

 

 何故か上空へレイシフトしていたのだ。風に抗い、無理矢理目をこじ開ければ視界に広がっていたのは青、一面の大海。───いやなんで?

 

「マスター!この距離ではどうにも……!」

 

 聞き慣れた声へ向けば、マシュも共に落下している。

 

 もしや、詰んだ?

なんてろくでもない事を考えていると、この絶望的な状況に反した明るい声が通信越しに聞こえる。

 

『いやぁ、すまないフジマルくん!どういうわけかレイシフトの座標がズレてしまったみたいでね。でも大丈夫。今回は彼女も同行してくれているだろ?何でも新しく翼が生えたとか!もう何でもありだね』

 

 そこまで言われてハッとする。そうだ、今回は二人じゃない。

 

 慌てて俺は叫ぶ。

 

 

 

 「着地任せたプリテンダー!!」

 

 

 

 純白の翼を羽ばたかせる姿は神々しくて、正しく御伽話にて描かれる大英雄そのもの。幻想的な光景に見惚れ……いやいや今はそんなこと言っている場合じゃなくて!

 

「呼ばれて飛び出て英雄アテーノ即登場!YES!ここ第三特異点1573年の大海を背に今!堂々、全盛期にて顕現!ハハハ、ようやく同行まで漕ぎ着けたね!でも長かったぜここまで?思い返せば多くの苦難がありましたとも。例えばカルデア職員の信頼を得るために積極的にコミュニケーションを取ったり、タスクを手伝ったり。それでも心を開いてくれない聡明な頑固ちゃんには洗n「長い長い!早くしないと落ちちゃうからぁ!?」しょうがねぇなぁ全く」

 

 いつにも増して饒舌なアテーノは満面の笑みを浮かべているが俺は全く笑えない。ていうかこのままじゃ普通に死ぬ。

 

 並走するかのように俺達と共に落下しながら、面倒くさげに頭を搔く。いや何しに来たの君。

 

「ほら、腕広げろよ。受け止めてやるから」

 

 その言葉に迷いなく腕を広げる。

 

 

 ……いや、ちょっと待った。

 

 これ抱き締めてもらうってこと?

 

 女の子に?まぁでもアテーノだし……。

 

 それでもなんか恥ずかしい気が……。

 

 

 悶々としている間にアテーノは俺の元へと飛んで来る。待ったまだ心の準備が……!?

 

 

 

 そのままアテーノは俺を……。

 

 

 

 

 通り過ぎた。

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

「よっしナイスキャッチ私!大丈夫かいマシュ?良かったよ~、か弱い乙女が水面に叩き付けられて四散するところなんて見たくないからね」

「ア、アテーノさん?!私ではなく先輩を!」

「おいおい、酷いなマシュは。他の男の話はよしてくれよ。今はその目で私だけを……な?」

 

 

 いや「な?」じゃないけど。何でアテーノはマシュをお姫様抱っこしていて、それを見つめる俺の身体は落下を続けているのだろうか。

 

「ちょっと待って俺は!?!」

「?女の子と男の子が落ちてたら助けるのはこっちだろ」

「アテーノの馬鹿!女誑し!ろくでなし!」

「ハッハッハ、信頼度が足りんわ!そうだな、絆4くらいになったらお前を優先してやるよ!」

 

 言っている言葉の意味が分からない!絆4って何!

もう駄目だ間に合わない、水面は目と鼻の先。思わずギュッと目を瞑る。おのれアテーノ。

まさかこんなにも呆気ない最後なんて……。

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ………。

 

 …………あれ?

 

 

 

 

 おかしい。いつまで経っても衝撃が来ない。誰かに抱えられているような?それに何か柔らかい感触がある。懐かしいこの感触はまるでつきたてのお餅のような……。

 

 恐る恐る目を開ければ、揺らぐ深い青。そして潮の匂い。

 

 どうやらギリギリで誰かに助けられたらしい。

 

 感謝を述べるために顔を上げ、そこで俺を助けたであろう人物と目が合った。

 

「ありがとう……ど、どちら様?」

「…………」

「………えーっと」

 

 とても綺麗な女性だ。長いピンクの髪、背中に生える巨大な翼はアテーノに良く似ている。

女性。……今頭に感じる柔らかい感触はつまりそういうことか。無心、無心。

 

 ところで、なぜ無言なのか。彼女はじっと見つめ返してくるだけで何も言わない。き、気まずい!

 しばらく硬直しているとマシュを抱えたアテーノがゆっくりと降下してきた。

 

「大丈夫ですか先輩!あの、そちらの方は?」

『サーヴァント……とはちょっと違うみたいだね。微妙に反応が異なっている。いやでも反応はそっくりなんだけどなぁ』

「それが俺もサッパリで……。ところでアテーノ、俺に何か言うことは……?」

「まぁまぁ、ちゃんと助けたんだから許してくれよ。それにな、責めるべきは別に居るんじゃないか?なぁドクター?」

『返す言葉もありません……。そ、それより今はフジマル君を抱えている彼女が何者なのかだ。アテーノ、口ぶりから察するに君は知っているのかい?』

「おうともさ!カルデアによる霊基再臨の恩恵は確かだった。これぞ英雄アテーノが従える眷族、迎えた最後の■。犬じゃ溺死しかねんからさ。……いや、今から呼んで殺しとくか?」

 

 ドクターの問いに、アテーノは大きく声を上げて堂々答えてみせる。

───心做しか、いつもの彼女よりも演技がかっているように見えた。誇らしげだけれど、何処か辛そうなのはきっと気の所為なのだろう。

 

『つまりあの仮称ブラックドックと同じく、君の使い魔というわけだね。複数匹の使い魔の使役だなんて、キャスターの芸当だろうに』

「私はそういう役割だからね。寧ろ足りな……駄目だ、無駄に饒舌だな。とりあえず説明は後にして移動しようぜ!見渡す限りの海だ、兎にも角にも陸地を目指すぞ」

「はい、そうしましょう。と、言っても私はアテーノさんに抱えられたままなのですが……。すいません、私にも翼があれば……!」

 

 お姫様抱っこをされたまま悔しそうに拳を握る後輩のなんと可愛いことか。マシュに翼か、天使みたいになるんだろうな。まぁ、翼なんて生えるわけが……。あれ?今更だけどアテーノにはなんで生えてるんだ?

 

 ダ・ヴィンチちゃんの話によれば、伝承によって姿を変えるサーヴァントは存在するらしいけど、アテーノ曰く生前からそうだったらしい。どうやって生きていれば背中に翼が生えるのだろうか。

 

 ───アテーノの言う【役割】ってなんだろう?

 

「ん?……おい立香、マシュ。アレ見てみろよ」

 

 愉快げに言いながら、アテーノは遠くの何かをクイと顎で指した。目を凝らして見てみれば悠々とこちらへ近づく一隻の船。

風を受け止める巨大な帆!澄んだ青と対極に存在感を放つ赤い船体!これはもしや俗に言う……。

 

「まさか海賊船……!?ド、ドクター!詳しい説明を求めます!」

 

『不手際でホント申し訳ない……。うん、時代と場所を鑑みてもその認識で間違いないだろうね』

 

「へー……!漫画とかアニメでしか見たことなかったよ俺。てっきり船首にドクロとか付いてるものだと」

 

「わかるわかる!もっと禍々しいモン想像しちゃうけど、あっちは海賊船と言うより幽霊船かな?いいねぇいいねぇ!思ってたよりもずっと豪華で派手でカッコイイじゃん!!」

 

『いやいや!大英雄ともあろうものが早計過ぎないかいアテーノ?かの有名な海賊一味が乗っている船を思い出してごらんよ。その装飾も意匠も、大海原を往く彼らの誇りそのものなんだ!』

 

「ドクター!アテーノさん!マスターまで!もう少し危機感を持って下さい!」

 

 呆れるマシュの言葉でハッとする。

俺達がきゃっきゃとはしゃいでいる間にも海賊船は迫っている。もしかしなくても相当ヤバい状況なのでは?

てか俺ずっと抱えられっぱなしなんだけど。

 

 

「さぁ、どうする立香?時間はないぜ、一秒後には私達へ向かって砲弾が放たれるかもしれない。人類最後のマスターは英雄アテーノをどう使う?」

 

 

 思考を巡らせる。

 

マスターとして俺に今出来ることは……。

 

 

「……とりあえず、アテーノの魔術で姿を消して船に近づいてみる。そこに()()()()()()()()が取れそうな人がいるなら情報収集。もし襲ってくるのならもう一度アテーノの力で退避。……とか?」

 

 

 何とか捻り出せたのは策とも呼べない無謀なもの。

 ……これは却下されるだろうな。

 

「うし、任せとけ。それで行こうか」

「え、これでいいの!?」

「……なんでお前が驚くんだよ、マシュとドクターは?」

 

「異論ありません!」

『僕も賛成だよ』

 

 予想外、まさかの即答だった。

呆気に取られる俺を余所にドクターからの通信と、作戦の要であるアテーノの言葉が続く。

 

『現状で取れる手段がかなり限られているからね。まぁ、僕のせいなんだけど!』

「ついつい私も大袈裟に言ったけど、正直内容はどうだって良いんだよ。この状況で咄嗟に指示を出せることに意味があるんだから」

 

 そこまで言って振り向く彼女と目が合った。霊基再臨以前の青く澄んだ瞳ではなく、変貌した黒く妖しい瞳が俺を見据えている。禍々しくはあるけども、不思議と恐ろしいとは思わない。

 

 「それにな」と、歯を見せ不敵に笑う。

 

 

「例えどんなに理不尽な注文でも私なら応えられる。だろ?」

 

「うん……!頼りにしてるからねアテーノ!」

 

 

 めちゃくちゃかっこいいじゃん。

フランス、ローマと違って今回は彼女がレイシフト時点から同行している。なんて頼もしいんだろうか。

 

 ───特異点修復もこれで三度目になるけれど、慣れるどころか不安は増していく一方だ。たった数回で何度も死にかけて、その度に運良く助かっているだけ。

 

 それでも彼女が居てくれるなら俺は……。

 

「じゃ、早速やりますか。おい鳥。マシュも頼むぜ」

 

 アテーノがそう言うと抱き留められていた身体が揺れた後、手足が重力に従ってブランと垂れる。再び視界に水面が広がるこの状況、おそらく片手で脇に抱えられているのだろう。

 ……女の子に?恥ずかしすぎない?なんて考えているうちに、アテーノの腕から離れたマシュも同じように抱えられた。

 

 右に俺、左にマシュ。

かなりの重さだろうに、女性は依然として何も語らず無表情のままこの場に滞空している。

 

「いけるよな、鳥?」

「………」

「悪いけど我慢してくれ。少なくともここじゃお前ぐらいしか頼れないからね。───ちょっとばかし派手にやる。しっかり抱えておいてくれよ」

 

 はて、聞き間違いでなければ今「派手にやる」と聞こえただろうか。おかしいな。俺が提案した作戦は隠密だし、アテーノもそれに頼もしい返事で頷いた筈。

 

 ふと左を向けば、マシュも同じように困惑の表情を浮かべている。

 

 あ、これ聞き間違いじゃないっぽい。

 

 

 

 

『ちょ、ちょっと。英雄アテーn「さァ、行くぞ巫山戯た災厄共。アテーノ・エクスマキナに与えられた権能、その片鱗をお見せしようか。───魔力装填放射角固定……!!」

 

 

 

 

 ドクターの通信を遮って叫ぶ彼女から、夥しい量の魔力が渦を巻いて溢れ出した。過去の特異点で使ってみせた、細やかな隠蔽の魔術とは全く異なって、禍々しい魔力が雑に撒き散らされている。

 

 最早存在を誇示しているかのようだ。

 

 

 

 

 数秒の後、魔力が止んだ。

 

 何だ、良かった。てっきりそのまま作戦を忘れて攻撃するのかと思ったけど杞憂みたいだ。

 

 そして声を掛けようとした瞬間。

 

───キラリと、英雄アテーノの()()が光った。

 

 

 

 

 

「アt「Gaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」

 

 

 

 響く咆哮。

 黒々と輝く極光が海賊船を呑み込んだ。

 

 

 

 

 は?

 

 

 は?

 

 

 は?

 

 

 

 発射元であろう人物の口から煙が立ち上っている。

 ここから出ましたよ、と。

 

 口を開けて呆けているのは俺とマシュだけじゃないだろう。きっと管制室にいるスタッフやドクター、ダ・ヴィンチちゃんですら呆気に取られているんだろう。その証拠がこの静寂だ。

 

 いつまで続くのかと思われる沈黙を打ち破ったのは、他ならぬ張本人だった。

 

 

「─────フッ、真の英雄は口で殺す。だったか?」

 

 

 渾身のドヤ顔を決めて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「『いやコミュニケーションは!?!?』」」

 

 

 

 

 




「今日は私のコンサートに来てくれてありがとう皆。
じゃあ最初の曲だ、聞いてくれ『遥か遠き虹回転』

………ん?このギターか?
お母s、エミヤ!エミヤに駄々こねて作ってもらったんだよ。
なにかと良くしてくれてね、私もつい甘えちゃうのさ。

もしかして、他の誰かに重ねてたりしてな?」
(エミヤ所持)



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